関西人のムダ嫌い・合理性は“みそ汁”の作り方にも影響するか?
※この記事は2016年2月のリリース記事を再構成したものです
日本の食卓を代表する伝統食、みそ汁。食の西洋化や女性の社会進出にともない、日本人が手作りのみそ汁を食べる機会は減っていますが、最近は健康食として見直されてきています。
みそ汁文化の「今」に迫るべく、「週3回以上」みそ汁を手作りする全国の既婚女性(30~69歳)を対象に、みそ汁作りについての意識や、使っている材料などについてインターネット調査を実施しました。
今回は、食文化や嗜好の地域差を切り口として特に、【関西】にスポットを当て、「関西圏(2府4県)」(以下「関西圏」)と「その他の地域」(以下「関西以外」)とを比較してみました。
更に、“かつての国”によって食文化が違っているかを見るために、関西圏内を下記のように旧国名で分類した分析も行いました。
手作りみそ汁、作り手の重視ポイントは?
家庭でみそ汁を作る際、作り手の女性たちはどんなことを重視しているのでしょう。材料選びや作り方について20ほどの項目から重視しているものを複数回答してもらいました。
まずは、関西圏と関西以外とを比べてみましょう(図表1)。上位の4項目「家族の健康に配慮した具材」「短時間でつくる」「家族が好きな具材」「季節の具材」はいずれの地域でも40%以上の人が重視点として選択し、地域差は少ない様子。一方で、関西圏ではこれに「食卓の品数を増やす」(39.2%)、「冷蔵庫の残り物処理」(32.2%)が続くのに対し、関西以外ではこれらの選択率はそれぞれ約28%にとどまり、それよりも「家族が飽きない具材」(36.8%)が重視されています。また関西圏では「多めに作る(次の食事用にも)」(18.5%)も関西以外(15.5%)を上回っています。この結果から、関西圏での、食材のムダをなくし、調理回数を減らしながら食卓の品数を増やす、という効率重視の気質が見て取れます。
関西圏内を見てみると(図表1-2)、播磨の「短時間で作る」(53.6%)、河内の「(多めに作る(次の食事用にも)」(30.6%)は、関西圏平均に比べてスコアが高く、特徴的といえます。
図表1 みそ汁を作るときの重視点(複数回答)<関西圏 vs. 関西以外>
図表1-2 みそ汁を作るときの重視点(複数回答)<関西圏内 旧国名エリア比較>
Key Point 1
関西圏は、他地域より「食卓の品数を増やす」「冷蔵庫の残り物処理」「多めに作る(次の食事用にも)」が重視され、ムダなく効率的に調理しつつも食卓の見栄えにも配慮している様子。播磨では「短時間でつくる」、河内では「多めに作る(次の食事用にも)」を重視する人が関西圏の中で多い。
みそ汁の“だし”と“みそ”、何が好まれている?
続いては、みそ汁で決め手、“だし”と“みそ”について見ていきましょう。ここでも関西圏の特徴は表れているでしょうか。
関西圏での“だし”のキーワードは?
“だし”についても20ほどの項目から普段、みそ汁づくりに使うものを選んでもらいました。関西圏と関西以外とを比べると(図表2-1)、いずれも「だしの素かつお味」が利用率のトップ。ただ、関西以外では過半数が利用していますが、関西圏では約4割にとどまっています。一方で、関西圏で2番目に利用されている「だしの素 合わせ」(14.8%)は関西以外の利用率は関西の半分以下(5.5%)。また、「だしパック合わせ」も関西圏(8.9%)は関西以外より(5.7%)高利用率。関西では、だしの“合わせ”が関西以外より好まれていることがわかります。
そして、関西圏では「昆布」の利用率13.8%が関西以外 (10.3%)より高いのも特徴的です。また、魚系のだしに目を向けると、「煮干し・いりこ」そのものは関西以外(10.0%)では2番目の利用率ですが、関西圏(12.2%)では6番目。一方、「だしパックあご(飛魚)味」が関西圏(6.3%)の方が関西以外より(4.1%)若干高いという点にも、地域差が表れています。
関西圏の「昆布」利用率をけん引しているのは和泉(18.7%)(図表2-2)。江戸時代、北海道からの昆布運搬ルートが堺に開かれたことから、昆布加工の一大拠点となった堺。このエリアを擁する和泉で「昆布」利用率が高いのもうなずけます。和泉は「かつお節」利用率も関西圏トップ。そのスコア(18.7%)は「昆布」利用率と同じなのは、「合わせ」で使われているからかもしれません。
図表2-1みそ汁に使うだし(複数回答)<関西圏 vs. 関西以外>
図表2-2 みそ汁に使うだし(複数回答)<関西圏内 旧国名エリア比較>
関西で人気の“みそ”は「味と時短」を両立
次に“みそ”です。普段のみそ汁づくりで使うことがあるみそ種類を選んでもらったところ(図表3-1)、全国的な人気は「合わせみそ」。関西圏では「だし入り」の合わせみそが約5割の利用率があるのに対し、関西以外では「だし入り」「だしなし」の利用率はいずれも約3割とほぼ同じ。
この、「【だし入り】合わせみそ」の支持が関西圏の中でも特に高いのが播磨(63.9%)(図表3-2)。播磨は、最初に見た、みそ汁づくりの重視点で「短時間でつくる」が突出していた(53.6%)地域。時短調理に「だし入り」みそを活用している様子がうかがえます。
図表3-1 みそ汁に使うみそ(複数回答)<関西圏 vs. 関西以外>
図表3-2 みそ汁に使うみそ(複数回答)<関西圏内 旧国名エリア比較>
Key Point 2
関西圏では、みそ汁の“だし”は「合わせ」タイプの利用が関西以外より多い。昆布加工が盛んだった堺を含む和泉エリアを中心に「昆布」も関西以外より高利用率。“みそ”は「【だし入り】合わせみそ」利用率が関西以外に比べて非常に高い。特に時短調理重視の播磨エリアでの支持が顕著。
みそ汁に使われる“具材”にも地域差はある?
“だし”、“みそ”に関西圏の特徴が表れていましたが、“具材”はどうなのでしょうか。
みそ汁の王道具材、お豆腐にも関西の特色が
みそ汁の具材として最もよく使うものを、50ほどの選択肢からひとつ選んでもらいました(図表4-1)。やはり最も多く選ばれた具材はお豆腐。関西圏、関西以外ともに、一番人気は「絹豆腐」(それぞれ25.2%、23.7%)。これに「木綿豆腐」が続きますが、木綿豆腐派は関西(11.1%)では関西以外(15.9%)より低い結果に。
関西圏内でひとつ特徴的なのは(図表4-2)、紀伊エリアでの木綿豆腐選択率が他地域より突出して高いこと。紀伊といえば和歌山県の高野豆腐が有名です。締まった食感のお豆腐が好まれる素地があるのかもしれません。
また、関西以外では「ねぎ」と「たまねぎ」の選択率はほぼ同じ(それぞれ6.2%、6.8%)ですが、関西では「ねぎ」(4.8%)より「たまねぎ」(8.7%)の方が高いのが特徴的です(図表4-1)。この、関西圏の「たまねぎ」選択の高さをけん引しているのは播磨(15.5%)(図表4-2)。これはたまねぎの一大産地である淡路島が近いことが背景にあると考えられます。
図表4-1 みそ汁に最も使う具材(単一回答)<関西圏 vs. 関西以外>
図表4-2 みそ汁に最も使う具材(単一回答)<関西圏内 旧国名エリア比較>
人気の具材コンビネーションは?
具材の組合せについて聞いたところ(図表4-3)、2つの具材の組合せのトップ3は関西圏では、「絹豆腐+乾燥わかめ」(22.3%)、「絹豆腐+油揚げ」(21.8%)、「油揚げ+大根」(19.7%)、一方、関西以外では、「絹豆腐+油揚げ」(19.8%)、「油揚げ+大根」(17.8%)、「油揚げ+ねぎ」(17.2%)でした。
この具材組合せの人気度、関西圏内の地域ごとに違いがみられました(図表4-4)。「絹豆腐+乾燥わかめ」の組合せは特に、河内でスコアが高く(28.6%)、「絹豆腐+油揚げ」は播磨(26.8%)、「油揚げ+大根」は丹波/丹後/但馬、近江(それぞれ26.2%、24%)で他地域より選択率が高い結果でした。
図表4-3 使う具材の組み合わせ(複数回答)<関西圏 vs. 関西以外>
図表4-4 使う具材の組み合わせ(複数回答)<関西圏内 旧国名エリア比較>
Key Point 3
みそ汁の王道具材は関西、関西以外ともに豆腐。いずれの地域も、木綿より絹が選ばれているが、関西圏ではその傾向がより強い。人気“具材コンビ”のトップは関西圏では「絹豆腐+乾燥わかめ」、関西以外では「絹豆腐+油揚げ」。同じ関西圏でも具材組合せの人気度には地域差あり。
「ケチ」「せっかち」などと言われることがあるくらい「ムダを嫌う」「効率重視」な気質といえる関西人。みそ汁の重視点や作り方をとってみても、食材を無駄なく使い、時間的にも経済的にも効率よく調理している様子が、今回の調査結果からうかがい知ることができます。今回は関西圏にスポットを当てましたが、他の地域でもそれぞれに、その土地の気質や特産品があり、その数だけみそ汁文化があるのでしょう。
今回の分析は、下記の設計で実施したインテージの自主企画調査結果をもとに行いました。
調査手法 インターネット調査
調査地域 全国
対象者条件 インテージ・ネットモニター“マイティモニター”のうち、30~69歳の既婚女性(家事主担当、週3回以上みそ汁を手作りする人※)
※みそ汁を手作りする=「缶詰・レトルト食品」「フリーズドライ」「冷凍食品」などの加工食品を除き、対象者が基本的に包丁を使って素材を切り、味付けをして作ることと定義
◯スクリーニング時に母集団構成(エリア・年代)に合わせて配信
サンプルサイズ n=5,009(関西圏763/その他の地域4,246)
関西圏(2府4県)の旧国名でのサンプル構成調査期間 2015年12月4日(金)~12月7日(月)
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