arrow-leftarrow-rightarrow-smallarrow-topblankclosedownloadeventfbfilehamberger-lineicon_crownicon_lighticon_noteindex-title-newindex-title-rankingmailmessagepickupreport-bannerreportsearchtimetw

バイク購入のリアル:不安を越えた先にある楽しみとは?

一般社団法人日本自動車工業会の2023年度二輪車市場動向調査(※1)によると、二輪車需要台数は、2015年度以降30万台水準で推移したが、2020年度に新型コロナの感染拡大による「三密」回避意識の高まりやライフスタイルの多様化などから増加に転じ、2021年度以降は40万台を超え増加傾向に転じています。どのような人がバイクを欲しいと思って買っているのでしょうか。

また、今はバイクを持っていなくてもバイクに興味がある「バイク購入ポテンシャル層」はどんな特徴があるのでしょうか。バイク購入時には、「楽しさ」を期待する反面、安全性や、保有に対する「不安」があると考えられます。今回は自主企画調査によって、バイク購入への「楽しさ」と「不安」の割合から、どのような状態の人がバイク購入につながりやすいのかを探ってみました。

1. 今後バイクを購入する可能性がある人=「バイク購入ポテンシャル層」とは?

近年、バイク市場が再び注目を集めています。コロナ禍以降の三密回避意識の高まりやライフスタイルの多様化を背景に、バイクへの関心が再燃しているのです。しかし、興味があっても実際に購入に至らない層も一定数存在しており、すぐに購入に結びつかないとしても、将来的な需要を形成する可能性があります。本記事では、この「バイク購入ポテンシャル層」 に焦点を当て、その実態に迫ります。

ここからは「バイク購入ポテンシャル層」を図表1の様に考え、それぞれを詳しくみていきたいと思います。

・現在、バイクに興味があり、インターネットなどで情報検索をしたことがある人
・過去にバイクを所有しており、現在は所有していないものの、再び興味を持っている人
それぞれを詳しくみていきましょう。

図表1

「バイク購入ポテンシャル層」の構成イメージ

2024年に実施した自主調査では、15~69歳の男女10,620人を対象にバイクへの関心を尋ねました。その結果、バイク保有の有無にかかわらず、「現在興味がある」と答えた人は24.9%でした。つまり、4人に1人がバイクに興味を持っているということになります(図表2)。

また、男性の興味率は36.2%、女性は15.0%で、男性の方が2倍以上高い割合を示しています。年代も合わせてみると、男性は全年代で33.0~39.5%と均一的に高い関心を示している一方、女性は10代のみ26.6%と他世代を大きく上回り、若年層の関心が際立っています。

図表2

バイクについての興味関心の有無

では、実際に情報検索といった購入に向けた行動に動いている人たちは、どのくらいいるのでしょうか。現在バイクへの興味関心があると回答した人の中で、実際にバイクの情報を検索した経験がある人は、全体の28.8%でした(図表3)。特に、10代・20代については、男女ともに30~40%程度と高い割合を示しています。若年層はSNSやYouTubeなどのメディアを利用して情報を得る特徴があるため、バイクに関する情報検索もこれらのメディアを活用することが多くなっている可能性が考えられます。

図表3

バイクについての情報検索の有無

この興味関心を持つ人全体の中で、過去または現在のバイク保有経験者の割合は53.8%でした(図表4)。その中でも、現在は手放しているものの過去に保有経験がある人は7.6%でした。 この層は、きっかけ次第では再び購入し、市場に戻る可能性を秘めています。

図表4

バイクについての保有実態

調査結果を基に、バイク購入ポテンシャル層の全体像を図示すると図表5のようになります。

図表5

バイク購入ポテンシャル層の構成比

バイクに興味がある人は全体の24.9%。
興味があって、さらに具体的な情報検索まで行っている人が全体の7.2%。また、過去にバイクを所有し、現在は手放しているものの、興味を持っている人は全体の1.9%となっており、いずれかに当てはまる「バイク購入ポテンシャル層」が全体の8.5%存在しているという結果になりました。この層は、バイクへの関心が高く、行動を起こす可能性を秘めているため、バイク市場において重要なターゲットとなり得ます。

2. バイク購入と保有における、楽しさと不安の割合

現在バイクに興味がある人の中でも、特に購入への敷居が低いと想定される「バイク購入ポテンシャル層」の人々は、どのようなイメージや考えを持っているのでしょうか?
バイクには、「風を切ってかっこよく走りたい!」といった楽しさの期待がある一方で、「バイクに乗って事故やケガをしてしまうのが怖い…」といった不安や心配もつきものです。実際にバイクを購入する際も、楽しさの要素と不安要素の両側面を考えて購入決定に至るのではないでしょうか。

このように、バイクに対する期待と不安は、購入の意思決定において重要なポイントとなります。具体的には、バイク購入ポテンシャル層では「不安」が「楽しみ」を上回っており、購入のハードルとなっていることが考えられ、バイク購入・保有層では、乗ってみると意外に不安だったことは気にならなくなり「楽しみ」が「不安」を上回っていると考えられます(図表6)。

図表6

バイク購入ポテンシャル層の楽しみと不安の構造仮説

では、バイク購入ポテンシャル層とバイク保有層における「楽しみ」と「不安」の割合をそれぞれ確認してみましょう(図表7)。

図表7

バイク購入ポテンシャル層およびバイク保有層における楽しみと不安の割合

※「楽しみ」計:「不安より楽しみがやや強い」「不安より楽しみがとても強い」の合計
「不安」計:「楽しみより不安がやや強い」「楽しみより不安がとても強い」の合計

バイク購入ポテンシャル層およびバイク保有層ともに、2倍以上のポイント差で「楽しみ」計が高いことが分かりました。
バイク購入ポテンシャル層の「不安」計は24.6%であり、バイク保有層の「不安」計である19.8%に比べて、4.8ポイント高いことがわかりました。購入を経て購入ポテンシャル層から保有層に移行することで、「不安」が減少する傾向があると考えられます(図表8)。

図表8

バイク購入ポテンシャル層の楽しみと不安の構造(調査結果)

3. 楽しみと不安の理由から見る購入促進のヒント

バイク購入ポテンシャル層にとって「不安」は購入の大きなハードルとなりますが、実際に購入し保有すると「不安」は小さくなり、「楽しみ」がそれを大きく上回ることがわかりました。つまり、バイク購入ポテンシャル層にの「不安」を軽減し、具体的な「楽しさ」を想起させることが購入促進のカギとなります。ここでは、バイク購入ポテンシャル層およびバイク保有層における「楽しみ」と「不安」の理由を具体的に比較し、購入行動を促すヒントを探ります。

まず、楽しみに思う理由を具体的に確認してみましょう。
バイク購入ポテンシャル層・バイク保有層ともに、TOP3は「1人の時間を充実できる」「自由な移動が可能」「スピードや加速感を楽しめる」となっています(図表9)。
また、TOP10のうち、バイク購入ポテンシャル層の方がバイク保有層よりポイントが高い項目として、「1人の時間を充実できる」「操作する楽しさ(ギアチェンジ、カーブの走行、山道など)」「バイクの音や振動」「思い出作り(旅行やツーリングの思い出)」が挙げられました。これらの項目は、特に購入前の段階で期待値が高いポイントであり、これらを具体的な形で伝えることが有効と言えます。

図表9

バイクについて楽しみに思う理由(複数回答可)

次に、不安に思う理由を具体的に確認してみましょう。バイク購入ポテンシャル層・バイク保有層ともに、TOP3は「天候の影響」「安全性が低い(事故のリスク)」「荷物があまり乗らない」となっています(図表10)。
また、不安ポイントは全体的にはほぼ共通していることがわかります。よって、ポテンシャル層は、まだ実際に乗っていないにもかかわらず、情報収集する中でバイクの不安としての要素を把握している可能性があります。実際に乗ってみて杞憂となったこと、乗ってからも気にかかることという違いはあるものの、乗っている人の不安解消が、ポテンシャル層の不安解消にも通じるかもしれません。

図表10

バイクについて不安に思う理由(複数回答可)

4. さいごに

今回の調査で、バイク購入ポテンシャル層とバイク保有層の間で、バイクに対する「楽しみ」と「不安」の割合や内容を比較しました。その結果、購入前後で「楽しみ」の具体的な内容には変化が見られる一方、バイクへの期待感や懸念そのものは購入前から存在していることが分かりました。つまり、バイク購入ポテンシャル層は購入前からすでにバイクに対するポジティブ・ネガティブな両面のイメージを持っていると言えます。

調査から得られた知見を基に、バイク購入ポテンシャル層を保有層へ移行させる、つまり購入に繋げるためのヒントは大きく2つ考えられます。

一つ目は、「楽しみ」を具体化して期待を高めることです。ポテンシャル層に対しては、バイクが日常生活やライフスタイルをどのように豊かにするかを具体的に示すことが重要となります。

二つ目は、「不安」を具体化し、解消策を提示することです。調査結果から、バイク購入ポテンシャル層は漠然とした「不安」を抱えているものの、それが必ずしも購入を妨げる「決定的な理由」ではないことが推測されます。また、購入前に感じていた「不安」は、実際にバイクを使用することで軽減される傾向があることが明らかになりました。
このことから考えられるのは、ポテンシャル層が購入に踏み切れない理由は、不安そのものの大きさではなく、「不安を払拭するための具体的な情報やきっかけが不足していること」にあるという点です。

したがって、ポテンシャル層に対しては、以下のような、「不安は実際には解消可能であり、それを上回る楽しみが待っている」というメッセージを伝えることが購入促進において重要です。
・ 実際にバイクを所有しているユーザーの体験談を通じて、「不安が期待に変わる瞬間」を共有する
・ 不安を軽減するための解決策(安全装備、コスト管理、天候対策など)を具体的に示す
・ 購入後のライフスタイルの変化や楽しみをリアルに想像できるストーリーやコンテンツを提供する

実際、筆者の個人的な体験としては、やはり試乗、レンタルバイクをして友人とツーリングした経験から得た情報が最も購入に寄与した要因でした。ジャーニーとしては以下の通りです。

1. レンタルバイクを選ぶ:
借りる際に似た車種、ブランドの特徴、実際のバイクのかっこよさを知れる
2. レンタルバイクに乗る:
数値データではわからない、乗ったときの足つき、操作性の良さ、スピードの出方があると知る
3. 友人とのツーリング:
道路での走り方、雑談などの楽しさ、街中と高速を気兼ねなく指示出ししてもらいながら乗れた

私の場合はヘルメットやウェアは全部友人に借りることができ、レンタルバイクはおすすめされたものへの感想を言えばさらに合いそうな車種をおすすめされる環境だったので、5台目に乗ったものを、売っている店舗を探して買いました。充実した体験で、迷わず購入に至ったという実感があります。
また、バイクの免許取得時には公道での走行演習はありません。初めての公道、高速道路を友人と通話を繋ぎサポートを得ながら走れたことで、1人でも走る自信を得ることができ、楽しいバイクのある生活がより現実的にイメージできたことも良い経験だったと思います。

バイク乗りとして、期待と不安のバランスを適切に整えた施策が、バイク市場全体の需要拡大につながることを期待しています。


※1 一般社団法人 日本自動車工業会 2023年度二輪車市場動向調査について

今回の分析は、下記の設計で実施したインテージの自主企画調査結果をもとに行いました。
【自主企画調査】
調査手法 インターネット調査
調査地域:全国
対象者条件: 15歳-69歳男女
標本抽出方法:弊社「マイティモニター」より抽出しアンケート配信
標本サイズ:n=10,620
調査実施時期:2024年6月21日(金)~2024年6月26日(水)

著者プロフィール

青木 優プロフィール画像
青木 優
2022年にインテージ入社。

大学では認知神経科学、大学院では認知心理学を専攻。
入社後は自動車や二輪などモビリティ業界の調査を担当している。

2022年にインテージ入社。

大学では認知神経科学、大学院では認知心理学を専攻。
入社後は自動車や二輪などモビリティ業界の調査を担当している。

転載・引用について

◆本レポートの著作権は、株式会社インテージが保有します。
 下記の禁止事項・注意点を確認の上、転載・引用の際は出典を明記ください 。
「出典:インテージ 「知るギャラリー」●年●月●日公開記事」

◆禁止事項:
・内容の一部または全部の改変
・内容の一部または全部の販売・出版
・公序良俗に反する利用や違法行為につながる利用
・企業・商品・サービスの宣伝・販促を目的としたパネルデータ(*)の転載・引用
(*パネルデータ:「SRI+」「SCI」「SLI」「キッチンダイアリー」「Car-kit」「MAT-kit」「Media Gauge」「i-SSP」など)

◆その他注意点:
・本レポートを利用することにより生じたいかなるトラブル、損失、損害等について、当社は一切の責任を負いません
・この利用ルールは、著作権法上認められている引用などの利用について、制限するものではありません

◆転載・引用についてのお問い合わせはこちら