
2024年、TOYOTA GAZOO RacingがWECで6シーズン連続、WRCでも4シーズン連続となるマニュファクチャラーズタイトルを獲得しました。F1ではTOYOTA GAZOO Racingがマネーグラム・ハースF1チームと新たに技術提携し、ホンダのパワーユニットを搭載したオラクル・レッドブル・レーシングのマックス・フェルスタッペン選手が4度目のワールドチャンピオンを獲得と、様々なモータースポーツカテゴリーで日本メーカーが活躍する1年となりました。
今年もモータースポーツが続々と開幕し、4月に鈴鹿サーキットで開催されたF1日本グランプリは3日間で合計26万人以上が来場、昨年比16%増と来場者数が大幅に増加しました。
そんなモータースポーツについて、第1弾ではモータースポーツファンの実態を調査しました。 今回は2024年5月に行った調査結果で最もファンの多かったF1について、今年のF1日本グランプリが行われた1週間後に調査を実施し、現地観戦者の特徴や現地観戦の障壁からモータースポーツのさらなる発展に向けたアイディアを探ります。
一部の現地観戦者については、携帯電話の基地局情報から対象のエリア、対象の時間に滞在した人に直接アンケートを配信出来る「ココリサ」というサービスを用いて、F1日本グランプリ開催中に鈴鹿サーキット周辺に滞在した人に対してアンケートを配信しています。
はじめに、現地でF1日本グランプリを観戦した人たちは、現地観戦せずに有料の動画配信サービス等でレースを視聴した人と比べてどのような特徴があるのかを見ていきます。
図表1
現地観戦者は配信視聴者と比較して30代以下の若年層が多い結果となりました。また、現地観戦回数は3回以下が約3割と多くみられました。これは近年新たにモータースポーツに興味を持った人たちが流入してきた影響があるのかもしれません。
次に、応援しているチームを、現地観戦者と配信視聴者の割合の差が特徴的だった30代以下と40代以上に分けて見ていきます。(図表2)
図表2
まずは年代を区切らずに全体を見ると、現地観戦者、配信視聴者ともに、ホンダのパワーユニットを搭載し唯一の日本人ドライバーである角田裕毅選手が在籍するオラクル・レッドブル・レーシングが最も多く、半数を超えています。年代別で見ると、オラクル・レッドブル・レーシングは特に40代以上にファンが多いようです。30代以下の現地観戦者では昨年コンストラクターズチャンピオンとなったマクラーレン・フォーミュラ1チームとオラクル・レッドブル・レーシングが同程度となっています。一方、30代以下の配信視聴者では今年のルーキーの中でも特に注目度の高いアンドレア・キミ・アントネッリ選手が在籍するメルセデスAMG・ペトロナス・フォーミュラ1チームが最も多い結果となりました。
それでは、現地観戦者は現地で何をしていて、どのようなことに満足したのでしょうか。次の章で見ていきます。
まず、現地観戦者が現地でどういった行動をしていたのかを見ていきます。図表3はフリー走行やレース以外の時間に行った行動を年代別に表したものです。
図表3
30代以下は、40代以上と比較してピットウォークなどの現地に行ったからこそ参加できるイベントに参加している人が多くなっています。一方で、同行した家族など身近な人と話すことと同じくらいSNSに投稿する割合が多い傾向にあります。また、対面でのファン同士の交流も行っており、リアルとSNSをどちらも楽しんでいるようです。
次に、現地観戦前に楽しみにしていたことと観戦を経て満足した点を年代別に見ていきます。(図表4)
図表4
年代を区切らずに見ると、やはりサーキットの雰囲気やエンジン音、臨場感といった、現地でしか味わえない点が事前事後ともに多い傾向にあります。一方、レース中のドラマやオーバーテイク、チーム戦略が事前の期待を下回る満足となりました。これは、鈴鹿サーキットのオーバーテイク(追い越し)が難しいと言われている特性や、今年東コースを中心に新舗装となったことから、目まぐるしく順位が変わるレース展開とはならなかったことが要因と考えられます。
30代以下では、ピットストップやドライバーの技術といった、F1の高い技術力への満足点が増えていました。一方で、サーキットの雰囲気は満足点が期待を下回る結果となり、これは特に初めての現地観戦者に多い傾向がありました。
ここまで、現地観戦者の特徴を見てきました。一方で、現地に行かなかった人達はどうして現地で観戦しないのでしょうか。その理由を探っていきます。
図表5は今後の現地観戦意向を質問した結果です。現地観戦者の約8割には劣るものの、配信視聴者の半数以上が今後現地で観戦したいと考えているようです。
図表5
このように、現地で観戦したいという気持ちはあっても現地観戦はなかなかハードルが高いと言われています。では具体的にどのような要素が現地観戦の障壁となっているのでしょうか。図表6は今年のF1日本グランプリを現地で観戦しなかった理由を年代別に比較した結果です。
図表6
年代に限らず、鈴鹿サーキットが遠いことが理由として最も多く、約5割を占めています。また、30代以下では一緒に行く人がいないことやマシンが走行していない時間の過ごし方が分からないといった理由が多い傾向にあります。図表4では30代以下の現地観戦者でサーキットの雰囲気の満足点が期待を下回る結果が見られていました。空き時間をどう過ごしてよいのか分からないといったことが、30代以下のファンにサーキットへの苦手意識を感じさせているのかもしれません。
今回はモータースポーツの中でも特に人気の高いF1の日本グランプリ現地観戦者と配信視聴者について、その特徴を見てきました。
現地観戦者のうち現地観戦回数3回以下の人が約3割を占めており、新たなファンが現地観戦した可能性が伺えました。また、30代以下の現地観戦者が現地ならではの体験とSNSの双方を活用して楽しんでいる様子や、年代に限らず現地観戦していないファンも今後は現地で観戦したい気持ちが高いことが分かりました。
第1弾でも触れた通り、モータースポーツファンは周囲にファンが少ない競技の1つです。さらに今回の調査では現地観戦に大小様々なハードルがあることが分かりました。周囲にファンがいないことやサーキットが遠いことが原因で、行きたい気持ちがあっても現地観戦が難しく感じられるのかもしれません。
モータースポーツはスピードと技術の追求だけでなく、選手やチーム戦略など誰もが自分なりの楽しみ方を見つけることができるスポーツです。ファンを含め様々な立場の人・企業がサーキットでの楽しみ方を積極的に発信していくとともに、1人でも安心して楽しめるツアーなどの新しい観戦スタイルが生まれることで、より多くの人が現地に赴き、これまで知らなかったモータースポーツの新たな魅力を発見出来るのではないでしょうか。
その結果、モータースポーツが今よりもさらに盛り上がってくれることを願っています。
次回は、モータースポーツが車やタイヤの購入に与える影響について探っていきます。
調査地域:日本全国
対象者条件:18歳以上男女
標本抽出方法:①ココリサを用い、鈴鹿サーキット周辺に滞在していた調査モニターを抽出しアンケート配信
②弊社モニターより抽出しアンケート配信
標本サイズ:n=10,636
調査実施時期: 2025年4月11日(金)~2025年4月14日(月)
モータースポーツファン調査第1弾:モータースポーツ人気復活の兆し?ファンの思いと実態を調査
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