Z世代が読み解くスマホアプリの利用実態 ~動画アプリ編
インテージ次世代消費者パネル事業開発部の植木です。スマホ・テレビなどのメディア接触行動と購買行動のシングルソースパネルi-SSP®の運用やデータ分析を担当しており、世にいうZ世代にあたります。
Z世代が読み解くスマホアプリの利用実態 ~まんが・書籍アプリ編 では、コロナ下で増えている可処分時間の過ごし方がどのように変わっているのかを、まんが・書籍アプリの使い方を中心に読み解きました。この記事では、同じく時間の過ごし方として定着しつつある動画アプリの利用について見ていきたいと思います。
【動画配信】アプリ利用行動の変化
今回は動画配信アプリを大きく「AVOD系(Advertising Video On Demand、広告型動画配信サービス)」「SVOD系(Subscription Video on Demand、定額制動画配信サービス)」の2つに分けて見ていきます。
・AVOD系(広告型動画配信サービス) YouTube、TVer、AbemaTVなど
・SVOD系(定額制動画配信サービス) FOD、U-NEXT、Amazon Prime、dアニメストア、Netflixなど
それでは動画配信アプリの利用行動をAVOD系、SVOD系それぞれで見てみましょう。
まずはAVOD系からです。図表1は、AVOD系アプリの平均利用率と平均利用時間の推移を性年代別に表しています。
図表1
▼わかること 【平均利用率】 ・女性の方が少し高い ・男女とも20年以降徐々に増加 ・年代別だと10代が特に高く、20代、60代、30代、40代、50代の順 【平均利用時間(分)】 ・男女とも同程度でいずれも増加傾向。特に20年以降に大幅な伸び ・年代別だと10代、30代が長く、次いで20代、離れて40代、50代、60代の順 ・特に10代、30代が20年以降に伸びた |
20年以降全体的に利用率/利用時間共に伸びているのは、コロナによるステイホームで利用し始めたユーザーにかなり浸透してきていることが考えられます。
10代はまんが・雑誌系アプリと違い、利用率/利用時間とも一番高い水準ですね。AVOD系アプリは無料で視聴できるコンテンツがたくさんあるため、課金をしないと十分に楽しめないまんが系アプリのコンテンツよりも魅力的に感じるようです。最近だとYouTubeにお笑い芸人さんが進出し、かなり人気を博している印象です。
30代で利用時間が伸びているのは、家で子供に見せたりする機会が増えたのでしょうか。
一方で20代では利用時間の伸びが落ち着いてきています。可処分時間の使い先はAVOD系ではなく、SNSなどの他のコンテンツに回っているのかもしれません。
次にSVOD系の傾向を見てみましょう。図表2は、SVOD系アプリの平均利用率と平均利用時間の推移を性年代別に表しています。
図表2
▼わかること 【平均利用率】 ・男性の方が若干高い ・男女とも20年以降に増加 ・年代別では10代が特に高く、次いで20代、30代、その下に同列で40代~60代 【平均利用時間(分)】 ・女性の方が長めだが、19年をピークに減少傾向 ・年代別は30代が最も高く、ついで10代、20代、40代、50代 |
SVOD系もAVOD系と同じく10代の利用率/利用時間が高い水準にありますね。
SVOD系アプリもまんがと同様に課金する必要がありますが、月1回の課金をしてしまえば、コンテンツ量を気にせず楽しむことができるため、都度課金が必要なまんが・雑誌系アプリよりも魅力的に感じられているのかもしれません。のきなみ月額500円~2,000円程度と一度映画館に行くのと同等の価格設定が多いためお得感もありますよね。
全体的に20年以降の利用が伸びているのは、AVOD系と同じくコロナの影響もありそうです。
私もコロナ禍の外出自粛で映画館に行けなかったときは、映画見放題のSVODサービスに加入し、おうちでひたすら動画配信アプリを利用していた記憶があります。現在では各サービスがオリジナルコンテンツに力を入れており、それを観たいがために契約を続けています。
【動画配信】アプリの利用時間帯
次に、動画配信アプリが利用されている時間帯を見てみましょう。
図表3は、動画配信アプリの利用時間の時間帯推移を2019年1月と2021年1月で比較した結果です。
図表3
▼わかること ・休日の利用の仕方はあまり変化が見られない ・平日では8時以降の午前中の利用と、21時から24時の利用が増加 |
平日の8時以降と21時から24時の利用が増加した要因としては、在宅勤務などで在宅時間が増え、朝と夜に可処分時間が増えたことが考えられます。また、今までであれば、増加した可処分時間をテレビに利用していたところを、観たいコンテンツを好きな時間に視聴できる動画配信アプリを利用することが増えてきつつあるようです。
テレビとスマホの“ながら視聴”も多くなっているかもしれません。テレビは1種のBGVやBGMとして使われているご家庭も多そうです。 私もTVを流しながら、動画配信アプリでそれぞれが観たいコンテンツを視聴するというながら視聴を行っています。また動画配信アプリを立ち上げながら、別のディスプレイでPCゲームをすることも多いです。
では年代によってこの変化はどう違うのでしょうか。
図表4は、平日における年代別の動画配信アプリ利用時間の時間帯推移を表しています。
図表4
▼わかること ・10代は午前中の利用が2019年より若干減少 ・20代、30代、50代は午前中の利用時間が増加。特に30代は午後も全体的に増加 ・40代、50代は21時以降の利用が増加 |
働く世代の利用時間が全体的に伸びていることが分かります。
また30代、50代の利用時間帯をみると、コロナ禍前と比較して本来仕事をしている時間の利用が増えており、在宅勤務中の“ながら視聴”が増えていることが考えられます。この傾向はまんが・書籍アプリでも見られており、スマホアプリの使われ方が変わってきていることがわかります。
最後に
コロナにより人々の可処分時間の使い方が変化したのでは?という視点で今回はデータを見てきました。特に可処分時間での利用が多いと考えられるエンタメ系のアプリ(まんが・書籍系、動画系)に注目してみると、コロナ前と比べて全年代で利用が増える中、意外にも10~20代といった若年層より、30代~50代の働く世代での行動変容が大きかったことが分かりました。若年層はコロナ前からかなりの可処分時間をエンタメ系のアプリ利用に使っていましたが、コロナによって上の年代にもこの行動が広がったようです。そんな中増えていることが想定される“ながら視聴”。今後、その実態を追っていきたいと思います。
ここまで紹介してきたエンタメ系アプリ(まんが・書籍系、動画系)が盛り上がる中、生活者は数あるサービスをどのように使い分けているのでしょうか。併用実態とその読み解きレポートはこちらからダウンロードしていただけます。
今回の分析は、インテージの提供する、i-SSP®(インテージシングルソースパネル®)のデータを用いて行いました。
【i-SSP®(インテージシングルソースパネル®)】
インテージSCI(全国個人消費者パネル調査)を基盤に、同一対象者から新たにパソコン・スマートフォン・タブレット端末からのウェブサイト閲覧やテレビ視聴情報に関して収集したデータです。当データにより、テレビ・パソコン・スマートフォン・タブレット端末それぞれの利用傾向や接触率はもちろん、同一対象者から収集している購買データとあわせて分析することで、消費行動と情報接触の関係性や、広告の効果を明らかにすることが可能となります。また、調査対象者に別途アンケート調査を実施することにより、意識・価値観や耐久財・サービス財の購買状況を聴取し、あわせて分析することも可能です。
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