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生活者インデックスデータ

暮らし先読み、後読み予報~生活リズムの予兆を<n=1>からみる④~冷凍庫を覗くと暮らしが読める!

マーケティングプロデューサーの辻中俊樹が<n=1>を通して得られた暮らしの文脈を可能な限り共有するために可視化・物語化していく連載企画。
今回は第3回で見られた「高級食パンを冷凍保存する行動」から暮らしの文脈を探る。

常温商品が冷凍庫に即入居する

高級食パン2斤や、居住エリア自慢のベーカリーのクロワッサンやバケットをたっぷり買っても、その暮らしの中のリズムをみれば「買い過ぎじゃない?」なんて心配することはない。

30、40代のママ世代はパンを冷凍庫に入れる。この習慣は「娘から母へ」という、日常的な暮らしの情報伝播の経路を通して、シニア世代へも広がっていった。少なくとも10年前、遅くても5~6年前までは、60、70代のシニア世代の冷凍庫にパンが納まっていたことはあまり見かけない風景だった。家でのパンの居場所は冷凍庫という理解をしておけば、高級食パンの落ち着き所はハッキリする。

冷凍庫は、冷凍されて流通・販売されているモノの収納場所というだけではないのだ。冷凍食品、アイスクリーム、ロックアイスなどが購入されてストックされるという生活行動は、冷凍庫の利用方法の一部にすぎない。常温で売られているモノ、あるいはチルドで売られているモノの居場所も冷凍庫になったのだ。牛乳やバター、チーズといったチルド商品も、さっさと冷凍庫に納まることになったのだ。その典型的な代表がパンということである。

パン2斤というような大容量での販売がネックにならない訳がここにある。世帯の構成人員が減少し、一人世帯が増大していくことを受けて、小容量、食べ切りサイズがトレンドになっていった一方で、こんな大容量が逆に受け入れられていくことになった。冷凍庫という居場所にうまく住みついたのはどんなモノなのだろうかという視点でみると、また別の暮らしの予兆がみえてきたりする。

チビッ子たちにも「あげもら」

パンの居場所は冷凍庫だとわかっているからこそ、高級食パンやクロワッサンの「あげもら」が、喜んで受け入れられるのだ。居場所がなければ、どんな高価なものであっても厄介者にすぎない。この機微をはずすと「あげもら」の連鎖はとぎれてしまう。

実はこの「あげもら」という暮らしのリズムや習慣は、子供たちの間にも当たり前のように広がっている。学校から帰宅した子供たちは、夕暮れまでの間にまた待ちあわせをして公園へ行ったり、子供文化センターに行って遊んだりすることも多い。子供文化センター、通称“コブン”は管理の目も行き届いているので、働くママたちにとっては安心な子供たちの居場所なのである。子供たちが公園やコブンで遊んでいてくれているから、働いていられるのだ。

さて、このチビッ子たちである。それぞれがお菓子を持って出かけ、みんなで「あげもら」をしている。お互いのお菓子の交換である。小容量、食べ切りサイズのお菓子を2種類くらい持って出かける。食べ切りサイズなのは、持って出かけやすくお互いの「あげもら」がしやすいからであって、自分一人で食べ切っている訳ではない。小容量の個包装タイプのお菓子がマルチパックになっているものは、こんなシーンにうまく活かされている。2種類くらいのフレーバー遣いのお菓子をそれぞれが持参して、「あげもら」をすることでチビッ子たちの楽しみが増えている。

「人にあげるとおいしくなるらしい」というコピーのついた「ハイチュウドウゾ」というお菓子が、チビッ子のバッグに入っていたのを見た時、思わずクスッとしたことがある。

冷凍庫は生活情報の宝庫

「あげもら」の連鎖は、小容量食べ切りサイズへの視点を少し考え直した方がいいことの1つの背景でもある。パンは大容量大型サイズでも大丈夫なのは、この「あげもら」が前提であり、さらにこのパンの一番の居場所が冷凍庫であることにある。高級食パンを例にしてみたけれど、このパンに類するカテゴリーの商品群は、本当に冷凍庫の住みごこちがいいのだ。

ここに紹介する写真の冷凍庫にはこの類の商品が満載されている。この彼女は子供なし、夫婦二人暮らしの30代後半の有業女性だが、「霜だらけの忘れ去られたヤマザキロイヤルブレッド、業務スーパーのパイシートとシナモンチュロス、近所のケーキ屋さんで買ったザッハトルテとチョコカステラ(食べきれなかったので冷凍してある)」が入っている。この忘れ去られた食パンは夫の買ったもので、彼女の中ではあまりロイヤリティの高いものではなさそうである。いつかパン粉が切れていたりした時にうまく活用するだろうという予感がする。

もう一枚には「コストコのスコーン。ミスドのエンゼルカスタード、リトルマーメイドのスライスバゲット」が写っている。彼女の中ではこのスコーンは愛用だ。丁寧にラップされてきちんと冷凍保存されていることでわかる。ミスドのエンゼルカスタードもあっさりと冷凍庫が居場所になっている。もはやこの世代にとって、小麦粉系商品は食パンに限らずに冷凍庫に入れるのが常識になっているといえる。

そもそも冷凍のものが冷凍庫に入るパターンももちろんあるが、常温のものの居場所としても大活躍しているのだ。ここまでパン類の住まいとして冷凍庫が当たり前になったことで、冷凍パンの価値も当然上昇していくことになる。

ピカール、コストコ、OKストア

写真はコインランドリーからの生活動線の連続で、高級食パンを買って「あげもら」を行っていた電動ママチャリママの、別の日の冷凍庫である。ピカールの冷凍クロワッサンがあふれんばかりに冷凍庫を占拠している。青空、コインランドリー、高級食パンのはしごという動線が成り立った時には、ブーランジェリーのクロワッサンが愛用されるが、日常の生活動線ではピカールのクロワッサンがお気に入りなのである。

この二人に明らかに共通しているのは、おかげで冷凍庫があふれんばかりにパンパンになっていることだ。パンはスペースをとるからだ。彼女たちが次に欲しいと思っているのは家庭用のフリーザー、小型の専用冷凍庫である。2万円くらいで手頃な冷凍庫がなかなか人気なのである。

この冷凍庫の発展的利用をしているセグメントの特徴は、パンなどのカテゴリーの商品の居場所として冷凍庫を使うという習慣とリズムを持ちあわせているかどうかという点だ。

常温のパンが冷凍庫を住まいにすれば、当然ながらその住まいは想像以上に狭くなってしまうことになる。そこにそもそもが冷凍であるクロワッサンやパイシートも入居することが増えていく。ある意味、冷凍庫慣れというリズムが広がるのだ。

また別の視点でみると、たとえばコストコの利用パターンなどが冷凍庫の使い方に影響しているようだ。明らかに大量購入したものをストックするという習慣が身についている典型だ。もう一つ追加すればOKストアの利用の仕方も影響せざるをえないようだ。OKの大容量の冷凍餃子などがその一つの例といえる。たくさん作った手作り餃子を冷凍するパターンもあるが、どちらにせよ冷凍庫が餃子の住まいになっている。冷凍庫はいろいろなことを教えてくれる場所なのである。

著者プロフィール

マーケティングプロデューサー 辻中 俊樹(つじなか としき)プロフィール画像
マーケティングプロデューサー 辻中 俊樹(つじなか としき)
青山学院大学文学部卒。日本能率協会などで雑誌編集者を経て、マーケティングプロデューサーとして現在に至る。
暮らし探索のための生活日記調査を開発、<n=1>という定性アプローチを得意とする。
インテージクオリスが運営するYouTube”Marke-Tipsちゃんねる”でも、
生活者視点、n=1視点での気づきを語っている。
代表的な著作としては、
「団塊ジュニア――15世代白書」(誠文堂新光社) 
「母系消費」(同友館)
「団塊が電車を降りる日」(東急エージェンシー)
「マーケティングの嘘」(新潮新書)
など編著書は多数。

青山学院大学文学部卒。日本能率協会などで雑誌編集者を経て、マーケティングプロデューサーとして現在に至る。
暮らし探索のための生活日記調査を開発、<n=1>という定性アプローチを得意とする。
インテージクオリスが運営するYouTube”Marke-Tipsちゃんねる”でも、
生活者視点、n=1視点での気づきを語っている。
代表的な著作としては、
「団塊ジュニア――15世代白書」(誠文堂新光社) 
「母系消費」(同友館)
「団塊が電車を降りる日」(東急エージェンシー)
「マーケティングの嘘」(新潮新書)
など編著書は多数。

Marke-TipsちゃんねるURL:https://www.youtube.com/channel/UCmAKND92heGN-InhC0sp7Kw

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