働く20代、コロナ禍でのストレスは?
新型コロナウイルスの感染拡大からさまざまな常識が一変し、激動の「ニューノーマル」時代に突入した2020年。2度目の緊急事態宣言から幕を開けた2021年、生活者の意識や行動はここからどのように変化していくのでしょうか。
インテージクオリスでは、1人の生活者の行動や気持ちを理解すること(n=1分析)により変化の”兆し”を捉え、新しい商品やサービス開発のヒントを見出そうという試み、<n=1プロジェクト>を実施してきました。コロナ禍でもポジティブな行動変容をした方を対象に日記調査を実施し、その中でも特にニューノーマル時代の生活者像の理解を深める上で興味深い投稿をしていただいた5名の方に、デプスインタビューにご協力いただきました。
今回記事にさせていただいたのは、26歳で社会人4年目の独身女性Cさんです。26歳・社会人4年目というと、新人でもベテランでもない立ち位置で「もっとしっかりしなければ」というプレッシャーを抱えていたり、具体的なキャリアプランが見えてきて転職を考えてみたり、プライベートでは周りの結婚ラッシュに孤独を感じてしまったり…悩み多き時期かもしれません。さらに、せっかく時間の使い方や金銭面で余裕が出てきて旅行や趣味を充実させたかったのに、このコロナ禍でできなくなっちゃった…という方も少なくないのではないでしょうか。
実際にはどのように感じ、コロナ禍でどのような行動の変化があったのか。インテージクオリスのリサーチャー出野 舞が、デプスインタビューからリアルな意識を探ってみました。
Aさん、Bさんの記事はこちら。
Aさん:コロナ禍で変化する子供の成長機会、それに対する親の気持ちとは
Bさん:アクティブシニアはどうしてこんなにアクティブなのか
日記調査から見えた生活行動
Cさんにも、日記調査で約3ヶ月間に渡り日々の出来事を投稿していただきましたが、ご家族や友人、彼、同僚など、周りの方々と良い関係を築き、日々楽しんでいる様子がうかがえました。
ただ一方では、仕事でのストレスやコロナに対する不安についての投稿もありました。
ストレスや不安は抱えつつ、うまく切り替えてポジティブに行動変容ができているのでしょうか。それとも、別の本音があるのでしょうか。
インタビューから見えてきた本音
まずは、Cさん自身と、今は離れて暮らすご家族、身近な存在である彼について見ていきます。
インタビューでお話をうかがっていると、ご家族や彼との仲の良さは日記調査から得た印象に近かったのですが、Cさん自身については意外だったと感じる点が多くありました。例えば、日記調査からは人と接することが好きなタイプのように見受けられましたが、実は大勢の中でわいわいすることが得意ではなくあまりアクティブではないこと、インタビューのつい1ヶ月前にはコロナに対してとても不安を感じているような投稿をされていましたが、意識が薄れてそんなに不安は感じていなかったこと。
デジタルネイティブでSNSが当たり前の存在である世代には、日記調査での写真とコメントもSNSでの投稿感覚に近いかもしれません。日記調査の内容から本音を探るにあたっても、そういった世代の特性を踏まえて、解釈を深める必要がありそうです。
コロナに対するストレスを感じなくなった要因
ここで、Cさんがコロナに対してあまり不安を感じていなかったということについて深掘りしてみたいと思います。日記調査に投稿していたコロナに対するストレスや不安は当時の本音ではあると思うのですが、どのような要因で「今はあまり不安を感じていない」と言える状態になっていったのでしょうか。
① 人間関係のストレスを減らせている
先日政府が“孤独・孤立問題”の対策室の設置を発表しましたが、コロナが長期化する中で他人との接点が減り、特に女性で孤独感抱えている方が増えていると言われています。そんな中でCさんの場合は、他人との接点を減らすことでストレスを軽減させているようでした。
Cさんはご自身のことを、「色んな人に変に気を遣ってしまって疲れてしまう」「周りから人見知りしなそうと思われるので、無理して元気な自分を演じてしまう」とおっしゃっていました。自分自身のこと理解し、どこにストレスを感じているのかを把握した上で「コロナだから今は会えない」というように、コロナを言い訳に使って人間関係を精査し、本当に大切な人との関係を大切にする方向にシフトすることで、「無理しなくてよくなった」と言える状態を作れていました。
② 仕事のストレスが勝っている
もうひとつの可能性として、「コロナのストレスが無くなった」のではなく、「仕事のストレスの方が大きくなり、コロナのストレスを自覚しなくなった」ということも考えられるのではと思いました。
異動前の営業のときは「コロナ怖いのになんでテレワークにならないのか」という不満があったものの、異動後は「テレワークになってしまったら家で自分ひとりでできることがない」という気持ちに変化したとおっしゃっていました。4年目になるまで営業部署で経験を積み、1人で担当を任されていたところから慣れない部署への異動をしたことで、「同期は自分よりはるかにできるのに、自分は中途半端だ」という焦りもあって、「コロナよりテレワークの方が不安」という意識に変わっていったのではないでしょうか。
③ 新しい趣味を見つけられている
コロナ禍で料理をする頻度が増えたという方は多いと思いますが、コロナ前は外食が多くあまり料理をしなかったというCさんも、今ではお皿や彩りまでこだわるようになっているようでした。レシピや見栄えはInstagramを参考にされているとのことでしたが、日記調査にも投稿していた365日貯金も、SNSで見て「面白そう」と思い、特に目的の設定はせず始めたそうです。
SNSで常に鮮度の高い情報を取り入れ、興味あることは実行してみて面白ければアップデートしていくというのは、この世代の特徴かもしれません。
最後に
今回はコロナ禍でのストレスについて考えてみましたが、「コロナにストレスを感じていない」と言う方でも、
- コロナ以外のストレスを減らすことができた
- コロナ以外のストレスの方が大きくなってしまっている
ということにより、”コロナに対するストレス”自体への認識が薄くなって、なかなか根本的なところに気づけていない可能性があるのかもしれません。
Cさんは、仕事や結婚、貯金など将来のことを考えると「この1~2年がすごく大事」 とおっしゃっていましたが、堅実と言われるこの世代だからこそ、ストレスを抱えつつも真面目に考えながら取り組む一方、好奇心を持って新しい趣味を上手に取り入れて、充実した日々を送れているのではないでしょうか。
今後も、インテージクオリスでは、n=1を深く理解することで、商品やサービス開発の芽を見つける取り組みを行ってまいります。
(調査実施概要)
今回の分析は、下記の設計で実施した株式会社インテージクオリス・株式会社インテージの共同自主企画の調査結果をもとに行いました。
- 調査実施日:2020年12月13日・14日
- 調査対象者:一都三県在住の20~70代男女5名
- 調査手法:デプスインタビュー(オンライン)
※WEB環境を利用し、会場に集まらなくても任意の場所からオンラインでインタビューを行う手法です。
自宅でインタビューを行うケースが多く、リラックスして参加できるので、よりリアルな消費者の声がみえてきます。 - 調査主体:株式会社インテージクオリス・株式会社インテージ
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