夏の国内旅行、満足度が高いのはどこ? 旅行者の意識から魅力をさぐる
日本国内の旅行消費額は年間25兆円、そのうち20兆円を国内旅行が占めています。(日本旅行業協会 2015年)この国内旅行、数ある旅先の中で満足度が高いのはどこでしょうか?いったい何が満足度を高めるのでしょうか?
「行動」と「意識」の両面から国内旅行・観光市場の実態を精緻に捉えられるインテージのデータサービス「うご-kit」のデータを使用して、国内旅行の実態を調べてみました。
旅行で移動する人はどのくらい?位置情報から捉えた旅の実態
長期休暇が取りやすい8月、どのくらいの人口が国内を移動するのでしょうか?調査対象者である15-69歳男女に絞ってドコモ基地局位置情報から推計すると、2017年の8月に50km以上移動した人口は約3080万人という結果となりました。
もちろん長距離移動には観光旅行以外にも帰省や出張が含まれますが、この移動者に対してアンケートをかけたところ、約55.8%が実際に8月に観光旅行をしたと回答しました。この結果から、8月に国内観光旅行をした人は約1719万人と推計されます。同様に正月休みを挟む12~1月の移動人口は約2770万人。そのうち観光旅行者は54.3%で、国内観光旅行者は約1504万人と推計されます。
図表1
夏の旅先と冬の旅先、満足度が高いのは?
暑い夏と寒い冬では旅の楽しみ方は違うと考えられます。それぞれ、どのような旅先の評価が高いのでしょうか?
図表2はそれぞれの時期に「旅行をした」と回答した人のアンケートデータから見えた、総合満足度の高い旅先ランキングです。
図表2
夏と冬で上位の顔ぶれが異なることが見てとれます。
夏は「沖縄本島」が1位。2位に「箱根・湯河原・小田原」、3位に「熱海・伊東・伊豆・沼津・三島」。
定番リゾート地の沖縄や温泉・避暑地として有名な箱根などがランクインするという結果でした。
冬は「白浜・田辺・串本・熊野」が1位。次いで「舞浜」「沖縄本島」がそれぞれ2位、3位でした。
沖縄本島は夏にも冬にも上位3位にランクインしており、年間通して高い満足度が伺えます。
夏の沖縄本島旅行の実態は?
訪れた人の約96%が満足したという夏の沖縄本島旅行、その魅力はどこにあるのでしょうか?うご-kitのデータから夏の沖縄本島旅行の実態に迫ります。
●【旅行属性】沖縄本島には何日くらい滞在する?
まず、「何回目の旅行か」、「いつからいつまでの旅行か」、「どの観光名所を訪問したか」、といった旅の詳細を示す【旅行属性】を捉えたデータから、夏の沖縄本島旅行の特徴を見てみました(図表3)。沖縄本島旅行は3泊4日以上の長期滞在者が一番多く、TOTAL(全エリア合計)の平均2.4日と比較すると沖縄本島の旅行者は1.4日ほど長く滞在するという実態がありました。
図表3
また、誰と旅行したのかという同行者情報からは、TOTALに比べて「三世代」「カップルのみ」が多く、「夫婦のみ」で訪れる人は極端に少ないという特徴的な結果がみられています。
うご-kitではタビマエ(旅行の計画)~タビナカ(旅行の実態)~タビアト(旅行後の評価)と、旅行の行動プロセスに沿った意識・実態のデータを捕捉しています。ここからはこのプロセスに沿って、見ていきましょう。
●【タビマエ】沖縄本島はじっくり計画を立てて海を楽しみに訪れる
夏の沖縄本島旅行はどんなことを目的にしているのでしょうか?
TOTALと比べて特徴的だった項目が図表4です。
図表4
最もTOTALとの差が大きく、特徴的だったのが「海/海岸」。次いで「海水浴/プール」「動物園/水族館」「スキューバダイビング/シュノーケリング」「食事/グルメ」「買い物」と続きます。目的の幅広さからは、綺麗な海や美ら海水族館を始めとした「施設」、チャンプルーやソーキそばといった「食」と、魅力のあるコンテンツが目白押しの沖縄のポテンシャルが伺えます。
さらに様々な旅行目的のうち、メインの旅行目的を聴取したところ、「海水浴」「スキューバダイビング/シュノーケリング」「海/海岸」といった「海」をメイン目的とする旅行者が64.3%と大半を占め、様々な魅力的なコンテンツの中でも「沖縄の海」が格別に注目されていることが分かりました。
その他にも、【タビマエ】データからは、以下の様な夏の沖縄本島旅行のプランニング特徴が見えてきました。
- 【旅行検討~旅行申し込み】まで全ての旅行手続きのタイミングが他のエリアより早く、突発的な旅行が少ない
半年前からの行動率:
半年前から「検討する」 24.4%(TOTALは8.2%) / 半年前から「情報収集する」 22.3%(TOTALは4.9%) / 半年前に「申し込む」 16.1%(TOTALは2.8%) - 「旅行先のおすすめスポット・グルメをおさえておく」人が42.3%と多い(TOTALは20.5%)
- 旅行前に「旅行ガイドブックを買う」人が31.4%と多い(TOTALは9.0%)
これらの特徴より沖縄本島への旅行者は、その他エリアの国内旅行に比べ、長い期間準備を重ねて旅行に臨んでいることがわかります。
●【タビナカ】沖縄本島で特に魅力的なのはお土産?
続いて【タビナカ】の実態として、「交通」「宿泊」「飲食」「お土産」「体験」の5つの旅の要素の満足度と消費金額のデータを見ていきます。
図表5
満足度のデータを見ると、沖縄本島旅行者は「体験」に一番満足していることが分かります。また、TOTALと比べると「お土産」の差が大きく、沖縄のお土産が魅力的な様子がうかがえます。
消費金額を見てみると、全ての要素でTOTALの倍以上の金額を使っています。沖縄へのアクセスには飛行機を用いるのが一般的で、さらに先述通り宿泊日数が長いため、「交通」「宿泊」「飲食」「体験」の消費金額が他のエリアより高めとなるのは容易に想像できます。
ただ、「お土産」の消費金額は宿泊日数の影響を受けにくい要素です。総合満足度ランキング上位の「【神奈川】箱根・湯河原・小田原(7420円)」や「【静岡】熱海・伊東・伊豆・沼津・三島(4816円)」、TOTAL(5845円)と比較して消費金額が倍以上高いのは、ひとえに「お土産」の満足度が高く、つい多く買ってしまうことが要因だと推察されます。
●【タビアト】沖縄本島の高いリピート意向とその魅力
最後に【タビアト】の実態データとして、夏の沖縄本島旅行者のうちどのくらいが再び訪れたいと感じたか、再訪問意向率を見てみましょう。
図表6
夏の沖縄本島旅行者の96.7%が「また訪れたい」と答えており、全国平均の87.4%に比べて高いリピート意向が読み取れます。また、<再来訪意向の理由>としてTOTALと比べて特徴的に高かった項目をまとめると、「普段出来ない体験を通して、非日常的な刺激が味わえ、リフレッシュ出来ること」が沖縄の魅力ということが示唆されます。
時間をかけて情報を集めてプランニングする。旅先では長く滞在し、お土産をはじめ、宿泊、食といった旅の要素をすべて楽しめ、非日常を感じられてリフレッシュできる。このような一連の旅のプロセスが夏の沖縄旅行の満足度を高めているようです。
この分析は、インテージが提供する「うご-kit」のデータの一部を用いておこないました。うご-kitは位置情報と詳細属性とアンケートを組み合わせ、行動と意識の両面から国内旅行・観光の実態を捉えることが可能な、旅行観光マーケティング支援を目的としたデータサービスです。
豊富なアンケート結果を用いて多様な切り口で実態が捉えられる他、位置情報を組み合わせて分析することで、周遊実態やエリア人口の時系列推移など、より精緻な分析も可能となります。また、分析結果を基にして有望なターゲット層に広告配信を行うことも可能です。
調査概要
【調査方法】インターネット調査
【対象者条件】全国・15-69歳男女 ※帰省/出張 目的での旅行者を除外
【標本抽出パネル】「dポイントクラブ会員」のうち、dポイントクラブ特約に同意したスマートフォンユーザー
【標本抽出方法】携帯電話基地局の位置情報で対象期間内の50km以上移動者を抽出
【ウェイトバック】エリア×性年代構成比を、全国の国内旅行者構成比に合わせてウェイトバック集計
【サンプルサイズ】<夏>n=7,232 <冬>n=10,925
【実施期間】<夏>2017年9月22日~9月26日 <冬>2018年2月23日~2月27日
【旅行対象時期】<夏>2017年8月の旅行を対象 <冬>2017年12月~2018年1月の旅行を対象
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