コロナ禍の年末年始 テレビ番組の見方はいつもと変わった?
前回「年末年始のテレビ番組はどこで見る? テレビデータから見る、生活者の年末年始の行動」という記事で、2019年→2020年の年末年始のテレビデータを用い、年末年始の帰省がテレビ視聴行動に与える影響を分析しました。
記事では、東京都を中心に、帰省で地方などの実家に人が移動することで、「普段見ているテレビに全く接触しなくなる世帯が、大幅に増える」など、年末年始のテレビ視聴行動が普段と大きく異なるという実態を明らかにしました。
ただ、昨年末の2020年12月は全国的に新型コロナウイルス感染者が急激に増え、年末年始の帰省は控える様呼びかけられている状況にありました。その結果、生活者の行動はどう変化し、テレビ接触行動はいつもの年末年始とどのように違ったのでしょうか。
2019年→2020年と2020年→2021年を比較して見ていきましょう。
コロナ禍の2020年末 帰省に伴うテレビ接触行動の変化はどの程度見られた?
今回、年末年始のテレビ接触行動を捉えるにあたって、「テレビリーチ率」と「番組接触率」という指標を見ていきます。
テレビリーチ率とは、ある期間(今回は一日毎)で、「1分でもテレビが見られた端末の割合」です(図表1)。
図表1
そして「番組平均接触率」とは、「ある番組が何%のテレビで、リアルタイムで見られていたか」の平均値を示します(図表2)。
図表2
まず、「普段」と「年末年始」とでテレビ接触行動にどのような変化が見られたのかを見てみましょう。「普段」にあたる元旦二週間前の2020/12/19と「年始」にあたる2021/1/1のテレビリーチ率と両日の差を算出した結果が図表3です。
図表3
昨年同様、普段と年末年始のテレビリーチ率の差の大きさは都道府県によって異なることがわかります。具体的には一都三県や北海道、福岡、大阪など、大都市圏を抱える都道府県ほど、差が大きくなっています。これは、都市部から帰省などにより人が移動したことによるものだと考えられます。
コロナ禍に入る前の2019→2020年の年末年始と2020→2021年の年末年始それぞれについて、通常とのテレビリーチ率の差をヒートマップにしたものが図表4です。通常と年末年始のテレビ率の変化が大きいほど濃い赤で、小さいほど濃い青で表現されています。
図表4
2019→2020年の年末年始のテレビリーチ率は大都市圏を抱える都道府県を中心に大きく減少していたのに対し、2020→2021年の年末年始のテレビリーチ率は全体的に変化が小さかったことがわかります。
2019→2020年の年末年始に比べ、コロナ禍の2020→2021年の年末年始の方が全国的に帰省などによる人の移動が少なく、『生活者は普段見ている自宅のテレビを視聴していた』ということのようです。
帰省の期間や時期に変化はあった?
次に、帰省期間に変化があったのかを、「自宅のテレビを見なくなってから見るようになるまでの期間」とみなしてデータを見ていきましょう。普段と年末年始のテレビリーチ率の差が昨年最も大きかった東京について、日別のテレビリーチ率の変化を表したのが図表5です。
図表5
全期間を通して2020→2021年のテレビリーチ率が高い傾向にあるのは、今までテレビをあまり見ていなかったような人がテレビでニュースなどを見るようになった影響や、在宅率が上がった影響だと考えられます。
帰省に伴う移動が始まったと考えられるテレビリーチ率の下落タイミングは、前年より遅くなっていることがわかります。また、帰省するタイミングが遅くなったためか、テレビリーチ率の最低値を記録した日が1/1→1/2になっており、この日が帰省で東京から人が離れていたピークだったと考えられます。加えて、テレビリーチ率が元に戻ったのは前年と変わらず1/4であったことから、いつもより遅いタイミングで帰省して、早めに帰るといった行動の変化が伺えます。新型コロナウイルスの流行は帰省の期間やタイミングにも影響を与えたようです。
番組の見られ方はどう変わった?
最後に、今回起きた帰省の減少や短期化、それに伴う「いつもの年末年始と違うテレビ視聴行動」が、スポットCMなどの効果にも影響を与えたのかを考察してみたいと思います。
図表6はテレビリーチ率の変化と年末年始の番組接触率の関係です。2019→2020年と2020→2021年の『普段』と『年末年始』の都道府県別テレビリーチ率の変化の差を元に、差が大きかったグループと小さかった都道府県のグループに分けて、2019、2020年「NHK紅白歌合戦」の番組平均接触率を算出してみました。
図表6
2019→2020年と2020→2021年の差が大きかった、つまり、「いつもの年末年始よりも自宅のテレビを見る世帯が増えたエリア」ほど、「NHK紅白歌合戦」の番組平均接触率が大きく上昇していることがわかります。このことから、特に帰省が減り、いつもの年末年始と生活者の行動が違った大都市圏を中心に、番組平均接触率が大幅に増加するなどの変化があり、結果的にCMのリーチ状況もいつもの年末年始とは違っていたと言えそうです。
今回の分析から、新型コロナウイルスの流行が年末年始の帰省の減少に影響し、大都市圏での番組接触の増加にも大きく影響したことが明らかになりました。
生活者が普段と違う行動をすれば、テレビの見られ方も変わってくると想定されます。この生活者の「普段と違う行動」に対しては、インタビュー調査やアンケート調査を用いてテレビ接触者の生活変化を仮説立てすること、そしてテレビ接触データなどで検証し、変化をより精緻に捉えて対応していくことがマーケティング活動において必要だと考えられます。
知るGalleryでは今後もwithコロナ、afterコロナで変化していく生活者を様々なデータで明らかにしていきます。
今回の分析は、弊社が保有するスマートテレビ視聴ログデータであるMedia Gauge TVのデータを用いて行いました。
【Media Gauge® TV】
複数のテレビメーカーから収集した、ネットに結線されたスマートテレビの録画機の視聴ログ※をクレンジングし、統一フォーマットで標準化・構造化した視聴データです。都道府県別にとどまらず、一部エリアでは市区町村別でもデータを見ることが可能です。
インテージでは現在、各放送局別(地上波・BC・CS)、各地域別(市区町村など)のテレビ視聴データを提供しています。テレビ:219万台(2020年9月時点 最新の台数はこちら)
※マーケティング利用許諾を得て、匿名化されているもので、どのテレビ・録画機で、いつ、どんな操作がされていたかがわかります。
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