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新しいマーケティングのすすめ(10)

マーケティングにデジタル・トイを使っているか?

今回は、いつもと違う視点でマーケティングを考えてみましょう。この連載のタイトルでもある、「新しいマーケティング」とは、マーケターがマーケティングを創造することと定義しています。創造には永遠に終わりがありません。従って、マーケターは熱意があれば失業しないのです。永遠に働けるということです。

この創造のためには努力も必要です。例えば、生活者を眺め・観察することも必要でしょう。そして、時には見たことがない未知の世界を想像してみる必要もあります。私は、少し先の生活者の姿を想像するために、デジタル・トイを体験することを意識的に行っています。今回は、その体験方法を紹介したいと思います。

私たちの周りには、さまざまなデジタル・トイがあります。スマートフォン、スマートスピーカー、バーチャルリアリティー用のヘッドマウントディスプレイなど、私たちはあらゆるものが利用可能です。しかも近年、デジタル・トイは、高性能ですが安価になりました。

自分のスマートフォンで、自社のWebサイトを閲覧したことがあるでしょうか?スーパーに行くときにパソコンを持っていき、気になる商品を調べることはないと思います。

スマートフォンを利用することが、一般的な消費者・生活者のWebサイトの訪問方法です。だからこそ、特に生活者向けのサービスや商品を扱う企業に勤める方はスマートフォンで自社のWebサイトを観察する必要があるのです。そして自社のWebサイトをスマートフォンで閲覧すると、実にさまざまなことに気が付きます。例えば、文章の量やデザインについてです。そして自社のサイトに改善点があることに気づきます。

このように、デジタル・トイを体験することで、生活者のデジタル化された生活を実感し、少し先の生活者の姿を想像できるのです。

皆さんの会社にもビジネス用のIT機器が存在すると思います。この機器が生活者のIT機器と一緒なら問題がないのですが、多少異なることが多いのではないでしょうか。ここで使っている「デジタル・トイ」という言葉は、ビジネス用のIT機器とは異なるものという定義です。つまり、デジタル・トイを使うというのは、生活者・消費者の行動を体験することです。

デジタルに慣れることで、取得可能なデータが増える

私たちマーケターは、マーケティングの相手である、生活者やビジネス・パーソンの理解が必須です。その理解のために、マーケティングの対象者の観察やインタビューを行います。さらには、その対象者の役割を自分で行なってみることで、その行動の背景などを理解しようとしてきました。

例えば私についてです。今でもお客様を観察するためにお店に行きます。お客様がどの程度の時間、商品の棚の前に滞在しているのか。そして、どのような情報を見ようとしているのかを知りたいからです。とても古典的な方法ですが、今も多くのマーケターが実践していることでしょう。

このお店でのお客様観察と同じことは、自社のWebサイトやECサイトでも行う必要があります。お客様は、ECサイトに自宅などから好きな時間にアクセスするからです。このECサイトのお客様の観察は、お客様の行動を眺めるのではなく、ECサイトのアクセスログを活用します。

実店舗のお客様観察は、マーケターが本当に観察して、それをノートに書くなどの手法です。残念ながら、全国全てのお客様の観察はできません。しかし、ECサイトのお客様の観察は、アクセスログを使うことによって、全てのお客様の行動を自動的に観察できるのです。

この例からもわかるように、デジタル・トイを上手に使えば、私たちマーケターが利用できるデータは、量も質も向上します。そして、私たちマーケターは、このお客様の観察の進化も考えないといけません。

進化を考えているマーケターは、すでにバーチャルリアリティー(VR)用のヘッドマウントディスプレイを会社に保有していることと思います。これは、本当にマーケティングを進化させるツールです。皆さんの会社をメタバースに建てるという話ではありません。先ほどのECのアクセスログの進化が、VRの導入によって行えるのです。

自動車メーカーのAudiがCES 2016で、「VR Car Showroom」という概念を発表しました。動画もYouTubeに公開されています(https://www.youtube.com/watch?v=fvQS8ImnSsw)。このVRの技術を少しだけ解説します。頭に装着しているヘッドマウントディスプレイには、小型の画面が右目・左目用にそれぞれあります。また、位置を取得できるセンサーが搭載されており、頭を右に向けると画面の映像は右側の映像に変わり、下に動かすと下側の映像が投影されるようになります。この映像は、コンピューターでリアルタイムに生成されることにより、その空間にいるかのような体験を提供することが可能です。ここで重要なことは、ヘッドマウントディスプレイにより、利用者の頭の向きや位置などの情報を絶えず取得している点です。

この技術により、マーケターの生活者の理解は格段に進化します。店頭のマーケターの観察は、お客様の「一連の行動」が理解できます。ECサイトのアクセスログでは、一連の行動を「ページ単位」で理解できるように精度が1段階向上します。そしてヘッドマウントディスプレイにより、ページ単位より細かな「目を動かす単位」でお客様の行動を取れるようになるのです。

このように、デジタル・トイの導入により、私たちの科学的マーケティングのデータ活用を進化させることができるのです。

私たちのマーケティングのデジタル化

突然ですが、私は、札幌生まれです。1972年の札幌冬季オリンピックは、自宅のテレビで見ていました。スキーのジャンプ競技の日の丸飛行隊の記憶もあります。

冬のオリンピックシーズンになると必ず流れるこの映像ですが、当時のジャンプの計測方法をご存知でしょうか?ジャンプの到着地点に、人がたくさん並び、目測で測っていました。自分の目の前にジャンパーが着地すると、距離を示すボードを上に上げていたのです。これは事実です。

現在では、ビデオ映像を使いデジタル技術で計測しています。これにより、以前より正確に飛行距離が計測できるようになりました。このように、スポーツではデジタル・ツールの導入により、計測や測定というデータ精度の向上に努めているのです。

マーケティングでもデータ精度の向上が必要なのでしょう。そのためには、マーケティングを行なっている私たちが、今、使えるデジタルの最新技術を理解しないといけないのでしょう。

この記事を読んでいるマーケターの皆さん、マーケティングの進化のためにもデジタル・トイに触れてみましょう。

著者プロフィール

株式会社マーケティングサイエンスラボ 本間 充プロフィール画像
株式会社マーケティングサイエンスラボ 本間 充
1992年花王株式会社に入社。社内でWeb黎明期のエンジニアとして活躍。以後、Webエンジニア、デジタル・マーケティング、マーケティングを経験。
2015年アビームコンサルティング株式会社に入社。多くの企業のマーケティングのデジタル化を支援している。マーケティングサイエンスラボ 代表取締役、ビジネスブレークスルー大学でのマーケティングの講師、東京大学大学院数理科学研究科 客員教授(数学)、文部科学省数学イノベーション委員など数学者としての顔も併せ持つ。

1992年花王株式会社に入社。社内でWeb黎明期のエンジニアとして活躍。以後、Webエンジニア、デジタル・マーケティング、マーケティングを経験。
2015年アビームコンサルティング株式会社に入社。多くの企業のマーケティングのデジタル化を支援している。マーケティングサイエンスラボ 代表取締役、ビジネスブレークスルー大学でのマーケティングの講師、東京大学大学院数理科学研究科 客員教授(数学)、文部科学省数学イノベーション委員など数学者としての顔も併せ持つ。

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