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新しいマーケティングのすすめ(17)

引き続き、デジタル・メディアを活用した広告の調査を考えてみましょう。
前回は、お客様のWebサイトの利用方法や、スマートフォンの利用の調査の重要性について、整理しました。

今回は、そもそもデジタル・メディアは「広告」という言葉の定義で良いのかを、私の調査体験から考察してみます。そして、皆さんもぜひ、マーケティングにおけるデジタル・メディアの定義を行なってみてください。

Webサイトの情報探索調査をワークショップで行なってみた

Webサイトのリニューアルをする際、実際のWebサイトを使ったユーザー調査をよく行っていました。ユーザー調査というと非常にお金がかかる大掛かりな調査と思うかもしれません。しかし、私の行っていたユーザー調査は、同じ会社の社員を使った無料の簡易調査です。調査会社の保有するモニターを使わず、社員を被験者にする理由は明確です。自社のサイトには、社員といえどもほとんどアクセスしておらず、一般のお客様と大きく異ならない状態で調査が可能だという理由からです。

例えば新入社員に、「実際に採用活動している時によく行っていたサイトの活用方法を教えて」とか、「この企業のサイトに先輩社員の声があるので、そのページを探してみて」という課題を出して、横でじっくり、どのようにサイトを訪問するのか観察します。

また、とても特徴のある新製品に関して、「新しい製品の使い方ページ」訪問してもらい、そのページから得られた情報について、聞き取りを行ったりもしました。

このような調査を行った後、多くの被験者の方から、「こんな情報、このサイトにあったのですね。」という言葉を本当に何回も聞きました。多くの人に、情報伝達のためにサイトを公開していても、そのターゲットになりそうな社員ですら、その情報のWebページの存在を知らないことが多いのです。

これは、デジタル・メディアを活用したマーケティングの大きな課題の一つです。デジタル・メディアを使ったマーケティングでは、良質なコンテンツを公開すれば、人が訪れると考えがちですが、実際にはお客様にそのページが発見されることが稀だという理解が重要なのです。

例えば、マーケターはサイトの訪問者が少ないと、サイトの中から、つまりページの内容や言葉使いなどから、課題を探そうとします。しかし、その解決策の発見のために考える領域は実は広大です。例えば想定ターゲットのお客様が、デジタル・メディアを利用しているのか。想定ターゲットのお客様は、検索エンジンを使ってページを検索するのか。サイトの分析と同様に、このようなお客様の情報接触の理解が重要なのです。

社員に協力してもらった簡易のWebサイトの調査でも、このような気づきが得られます。

Webサイトはアクセス数が多いと良いのか?

次に、私があるWebのアクセス分析ツールの勉強会に参加した時の事例を紹介します。「あなたのWebサイトの目的は何ですか?」という質問があり、その下にプリコードでいくつかの選択肢が用意されていました。「情報を伝えるため」、「リードのお客様を獲得するため」、「実際に商品を販売するため」などが、並んでいたと思います。私は「情報を伝えるため」という解答を選びました。

このとてもシンプルな質問と自分の回答に、私は大きなショックを覚え、翌日に、会社に行き、この話を多くの方にしたことを覚えています。なぜ、私は「ショック」を感じたのかといえば、私たちのサイトの目的はとてもシンプルだと再確認したことです。

この気づきの後に、私はサイトの性格について考えるようになりました。特に、「広告」を目的としているサイトは、アクセスが多いと良いのか。または、同じ人が何度も訪問するサイトが良いのか。

つまり、Webサイトはアクセス数が多い=成功している、とはたして言えるのか。Webサイトのアクセス数が多ければ、「情報を伝える目的」を達成しているのかと、かなり長い時間考えたと思います。

皆さんは「シャンプーの使い方」を企業のサイトで調べようと思いますか?多くの人は、シャンプーの使い方を知っているはずです。では、シャンプー製造企業は、なぜシャンプーのサイトを公開するのでしょうか?そして、何を伝えたいのでしょうか?

多くの場合、“ちょっとシャンプーのことが気になったから”Webサイトを訪問するのでしょう。この「ちょっとした」知的好奇心から、ほんの少しでも自社のシャンプーのことを知って欲しい。これが、シャンプーのサイトにおける情報公開の理由だと思います。

そう考えると、シャンプーのサイトの訪問者はそれほど多くならない可能性があります。なぜなら、シャンプー関連の事柄に、ちょっとした知的好奇心を覚える人はそれほど多くないでしょうし、そのシチュエーションも少ないからです。

Webサイトのアクセス分析と訪問理由の理解

このように考えると、実はサイトのアクセス分析、それもサイトの訪問者数の把握以上に、【なぜこのサイトに訪問したのか】という理由がとても重要なのです。

冒頭のお題に戻ります。サイトの訪問者は「デジタル・メディアを広告と思っている」のでしょうか?この問いは、少し答えが見えてきます。自分の知的好奇心を満たそうと思い調べたら、結果、企業の訴求する広告メッセージに辿り着いていた。これが、多くの企業のWebサイトなのです。

今、アクセス分析のツールがとても発展しています。詳細なデータがリアルタイムに取得できます。しかし、サイトの訪問者の「頭」の中は、まだデータ化できません。

マーケターが嵌まるデジタル・メディアの大きな罠の一つは、多くのデータが取れることです。データが取れることと、欲しいデータが取れているということには大きな差があります。マーケターの私たちは、Webサイトやデジタル・メディアをマーケティングで活用するときに、欲しいデータが何かを先に考えること。そして、欲しいデータが取れていない場合には、そのデータを取得する方法を考えなければなりません。

私の場合、“Webサイトの訪問理由“が知りたいことでした。その訪問理由は、マーケティング・コミュニケーションの鍵になるからです。そして生活者の「知りたいこと」「知りたいタイミング」「知りたい背景」を理解すれば、広告の改良が行えます。

このような経験から私は、デジタル・メディアを「広告のための広告」と考えるようになりました。つまり、Webサイトを他のメディアの「広告」のための調査・実験の場所と考えたのです。そして、Webサイトから得られた情報や仮説を、多くの会社のマーケターと共有し、実に多くのマーケティングに改良を加えられました。Webサイトの訪問者の理解の調査は、本当にマーケティングにおいて有益な調査でした。

みなさんの場合のデジタル・メディアの定義は何ですか。

著者プロフィール

株式会社マーケティングサイエンスラボ 本間 充プロフィール画像
株式会社マーケティングサイエンスラボ 本間 充
1992年花王株式会社に入社。社内でWeb黎明期のエンジニアとして活躍。以後、Webエンジニア、デジタル・マーケティング、マーケティングを経験。
2015年アビームコンサルティング株式会社に入社。多くの企業のマーケティングのデジタル化を支援している。マーケティングサイエンスラボ 代表取締役、ビジネスブレークスルー大学でのマーケティングの講師、東京大学大学院数理科学研究科 客員教授(数学)、文部科学省数学イノベーション委員など数学者としての顔も併せ持つ。

1992年花王株式会社に入社。社内でWeb黎明期のエンジニアとして活躍。以後、Webエンジニア、デジタル・マーケティング、マーケティングを経験。
2015年アビームコンサルティング株式会社に入社。多くの企業のマーケティングのデジタル化を支援している。マーケティングサイエンスラボ 代表取締役、ビジネスブレークスルー大学でのマーケティングの講師、東京大学大学院数理科学研究科 客員教授(数学)、文部科学省数学イノベーション委員など数学者としての顔も併せ持つ。

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