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新しいマーケティングのすすめ(19)

パソコンの使い方進化させていますか?

さて、唐突な質問ですが、皆さんのビジネスパーソン生活は、いつスタートしたのでしょうか。日本の場合、この質問は、いつ会社に入りましたか、という質問になると思います。

私の場合は、1992年4月1日です。このサイトの読者の中には、私のように30年前の方もいれば、20年前、10年前、いや最近ですという方もいるでしょう。

次に、もう一つ別の質問をしましょう。みなさんの最初のビジネスシーンには、1人1台パソコンは用意されていましたか?実は、私の最初のビジネスシーンには、会社としてパソコンが1人1台用意されるのではなく、部屋に共有のパソコンが用意されていました。しかも、まだノートパソコンというものは世の中に存在しておらず、デスクトップコンピューターでもなく、やや大型の「タワー型パソコン」というものが置かれていました。10年前にビジネスシーンにデビューした方は、1人1台ノートパソコン支給が普通になっていたでしょう。20年前にデビューした方は、最初はデスクトップパソコンが支給され、途中からノートパソコンになったのではないでしょうか?

実は、ビジネスにおけるパソコンは、毎年小型化と進化をしています。今では、外出や出張時に、普通にノートパソコンを開けて、いつでも業務を行えるようになりました。

ところで、ここで問題があります。パソコンという機械は進化していますが、パソコンを使う私たちの「パソコンの使い方はあまり進化していない」という問題です。おそらく、みなさんにパソコンが支給されてから、みなさんのパソコンの前での仕事はあまり変わっていないのではないでしょうか。

勤務開始時に、まずパソコンにログインする。そして、最初にメールをチェックして、必要なメールに返事をする。次に、会議や業務で使う資料を、エクセルやパワーポイントのようなOfficeツールで作成する。少しだけ進化したことは、コロナでテレワークになり、パソコンを使ったVideo会議というタスクが増えたという程度でしょうか?

パソコンが進化したのに、そのパソコンを利用するユーザーの方が進化していない。このことが、マーケティングの進化の阻害要素でもあるのです。

マーケティング業務用のソフトが導入されていない

パソコンというハードウェアの進化については、今みなさんも再確認したと思います。ここで、今回の記事のタイトルの「デジタル化」という言葉について、少し考えましょう。

例えば、その中の「コンピューティング」という言葉について考えます。「コンピューティング」とは、「コンピューター」を使って「計算や作業」を行うことです。コンピューターは、まさにパソコンのようなハードウェアのことを意味しています。ところで、「計算や作業」を行うのは、何かといえば、「ソフトウェア」になります。

実は、このソフトウェアに関して、日本の企業では多くの問題が存在します。この数年間、パソコンというハードウェアは耐用年数があるので、ほぼ最新の機械に更新されています。しかし、ソフトウェアは、最適なものになっていないのです。私がこう言うと、会社の情報システム部門は、きっと反論するでしょう。いや、WindowsのようなOS、さらにエクセルなどのOfficeツールも最新のものにしていますと。では、エクセルやパワーポイントの最新版が、マーケティング業務の最適ソフトなのでしょうか?

「コトラーのマーケティング5.0」では、マーケティングの仕事のデジタル化を進める必要性について説明しています。本の中では、「自然言語解析ソフト」や「AI」の導入を提案しています。みなさんのパソコンには、これらのソフトはインストールされていますか?

マーケティングでは特にデータ分析用のソフトの導入は急務

近年、マーケティングでは、ビッグデータに代表される多種大量のデータ分析は、必須な業務になりました。これをエクセルで行うのは、とても窮屈です。エクセルのようなOfficeの表計算ソフトは、汎用的なデータ分析ツールですが、ではマーケティング業務に最適化されているかといえば、異なるでしょう。

マーケティング業務で、最適なコンピューティングを行うには、最新のハードウェアと最適なソフトウェアの組み合わせが必要なのです。

さらに、これからは「数値」という定量データだけでなく、「定性」のデータ分析が求められるでしょう。この領域は、今までのコンピューターでは、ハードも遅く、ソフトもなかったため、諦められてきた領域でした。結果、例えばグループインタビューを行った後に、調査関係メンバーで被験者の発言を読み合わせして、「人の脳」で定性データの分析を行ってきました。しかし、「コトラーのマーケティング5.0」で指摘されているように、「自然言語分析ソフト」が登場した今、グループインタビューの発言分析を進化させられるのです。これは、いますぐに行うべきマーケティングのデジタル化のテーマの一つです。

言語化されてないデータの分析も行いたいはず

さらに、この定性データは、今後も種類が増えていくでしょう。今までも、マーケティング・ターゲットとなるお客様が、明確に言葉にしたデータは分析できています。商品の感想や、今後改善して欲しいと思うことなど、お客様が「脳」で整理して伝えられる言葉から、私たちはお客様の理解を行っていました。

ところが、多くのマーケティングの現場では、お客様が「整理できないこと」や「言語化できないこと」が沢山あります。しかし、その時でも、お客様は、顔の表情や声のトーン、話し方を変えることで、何かを伝えているのです。いわゆる、「感性」反応です。今後は、この「感性」も、定性データの重要なものになるのでしょう。

パソコンの進化で行えることは増えた。次は、私たちの進化。それが、マーケティングのデジタル化!

みなさんのビジネス・ツールのパソコンはとても進化しています。そしてそのパソコンは、メールのためだけの機械ではなく、マーケティングの重要なツールということを認識してほしいのです。

―マーケティングの業務に必要なソフトウェアが何かを明確にすること。
―そして、それを使って、もっとデータを使ったマーケティングを築き上げること。
―さらに、その改良・改善を止めずに、継続的に進化させること。

これが、マーケッターの進化であり、マーケティングのデジタル化です。

次世代のマーケティングを進めるために、ぜひマーケティングのデジタル化を進めましょう。

著者プロフィール

株式会社マーケティングサイエンスラボ 本間 充プロフィール画像
株式会社マーケティングサイエンスラボ 本間 充
1992年花王株式会社に入社。社内でWeb黎明期のエンジニアとして活躍。以後、Webエンジニア、デジタル・マーケティング、マーケティングを経験。
2015年アビームコンサルティング株式会社に入社。多くの企業のマーケティングのデジタル化を支援している。マーケティングサイエンスラボ 代表取締役、ビジネスブレークスルー大学でのマーケティングの講師、東京大学大学院数理科学研究科 客員教授(数学)、文部科学省数学イノベーション委員など数学者としての顔も併せ持つ。

1992年花王株式会社に入社。社内でWeb黎明期のエンジニアとして活躍。以後、Webエンジニア、デジタル・マーケティング、マーケティングを経験。
2015年アビームコンサルティング株式会社に入社。多くの企業のマーケティングのデジタル化を支援している。マーケティングサイエンスラボ 代表取締役、ビジネスブレークスルー大学でのマーケティングの講師、東京大学大学院数理科学研究科 客員教授(数学)、文部科学省数学イノベーション委員など数学者としての顔も併せ持つ。

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