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新しいマーケティングのすすめ(2)

株式会社マーケティングサイエンスラボの本間がお届けする“「未知」の新しいマーケティングを考える”ためのコラム。本日のテーマは「新しいマーケティングにおけるKGI・KPI指標」です。

マス・マーケティング時代のKGIとKPI

前回、私は「新しいマーケティング」、厳密には「新しいマーケティング戦略」を考えようと述べました。そして、その「新しいマーケティング」とともに、そのマーケティングで使う「指標」を再定義することを提案しました。今回は、その指標に関して考えていきたいと思います。

まずは復習も兼ねKGIとKPIについて振り返りたいと思います。KGIはKey Goal Indicator(キー・ゴール・インジケーター)の略です。日本語では“重要目標達成指標”や“経営目標達成指標”などと訳されます。事業会社では売上金額や利益、または契約顧客数などをKGIにすることが多いでしょう。次にKPIですが、Key Performance Indicator(キー・パフォーマンス・インジケーター)の略です。日本語では“重要業績評価指標”と訳されます。日本語の訳ではKGIが重要“目標達成”指標で、KPIが重要”業績評価”指標。似ていますが意味は大きく異なります。

事業活動を進める中で、KGI達成のためにブレイクダウンしたいくつかの変数を観察する必要があります。その変数によって状況が良いのか悪いのかを判断するのです。このいくつかの変数がKPIという関係性となります。つまり事業活動のゴールがKGIとすると、達成のための各プロセスの達成度を測るための、重要な中間指標がKPIということになります。

マス・マーケティングの時代、KGIは“売上金額”とすることが多かったでしょう。例えば年間の売上を100億円というKGIを決めたとします。一般に売上金額は、「買った人」×「単価」で定義されます。しかし、単価はあまり制御したくないので、多くの場合は、「購入者」や「お客様」の数を制御するマーケティングを行います。

簡易ですが、要素分解すると下記のような図になります。この図はあくまでも一例で、要素分解の方法はいくつもあるでしょう。この時に、KPIは、この要素分解した中で、KGIに大きく影響を与えそうなものを数個選ぶことになります。

私たちが長年行ってきたマス・マーケティングでは、経験事例が多いことから上記のような要素分解に慣れており、結果、市場分析や市場調査すべき指標が明確だったと思います。新製品投入時や、新規客獲得のために、「認知」や「非認知」、さらにはその「認知内容」を調査でデータ化し、自分たちのマーケティングが成功しそうか否かを判断していたのです。

LTV時代のKGIとKPIの例

ところが今、私たちには「脱マス・マーケティング」が求められています。マーケティング戦略が変われば、KGIとKPIの項目は変わるのでしょうか。そこで、新しいマーケティング戦略の一例として「顧客生涯価値(LTV、Life Time Valueの略、ライフタイムバリュー)」をKGIとしたマーケティングを考えてみることにしましょう。

顧客生涯価値とは、とあるお客様が取引を開始してから取引を終了するまでに提供した利益の総値です。今までのマーケティングは、一定の期間や時間内において市場でどれだけ売れているか・どれだけ独占しているのかという「微分」的な値でした。対してLTVでは、それをお客様の取引継続時間で「積分」する値です。つまり、企業全体がマーケティング戦略でLTVを重要視すると、全お客様の取引継続時間で合算した利益を計算するということになります。

仮で上記のようにKGIを10年間の総利益と定義して要素分解してみました。マス・マーケティングの時とは大きく異なる要素分解図になり、KPIの項目が全く違うことが見て取れるかと思います。

「認知」という言葉はこの段階までの要素分解には出てきません。むしろお客様のグルーピングこそが重要で、そのグループごとのマーケティング戦術が重要です。大手通販会社がパーソナライゼーションを活用したマーケティングを行うのは、まさに上記の図のような構造になっているからなのです。

「水」のロイヤリティーは、定量データに出来るのか?

みなさんはtwitterのアカウントをお持ちでしょうか?もしアカウントがあれば、ツイートの検索で「ビオレ」と「ダブ」を入力し、その商品に関するつぶやきがどの程度あるか調べてみてください。おそらく「ビオレ」のつぶやきのほうが「ダブ」よりも多いはずです。

ソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)をマーケティングで使い始めばかりの方がどう考えるか?を想像すると、「SNS発言量が多いとエンゲージメント量が高いと言えるのでダブとビオレではビオレの方が成功している」という結論を導き出す人が多いように思います。

ここでもう少し思考を掘り下げます。皆さんはtwitterやFacebookに投稿する際、普段から吸ったり飲んだりしている「空気」や「水」のことに触れたことがあるでしょうか?何か新しい発見や驚きがあればSNSに書くことがあります。しかし「空気」や「水」の新しい発見や驚きというのは、おそらく「空気」や「水」に異変が起きた時です。そして、それはほとんど起こらず、いつも「安心」「安全」な存在です。つまり私たちは多くの場合、「水」や「空気」についてSNSに書き込まないはずです。

「ビオレ」と「ダブ」の話に戻ります。花王出身である私として非常に残念なことに「ダブ」のほうが「ビオレ」よりも空気や水のような存在となっているという見方ができます。ともすると「ダブ」は空気や水のように何も考えず使われており、結果、twitterで発言が少ないという視点です。このような現象を「無自覚のロイヤリティー」と呼びます。

なお、LTVを重要視すると、マーケターの方から「認知よりもロイヤリティーが重要なので、それを調べたいのですがどうすればいいでしょうか?」などと相談を頂くことがあります。決して間違いではないのですが、「無自覚のロイヤリティー」がある以上、正しく測定することに限界はあると思っています。

データで測定可能かも、重要な議論

私たちが新しいマーケティングを考える際、その時々で必要な新しい指標やKPIも探そうとしています。しかし、すべての人間の行動は測定可能ではないという基本も理解しないといけません。

私からのアドバイスは「新しいマーケティング」を考えるときに「今に相応しいのか」と「測定可能な戦術を使うか」の両面から考えてみるべきだ、ということです。これはマーケティングを科学に昇華させるために、必要であり重要なアプローチ論です。きちんと新しいマーケティングを実行した上で「目標は達成したのか?」「明確に判定できたことはなにか」を言語化します。そしてその成否の振り返り時に、どの戦術は成功し、どの戦術は失敗したか?が明確になること。このことこそが重要です。

そして柔軟に新しいマーケティングを進化させる。これが、今私たちに求められていることだと考えています。

著者プロフィール

株式会社マーケティングサイエンスラボ 本間 充プロフィール画像
株式会社マーケティングサイエンスラボ 本間 充
1992年花王株式会社に入社。社内でWeb黎明期のエンジニアとして活躍。以後、Webエンジニア、デジタル・マーケティング、マーケティングを経験。
2015年アビームコンサルティング株式会社に入社。多くの企業のマーケティングのデジタル化を支援している。マーケティングサイエンスラボ 代表取締役、ビジネスブレークスルー大学でのマーケティングの講師、東京大学大学院数理科学研究科 客員教授(数学)、文部科学省数学イノベーション委員など数学者としての顔も併せ持つ。

1992年花王株式会社に入社。社内でWeb黎明期のエンジニアとして活躍。以後、Webエンジニア、デジタル・マーケティング、マーケティングを経験。
2015年アビームコンサルティング株式会社に入社。多くの企業のマーケティングのデジタル化を支援している。マーケティングサイエンスラボ 代表取締役、ビジネスブレークスルー大学でのマーケティングの講師、東京大学大学院数理科学研究科 客員教授(数学)、文部科学省数学イノベーション委員など数学者としての顔も併せ持つ。

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