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新しいマーケティングのすすめ(24)

前回の「市場に合わせたマーケティングを考える」で、私たちは、すでに「新しいマーケティングを実行している」ことを説明しました。マーケティングの対象によって、マーケティングの戦術は異なっても、おそらく30年前とは異なる戦術を実行しているのではないでしょうか。

注意すべき点としては、行っているマーケティングの戦術を変えているのにもかかわらず、そのマーケティングが成功しているのか・失敗しているのかを考えるために必要な【調査・観察・確認項目】が変わったのか、という点です。

この知るギャラリーの読者の中には、市場調査やマーケティング調査の関係者が多くいると思います。今回は、自身の仕事を恐れず変化させてきたかという論点で考えてみましょう。

調査の前に、何気ない市場の売り上げデータは変えているか

まず、マーケティングの成否の判定のために、売り上げを重要指標にすることが多いでしょう。前回の記事でもサンプルを見せましたが、

このような売り上げグラフをマーケティングで使うことは多いのではないでしょうか。実際には、このグラフに売り上げ目標を書き込み、目標の売り上げを超えたかどうかで、マーケティングの成否判定を行っていませんか。

確かに、このデータは事業の成否としては重要です。しかし、マーケティングの成否判定としては、今も重要でしょうか。新しいマーケティングでは、顧客との関係が重要です。多くのマーケターは、売り上げが増加するときにお客様との関係が継続しているのかも観察したいはずです。

例えば上記の図では、お客様の数は4人から5人に増えています。これを、単純にお客様の数だけを書くと、下記のようなグラフになります。

そして、このグラフだけを見ると、お客様の数が増加していることから、マーケティング戦術が順調に進んでいるように考える人が多いでしょう。しかし、このグラフをお客様ごとの関係性のグラフで書くと、

このようになり、持続しているお客様が一人しかいないことが明確になります。

このように、新しいマーケティングを実行している今、日々マーケティングの現場で観察するデータやグラフを変える必要があるのです。今行っているマーケティングで、重要な数値は何か、そしてどのようなグラフで観察すれば良いのかを考えることが必要です。

調査も変更が必要

売り上げや顧客数というデータは、マーケティングの結果の数値であり、その数値の原因を考えるために、私たちはモニター調査やアンケート・インタビューなどを行います。これらのマーケティング調査も、「新しいマーケティング」のために変化させないといけないのでしょう。

今までの、「マスマーケティング」では、
● 多くのお客様への商品の受け入れ性のテスト
● 商品を受け入れるお客様像の発見
のような調査が多かったでしょうか。しかし、マスマーケティングでなくなった今、お客様が、商品やサービスと長く付き合うのかを確認する手法が必要です。
つまり、
● ボリューム・ゾーン発見より、ロイヤルユーザーの発見
● 持続的に商品・サービスと付き合う理由
などの調査が必要です。

そして何より「持続性」とは、その商品・サービスの「安心・安全」などが、理由の一つになっており、今までのように、マーケティング・コミュニケーションで伝える商品の「特徴」とは異なる点が重要な点になる可能性があります。

このように、「新しいマーケティング」では、マーケティング調査で確認すべき項目や、調査方法が今までと異なるはずです。「新しいマーケティング」のための「新しい調査」を考えることは、今のマーケターの重要な仕事といえるのではないでしょうか。

著者プロフィール

株式会社マーケティングサイエンスラボ 本間 充プロフィール画像
株式会社マーケティングサイエンスラボ 本間 充
1992年花王株式会社に入社。社内でWeb黎明期のエンジニアとして活躍。以後、Webエンジニア、デジタル・マーケティング、マーケティングを経験。
2015年アビームコンサルティング株式会社に入社。多くの企業のマーケティングのデジタル化を支援している。マーケティングサイエンスラボ 代表取締役、ビジネスブレークスルー大学でのマーケティングの講師、東京大学大学院数理科学研究科 客員教授(数学)、文部科学省数学イノベーション委員など数学者としての顔も併せ持つ。

1992年花王株式会社に入社。社内でWeb黎明期のエンジニアとして活躍。以後、Webエンジニア、デジタル・マーケティング、マーケティングを経験。
2015年アビームコンサルティング株式会社に入社。多くの企業のマーケティングのデジタル化を支援している。マーケティングサイエンスラボ 代表取締役、ビジネスブレークスルー大学でのマーケティングの講師、東京大学大学院数理科学研究科 客員教授(数学)、文部科学省数学イノベーション委員など数学者としての顔も併せ持つ。

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