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新しいマーケティングのすすめ(39)

「旅行」という言葉から考察する、マーケティング

マーケティングでは、Valueの理解が重要

このインテージの「知るギャラリー」では、「Value」という単語がたびたび登場します。例えば、「【第三弾】新しいマーケティングを考える~コトラー論に沿って生活者、そしてマーケティングの変化を語る~アフターレポート」では、「使用価値」という言葉が登場します。

このValueを理解する一つの手法、アプローチとして、辻中 俊樹氏の「非言語情報から仮説をたてる」が、参考になります。私たちが、言語化された言葉を聞くと、その言葉を知ったつもり、理解したつもりになりますが、本当にそうなのかを問いただすことで、その言葉の本当の定義や、言語化されない概念の意味に近づくことができます。

これが、まさにマーケティングで求められている、Valueの理解に近づくのです。そして、それを調査で行ったのが、「コロナ後の“旅行”を問い直す 第1回~旅行ニーズをセグメントして新たなビジネスチャンスを探る」という記事です。今回は、この題材を使って、もっと「旅行」を深く掘り下げてみましょう。

まずは、日本人の旅行を振り返ろう

皆さん、江戸時代の「お伊勢参り」をご存知ですか。江戸っ子が熱狂し「一生に一度は行ってみたい」と願った伊勢参り。江戸時代、日本人の6人に1人が詣でたといわれる大人気スポットは伊勢神宮と言われています。

このお伊勢参りには、以下のような特徴があります。

  • 信仰と願いの実現
     ► お伊勢参りは、伊勢神宮(内宮・外宮)への参拝を通じて、神様への感謝と願いを捧げる行為でした。人々は、健康、豊作、家内安全など、様々な願いを込めて旅に出ました。
  • 人生の節目
     ►結婚、出産、病気平癒など、人生の節目や困難な状況に直面した際に、神様への祈願としてお伊勢参りが行われました。
  • 社会的なステータス
     ►お伊勢参りは、江戸時代の社会において一種のステータスシンボルでもありました。旅を終え、伊勢神宮の御札や土産を持ち帰ることが、社会的な評価を高める効果もありました。
  • 人生の目標
    ►江戸時代の人々にとって、一生に一度は「お伊勢参り」をすることは、人生の目標の一つでした。

この特徴を知ると、気がつくことがあります。お伊勢参りが、自分のライフステージと関係があること。また、お伊勢参りに行くことで、社会的なステータスが上がることです。

つまり、実は旅行の目的の中には、他人に公言しにくい理由も含まれるのです。

マーケティングの調査では、公言できないこと、そして明確に自覚していないことは、想像で補う!

「コロナ後の“旅行”を問い直す 第1回~旅行ニーズをセグメントして新たなビジネスチャンスを探る」の記事中に、「5つの旅行のセグメント」という分類があります。この分類は、被験者の方が、口にした内容を中心に整理したものです。

今回は、旅行の理由の中に、「口にしない」理由もあるという仮説と、「お伊勢参り」の目的を参考にして、考えてみましょう。そうすると、想像できる一つのセグメントがあります。それは、「私も旅行に行きたい」というセグメントです。

おそらく、コロナが収まり、他の人たちも旅行に出かけたので、自分も出かけたという人もいるのでしょう。それも、お伊勢参りを参考にすると、自分の人生の節目とそれが重なった、そのようなセグメントはいるのではないでしょうか?例えば、大学の卒業記念、新婚旅行、結婚〇周年というのを口実に、周りも旅行に出かけ始めているので、「私も旅行に行きたい」と考えて行動した人です。

しかし、この理由、なかなか他人には伝えにくい理由ですよね。なぜなら、すこし自分中心過ぎる考え方と思う人がいるからです。人の行動の裏には、その理由を公言できないことや、言語化できないことがあるのでしょう。

最近話題の「推しへの愛」の旅行は、まさに現代の「お伊勢参り」

その他の、あまり人に言えない理由の旅行を考えてみましょう。以前の「ヲタク」、今の「推し活」の旅行です。「コロナ後の“旅行”を問い直す 第1回~旅行ニーズをセグメントして新たなビジネスチャンスを探る」の記事では、「趣味旅」「交流旅」に分類されていますが、「推し活旅行」は、もう少し複雑なのかもしれません。

推し活旅行を少し分類してみましょう。

  • 聖地巡礼
     ► 推しが活躍した場所、ゆかりの地を訪れ、その空気感を肌で感じ、推しへの想いを深める。
  • イベント参加
     ►ライブ、舞台、展示会など、推しに直接会えるイベントに参加し、特別な時間を共有する。
  • グッズ収集
     ►推し関連のグッズを手に入れるため、限定販売やレアアイテムを求めて各地を巡る。
  • 推し活仲間との交流
     ►同じ推しを持つ仲間と旅をすることで、情報交換や思い出を共有し、絆を深める。
  • 自分へのご褒美
     ►推しへの愛を形にすることで、自分自身へのご褒美となり、日々の生活の活力に繋げる。

私も、ある意味NFLファンで、NFLの推し活旅行にアメリカに行きます。その場合の目的は、まさに「聖地巡礼」「イベント参加」そして「グッズ収集」になります。しかし、「推し活」を行っている人は、これを無意識のうちに行っているので、以外にも調査でヒアリングしても、旅行の目的と理由を、明確に言語化できないかもしれません。

Valueの理解は、自分が理解しやすい土俵で考えることが重要

マーケティングでは、自分と異なる他人の理解が、多くの仕事になります。他人の理解のためには、恥ずかしがらず、自分の行動を整理し、考えてみることが重要です。そして、自分が行わない行動も、可能な限り、自分が理解しやすい概念や状況で、考えることが重要なのかもしれません。

いや、アニメの「聖地巡礼」という言葉を使い始めた人は、本当にすごいです。この言葉により、多くの旅行会社から、「聖地巡礼」サービスが登場しました。それは、この「聖地巡礼」という言葉から想起させる提供サービスと、アニメ・ファンが得たいサービスが合致しやすいからでしょう。つまり、「聖地巡礼」のValueの理解がうまく行ったからなのでしょう。

著者プロフィール

株式会社マーケティングサイエンスラボ 本間 充プロフィール画像
株式会社マーケティングサイエンスラボ 本間 充
1992年花王株式会社に入社。社内でWeb黎明期のエンジニアとして活躍。以後、Webエンジニア、デジタル・マーケティング、マーケティングを経験。
2015年アビームコンサルティング株式会社に入社。多くの企業のマーケティングのデジタル化を支援している。マーケティングサイエンスラボ 代表取締役、ビジネスブレークスルー大学でのマーケティングの講師、東京大学大学院数理科学研究科 客員教授(数学)、文部科学省数学イノベーション委員など数学者としての顔も併せ持つ。

1992年花王株式会社に入社。社内でWeb黎明期のエンジニアとして活躍。以後、Webエンジニア、デジタル・マーケティング、マーケティングを経験。
2015年アビームコンサルティング株式会社に入社。多くの企業のマーケティングのデジタル化を支援している。マーケティングサイエンスラボ 代表取締役、ビジネスブレークスルー大学でのマーケティングの講師、東京大学大学院数理科学研究科 客員教授(数学)、文部科学省数学イノベーション委員など数学者としての顔も併せ持つ。

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