
このインテージの「知るギャラリー」では、「Value」という単語がたびたび登場します。例えば、「【第三弾】新しいマーケティングを考える~コトラー論に沿って生活者、そしてマーケティングの変化を語る~アフターレポート」では、「使用価値」という言葉が登場します。
このValueを理解する一つの手法、アプローチとして、辻中 俊樹氏の「非言語情報から仮説をたてる」が、参考になります。私たちが、言語化された言葉を聞くと、その言葉を知ったつもり、理解したつもりになりますが、本当にそうなのかを問いただすことで、その言葉の本当の定義や、言語化されない概念の意味に近づくことができます。
これが、まさにマーケティングで求められている、Valueの理解に近づくのです。そして、それを調査で行ったのが、「コロナ後の“旅行”を問い直す 第1回~旅行ニーズをセグメントして新たなビジネスチャンスを探る」という記事です。今回は、この題材を使って、もっと「旅行」を深く掘り下げてみましょう。
皆さん、江戸時代の「お伊勢参り」をご存知ですか。江戸っ子が熱狂し「一生に一度は行ってみたい」と願った伊勢参り。江戸時代、日本人の6人に1人が詣でたといわれる大人気スポットは伊勢神宮と言われています。
このお伊勢参りには、以下のような特徴があります。
この特徴を知ると、気がつくことがあります。お伊勢参りが、自分のライフステージと関係があること。また、お伊勢参りに行くことで、社会的なステータスが上がることです。
つまり、実は旅行の目的の中には、他人に公言しにくい理由も含まれるのです。
「コロナ後の“旅行”を問い直す 第1回~旅行ニーズをセグメントして新たなビジネスチャンスを探る」の記事中に、「5つの旅行のセグメント」という分類があります。この分類は、被験者の方が、口にした内容を中心に整理したものです。
今回は、旅行の理由の中に、「口にしない」理由もあるという仮説と、「お伊勢参り」の目的を参考にして、考えてみましょう。そうすると、想像できる一つのセグメントがあります。それは、「私も旅行に行きたい」というセグメントです。
おそらく、コロナが収まり、他の人たちも旅行に出かけたので、自分も出かけたという人もいるのでしょう。それも、お伊勢参りを参考にすると、自分の人生の節目とそれが重なった、そのようなセグメントはいるのではないでしょうか?例えば、大学の卒業記念、新婚旅行、結婚〇周年というのを口実に、周りも旅行に出かけ始めているので、「私も旅行に行きたい」と考えて行動した人です。
しかし、この理由、なかなか他人には伝えにくい理由ですよね。なぜなら、すこし自分中心過ぎる考え方と思う人がいるからです。人の行動の裏には、その理由を公言できないことや、言語化できないことがあるのでしょう。
その他の、あまり人に言えない理由の旅行を考えてみましょう。以前の「ヲタク」、今の「推し活」の旅行です。「コロナ後の“旅行”を問い直す 第1回~旅行ニーズをセグメントして新たなビジネスチャンスを探る」の記事では、「趣味旅」「交流旅」に分類されていますが、「推し活旅行」は、もう少し複雑なのかもしれません。
推し活旅行を少し分類してみましょう。
私も、ある意味NFLファンで、NFLの推し活旅行にアメリカに行きます。その場合の目的は、まさに「聖地巡礼」「イベント参加」そして「グッズ収集」になります。しかし、「推し活」を行っている人は、これを無意識のうちに行っているので、以外にも調査でヒアリングしても、旅行の目的と理由を、明確に言語化できないかもしれません。
マーケティングでは、自分と異なる他人の理解が、多くの仕事になります。他人の理解のためには、恥ずかしがらず、自分の行動を整理し、考えてみることが重要です。そして、自分が行わない行動も、可能な限り、自分が理解しやすい概念や状況で、考えることが重要なのかもしれません。
いや、アニメの「聖地巡礼」という言葉を使い始めた人は、本当にすごいです。この言葉により、多くの旅行会社から、「聖地巡礼」サービスが登場しました。それは、この「聖地巡礼」という言葉から想起させる提供サービスと、アニメ・ファンが得たいサービスが合致しやすいからでしょう。つまり、「聖地巡礼」のValueの理解がうまく行ったからなのでしょう。
◆本レポートの著作権は、株式会社インテージが保有します。
下記の禁止事項・注意点を確認の上、転載・引用の際は出典を明記ください 。
「出典:インテージ 「知るギャラリー」●年●月●日公開記事」
◆禁止事項:
・内容の一部または全部の改変
・内容の一部または全部の販売・出版
・公序良俗に反する利用や違法行為につながる利用
・企業・商品・サービスの宣伝・販促を目的としたパネルデータ(*)の転載・引用
(*パネルデータ:「SRI+」「SCI」「SLI」「キッチンダイアリー」「Car-kit」「MAT-kit」「Media Gauge」「i-SSP」など)
◆その他注意点:
・本レポートを利用することにより生じたいかなるトラブル、損失、損害等について、当社は一切の責任を負いません
・この利用ルールは、著作権法上認められている引用などの利用について、制限するものではありません
◆転載・引用についてのお問い合わせはこちら