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コロナ後の“旅行”を問い直す 第1回~旅行ニーズをセグメントして新たなビジネスチャンスを探る

あなたは「旅行」から何を想像するでしょうか。旅行が好きでいろんな土地を訪れる方もいれば、日帰りで温泉やグルメを楽しむ人もいるでしょう。コンサートなどの移動目的に対する副次的なものと捉える方もいるかもしれません。

コロナ禍を経て人々のライフスタイルや価値観が変化し、旅行関連にもその影響は及んでいます。コロナ以前に戻ることばかりではありません。そこで、あらためていまの旅行に対する実態やニーズ、不満などの気持ちを探るために、旅行に関する自主企画調査を実施しました。その結果を、3回シリーズでお届けしていきます。

連載第1回となるこの記事では、調査結果をもとに見えてきた5つの旅行ニーズを紹介し、それらを満たすためのアイディアについて考察します。

旅行ニーズを俯瞰して捉える

今回の分析では、いまの旅行ニーズを俯瞰して捉えるために、『あなたが旅行に期待することは?』という質問に対して自由な言葉で回答してもらい、その回答を基に『マインドディスカバリーマップ』を生成しました。

『マインドディスカバリーマップ』は、定性調査で実施するPAC分析を定量調査でも実施可能とした、インテージ独自の「PAC-i」ツールを使って作成されます。PAC分析ではインタビューによって対象者一人ひとりの価値構造を深く明らかにするのに対し、WEB調査を実施することで数百人規模の対象者全体の“意味構造”を広く明らかにできるというメリットがあります。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

図表1が今回作成したマインドディスカバリーマップです。若者(18-39歳の子どもなし男女)とシニア(50-69歳の高校生以下の子どもなし男女)、それぞれ500人の回答から作成しました。

図表1

作成したマインドディスカバリーマップ

マインドディスカバリーマップによって、『旅行』から連想されたワード同士の関係性が可視化されます。これをワークショップで読み解くことで、自発的に回答した「顕在意識」だけでなく、「潜在意識」まで読み取ることが可能になります。

読み解きワークショップ

では今回、どのような意識が読み解けたのか、次章で具体的にご紹介しましょう。

5つの旅行ニーズ

マインドディスカバリーマップを読み解いていくと、若者、シニア共に「冒険旅」「エモ旅」「回復旅」「交流旅」「趣味旅」と大きく5つのニーズに分類することができました(図表2)。

図表2

マインドディスカバリーマップから読み解いた5つのセグメント

そこで、それぞれのニーズを強く持つ人をセグメントし、詳細なデモグラ属性や旅行実態などを理解するために、追跡調査を実施しました。これにより、誰にどのような施策を実施するといいのか、という具体的なアイディアが得やすくなります。

各セグメントの特徴が図表3です。

図表3

図表の真ん中にある「回復旅」のボリュームが最も多く、より生活に身近な、多くの機会が求められているようです。感動を味わう「エモ旅」、自己成長につながる「冒険旅」と、左側ほど旅行の濃度が高く、右側はどちらかというと主目的が旅行ではないケースです。人との交流や思い出作りの手段として旅行が存在する「交流旅」、趣味やレジャー施設などへの移動がメインの「趣味旅」が該当します。これらの5つのセグメントをターゲットとして、未充足ニーズを解決するような施策案を考えてみました。

“旅行”を問い直す、アイディア例

前述の旅行ニーズセグメントをもとに、具体的にはどんなアイディアが考えられるでしょうか。ワークショップでのアウトプットをもとに考察しました。今回は最もボリュームの多い「回復旅」と、旅化のポテンシャルが大きい「交流旅」「趣味旅」の3つのセグメントにフォーカスをあてました。

A.「回復旅」や「趣味旅」の頻度をあげる「第二のふるさと認定」

今回の自主企画調査の結果から、全体的に「費用」と「時間」が旅行の障壁になっていることが分かりました。「旅行」と捉えると計画を立てること自体に時間がかかり、手間となっている一方で、このセグメントの旅行は特定のエリアのみの訪問で満たされるケースも多くみられます。温泉に入る、絶景を眺める、マリンスポーツを楽しむなど、回復や趣味の実行が主目的であるためです。
一方で自治体側は多くの方に高頻度で訪問してもらって街を活性化したいと考えています。

双方のニーズを満たす案として宿泊や交通手段のサブスク化で毎回安く宿泊できるようにするといったアイディアが出ました。別荘を購入されている方が週末や連休等に行き来しているようなことを、もっと手軽で身近に実現するようなイメージです。第二のふるさととして街に愛着がわくことで豊かさが増すかもしれません。

B.「趣味旅」で地域ビジネスを活性化「アーティストやチームと現地コラボ」

前述のとおり、趣味旅は趣味の移動が目的であるため、旅行は副次的なものと捉えられています。本来、時間とお金をかけて遠くまで移動するのであれば、もっと移動先での楽しさを享受できるとよいのではないのでしょうか。とはいえ観光のモチベーションは低く、推し活やスポーツなど趣味のことで頭がいっぱいです。そこで遠征先のホテルや飲食店、集客スポットと目的のアーティストやチーム等がコラボし、イベント前に現地を楽しむ姿がSNSでアップされたり、特別なグッズが飾られていたり、音楽が流れているなど、イベント前後の期間で街中がイベント化されると、より楽しむことができるでしょう。遠方から足を運ぶ人が増えると同時に、現地の人のファン化が進むことも期待できます。

C.「交流旅」は移動を楽しむ「通過エリアならではの演出」

人との交流を深めることが主目的である交流旅には、遠方の家族や友人等に会いに行くことを旅と捉えているケースが存在します。その場合訪問先には観光地が存在しないこともあるでしょうし、長時間の移動が退屈ということもあるでしょう。そうであればもっと移動を旅化し、移動者も地域も潤うようなことが考えられないでしょうか。例えば新幹線の移動は多くの観光地を通過していくだけですが、通過のタイミングで現地の名産品が紹介され販売されたり、その土地ならではの文化を知ってもらうような演出がされたりと、退屈な移動を楽しめ、かつ観光地への誘導につながる効果も期待できます。

旅行のビジネスチャンスをみつけるために

これらのアイディアはインテージ社員が旅行というテーマでフラットにワークショップを実施した結果の一部です。旅行といっても旅行代理店や自治体、運輸会社など様々な業態が存在し、業態にマッチした施策を考える必要があります。インテージでは、今回ご紹介した旅行ニーズセグメントや自主企画調査を起点とし、ターゲットをより深く理解するような定性調査や特定領域の実態把握、コンセプト策定のためのワークショップなど、最適な手法を組み立て、新しいビジネスを実現する支援をしてまいります。ぜひお気軽に担当営業もしくはデ・サインリサーチ担当者(de-sign@intage.com)までお問合せください。


調査手法:インターネット調査(定量調査)
調査対象:インテージ マイティモニター
全国 18歳~69歳男女(母集団準拠配信)
調査時期:2023年12月18日(月)~22日(金)
有効サンプル数:3,891s

セグメント作成のための追跡調査
調査時期:2023年3月25日(月)~27日(水)
有効サンプル数:2,804s

著者プロフィール

小島 賢一 カスタマー・ビジネス・ドライブ本部 副本部長プロフィール画像
小島 賢一 カスタマー・ビジネス・ドライブ本部 副本部長
2002年インテージに入社。リサーチアナリストとして数多くのプロジェクトに携わり、中でも商品開発支援を得意とし、ワークショップなどのファシリテーションも務める。2018年よりインテージクオリスに出向し、定性調査全般の指揮をとりながらサービス開発に注力。2020年4月より代表取締役社長を務め、2023年7月より現職へ。

2002年インテージに入社。リサーチアナリストとして数多くのプロジェクトに携わり、中でも商品開発支援を得意とし、ワークショップなどのファシリテーションも務める。2018年よりインテージクオリスに出向し、定性調査全般の指揮をとりながらサービス開発に注力。2020年4月より代表取締役社長を務め、2023年7月より現職へ。

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