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今回は、「肌」と「AI」と「マーケティング」がテーマです。
さて、「コカ・コーラ」「スターバックス」と、マーケティングにおけるAI活用、とりわけマーケティングのデータ分析・活用領域でのAIの活用を説明してきました。
今回取り上げるのは、化粧品におけるAI活用です。
今回取り上げるのは、セフォラの「Color IQ」です。セフォラは、1969年にフランスで設立された世界最大級の化粧品小売チェーンです。2,300以上の店舗を展開し、「体験型」の化粧品販売を特徴としています。
同社の革新的なサービス「Color IQ」は、顧客の肌色を正確に測定し、最適な化粧品を提案するシステムとして2012年に導入されました。
「Color IQ」システムの特徴は、専用のデバイスで顧客の肌を撮影し、その色を110種類の肌色コードに分類する点です。従来、ファンデーションやコンシーラーの色選びは、店員の経験や顧客の主観に依存していましたが、このシステムにより科学的なアプローチが可能になりました。
システムは顧客の肌を頬、額、首の3箇所で測定し、それぞれの部位の色味を分析します。測定結果に基づき、セフォラが取り扱う数千種類の化粧品の中から、その顧客に最適な商品を提案します。この情報は顧客のオンラインアカウントと連携され、店舗でもオンラインでも同じ提案を受けることができます。
特に画期的なのは、肌の色だけでなく、肌の質感や状態も考慮して商品を提案する点です。例えば、同じ肌色でも、乾燥肌の人とオイリー肌の人では異なる商品が推奨されます。また、季節による肌の変化も考慮されます。
セフォラは、この肌の測定データを使って、以下のそれぞれの点で、マーケティングを進化させました。
1. データ分析の高度化と自動化
– 顧客の肌色データを110段階で分類し、詳細な解析を自動実行
– 肌の状態や環境要因を考慮した多変量解析の実施
– 購買履歴と組み合わせた商品推奨アルゴリズムの構築
2. 予測精度の向上
– 季節変化による肌色の変化を予測
– 商品使用効果の予測モデルの構築
– 返品率の低減につながる精確な商品マッチング
3. リアルタイム分析とパーソナライゼーション
– 即時の肌色解析と商品推奨
– 環境条件(季節、気候など)に応じた動的な推奨内容の調整
– パーソナライズされたスキンケアルーティンの提案
4. データ統合と多面的分析
– 店舗での測定データとオンライン購買履歴の統合
– SNSでの口コミデータと実際の使用結果の相関分析
– 顧客満足度データと商品推奨アルゴリズムの連携
5. 業務効率化とスケーラビリティ
– 店舗スタッフの商品提案プロセスの効率化
– グローバル展開における一貫した顧客体験の提供
– データに基づく在庫管理の最適化
6. 新しい課題と機会
– プライバシーとデータ保護への対応
– 新商品導入時の推奨アルゴリズムの更新
– 多様な人種・肌色への対応
やはり、AIを使ってデータ分析することは、今まで困難であると思っていたことを可能にしてくれています。今まで、化粧品で気候の情報を組み合わせて商品の推奨をすることは、属人的な活動とされていました。しかしAIでは、組み合わせるデータが増えることはそれほど困難なことではないため、このようなことが可能になるのです。
前回のこのコラムでも書きましたが、AIの導入は、実は組織の受け入れが大きな課題になります。それを乗り越えるには、このセフォラの事例の場合には、以下のような点が重要になります。
1. 段階的な導入が重要
– まず小規模なテスト運用から始め、課題を特定
– データ収集と分析の基盤を確実に構築
– 従業員のトレーニングを十分に実施
2. 顧客体験を中心に据える
– テクノロジーは手段であり、目的ではないことを意識
– 顧客フィードバックを継続的に収集・反映
– プライバシーへの配慮を忘れない
3. 組織全体での取り組み
– データ活用の文化醸成
– 部門横断的なプロジェクトチームの結成
– 経営層のコミットメントの確保
特に、「組織全体での取り組み」は、データ・ドリブン・マーケティングが話題になった時にも、重要な点と多くの有識者や書籍で指摘されていましたが、日本のマーケティング組織では、今もKKD(勘、経験、度胸)を活用していることが多いのは、AI活用の大きな障害になるでしょう。
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