
さて、前回までAIによるマーケティングの戦略・戦術の変化を整理してきました。ここからは、実際にマーケティングの現場で起きている生活者・消費者の変化を考えてみます。
AIの登場は、消費者の情報収集、購買プロセス、そして消費者の意識・行動の3つの側面に大きな影響を与えています。
(1)情報収集・商品探索の変化:消費者の「出会い」を再定義
AIは、消費者が商品を発見し、情報を収集する方法を大きく変革しました。
直感的・視覚的検索の進化: 画像認識AI技術の発展により、消費者は商品名を知らなくても、写真や画像から類似の商品を検索できるようになりました。この進化は、消費者の購買意欲を刺激し、衝動買いを促進する可能性があります。
パーソナライズされた情報提供の強化: AIが個々の消費者の嗜好や行動履歴を分析し、最適な商品を提案します。ECサイトでのレコメンデーションや、メールマガジンでのパーソナライズされた情報配信などが代表的な例です。これにより、消費者は自分に合った商品を効率的に見つけ、購買意欲を高めることが期待できます。
商品知識の獲得の容易化: AIチャットボットや商品レビューを活用することで、消費者は商品の詳細な情報を簡単に得られるようになりました。この変化は、消費者がより賢明な購買判断を下すことを可能にし、企業は商品の魅力を明確に伝える必要性が高まっています。
(2)購買プロセス・チャネルの変化:消費行動の多様化
AIは、消費者が商品を購入するプロセスやチャネルにも大きな変化をもたらしました。
オンラインショッピングの進化: AIを活用したチャットボットによる接客、パーソナライズされたレコメンデーション、AR技術を活用した試着機能など、オンラインショッピング体験が向上しています。これにより、消費者は時間や場所にとらわれず、快適な購買体験を享受できるようになりました。
サブスクリプション・モデルの多様化: 定期的に商品やサービスを利用できるサブスクリプションモデルが普及し、AIが個々の消費者の嗜好に合わせて商品を提案するケースが増えています。このモデルは、消費者のニーズに柔軟に対応し、継続的な利用を促す可能性があります。
価格比較と最適化の自動化: AIが複数のECサイトの価格を比較し、最安値やお得な購入方法を提案するサービスが登場しています。この傾向は、価格競争を激化させ、企業は価格以外の付加価値や顧客体験で差別化を図る必要性を高めています。
(3)消費者の意識・行動の変化:消費の価値観の変容
AIは、消費者の商品に対する価値観や購買行動の背景にある意識にも変化をもたらしています。
購買における意思決定の効率化: AIによる情報収集・比較・提案は、消費者の意思決定を効率化し、購買にかける時間を短縮することを可能にしています。
個性や嗜好を重視する傾向の強化: AIが個々の消費者の嗜好に合わせた商品やサービスを提案することにより、消費者はパーソナライズされた商品を求めるようになります。
顧客ロイヤリティの再定義: AIを活用したパーソナライズされた顧客体験は、顧客ロイヤリティを向上させ、長期的な顧客関係を築くことを可能にします。
文章に整理すると、他人事のように感じるかもしれませんが、皆さんも実はすでに体験していないでしょうか?
知らない商品があれば、スマートフォンをかざして調べることができます。
今までよりも、映像配信のサブスクリプション・モデルのレコメンドのコンテンツの沼にはまる時間が増えていないでしょうか?
つまり、確実に、AIの登場で消費行動は変化し始めているのです。次回からは、それぞれ具体的な事例を使いながら、
(1)情報収集・商品探索の変化:消費者の「出会い」を再定義
(2)(2)購買プロセス・チャネルの変化:消費行動の多様化
(3)消費者の意識・行動の変化:消費の価値観の変容
について、考えていきます。