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新しいマーケティングのすすめ(48)

マーケターが理解すべき、AI登場による消費行動変化(2)

前回に引き続き、AIの登場による消費行動の変化を以下の3つに分類して、整理をしています。
(1)情報収集・商品探索の変化:消費者の「出会い」を再定義
(2)購買プロセス・チャネルの変化:消費行動の多様化
(3)消費者の意識・行動の変化:消費の価値観の変容

今回は、この(1)情報収集・商品探索の変化について、実際の事例と、その考察を行います。

ブランド認知・商品認知は不要?「直感的・視覚的検索の進化」

メルカリに画像検索機能が追加されました。Webページで気になる商品が出てくれば、それをメルカリの画像検索機能で、メルカリでの出品確認ができるのです。

このメルカリの画像検索機能は、従来のマーケティング戦略に大きな影響を与える可能性があります。これまでマーケティングの重要な目標であった「商品認知」と「ブランド認知」は、画像検索の進化によってその重要性が相対的に低下する可能性があります。

消費者は、特定のブランドや商品名を意識することなく、単に「欲しい」イメージに基づいて商品を検索するようになります。これは、企業が商品名やブランド名を前面に出して行う広告宣伝の効果を薄めるかもしれません。消費者は、広告に露出するのではなく、自身の視覚的なニーズに合致する商品を直接探し求めるようになるからです。

結果として、マーケターは、従来の広告手法に加えて、画像検索エンジンに最適化された戦略を検討する必要が出てきます。具体的には、高画質で魅力的な商品画像を用意し、検索アルゴリズムに合致するような画像タグや説明文を付与するなど、視覚的な表現力を高める施策が重要になります。また、消費者が「欲しい」と感じるような商品のビジュアルイメージを積極的に発信することも効果的でしょう。

つまり、画像検索の普及は、マーケティング戦略を「ブランド名」や「商品名」中心から「ビジュアル」中心へとシフトさせる可能性があり、企業は、その変化に対応した新たな戦略を構築する必要に迫られるでしょう。

マス広告よりも、パーソナライズされた情報の方が重要?

AIにより今まで不可能とされた、パーソナライゼーションしたメッセージングがとても簡単に行えるようになりました。
AI Marketingのすすめ(5)のスターバックスコーヒーのモバイル・オーダーのメニューが、過去の注文履歴に基づいて、お客様ごとにメニューを変える例なども、この一つの事例です。

このメニューやメッセージのパーソナライゼーションは、マーケティングに大きな変化をもたらす可能性があります。

今までのマスマーケティング手法は、多くの消費者にリーチできる一方で、いくつかの根本的な課題を抱えていました。 まず、メッセージの画一性です。 広告メッセージは、不特定多数の消費者を対象とするため、普遍的な内容に限定され、個々の顧客の具体的なニーズや興味関心に合致しにくいという問題がありました。

次に、ターゲティングの精度不足です。顧客層をある程度絞り込めたとしても、メッセージは今までの広告配信の手法の限界から、広範囲に配信され、ターゲット以外の顧客にも届いてしまうため、広告費用対効果が低い可能性がありました。

このことが、最後の課題である顧客エンゲージメントの低下につながっていました。顧客は、自分に関係のない情報ばかりを受け取るため、企業とのコミュニケーションに対する関心が薄れ、ブランドへのロイヤリティが低下するリスクがありました。

これらの課題は、AI技術の導入により、解決できる可能性があるのです。

まずは、顧客データの分析と活用の進化です。AIは、顧客の購買履歴、閲覧履歴、年齢、性別、興味関心、ソーシャルメディア上の活動など、様々なデータを収集・分析し、顧客プロファイルを詳細に把握します。

顧客データの分析の進化は、高度なターゲティングに繋がります。AIは、顧客データを基に、顧客をより詳細にセグメント化し、各セグメントに最適な広告メッセージやコンテンツを配信します。そして、広告配信にもAIが当然導入されるでしょうから、いままでのターゲティングよりも、精度の高いターゲティングも可能になります。

そして、一番重要なのは、メッセージの最適化かもしれません。AIは、過去の広告キャンペーンのデータから、最も効果的なメッセージ、クリエイティブ、配信チャネルを学習し、広告効果を最大化します。今までの広告検討会や広告グラフィック検討は、マーケターの重要な仕事として残る仕事ですが、行われる内容は大きく変わるかもしれません。

さらに、未体験の仕事がマーケティングに登場します。それは、リアルタイムコミュニケーションです。それも、営業ではなく、マーケティングとしてのリアルタイムコミュニケーションです。

AIチャットボットなどを活用することで、顧客からの問い合わせにリアルタイムに対応し、個別化されたサポートを提供することがすでに可能なのです。この領域は、今までマーケティングというよりは、営業やカスタマー・サポートで活用されていましたが、このリアルタイムコミュニケーションが、マーケティングの重要な1ピースとなるのです。

商品情報は、Webで調べるのではなく、AIに尋ねる時代かも

AI時代では、商品情報の検索の方法、そして、消費者の求める情報が異なってきます。

従来、商品情報ページは、商品の特徴や機能、仕様を網羅的に記載し、消費者に商品理解を促す役割を担っていました。しかし、生成AIに質問すれば、消費者は知りたい情報をピンポイントで入手できるようになります。例えば、「この商品の競合との違いは?」、「〇〇の用途に適していますか?」といった具体的な質問に対して、生成AIは瞬時に回答を生成できます。

この変化は、商品情報ページに求められる役割を再定義します。単なる情報掲載ではなく、生成AIとの連携を前提とした、よりインタラクティブな情報提供が重要になります。具体的には、FAQの充実、生成AIへの入力に最適な形式での情報整理、動画や3Dモデルを活用した視覚的な表現など、消費者の質問を促し、より深い理解を促す工夫が必要になります。

消費者の目的も、「情報収集」から「疑問解決」へとシフトします。企業は生成AIを活用して、消費者の質問に迅速かつ正確に回答し、最終的な購買意欲を高めるような、顧客体験を提供することが求められます。商品情報ページは、生成AIとの連携を通じて、より洗練された、顧客中心の情報源へと進化していくでしょう。

AI時代の消費行動の変化にマーケターは対応できるのか?

今回は、AIの登場による消費行動の変化の「情報収集・商品探索の変化:消費者の「出会い」を再定義」を取り上げてみましたが、私たちマーケターが考えないといけないことは、数多く存在しています。

私達マーケターの仕事は、「市場」に合わせて変化する仕事です。上手に、マーケティングの仕事を変化させて、AI時代に対応していきましょう。

著者プロフィール

株式会社マーケティングサイエンスラボ 本間 充プロフィール画像
株式会社マーケティングサイエンスラボ 本間 充
1992年花王株式会社に入社。社内でWeb黎明期のエンジニアとして活躍。以後、Webエンジニア、デジタル・マーケティング、マーケティングを経験。
2015年アビームコンサルティング株式会社に入社。多くの企業のマーケティングのデジタル化を支援している。マーケティングサイエンスラボ 代表取締役、ビジネスブレークスルー大学でのマーケティングの講師、東京大学大学院数理科学研究科 客員教授(数学)、文部科学省数学イノベーション委員など数学者としての顔も併せ持つ。

1992年花王株式会社に入社。社内でWeb黎明期のエンジニアとして活躍。以後、Webエンジニア、デジタル・マーケティング、マーケティングを経験。
2015年アビームコンサルティング株式会社に入社。多くの企業のマーケティングのデジタル化を支援している。マーケティングサイエンスラボ 代表取締役、ビジネスブレークスルー大学でのマーケティングの講師、東京大学大学院数理科学研究科 客員教授(数学)、文部科学省数学イノベーション委員など数学者としての顔も併せ持つ。

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