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AI時代のマーケティング解説:超パーソナライゼーション・マーケティングー新しいマーケティングのすすめ(58)ー

はじめに:マーケターが直面する「AIの波」

こんにちは。マーケティングサイエンスラボの本間充です。今、ビジネスの現場、特にマーケティングの世界では「AI」という言葉を聞かない日はありません。連日のように新しいツールが登場し、「AIを使わないと時代遅れになる」といった論調も目立ちます。

しかし、現場で日々顧客と向き合い、地道な調査や分析を担当されている皆さまの中には、「AIがすごいのは分かるが、具体的に自分の業務がどう変わるのかイメージが湧かない」「専門的な技術の話は難しすぎる」と感じている方も多いのではないでしょうか。

安心してください。AIは、マーケターの仕事を奪うものではなく、私たちの能力を拡張してくれる強力なパートナーです。特に、顧客を深く理解し、適切なアプローチを行う「パーソナライゼーション」の領域において、AIは革命的な変化をもたらしています。今回は、AI時代のマーケティング用語である、「超パーソナライゼーション・マーケティング」について考えます。

1. 「セグメント」から「個」へ:超パーソナライゼーションとは何か

これまで私たちが実践してきた「パーソナライゼーション」と、AI時代の「超パーソナライゼーション」は何が違うのでしょうか。

従来のマーケティングでは、顧客を「20代女性・会社員」「40代男性・管理職」といった「セグメント(集団)」で捉えることが主流でした。調査担当の皆さまも、こうした属性ごとの傾向を分析し、ターゲット層に向けた最適なメッセージを開発されてきたことでしょう。これはこれで、一定の成果を上げてきました。

しかし、デジタル化が進み、顧客の行動が多様化した現代において、同じセグメントに属していても、その興味関心や行動パターンはバラバラです。「20代女性」全員が同じ化粧品を欲しがるわけではありません。

ここで登場するのが「超パーソナライゼーション(Hyper-Personalization)」です。

これは、従来のセグメントではなく、顧客一人ひとり(N=1)の行動データ、購買履歴、さらにはその瞬間の状況(場所、時間、天気、直前の閲覧行動など)をリアルタイムに分析し、その人にとって「今、最も心地よい体験」を提供する手法です。

マス・マーケティングと超パーソナライゼーション(Hyper-Personalization)

2. なぜ今、AIが必要なのか

では、なぜ今、この「超パーソナライゼーション」が可能になったのでしょうか。それがまさに、AIの進化によるものです。

顧客一人ひとりの膨大な行動データを人間が手作業で分析し、リアルタイムに最適な提案を行うことは物理的に不可能です。しかし、AIであれば、以下のようなことが可能になります。
膨大なデータの瞬時処理
  ○Webサイトでの行動、アプリの利用状況、過去の購買データなど、多岐にわたるデータを
   瞬時に統合・分析します。
未来の予測
  ○「このページを見た人は、次にこの商品に興味を持つ可能性が高い」といった予測を、
   高い精度で行います。
コンテンツの自動生成
  ○顧客の好みに合わせて、メールの件名やWebサイトのバナー画像、表示するメッセージを
   自動的に出し分けます。

AIは、例えるなら「記憶力が抜群で、気配りのできる超一流のコンシェルジュ」が、顧客一人ひとりに専属で付いているような状態を実現するのです。

3. 調査担当者の役割は「データの解釈」へ進化する

ここまで読んで、「AIが全部やってくれるなら、私たちの仕事はなくなるのでは?」と不安に思われた方もいるかもしれません。

決してそうではありません。特にマーケティング調査を担当されている皆さまの役割は、これまで以上に重要になります。

なぜなら、AIは「データから傾向を見つけ出す」ことは得意ですが、「なぜそのような行動をとったのか」という人間の深層心理や感情を完全に理解することはまだ難しいからです。

AI時代の調査担当者には、以下の役割が求められます。
AIへの問いかけ(仮説設計)
  ○AIに何を分析させるか、どのようなデータを学習させるかという「問い」を立てるのは
   人間の仕事です。
定性データとの統合
  ○AIが示す行動データ(定量)と、インタビューやアンケートで得られる意識データ
   (定性)を組み合わせ、「行動の裏にある理由」を解明すること。
倫理的な判断
  ○データの使い方が顧客の信頼を損ねていないか、プライバシーを侵害していないかと
   いった倫理的なチェックを行うこと。

AIが提示するデータという「事実」に対し、人間ならではの洞察力で「意味」を与えること。これが、これからのマーケターの核心的な価値となります。

データの解釈は人の仕事として残り続ける

4. マーケティングの本質へ立ち返る好機

AIによる超パーソナライゼーションは、決して魔法の杖ではありません。導入すればすぐに売上が上がるというものではなく、地道なデータの整備や、顧客理解への深いコミットメントが必要です。

まずは、自社が持つデータの中で、「顧客のどんな行動がビジネス成果に結びついているか」を小さく分析することから始めてみてください。いきなり大規模なシステムを導入する必要はありません。

AI時代とは、テクノロジーが進化すればするほど、逆説的に「人間理解」が重要になる時代です。

「顧客は誰で、何を求めているのか」。

このマーケティングの永遠の問いに対し、AIという強力な武器を手に入れた私たちは、これまで以上に深く、正確に答えられる可能性を秘めています。

技術を恐れることなく、良きパートナーとしてAIを活用し、お客様一人ひとりに寄り添う真のマーケティングを実現していきましょう。皆様の次のアクションが、素晴らしい顧客体験を生み出すことを心から応援しております。

著者プロフィール

株式会社マーケティングサイエンスラボ 本間 充プロフィール画像
株式会社マーケティングサイエンスラボ 本間 充
1992年花王株式会社に入社。社内でWeb黎明期のエンジニアとして活躍。以後、Webエンジニア、デジタル・マーケティング、マーケティングを経験。u003cbr /u003e2015年アビームコンサルティング株式会社に入社。多くの企業のマーケティングのデジタル化を支援している。マーケティングサイエンスラボ 代表取締役、ビジネスブレークスルー大学でのマーケティングの講師、東京大学大学院数理科学研究科 客員教授(数学)、文部科学省数学イノベーション委員など数学者としての顔も併せ持つ。

1992年花王株式会社に入社。社内でWeb黎明期のエンジニアとして活躍。以後、Webエンジニア、デジタル・マーケティング、マーケティングを経験。u003cbr /u003e2015年アビームコンサルティング株式会社に入社。多くの企業のマーケティングのデジタル化を支援している。マーケティングサイエンスラボ 代表取締役、ビジネスブレークスルー大学でのマーケティングの講師、東京大学大学院数理科学研究科 客員教授(数学)、文部科学省数学イノベーション委員など数学者としての顔も併せ持つ。

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