通信大手キャリアの低価格新プラン 開始半年後のユーザー動向 ~24万人のアンケート結果から~
2021年春よりサービス開始した「通信大手キャリアの低価格新プラン」、「ahamo」「povo」「LINEMO」は、通信大手(「docomo」「au」「SoftBank」)の回線をリーズナブルな価格で利用できるということで、大きな話題となりました。
サービス開始に伴って既存プランの内容も変更されたこともあり、自分の契約プランの内容を見直した人も多かったのではないでしょうか。前回の記事では、低価格新プランのサービス開始直後の時点で、スマホユーザーの40~50%に「契約見直しを検討している通信プラン」があったこと、「ahamo」、「povo」、「LINEMO」の新規契約検討者が各キャリア内の他プランの契約検討者と同等以上いたことを紹介しました。この結果から、低価格新プランの加入者はまだまだ増えることが見込まれていました。
その後、低価格新プランの利用者数は、見込み通りに増えたのでしょうか?プラン間でどのような人の動きがあったのでしょうか?その後の変化について、4月と8月に実施したインテージの自主企画調査の結果でみてみました。また既に低価格プランを利用している人たちの特徴から、利用の背景について考察します。
1. 3つの低価格新プラン利用者は増えた?
図表1は、メイン利用のスマホにおけるキャリアと新プランのシェアを、サービス開始直後と開始約半年後の時点で比較した結果です。3つの新プランを合わせたシェアは、4カ月の間で3.2%から4.7%と増加しています。見込み通り、サービス開始直後から、約半年時点の間で低価格新プランの利用者はさらに増えたようです。
さらにプラン別に見ると、4カ月の間にシェアが最も増えたのは「ahamo」でサービス開始約半年時点では2.8%、「povo」が1.3%、「LINEMO」が0.6%という結果でした。「ahamo」がサービス開始直後でのリードをさらに広げた結果となっています。(サービス開始直後のシェア:「ahamo」1.8%、「povo」1.0%、「LINEMO」0.4%)
図表1
2. 低価格新プラン利用者は、どのプランから乗り換えた?
前回調査以降の4カ月の間に低価格新プランに乗り換えた人たちは、もともと、どのプランを利用していたのでしょうか。
図表2、図表3はサービス開始約半年時点で「ahamo」「povo」「LINEMO」を利用している人たちが、乗り換え前に利用していた上位3プランとキャリアです。(「ahamo」「povo」「LINEMO」「わからない・覚えていない」は除く)
それぞれの低価格新プラン利用者における前利用プランは、「ahamo」では「ギガホ・ギガホプレミア・ギガライト」(35.4%)、「povo」では「ピタットプラン 4G LTE」(41.3%)、「LINEMO」では「LINEモバイル」(22.1%)が最も多く、いずれの低価格新プランも、もともと同キャリア(「ahamo」は「docomo」、「povo」は「au」、「LINEMO」は「SoftBank」「LINEモバイル」)のプランを利用していた人の乗り換えが主だったことが見受けられます。(図表2)
図表2
同様に、低価格新3プランの前利用プランをキャリアごとにまとめたもので見てみると、同キャリア内での既存プランから低価格プランへの乗り換えがより顕著に確認できます(図表3)。「ahamo」「povo」「LINEMO」の3プランいずれも、低価格新プラン契約によるキャリア乗り換えは、活発ではなかった様子です。
その一方で、同じく図表3にて、他キャリアからの乗り換えを確認すると、3プランとも「楽天モバイル」から乗り換えた人が一定数見られます。今後、「楽天モバイル」の通信費無料キャンペーン期間終了が予定されており、一部の楽天モバイルユーザーの乗り換えが予想されますが、低価格新プランは、そんな人たちの受け皿となるのではないかと考えられます。
図表3
3. 低価格新プランは、どんな人が利用している?
現時点で既に低価格新プランに移行している人はどのような人なのでしょうか。低価格新プランを利用者と一般的なスマホ利用者の比較を通してその特徴をみてみましょう。比較には、約15,000項目に及ぶデータを連携させたターゲットのプロファイリング分析サービス、「生活者360°Viewer」を用いました。
図表4、図表5は、低価格新プランを利用者とスマホ利用者全体の男女構成比、年代構成比です。
性別をみると、低価格新プランを利用者では男性がやや多く、年代では20~30代が多い傾向があります。新プランの申し込みはオンライン専用である点からか、インターネット操作に比較的慣れている若年層が多くなっていると考えられます。
図表4
図表5
図表6は低価格新プラン利用者とスマホ利用者全体の平均年収・本人年収・お小遣いを比較した結果です。
低価格新プランは、大手キャリアの回線を格安で利用できるサービスではあるものの、実際に利用している人たちは、スマホ利用者全体と比べると、平均年収・本人年収・お小遣いともに高い水準にありました。
図表6
図表7は低価格新プラン利用者に特徴的だった消費意識です。「技術の進歩で世の中はより良くなっていく」「最新の技術がわかる先進的な人と思われたい」「購入からアフターフォローまで一通りをインターネットでおこなって価格や手間をおさえたい」といった意識が強い人たちが、スマホ利用者全体と比べて、多くみられました。
サービス開始から約半年時点で低価格新プランを利用している人たちは、テクノロジーや技術に関心が高く、比較的ITに対するリテラシーが高いことがわかります。さらに、インターネット利用を通して金額や手間をおさえることに前向きであることから、低価格新プランの「オンライン専用でしか申し込めないが、料金が格安である」といった特徴が魅力的であったようです。
図表7
前回の記事では、低価格新プランを検討している人は主に低価格を検討理由としてあげている、という調査結果をご紹介しました。実際に低価格新プランを利用している人の特徴からは、「比較的金銭には余裕があるが、オンライン専用申込に対する敷居が低く、それで価格を抑えられるのならば、とスイッチした人」が、サービス開始から約半年の現時点においては多いと言えそうです。
以下より「ahamo」「povo」「LINEMO」それぞれの「生活者360°Viewer」の結果がご確認できます。ご興味のある方はぜひご活用ください。
この記事では、サービス開始から約半年が経過した時点での低価格新プランの利用者数、乗り換え前利用プラン、利用者のひととなりを確認していきました。目まぐるしく通信プランが変わっていく中で、生活者がどのように動いているのかが少しクリアになったのではないでしょうか。
今後も、低価格新プランのサービス開始に続き、「povo2.0」のアップデート、「楽天モバイル」の通信費無料キャンペーン期間終了など通信プラン情勢は日々変化を絶やさない様子です。
どんな人が、どのプランを選んでいくのでしょうか。
今後も通信キャリアの動向、ユーザーの意識の変化に注目していきます。
今回の分析は、2021年4月26日 ~ 5月16日に実施した、インテージの自主企画「携帯電話に関する基礎調査 4月度」、2021年8月16日 ~ 8月30日に実施した「携帯電話に関する基礎調査8月度」、インテージの分析サービス「生活者360°Viewer」を元に、インテージの通信業界チームのメンバーが行いました。
【インテージの「携帯電話に関する基礎調査」】
携帯電話に関する基礎調査は、自社モニターに対して年3回、毎回20万サンプル超の大規模アンケートを実施し、利用通信キャリアや保有スマホ端末情報など通信領域の細やかな属性情報を取得しています。
保有機種情報数:1,600機種以上 ※携帯電話端末・タブレット含む
対応実績:1,900件以上
【インテージの通信業界チーム】
インテージでは、通信業界を専門とするリサーチャーが製品開発やリニューアル、ユーザーの利用実態とその変化など、開発から上市、浸透の各プロセスで多数の調査を実施し、業界の皆様のマーケティング活動をご支援しております。数多くのマーケティング支援で培ったノウハウとインテージの保有する多様なソリューションを結集することで、高品質でスピーディーなアウトプット提供を実現し、お客様のビジネス変化に柔軟に対応しています。
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