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【第二弾】新しいマーケティングを考える
~生活文脈をジャーニーに落とし込むと何が見えてくるのか?~アフターレポート

2022年7月12日に、「新しいマーケティングを考える~生活文脈をジャーニーに落とし込むと何が見えてくるのか?~」をテーマにリアル(オフライン)セミナーを開催。
元花王(現マーケティングサイエンスラボ) 本間氏、ニューバランスジャパン 鈴木健氏が登壇し、インテージ 田中がモデレーターを務めた。

カスタマージャーニーに至るまでのマーケティングの旅

インテージ田中:はじめに今回のタイトルにもある「カスタマージャーニー」という言葉からあらためて眺めていきたいと思いますが「カスタマージャーニー」とは【お客さまが商品やサービスに出会い、認知し、興味や関心を抱き、調べ、購入する】、という一連のプロセスを指しているとよく言われています。

この表はカスタマージャーニーにちなんで、今までの「マーケティングの旅」が思い出されるようなキーワードを並べてみました。1990年初頭頃まではマス、テレビ中心の大量出稿が活発な時代でした。
私はその頃広告代理店系の調査会社にいましたが、当時、代理店ではターゲットをより細かくセグメンテーションして、商品・サービス開発や広告コミュニケーション、つまりはマーケティングをやるべきではないのか?という話題が目立ち始めていたと覚えてます。メーカーさんでもターゲットをより詳しく理解をした上で商品やサービス開発を行うという気運も高まっていました。「ストーリー」という言葉もこの頃で、マーケティングがパーソナライズされる兆候が見えてきた時代だったかと思います。

お二人はこの表を見てどう思いますか?

鈴木:私も当時は代理店にいたのですが、印象としてよく覚えているのは流通の力が強くなってきたということですね。メーカーはプライベートブランドと戦わなきゃいけない、ということが前提でした。「買う視点」っていうのがすごく重要で、テレビの認知獲得や印象醸成だけでなく、買い場とか売り場でいかにコミュニケーションをとるかということが重要になっていくのでは、と言われていました。

鈴木 健 株式会社ニューバランスジャパン マーケティング部ディレクター 
1991年広告代理店の営業としてスタートし、I&S/BBDOでストラテジックプランナーを経て消費財メーカーのマーケティング企画および調査を担当。2002年ナイキジャパンでナイキゴルフの広告、Web、PRを担当し、その後同社でウィメンズトレーニングのブランドマネージャーを経験。2009年にニューバランス入社し、ニューバランスブランドのPRおよび広告宣伝、販促活動全般を手掛ける。2017年-19年に直営店、ECを含めた直販ビジネス(Direct To Consumer)の責任者を兼任し、2020年より現職

本間:そうですね、花王がアタックを売り始めた1988年には「希望小売価格」という制度がまだ残っていて、メーカーが流通に販売価格を伝えてよかったんですよ。 それが廃止になり、はじめは800円で売り始めていたアタックが、僕が入社するときは498円代に落ちていて、今は安いお店だと、278円代とかだと思うんです。アタックの中身は減らしていないのに(笑)ここまで値段が変わるのは、そういった時代の変化が大きな原因になりますね。

本間 充 株式会社マーケティングサイエンスラボ
1992年花王株式会社に入社。社内でWeb黎明期のエンジニアとして活躍。以後、Webエンジニア、デジタル・マーケティング、マーケティングを経験。2015年アビームコンサルティング株式会社に入社。多くの企業のマーケティングのデジタル化を支援している。マーケティングサイエンスラボ 代表取締役、ビジネスブレークスルー大学でのマーケティングの講師、東京大学大学院数理科学研究科 客員教授(数学)、文部科学省数学イノベーション委員など数学者としての顔も併せ持つ。

鈴木:デジタルが出てきた2000年代は今で言うWeb3やNFTのような、一部の人だけがすごく盛り上がっていたものでした。これがビジネスになるの?と懐疑的な意見もありました。しかし、先ほどの田中さんのお話にもあった通り、消費者やマーケティングがパーソナライズ化され、そして変化していく中で、うまくフィットしたのがデジタルだったのだと思います。

田中:ダイレクトメールなどのOne to oneマーケティングが盛り上がり始めたのもこのあたりですよね。多くの新規顧客を獲得するよりも、すでにつながっている顧客にダイレクトに伝えた方がコスト的にも、将来価値的(LTV)にも良いのではないか、という概念が一般的にはなってきたのですが、まだまだデジタル技術のマーケティングへの活用が追いついてなかったという記憶があります。この後に、デジタルと共にCRMという言葉も出てきて、そこで【カスタマージャーニー】や【生活者起点】という言葉もより身近になってきた気がします。

生活文脈をカスタマージャーニーに落とし込むと何が見えてくるのか?

田中:さて、ここでタイトルにもさせていただいているカスタマージャーニーのお話をお伺いしたいと思います。

鈴木知るギャラリーの記事 にも書かせていただいたのですがマーケターも調査会社の方もn=1を追いかけることって、抵抗がある方がいるのだと思ってます。どれだけ代表性があるの?ビジネスに有益な情報なの?という疑問が浮かぶ方もいるでしょう。 ただし、カスタマージャーニーは描写することが目的だと思われがちですが、「どうしてこうなったのか?」というお客さまの行動の前後関係を掴まないと想像ができないので、その情報を知ることが一番重要なのです。
また、カスタマージャーニーは購入がゴールではありません。購入はひとつの経路や通過点でしかなく、それを元にしてお客さまが何をしたいのかがわからないと商品の価値や意味を理解できないと思います。
メーカーは購入をゴールとして見てしまいがちですが、カスタマージャーニーという言葉はその視野を広げてくれるので、いい言葉だと思います。

カスタマージャーニーを見ると本当の競合も見えてくる

鈴木:この図は、私が良く使っているカスタマージャーニーの分類です。

カスタマージャーニーは「買う前の情報を調べる」というイメージがあるかと思いますが、
実際は、
・どう実現したか
・価値をどう見つけているか
・再現性があるか
・他の人にも似たようなことが当てはまるか
・その機会はその人にとって何度も訪れるか
を見極めた上で、カスタマージャーニーに落としていくことが大事だと思います。

田中:なるほど。知るギャラリーの記事 の中でも書かれていましたが、市場性があるのか、再現性があるのかといったことも整理しながらカスタマージャーニーを描写していく感覚なのでしょうか。

鈴木:そうですね。さらに、我々は顧客のWHO&WHAT(だれが、なにをしたか)に注目しがちですが、行動を変えるには背景を知らなければいけないので、HOW&WHY(どのように、なぜしたか)にもっと着目するべき、ということですね。

田中:そこを突きつめていくと、施策の形に落とし込めるのですね。

鈴木:はい、あと競合の正体がわかりますね。競合っていうのは、単純な競合他社のことではなく、「価値を損ねるものは何なのか」という意味です。 例えば、【ダイエット】の競合ってなんだと思いますか?正解は、【食べてしまうこと】です(笑)。そして【ダイエットを辞めてしまう】ことですよね。そこを見極めると、価値を見出して継続してもらうにはどうしたらいいのか、見えてくるはずです。

本間:グループインタビューでも、つい「なぜ買ったのですか?」という質問をしてしまいがちですよね。それって知らず知らず「私たちの製品特徴を理解していますか?」という質問に変わっていってしまう。現実に近いカスタマージャーニーマップはそうではなくて、「どうして欲しいと思ったのですか?」そして「買った商品で満たされていますか?」という質問もするべきだと思います。 その返答でお客さまが満たされたマーケティングコミュニケーションやマーケティングプランニングができているのか、という確認作業にもなります。

お客さまの本当のゴールはなにか?

田中:自身の自戒も込めてですが、今まで私は広告宣伝のコミュニケーションのプランニングを目的としてカスタマージャーニーを作っていて、いかに有効なコンタクトポイントを見出し、広告に接触してもらい購入に至ってもらうのかというストーリーを考えていたのですが、本日のお話を聞いていると、もっともっと長いスパンで、買う前、買った後のマインドすらも視野にカスタマージャーニーを考えているという点が重要なのだ、とあらためて感じました。

鈴木:そうですね、カスタマージャーニーを作ることを目的にやっているのではなく、どういう価値観を持ってその行動をしているのか知りたい、といったところと、実際の施策にどう活かせるかというところを視点にしています。

本間:一方で買わなかった理由ってカスタマージャーニーの裏なんですよね。どこで離脱してしまったのか、買いたかったけど探せなかったという方は一定いるはず。なのでそこの差を埋められるかどうかも重要なポイントだと思います。

田中:「新しいマーケティング」という言葉をキーワードに生活者理解のアプローチやマーケティングのプロセスの再定義を行っていますが、お二人のお話からカスタマージャーニーの目的やアプローチ、さらには施策に繋がる本質的な活用についても見つめなおすことができました。本日はありがとうございました。


2022年9月2日(金)に【第三弾】新しいマーケティングを考える~コトラー論に沿って生活者、そしてマーケティングの変化を語る~を実施。詳細・申し込みはこちら

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