オフライン調査のキホン①~多様な調査手法とデジタル技術活用
日本でインターネットが登場して早30年。調査の世界でも、インターネットを通して実施する「オンライン調査」が主流となりました。一方、目的によっては人やモノが介在して行う「オフライン調査」が有効です。そこで、この記事では、オフライン調査を使いこなす上で知っておくべきポイントと、近年のトレンドをお伝えします。
目次
1.オフライン/オンライン調査の代表的な手法
オフライン調査とは、調査対象となる人やモノとの直接的な関わりを通じて、生活者の意識やニーズ、嗜好、行動要因をつかむ調査です。実際に商品やサービスを使用した際の感想や要望、評価をダイレクトに得られ、特に見る・触れる・味わう・感じるなどの体験に基づく調査テーマに適しています。さらに、機密性の高い情報を扱う際にもセキュリティ対策の観点で有効な調査となっています。
また、近年は生活者実態をより深掘りするために、オフライン調査とオンライン調査を掛け合わせた調査方法も増えています。
この記事では定量オフライン調査についてご紹介していきますが、定性オフライン調査については、以下の記事で詳しく説明していますのでそちらをご覧下さい。
インタビュー調査でより深い生活者の理解を
デプスインタビューの特徴と実践のコツ
2.定量オフライン調査の代表的な手法
上述の通り、定量オフライン調査には様々な調査手法が存在しています。代表的な調査手法と、どのようなときに使うのかを以下に紹介します。
以上が定量オフライン調査の代表的な調査手法です。また、近年ではデジタル技術の活用により、実施方法も広がりを見せています。具体的にどのような調査が行われているのか、次の章では、近年のトレンドを紹介していきます。
3.定量オフライン調査における近年の調査方法トレンド
近年増えている、デジタル技術を活用した定量オフライン調査。今回はその中から3つのパターンをご紹介します。
①デジタル技術活用による協力率の向上
<郵送調査×ネットリサーチのハイブリッド>
郵送調査のアンケート用紙にオンライン回答用のURLを掲載し、紙とオンラインのどちらからでも回答可能な状態にします。
アンケート用紙による物理的な認知効果と、回答方法を選択できる手軽さによって協力率向上に効果があります。また、紙だけの郵送調査と比較して、オンライン回答は電子的に即時収集できるため、回答傾向の早期確認や返送費・入力費のコスト削減にも繋がります。
➁デジタル技術活用による調査の利便性向上
<会場調査(CLT)×オンラインデプスインタビュー>
会場調査(CLT)に協力後の対象者に、オンライン会議システムを活用したデプスインタビューを実施します。これにより、遠隔でのインタビュー実施やインタビューの視聴が可能になり、以下のようなメリットが得られます。
- 遠隔でデプスインタビューを行うメリット
デプスインタビューは対象者が多い場合にインタビューアー側の負担が大きくなります。遠隔対応することで複数のインタビューアーが会場外から参加できるため、インタビューアー側の負担軽減につながり、多くの対象者を効果的にインタビューすることができます。
- 遠隔でデプスインタビューを視聴するメリット
デプスインタビューの内容を会場外(自宅やオフィス)から視聴することができ、会場までの移動時間や費用が削減されます。また、多くの関係者が参加しやすくなることで複数の視点からインタビューを観察でき、多角的に情報を得ることができます。
➂デジタル技術活用による生体データ収集
<オフライン調査×生体データ>
デジタル技術の発達により、生体データを少ない負担で高精度に収集し、マーケティング活動に活かす事例が増えています。マーケティングリサーチにおいても、非言語的、無意識的な面から生活者の感情や感覚を理解するアプローチとして、生体データを活用する機会が増えています。
生体データを収集する際には、繊細な生体データを正確に収集すること、また、プライバシーに配慮して収集することが重要になってきます。このような面からも、デバイスの装着・使用、および収集した生体データの管理を直接的に行えるオフライン調査は、生体データ収集に適した調査方法になります。
ここからは、オフライン調査において「視線」「表情」「心拍・睡眠」といった生体データを収集した手法例を紹介していきます。
- 店頭調査×視線データ
視線を計測する眼鏡型の機材「アイグラス」を装着しながら実際の店舗にて買物をしてもらうことで、買物時の視線を計測する手法です。視線データの可視化をおこなうことでターゲットユーザーや生活者の買物行動把握につながり、店頭プロモーション・商品(パッケージ)の視認性検証といったマーケティング課題に対して無意識下の視認商品、視認場所、視認時間、視認回数などの検証も行えます。
- HUT×心拍・睡眠データ
リストバンド型活動量計などのウェアラブルデバイスを装着し、日常生活における心拍数、睡眠パターン、運動量などの活動データを計測する手法です。 例えば、実生活の中で、日記形式で日々の生活情報を記録してもらいながら、心拍・睡眠データを計測することで、「毎日の飲食状況と気分・感情のストレスレベルの相関」や「睡眠パターンや運動量と気分・感情のストレスレベルの相関」といったものを明らかにします。それにより健康・医療・介護など各分野における商品・サービス開発時の参考データや学術研究の基礎資料にします。
4.オフライン調査を実施する場合の3つの注意点
活用範囲が広がっている定量オフライン調査。調査結果をより精度高く得るために、注意すべきポイントを3つご紹介します。
注意点1.環境バイアスをコントロールする
調査の場所、時間、曜日、天候、季節など調査環境の違いによって回答内容に差が生じます。
例えば、食品スーパーで来場者調査をおこなう際、平日・休日/朝・昼・晩/店舗立地の違いなどによって来場者の属性が異なります。そのため、調査前にどのような環境バイアスが生じるかを想定し、影響を最小限に抑える調査設計にすることが重要です。
注意点2.誘導バイアスを防止する
オフライン調査は対面コミュニケーションによる調査が特徴です。しかし対面だからこそ調査運営側(調査員や調査スタッフ)のコミュニケーション方法によって対象者の回答内容を誘導してしまう事があります。
例えば、純粋想起で質問すべき調査項目において、回答のヒントを伝えてしまうと、どの対象者も同じような回答内容になってしまう可能性があります。そのため、調査側は調査方法・調査ルールを統一し、継続したトレーニングによって誘導バイアスを防止することが重要です。
注意点3.機密性の担保
オフライン調査は機密性の高い調査テーマを実施することが多いため、調査の各工程でセキュリティ対策をおこなう必要があります。特に人的対策、物理的対策、技術的ネットワーク対策が重要になる為、調査運営側は調査ノウハウだけでなく情報セキュリティに関する正しい知識を持ち、ルールに則った業務遂行が求めまれます。
5.まとめ
この記事では、定量オフライン調査について、手法のバリエーションや、デジタル技術を活用する最近のトレンド、調査時の注意点などをお届けしました。
次回は「オフライン調査の方法とコツ」と題し、正しい評価を得るために重要となる「現場」での工夫をご紹介する予定です。効率的に調査を実施し、高精度で信頼性のあるデータを取得するためには、「現場」での細やかな心配りが欠かせません。調査の「現場」でどのような工夫がなされているのかをご紹介します。
インテージでは、今回ご紹介させていただいた手法をはじめ、定性・定量関わらず多くのオフライン調査を実施しております。難しいと思われるような調査も、オフラインだからこそ実施可能となるものもありますので、ぜひお気軽にご相談ください。
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