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パッケージデザインの役割と評価ポイント~アンケート調査の質問例と活用例①-1

商品パッケージはブランドの「顔」であるとともに、生活者に最も近いコミュニケーションツールでもあります。商品の購入検討にはじまり、使用から廃棄に至るまでのすべてのプロセスにおいて、生活者と接触する機会が多く、ブランドへの理解や愛着といったブランド資産の形成にも影響を与えます。
この【前編】では、マーケティング戦略の中で重要となる「パッケージデザイン」について、その役割や良いデザインをつくるために押さえておくべきポイントをご紹介します。

当記事は小川亮氏よりご許可いただき、下記著書を基にしています。


【後編】のパッケージデザイン評価調査の質問例・調査フロー解説記事へはコチラから。

パッケージデザインの役割

商品パッケージの役割としては、製品の基本的な情報(原材料や使用方法、保存方法など)の伝達や製品の保護などが挙げられますが、ここではパッケージデザインに着目します。マーケティング戦略におけるパッケージデザインが果たすべき役割は、大きく分けて以下の3つです。

① コンセプトの伝達

どのような優れたコンセプトをもとに開発された商品であっても、商品そのものからそのコンセプトが伝わらなければ意味がありません。また、生活者は店頭において1つ1つの商品をじっくり吟味して選ぶ時間もないことがほとんどです。そこで、パッケージデザインはその商品の良さや生活者にとってのベネフィットを短時間で正確に伝える必要があります。棚を見まわして商品を絞り込むほんの数秒のうちに、商品のベネフィットを伝え、手に取ってもらうことが重要な役割となります。

② 商品価値の創造

パッケージデザインは見た目の評価という外観的な価値にとどまらず、商品自体の価値をも創造します。
優れたパッケージデザインは商品そのものに対する評価を高める効果もあることがわかっています。アメリカの学者Louis Cheskinは、消費者が商品の外観やパッケージに抱いた印象や感覚を、無意識のうちに商品自体の評価へと転移させる「感覚転移(Sense Transference)」という現象を発見しました。中身が同じブランデーであっても、高級感のあるラベル瓶で出されたブランデーの方が、そうでない方と比較して「おいしい」と評価され、パッケージデザインの見た目での評価が中身の評価へとつながるのです。「おいしそう」「効きそう」など、カテゴリーに求められる基本的な価値や、「コクがありそう」「目が覚めそう」などその商品で訴求したいベネフィットをパッケージデザインで表現することにより、商品の価値を創造することができます。

③ ブランド資産の形成

パッケージデザインの中には、ネーミングやロゴ、ブランドカラーなど、そのブランドを象徴するデザイン要素が集約されています。印象的なデザインは心に残りやすく、色や形だけでそのブランドを想起させたり、ブランド名からそのデザインが頭の中に思い浮かぶといった、ブランドの資産を形成します。定着させたいブランドの世界観やイメージをパッケージデザインに反映することで、そのイメージを顧客へ定着させていくことができます。

パッケージデザインの評価ポイント

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① 目立つか

販売チャネルにもよりますが、多くの場合商品は競合商品とともに店頭へ並べられます。派手な色合いで単体としては目立つデザインであっても、他の商品もみな同様であった場合には商品棚では目立たず、逆にシンプルなデザインのほうが目立つこともあります。そのため、競合商品と比較して目立つかどうかが大切です。

② らしさがあるか

「そのカテゴリーらしい」
消費者は店頭でまず色や形など全体的な雰囲気で大まかにその商品を認識するため、「そのカテゴリーらしさ」がない場合には気づかれず、検討の対象にすら入ることができない可能性があります。牛乳は白や青、バターの場合には黄色のイメージなどです。あえてこのカテゴリーらしさから外すことで独自性を持たせるという戦略も考えられますが、その場合にはそのカテゴリーであることを消費者に認識してもらうための取り組みも併せて検討することが大切です。

「そのブランドらしい」
既存ブランドの場合には、それまでに培ってきたそのブランドのイメージがあります。同一ブランドでデザインのテイストなどをあわせておくことで、「あのブランド」と認識しやすくなり、ブランドイメージを強化することへもつながります。リニューアルの際は、がらりとデザインを変えるのは危険です。何回かのリニューアルを繰り返し少しずつデザインを変えていくことで、既存ユーザーをつなぎとめつつ、新鮮さを保つことができます。

「その会社らしい」
消費者との接点が多い商品のイメージがそのままその会社のイメージにもなります。自社の顔として相応しいデザインかどうかも考慮すべき点となります。

③ 独自性があるか

色やロゴ、イラストなど独自性があるパッケージデザインは消費者の記憶に残りやすく、ブランド想起を助ける重要な要素となります。特定の商品を思い浮かべたときに頭の中にイメージする、ブランドのアイデンティティーとなります。広告や店頭コミュニケーションとも連動して認識してもらいやすくなるメリットもあります。

④ コンセプトが伝わるか

パッケージデザインは、その商品が消費者に与えるベネフィットを的確に表現していることが大切です。
訴求ポイントを絞り、コピーだけでなくイラスト・写真・形状・素材などデザイン要素をフル活用し、消費者の五感に訴えることで、店頭でのわずかな時間で消費者にベネフィットを納得してもらうことで商品のトライアルへとつながります。
特に新商品の場合や、広告投資が少ない場合には商品パッケージでの訴求が重要なポイントとなります。

⑤ 好まれるか

「パケ買い」という言葉があるとおり、パッケージのデザイン自体が購入の決め手にもなり得ます。ターゲットとなる消費者に好まれるデザインであることが、店頭で選ばれるための重要なポイントの1つであるとともに、愛着が湧くようなデザインは消費者との絆を深め、ブランドロイヤリティを高めてくれます。

この5つのポイントのバランスは、商品開発の目的や、新商品なのかリニューアルなのかという点、販売チャネルや広告戦略などによって変わってきます。

「デザイン」はともすればセンスや好みで語られがちですが、パッケージデザインはコンセプト開発・コミュニケーション・ブランディング・競争戦略といったマーケティング戦略に非常に大きな関わりを持つ重要な役目を果たします。ここで紹介したパッケージデザインの評価ポイントを押さえておくことで、デザイン開発の目標設定の際やデザイナーからの提案に対して判断する基準を明確にすることができ、論理的に説明することが可能となります。
【後編】では、「売れるパッケージデザイン」を作るためのアンケート調査の活用について、具体的な質問例や調査フローをご紹介します。 

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