

通信キャリア、カード会社、流通、鉄道・航空など、さまざまな業界から多種多様なポイントやマイレージが発行されており、「ポイント大国ニッポン」と呼ばれるようになって久しい。
日本のポイント・マイレージ関連の発行・残高が「兆の単位」の規模に達しているとの情報もある。では、生活者はどれほどポイントを利用し、どんな行動をとっているのか。本コラムでは、インテージの最新の調査結果をもとにその実態を探っていきたい。
まずは、日本が“ポイント大国”と呼ばれる背景を押さえるため、 生活者へのアンケート調査の結果をもとに確認して行きたい。
アンケート対象者のうち、ポイントサービス利用者 は91.9%となった 。また、多くの人が複数のポイント サービスを利用しており、4種類以上のポイントサービスを利用している人が47.7%と約半数を占めていた。
ポイントサービスのカテゴリー別集計(各ポイントブランドにて聴取した後カテゴリー別※に集計)では、通信キャリアのポイント が86.9%、ECのポイント が75.0%となった(図表1)。
年代別に確認すると、リアル流通のポイントサービス(スーパーや量販店等)では50代~70代での利用が多く、ECでは、30代~40代が多く利用していることが読み取れる。
図表1

※カテゴリー別集計の詳細
通信キャリアのポイント:dポイント、P ontaポイント、PayPayポイントなど
クレジットカード会社のポイント:Vポイント、永久不滅ポイント、エポスポイントなど
リアル流通のポイント:WAON、nanacoなど
ECのポイント:Amazonポイント、楽天ポイントなど
航空・鉄道のポイント:ANAマイレージ、JALマイレージ、JREポイント、WESTERポイントなど
では、何のために生活者がポイントサービスを利用しているのか、その目的を確認したのが(図表2)である。
目的の1位は漠然と「節約のため」(46.9%)が挙がり、2位は実際に「商品やサービスの代金に充当するため」(39.9%)と、その行動が選ばれた。3位「商品と交換するため」(19.3%)と特典を得るための行動が選ばれている。
年代別に確認すると、30代、40代のファミリー層では「節約のため」53.5%(TOTALと比較し6.6ポイント差)。10代、20代の若年層では「ご褒美の消費のため」17.2%(同5.4ポイント差)が特徴的であった。
一方、2位の「商品やサービスの代金に充当するため」は、年代が上がるにつれ割合が増加する傾向にあり、70代では49.8%(同9.9ポイント差)になった。
50代以上のミドルやシニアと比較し若年層は貯めたポイントをご褒美消費としているようだ。またファミリー層は日々の節約のため、シニアは日々の支払いに充当している傾向があり、年代別にポイントの利用目的に違いが見えてきた。
図表2

続いて、節約やご褒美商品の獲得のために、生活者はどのようにポイントサービスを使い、貯めているのか、その具体的な利用実態を確認していきたい。
使い方では、「貯まったポイントは こまめに使う」のTOP2(まったくその通りだ+その通りだ)が全体の45.7%、 「ポイントを貯めてまとめて使う」TOP2が53.5%であり、こまめに使う派と、まとめて使う派が約半数ずつ存在していることが分かる。
また、ポイントサービスには有効期限が設定されているタイプもあるが、「有効期限ギリギリにまとめて使う」はTOP2で23.6%に留まっており、生活者が計画的にポイントサービスを利用している姿が見て取れる。
ポイントを寄付に充当できるプランも多数見かけるが、こちらのTOP2は8.4%と少数派であった。
図表3

ここからは企業・店舗視点を採り上げる。ポイントサービスは、主に顧客との関係構築やリピート促進のために広く活用することが多い。
では、企業や店舗が発行するポイントで生活者の行動は変化するのか、ポイントによる行動変容の実態を調査してみた。(図表4)
「ポイント利用可否により店舗を変更する」人はTOP3(ほぼ毎回+よくある+どきどきある)で52.6%。「ポイント特典で商品・ブランドを変更する」人はTOP3で30.5%であり、生活者はポイント獲得をメリットとして、店舗や商品をスイッチしている。
また、「手持ちポイントで予定外の商品購入」はTOP3で34.1%、「キャンペーンで予定外の商品購入」はTOP3で43.9%と、ポイント獲得をきっかけ に消費が拡大していることも分かる。
さら に、セール やキャンペーン期間に合わせて購入を待つ行動も見られる「ポイントUP期間まで待って商品購入」はTOP3で57.6%と購入タイミングを変えるなどの行動変容も発生している。
一方で、 「還元率が高いポイントでの支払い」はTOP3が53.6%に上っていることから、生活者は複数のポイントを保有しており、還元率に応じて取捨選択をしている様子がうかがえる。
これらの結果から、ポ イントサービスが、企業や店舗にとって、自社の商品やブランド、店舗への誘導にある程度有効であることが分かる。
図表4

前章では、ポイントにより生活者の購買行動に変化が生じることが明らかになった。では、生活者がポイントを利用できることで、店舗や商品(ブランド)との関係性はどのように変化するのだろうか。(図表5)
まず、店舗に対しては、ポイントが貯まることで「購入先(お店)への親近感や特別感が高まった」TOP2(非常にそう思う+ややそう思う)42.0%、「新店へ行く動機になった」TOP2が41.0%であり、ポイントにより店舗と顧客の親近感や特別感が高まり、来店動機が向上することが分かる。
商品に対しては、ポイントが貯まることで「特定ブランドへの親近感や特別感が高まった」TOP2が24.9%、「新商品・ブランドを購入する動機になった」TOP2で40.5%であり、ポイントによるブランドとの親近感や特別感の醸成は4分の1 に留まるが、新商品・ブランドへの誘導に関しては一定の効果があると考えられる。
このように、店舗や企業がポイントを発行することにより、ポイントを受け取る顧客との関係性(親近感や特別感)が深まることで、リピート購入来店や、店舗、企業の売上拡大に貢献している姿が見てとれる。
図表5

では、どのようにポイントサービスを活用して、生活者の行動変容を促すべきであろうか。多くのポイントの発行体は、ポイントユーザーのメールアドレスやLINE、SNSアカウントなどの情報を保有しており、直接顧客へアクセスすることが可能である。
図表6は生活者がアプリやメールで配信されるクーポンやおすすめ 情報をチェックしているかを調べた結果である。生活者の69.4%(いつも詳細まで確認している+いつも確認している+ときどき確認している)が、クーポンや情報を確認している。
図表6

また図表7は、提供されたクーポンや、おすすめ情報をキッカケに購入や契約に至ったことがあるかを調べた結果である。
全体では、55.5%がクーポンや提供された情報により、購入や契約に至っている。10代・20代では、66.3%が購入や契約に結びついていることから、この傾向は若年層ほど高いことが分かる。
図表7

このように、配信情報を「確認している」層は約7割にのぼり、そのうち過半が購買・契約に結びついた経験を持つ。つまり、配信設計次第で行動を動かす重要な接点になり得る。それだけでなく、継続的な価値提供によって生活者との信頼関係を育てることができる。“保有データ×配信設計(ターゲティング)”で、単なる購買促進にとどまらず、長期的な関係性を築くことが鍵となるだろう。
「ポイント大国ニッポン」。今や生活者の大半が複数のポイントを保有し、節約・ご褒美・支払い充当など、ライフステージに応じて多様な価値を見いだしている。
自社のポイント制度は、還元率だけでなく、どのターゲットに対してどのような行動変容(来店・試し買い・単価アップ・ロイヤルティ向上)を期待するのかを明確に設計することが重要である。
そのうえで、アプリやメール、SNSを通じたクーポン配信やおすすめ情報を組み合わせ、キャンペーンやポイントアップ期間を“買い場づくりの起点”として計画的に活用していく必要があると考える。
ポイントサービスを単なる値引きのためのコストと捉えるのではなく、顧客データを活かしたコミュニケーションと関係性づくりの投資と捉え直すことが、これからのマーケターに求められるだろう。
※今回の調査で明らかになった詳細なデータやチャートは、無料のダウンロードレポートでご覧いただけます。レポートのみにて提供している項目は以下です。ぜひ、ダウンロードしてご覧ください。
<ダウンロードレポートのみ記載事項>[
・ポイントサービスの利用状況(過去1年間)
・ポイント利用(貯める/使う)タイミング
・ポイント利用(貯める/使う)頻度
・過去1年間におけるポイントサービス利用の変化
・ポイントで予定にない買い物をした経験
・「ポイント経済圏」用語認知度
・共通ポイントでの「支払い」「ポイント割引」の実態
・ポイントサービス利用時の課題
・ポイントサービスの改善点
ポイントサービスブランド別(楽天、d、PayPay、V、Amazon、WAONなど)の集計や、メインで使用しているポイントサービスのカテゴリー別(通信、クレジットカード、流通、EC、航空・鉄道など)集計の準備があります。ご希望の方は、弊社営業担当又は問い合わせフォームまでお問合せください。
【インテージのネットリサーチによる自主調査データ】
調査概要
調査地域:日本全国
対象者条件:15~79歳男女個人
標本抽出方法:キューモニターより適格者を抽出
ウエイトバック集計:あり※
※性年代構成比を、2020年度実施国勢調査データをベースに、人口動態などを加味した2024年度の構成比にあわせてウエイトバック
標本サイズ:合計:n=4942 (ポイントサービス利用者)
調査実施時期: 2025年11月21日(金)~2025年11月25日(火)
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