
昨今の物価高や円安など、長引く経済の停滞、加えて、新型コロナウイルスの影響により、消費者の価値観が変化し、物質的なものよりも特別な体験や感動を求める傾向が強まっています。
Z世代を中心に広がっている「タイパ(タイムパフォーマンス)意識」も、“時短”が注目されがちですが、根本的な価値観に「時間を大切にしたい」があり、消費した時間の充足感も重要視されているようです。 そこで今回は、過程を楽しむ「プロセスパフォーマンス意識*(以後、プロパ意識と表記)」について、関係の深いカテゴリーや世代、行動をインテージの消費者パネルSCI®のモニターに調査してみました。
*プロセスパフォーマンス:時短を求めることと、じっくり時間をかけたいことの二極化が進む中で、プロセスを楽しみたいという欲求を満たす、プロセスを満足感のあるパフォーマンスにできるかどうかという考え方
24年4月1日 清田産業株式会社
「2024年食市場のトレンド予測「HITキーワードBest10」」より抜粋
著者:株式会社ひめこカンパニー代表取締役 女子栄養大学客員教授 山下智子
https://www.kiyota-s.com/kiyota-diary/2154
図表1は、商品カテゴリーごとに、購入時に意識することを聴取した表です。
ここでは「「丁寧な暮らし」を送れるものを選ぶ」「手間がかかっても、楽しさを感じたり気分転換になるものを選びたい」「手間がかかっても、美味しさや効果/効能を実感できものを選びたい」といった項目を、プロパ意識を重視する傾向として定義しました。
商品カテゴリー間で大きな違いはないものの、比較的、ヘアケア用品・スキンケア用品がプロパ意識を重視する傾向が高いカテゴリーといえそうです。
図表1
ここで、比較的プロパ意識を重視する傾向が高いスキンケア化粧品について、「手間がかかっても、美味しさや効果/効能を実感できるものを選びたい」というプロパ意識を性年代別に見てみましょう。 男女ともに若年層ほどプロパ意識が高い様子が確認できます。
図表2
では、特に若年層で高いといわれるタイパ意識と比べても、これらは高いのでしょうか?
「できるだけ時間や手間を節約できるものを選びたい」というタイパ意識の性年代別の結果と比べてみると、男女ともに若年層ほどタイパ意識もプロパ意識も高い傾向が見られました。また、女性10~20代の若年層はタイパ意識16%に対しプロパ意識17%で、プロパ意識もタイパ意識とほぼ同じレベルの水準であることが読み取れます。
前述の通り、男女ともに若年層ほどプロパ意識が高い傾向にあり、男性10~20代も12%のプロパ重視層が存在しています。この層は男性の美意識の高まりと相まって、こだわりを持って商品を選んでいそうです。次のパートで詳しく見ていきましょう。
図表3
プロパ意識は買い物行動にどのように影響するのでしょうか?プロパ意識を重視する傾向が高いカテゴリーであるスキンケアやヘアケアといったパーソナルケアに関連する品目の購買データを、男性10~20代のプロパ意識の有無で比較すると、プロパ意識ありの人が各品目で購入率/購入金額ともに高いことが分かります。
図表4
続いて、実際にパーソナルケアを行うシーンに着目し、プロパ意識ありの男女に、「こだわりを持って時間をかけている/かけたいと思っている」ことを聞いたところ、特に「入浴後のスキンケア」にこだわりたい気持ちが強くみられました(図表6)。
さらにプロパ意識がある10~20代の若年層は顕著で、具体的なこだわりを聞いてみても「値段はとても高いけれど、効果と使用感が良いもの選んでいる」「自分の肌質にあったものを、悩みに合う成分を考えて購入している」といった回答が見られ、「入浴後のスキンケア 」にお金や時間をかけるだけではなく、自分に合うこと/続けられることなど、こだわり方も様々である重視していることが分かりました(図表7)。
図表6
図表7
続いて、食におけるプロパ意識が、性別や年代によってどのように違うのかを見てみました。
図表8は、普段の生活(食生活)について「こだわりを持って時間をかけている/かけたいと思っている」ことを聴取したグラフです。全体では「自宅での食事・晩酌」が29.6%と高く、女性20~40代は、「自宅でのおやつ・カフェタイム」に時間をかけている/かけたいことが読み取れます。
図表8
「おやつ・カフェタイム」に“最も時間をかけている/かけたい” 人が特に多い女性30~40代にもう少し注目してみましょう。女性30~40代について、具体的なこだわりを聞いてみました。(図表9)
子育て世代ゆえの「子供とは別のお菓子」「気分によって合わせられるようあらゆる種類を揃えている」等のお菓子の種類のこだわりもあれば、「かならずおやつを食べる時間」や「ドリップコーヒー」「食器」などのデータでは見えづらいこだわりが見えてきました。前段のパーソナルケアと同様にこだわりは様々であることが読み取れます。
図表9
この記事では、過程を楽しむプロパ意識の実態と、購買行動との関係をお伝えしてきました。特にプロパが比較的重視されるパーソナルケアにおいて、購買を押し上げる要素になっていることや、特に若年層にはタイパ並みにプロパを重視しているカテゴリーもあるといったことが見えてきました。
タイパ・コスパという言葉が浸透し、消費者の多くも意識するようになりましたが、消費者には時短・コスト以上に「こだわる」ものやシーンもあるようです。こうした消費のグラデーションを知ることで、より市場の理解につながるのではないでしょうか。
今回の分析では、インテージのSCI(全国消費者パネル調査)を使用しました。自社ブランドはプロパ意識あり層に購入されているのか?どんな人が自社ブランドのターゲットになり得るか?等、自社ブランドユーザーの意識を確認することも可能です。ご興味・関心がありましたらぜひお問い合わせいただければ幸いです。
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