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広がるプロテイン市場のトレンドを生活者ニーズで捉える

2020年以降の新型コロナウィルスの感染拡大により生活様式が様変わりした中で、様々な生活者ニーズが顕在化しました。感染防止のための基礎体力の強化や免疫予防力の向上、在宅時間を豊かに過ごすイエナカ需要が顕在化し、様々な市場が恩恵を受けました。

プロテイン市場もその一つです。コロナ禍以前より、フレイルの予防を目的にシニア世代を中心にプロテイン粉末が伸びていたところ、コロナ禍をきっかけに運動不足やダイエットを気にする若年女性も取り込み、成長を続けてきました。
また、様々な食品・飲料にプロテインが配合されて、幅広い「プロテイン市場」が形成されています。そこで、商品名に「プロテイン」と付く食品・飲料群をプロテイン市場として、インテージSCI(※1)データによる金額市場規模の推移を見てみました(図表1)。

図表1

商品名に「プロテイン」と付く食品・飲料群の金額市場規模指数

2017年の市場規模を100とすると、各社から即食タイプのプロテイン系飲料やバータイプ食品が発売された2019年に157に急拡大しています。以降、コロナ禍を経て成長が続いており、2022年には272に達しました。

様々なタイプが出たことで、ユーザーの増加はもちろん、そのニーズや喫食シーンが多様化していることが想定されます。そこで、この記事では、プロテイン市場を生活者のニーズ視点で捉え、今のトレンドについて見ていきたいと思います。

プロテイン商品にはどのようなニーズやシーンが紐づいているか

分析には、買物アプリ「CODE」の「買いログ 口コミデータ」を利用しました。購入者が購入商品をアプリ登録する際に入力されたデータです。主に、どんな用途で、どんなシーン、オケージョンで使用/喫食するつもりかなど、その商品を購入に至った理由が書かれています。

図表2は、名称に「プロテイン」とつく商品やサービス購入者の口コミ:約4.5万件について、共起ネットワーク分析(※3)を行った結果です。この図からプロテイン商品購入理由の中にどのような生活者ニーズが含まれているかを読み解いてみると、「糖質制限」、「栄養補給」、「たんぱく質摂取」といったニーズがあることが見えてきました。また「ダイエット時のおやつ」、「運動前/運動中/運動後」シーンでの喫食や飲用を想定して購入されていることも分かります。
(“美味しい”、“甘い”など食品・飲料に関わる普遍的なニーズは分析対象外としています。)

図表2

名称に「プロテイン」が含まれる商品購入者の口コミ約4.5万件の共起ネットワーク分析

他のキーワードとの関連が弱く、図表には表れていませんが、もう一つ「筋トレ」というシーンも忘れてはいけません。出現件数としてはかなり多く みられました。

このようなニーズやシーンでの需要は年々高まっているのでしょうか。各キーワードが含まれる口コミ件数および、口コミされている商品数の経年変化を見てみます。(プロテイン商品に限らず、口コミされたすべての商品を集計対象としています。)(図表3)

図表3

生活者のニーズやシーン別の口コミ商品数と口コミ数

口コミ件数、口コミされている商品数ともに最多の「たんぱく質摂取」はコロナ禍の20年~21年にかけ、健康志向の高まりとともに急拡大しました。体づくりや健康寿命を延ばすためなど、あらゆる世代で重要な栄養素として、今後も需要が維持・拡大することが想定されます。

一方、「糖質制限」は20年をピークに減少傾向です。コロナ禍に入り、“制限する”健康志向ではなく、筋トレ・運動+たんぱく質といった“摂取する”健康志向に生活者の関心が向いていったことがうかがえます。

また「栄養補給」「ダイエット時のおやつ」目的や、「運動前・運動中・運動後」「筋トレ」シーンを見ると、口コミ件数・商品数ともに20~21年にかけて最多となっています。在宅時間、“コロナ太り”解消目的のダイエットや運動需要が高まった後、日常生活が戻ってくると共に落ち着いてきた様子がうかがえます。

生活者ニーズやシーン起点で見たプロテイン商品の競合とは

前述のニーズやシーンでは、プロテインの他にどのような商品が利用されているのでしょうか?これを明らかにすることは、カテゴリーの新たな展開可能性を考えるヒントとなりえます。
そこで、ここからは、それぞれのニーズやシーン目的で、生活者がどんな商品を購入しているか見ていきます。なお、ニーズ・シーンを表わすキーワードについては、類似するものも集計対象に含めています。

①糖質制限

「糖質制限」というキーワードが含まれる口コミ件数を100%とすると、1位:ビール類(約16%)、2位:スイーツ類(10%)、3位:菓子/調理パン類(9%)です。ビール類は、糖質オフや糖質ゼロタイプ購入者で口コミされています。コロナ前から1位でしたが、コロナ禍の宅飲み需要と健康志向の高まりでさらにシェアを伸ばしました。
2位のスイーツ類は糖質を抑えたエクレアやシュークリーム、ケーキ、ドーナツなど様々な商品で口コミされています。また3位の菓子/調理パン類は主にコンビニチェーン各社が展開する糖質オフ商品で口コミされています。
一方、プロテイン商品はプロテインバーなどで口コミされていますが、わずかにとどまりました。
このことから、元々糖質が高めで嗜好品寄りのカテゴリーでの糖質制限ニーズが高いことがうかがえます。既に喫食・飲用習慣がある食べ物でいかに糖質を抑えられるかが問題になるため、プロテイン商品に置き換えて糖質制限する動機は弱そうです。

➁栄養補給

「栄養補給」というキーワードが含まれる口コミ件数を100%とすると、1位:スポーツドリンク類(23%)、2位:栄養バランス食品類(11%)、3位:栄養ドリンク類(7%)です。
1位のスポーツドリンク類は、ゼリータイプのエネルギー補給、ビタミン・ミネラル補給飲料が上位を占め、栄養補給用途でポジションを確立しています。
プロテイン商品はゼリータイプのプロテイン入りスポーツドリンクや、プロテインバーで口コミされています。しかし口コミ数は非常に少なく、栄養補給=プロテイン摂取という結びつきはまだ弱そうです。

③たんぱく質摂取

「たんぱく質摂取」というキーワードが含まれる口コミ件数を100%とすると、1位:鶏肉類(9%)、2位:ヨーグルト類(8%)、3位:栄養バランス食品類(6%)です。
1位の鶏肉はむね肉購入者を筆頭に口コミされています。2位のヨーグルトはたんぱく質含有量を打ち出した商品、3位の栄養バランス食品は、プロテインバーやプロテイン入りミルク飲料などで主に口コミされています。
日々の食卓に取り入れやすい食材・食品が上位に挙がっており、その中でプロテイン商品も浸透しています。
なお「たんぱく質摂取」と口コミされている商品数は年々増加傾向にあり、生活者の選択肢が増える中で競合商品や競合カテゴリーに代替されるリスクが高まっています。

④ダイエット時のおやつ

「ダイエット時のおやつ」というキーワードが含まれる口コミ件数を100%とすると、1位:つまみ類(18%)、2位:デザート類(13%)、3位:栄養バランス食品類(7%)です。つまみ類は主におしゃぶり昆布、あたりめ、アーモンドなどのナッツ類など、デザート類は主にこんにゃくタイプのゼリーと、低糖質タイプの商品で口コミされています。またコロナ前後を比較すると、高カカオチョコレートやサラダチキン、高たんぱくヨーグルトでの口コミ数が増えていました。ダイエットシーンにおいて、糖質を抑えるだけでなく、同時に栄養素を補給したいという意識の変化が起きていそうです。
プロテイン関連商品の口コミ数は限られており、おやつ≒ちょっとした小腹満たしよりは食事寄り≒わざわざ食べるもの位置づけになっている可能性があります。ただし、今後の商品展開やコミュニケーション次第ではおやつシーンへも浸透していくかもしれません。

⑤運動前/運動中/運動後

「運動前/運動中/運動後」というキーワードが含まれる口コミ件数を100%とすると、1位:スポーツドリンク(28%)、2位:乳飲料(15%)、3位:栄養バランス食品(約6%)です。スポーツドリンクが確固たる地位を築いています。乳飲料は主にプロテイン飲料や低脂肪牛乳、栄養バランス食品はプロテインバーを中心に口コミされています。
コロナ禍での健康意識や運動不足解消ニーズの高まりを背景に、単なる運動ではなくボディメイクやトレーニングにて“プロテイン”のポジションが確立されつつある可能性があります。

⑥筋トレ

「筋トレ」というキーワードが含まれる口コミ件数を100%とすると、1位:鶏肉類(約27%)、2位:乳飲料(約11%)、3位:栄養バランス食品(約7%)です。
鶏肉は圧倒的にむね肉での口コミ数が多くなっています。ささみのほうが低脂質でヘルシーなため一見支持されていそうですが、一般的な店頭でのグラム単価の安さなどからむね肉のほうが受容されていそうです。
乳飲料は様々なフレーバーや容量帯が展開されているプロテイン系飲料、栄養バランス食品は様々なメーカーが展開するプロテインバーが上位を占めています。「筋トレ時にはプロテインやたんぱく質を摂取」という生活者の知覚が確立されている様子がうかがえます。とはいえ、取り組み度合は人によって様々なため、日常の食生活に簡単に取り入れやすいプロテイン商品のほうが受け入れられやすそうです。

生活者ニーズやシーン起点で市場を捉えることの重要性

今回の分析からは、生活者のニーズ・用途やシーンごとに、様々な選択肢の中からプロテイン商品が選ばれていること分かりました。例えば、「ダイエット時のおやつ」では一見競合しそうにないつまみ類やデザート類と代替関係にあり、プロテイン商品のシェアソースとなる可能性を秘めていることが分かりました。
カテゴリー起点で市場や競合関係を捉えるだけでなく、視点を変えて生活者起点で広く捉えることで、新たな顧客獲得に向けたヒントにつながっていくはずです。


※1 SCI®(全国消費者パネル調査)
全国15歳~79歳の男女53,600人の消費者から、食品(生鮮・惣菜・弁当などを
除く)・飲料・日用雑貨品・医薬品の日々の買い物を継続的に収集している全国個人消費者パネル調査。
※2 リサーチ・アンド・イノベーション CODE買いログ
リサーチ・アンド・イノベーション社提供の買い物アプリ「CODE」利用者が、購入品について記入している口コミ。MAU(月に1回以上利用しているユーザー数)約30万人の実購買に紐づくのべ口コミ数:約5,900万件、評価レビュー:約9,700万件を蓄積。
※3 共起ネットワーク分析テキストマイニングの一種で、単語同士の関連性や出現パターンの類似性をふまえ、文章中の単語の繋がりを可視化したもの。これにより口コミデータ・アンケートの自由回答項目・新聞記事など大量の文書データ内における特徴を把握できます。
出典:東京理科大学 https://www.tus.ac.jp/today/archive/20220411_3957.html


この記事はインテージ カスタマー・ビジネス・ドライブ本部および事業開発本部の重点取組活動の一環で実施した自主企画調査結果を元に作成しています。
(執筆協力:堀切藍、宮地一輝、目黒大樹、執筆:田辺浩之)

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