

日用消費財市場において売上を持続的に伸ばしているブランドには、成長に不可欠な間口を、新規購入者だけで稼ぐのではなく、2年、3年と買い続けてくれる顧客を増やすことで拡大している、という共通点があります。※詳細は「日用消費財のロングセラーブランドにみる「生活者とブランドの新たな関係性」とは」で解説しています。
では、生活者はなぜ、特定の商品を買い続けるのでしょうか。本記事では、ユーザーインタビューをもとに、売上を支える「習慣購買」がどのように生まれるのかを紐解き、“生活者が商品を買い続ける理由”の正体を探っていきます。
(この記事は、2026年2月25日に実施したセミナー「売上を支える「習慣購買」を生み出す~生活者が“買い続ける理由”とは~」の内容を再構成したものです。記事後半ではセミナーのアーカイブ動画も案内していますので、是非合わせてご視聴ください。)
買い続けてくれるユーザーを増やすためにはどうすればよいのでしょうか。
日用消費財は、生活者の日常に頻繁に登場する商品です。だからこそ、購買はしばしば「意識的な選択」ではなく、「習慣」として行われます。図表1のように、習慣は、「きっかけ」「ルーティーン」「報酬」というループによって形成され、無意識のうちに繰り返されると言われています。
重要なのは、生活者にとっての「報酬」は何か、そしてその報酬を得るための行動として、商品がどのように組み込まれているかという「文脈」を把握することです。
図表1

「なぜ、その商品を買い続けているのですか?」この問いに対して、生活者から返ってくる答えは、「なんとなく」「前から使っているから安心」といった、抽象的な言葉になりがちです。これは、習慣化された行動ほど無意識で行われているため、理由の言語化が難しいからです。そのため、この問いに対する答えを得るユーザーインタビューの実施においては、 ①誰に②何をどうやって聞くか、がポイントになります。
①誰に聞くか
「たくさん使っている」だけでなく、「使用方法とその変化」に着目することが必要です。そのため、「使用目的・シーンが拡大して、多様である」「その結果、現在は使用頻度が高い状態が継続している」という条件を満たすユーザーほど、作り手が思いつきもしなかった気づきをくれることがあります。
②何をどうやって聞くか
インタビューでは、次の3つの要素を引き出します。
Situation:
登場人物は誰か、いつどこでどのように商品を使用するか、使用に繋がる困りごとや期待
Benefit:
商品の使用により感じている生活者にとっての良さ
Brand:
良さを実感させているブランドならではの特性
その際、商品の使用時だけでなく、前後を含めた文脈として具体的に語ってもらい、解像度を引き上げます。特に習慣化しているユーザーほどSituation-Benefit-Brandのリンケージが強いことから、商品が登場するきっかけとなる「使用前の行動や状況(Situation)」が固定化されているはずです。
では、若年を中心に市場が拡大しているラムネのユーザーインタビューをもとに、習慣がどのように生まれるのか、買い続ける理由は何か、をみてみましょう。
今回の事例は、薬学部に通う大学生・なおさん(仮名)。幼少期に親から買い与えられた経験はあるものの、大学受験期に習慣が形成され、受験を終えた現在も買い続けているロイヤルユーザーです。
勉強を始める前には机にペン・教科書・ノート・ラムネの4点セットか必ずあり、勉強を始める “直前”に数粒を一気に口に含むことで、「手っ取り早く脳を直接叩き起こしてくれる」と感じています。
ここで重要なのは、ラムネは単なるお菓子ではなく、「集中するための儀式」として位置づけられている点です。この体験が繰り返されることで、「これがないと集中できない」という感覚へと変化し、習慣購買へとつながっていき、実験が始まる直前にラムネを食べる・朝起きてアルバイトに行く前に食べるといった現在の行動に派生しています。勉強専用だったラムネは、「瞬時に自分のパフォーマンスを最大限引き出せる」というBenefitを求めるSituation全般へと役割を広げていきました。
図表2

また、食感や味など食べてすぐに五感に働きかけられる報酬と、摩擦(ストレス、手間、障壁)を取り除き、スムーズな行動を実現するという食べる前後の物理的・精神的なフリクションレスが、ラムネである理由・この商品である理由となっていることがわかりました。
図表3

この事例からは、次のようなポイントが整理できます。
・始まりは強い動機(合格したい)
・繰り返し発生するきっかけ(勉強・実験の直前、寝起きからバイトに向かう)
・使ってすぐに実感できる報酬(頭が冴える感覚)
・行動を邪魔しない手軽さが習慣を支える
なおさんの行動を整理すると、
・きっかけ:これから頑張る自分にスイッチを入れる瞬間
・報酬:脳が一気に活性化する感覚
と言えますが、この構造は、勉強以外にも「スポーツをする前」「ゲームをする前」「推しのライブ前」など、他のシーンへ横展開できる可能性を持っています。1人の行動を起点として新たなアイデアを生むことができたならば、このようなシチュエーションで、同じ“報酬”を求めている生活者がどのぐらいいるかを量的に把握することで、新しい顧客をどのぐらい作ることができるかのポテンシャルを可視化することもできます。そこで得た結果をもとに、商品の価値をもっとも感じてもらえる使用体験を促すために、パッケージのアテンションに訴求を反映する、親和性が高い場所でサンプリングするなどの施策を検討し、マーケティングカレンダーに落とし込んでいきます。
このように習慣購買を紐解いてみると、商品自体を大きく変えずとも、見せ方・売り場・伝え方を変えるだけで売上を伸ばすヒントが見つかるかもしれません。
習慣購買は、生活者の中にある「きっかけ」と「報酬」、そしてそれを結びつける行動の文脈に、商品が自然に組み込まれることによって生まれます。このような状態では「これがないと集中できない」といったように特定のSituationにおいて商品が必要不可欠な存在となり、生活者にとって買い続ける理由となるのです。
ユーザーの習慣を丁寧に紐解くことで、商品が果たしている役割や、代替されにくい理由が見えてきます。その構造は、別のシーンや別の生活者にも応用可能なヒントがつまっています。
商品を大きく変えなくても、使われる“意味”や“場面”を再定義することで、習慣は広がり、顧客は増えていきます。習慣の理解こそが、ブランド成長を支える起点になるのです。
(2026年2月25日に実施したセミナーでは、この「売上を支える「習慣購買」を増やすヒントを得るための定性調査の手法について」についてもご説明をしておりますので、ぜひアーカイブ動画をご視聴ください。)
今回の分析は、下記の設計で実施した株式会社インテージの自主企画の調査結果をもとに行いました
調査方法:デプスインタビュー(オンライン)
抽出方法:機縁リクルート
対象者条件:国内在住の20代女性
実査時期:2026年1月
参考文献
チャールズ・デュヒッグ(著) 渡会 圭子(訳)(2019) 習慣の力[新版] 早川書房
日用消費財のロングセラーブランドにみる「生活者とブランドの新たな関係性」とは
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