アンケート調査の方法とコツ① アンケート調査の主な目的と役割・企画前のチェックポイント
アンケート調査は生活者の声を聞く手段です。この声をマーケティング活動に活かすための「マーケティングリサーチ」は、いまや多くの企業で行われています。特に、インターネット調査(ネットリサーチ)は手軽にできる手段として広く浸透しています。
このシリーズでは、アンケート調査の基本プロセスや効果的に調査を行うためのコツについて解説していきます。
第1回目となるこの記事では、アンケート調査の主な目的や役割、そして調査のコツとして「企画前にチェックすべきポイント」を解説します。
第2回の「課題設定~仮説構築~調査手法の選び方編」の記事へはコチラから
第3回の「対象者条件設定~アンケートの作り方編」の記事へはコチラから
第4回の「アンケート結果のまとめ方・集計の基本とコツ」の記事へはコチラから
第5回の「結果のグラフ表現とアンケート調査の活用事例」の記事へはコチラから
アンケート調査の主な目的と役割
アンケート調査はどのような時にどのような目的で実施するものなのでしょうか。図表1は、商品のマーケティング活動の代表的なプロセスと、各プロセスで行うアンケート調査の種類を対比して並べたものです。
【図表1】
「開発前」に生活者による商品・サービスの利用実態や意識を把握したり、「開発中」の商品コンセプトや試作品の受容性を確認したり、「発売後」の商品やサービスやプロモーションキャンペーンに対する生活者の評価を確認したりと、アンケート調査が活用される場面は多岐にわたります。
そして、その結果は、商品コンセプトの候補の中から最適なものを選んだり、次の広告キャンペーンの方向性を修正したりと、意思決定をより良いものになるようにサポートしてくれます。
このように、あらゆるプロセスで、意思決定をより良いものにすることが、アンケート調査の主な目的です。
ここでのアンケート調査の役割は図表2のように大きく2つにわけられます。
【図表2】
一つは「実態理解と効果把握」です。
生活者のニーズを調べたり、競合他社のブランドイメージと自社の商品・サービスとの差異を確認したりするなど、市場の”今”を把握する。さらに新商品を発売したことが生活者に知ってもらえているか、多額の予算を投入したCMが狙い通りに届いているかなど、企業が実行してきたマーケティングアクションの成果を確認する、という役割です。
もう一つは「仮説検証」です。
商品やサービスを販売・提供し、目標達成のために多様な施策を実行していると、様々な問題にぶつかります。その時に、「その問題がなぜ起こっているのか」を推測し(=仮説を立てる)、「それが本当なのか」を調べる(=検証する)ことが、問題解決において重要な役割を果たします。
「仮説検証」について、少し具体的に説明しましょう。例えば、順調に販売を伸ばしていたサービスの売上が鈍化してきた場合。理由はいくつか考えられます。競合他社が新しいサービスを追加した結果、自社サービスが古臭く見えるようになってきたのかもしれません。あるいは、他社のキャンペーンが生活者にとって非常に魅力的に映ったのかもしれません。さらに長期的な視点では、生活者の嗜好が変わってきたのかもしれません。このように「なぜ」を推測して、それが「本当なのか」をアンケート調査で確認できれば問題の原因が特定できるため、問題解決のために何をすればいいのかを導き出すことができます。
効果的な調査にするためのチェックポイント
アンケート調査を効果的に実施するためには様々なコツがあります。まずは、具体的に調査の内容を考える前にすべきことを4つ紹介します。
【図表3】
- 必要な情報が何かを整理する 必要な情報は何かを整理しましょう。メモでもいいので字に起こすと頭の整理にもなりますし、他の人にも共有できるのでよいでしょう。
- 調査をする価値があるかを見極める 欲しい情報を手に入れることができたとして、それは企業のマーケティングの意思決定に役立てることが出来るのでしょうか。マーケティングアクションにつながらないアンケート調査結果はコストと時間の無駄となってしまいます。この視点でのチェックも忘れずにしておきましょう。 また、ユーザーやカスタマーに質問することで問題を解決するに足る回答を得ることが出来るのかも考えておきたいポイントです。 例えば、カジュアルイタリアンレストランのチェーン店の売上が伸び悩んでいて、ランチ需要を取り込むためのヒントを調査する場合。今日のランチにサンドイッチを食べた人にその理由を聞いても、サンドイッチを選んだ理由は答えられるかもしれませんが、パスタを選ばなかった理由を答えられるでしょうか。「近くにパスタのお店がなかった」、「昨日の昼にパスタを食べた」といった理由ならば答えてくれるかもしれませんが、その調査結果はマーケティングアクションに活かせません。
- 既存のデータで解決できないか確認する 過去に社内で実施した調査のデータで間に合ったり、自社で持っているビジネスデータで充分であったり、公開されている官公庁の統計データなどで欲しい情報が手に入れられたりするかもしれません。
- 調査が現実的に可能かを確認する 人間は無意識にとっている行動の理由を聞かれた時に、すぐに答えられるケースと答えられないケースがあります。すぐに答えられないケースの場合は、どのようなアンケート調査を実施しても決してわからないこともあります。先ほどの「パスタ」の例もそうですが、人間は「何かをした」理由は答えられても、「何かをしなかった」理由は答えられないことが多いものです。 ただし、そのようなケースのアプローチとして、インターネットアンケートで直接的に質問するのではなく、インタビュー調査や、様々なデータを複合的に分析することで導き出すといった方法で解決できることもあるため、調査会社にご相談いただくと適切な手段が見つかるかもしれません。
これら1~4のチェックポイントは、課題解決に向けた第一歩です。具体的に調査の内容を考える前に、ぜひ整理してみてください。
「アンケート調査の方法とコツ」第1回はアンケート調査の主な目的や役割、そして調査のコツとして「企画前にチェックすべきポイント」を解説しました。
第2回ではアンケート調査を成功させるうえで重要な「仮説の構築」と「調査手法の選び方」を紹介します。
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