新型肺炎の影響でマスクの売上は?予防関連商品の消費の動き
2019年12月に中国の武漢で発生した新型肺炎。日本でも連日トップニュースで扱われ、その影響は様々な分野に波及しています。
2/6現在、既に表面化している消費への影響として、旅行客数減によるインバウンド消費の減少や予防用商品の需要急増、といった報道が連日なされています。この記事では予防関連商品に注目し、消費の動きを追いました。
新型肺炎発生からこれまでの動き
はじめに、これまでの動きを整理してみましょう。図表1は2019年12月以降の主な動きをまとめたものです。
図表1
12/31のWHOによる発表からほぼ1ヶ月、初めは原因も影響範囲もわからない状態が続いていましたが、1/21ごろから各国や日本政府の動きが活発になってきました。
感染の拡大に伴い、様々な影響が出ています。ひとつはインバウンド消費への影響です。1/23には流行の中心である武漢の交通機関が停止、1/27には中国の旅行会社による海外団体旅行の取り扱いと個人旅行の手配が中止されるなど、人の動きが大幅に制限されました。本来ならばで大勢のインバウンド消費が見込まれていた春節ですが、百貨店の免税売上が各社対前年で10~15%落ち込むなど、既に影響が出始めています。
また、日本での感染者が徐々に増加するにつれ、予防関連の商品の需要が急増しています。次の章では、これらの予防関連商品の消費動向を確認します。
マスクの売上急増のきっかけは?データから見えた消費の変化
まずは現在社会問題にまで発展しているマスクです。店頭でなかなか手に入らないことから、フリマサイトなどでひと箱数万円といった価格で転売されるといったことまで起きています。
図表2はマスクの週次の売上推移です。1/27~2/2の週に大きく跳ね上がり、平年の8.9倍にもなりました。この売上は、同データベースにストックされている過去データで最大となっており、今回の影響の大きさがわかります。
図表2
どのタイミングで売上が跳ね上がったのか、日別の動きを追ったのが図表3です。
図表3
1/16に日本で初の感染者が確認された段階では、特に動きはありません。初めに目立った動きが見られたのは1/22でした。この日は中国政府が初めて正式会見を開き、ヒト-ヒト感染の可能性について言及しています。次いで翌1/23には武漢の交通機関が停止。事態の深刻さが実感されたためか、この辺りから売上の急激な伸びが始まりました。
はじめは春節前に来日していた中国人旅行客によるインバウンド消費の色が強いとみられますが、さらに一段階売上が伸びたのが1/28に日本人初の感染が確認された翌日です。武漢の滞在歴のない日本人の感染ということで、日本人にとっても身近な問題になったことが実感されたことが要因と考えられます。
マスクの売上は1/30をピークに急激な落ち込みを見せています。この頃からすでにマスクの品薄状態がはじまったと考えられます。
2009年の新型インフルの流行時を振り返る
過去に例を見ない売上となっているマスクですが、今回の次に大きな売上を記録したのが、2009年の新型インフルエンザの時でした。
図表4は当時のマスクの売上推移です。WHOが世界的流行のフェーズを引き上げたことを受けて、2009年4月28日に日本政府が「新型インフルエンザの発生」を宣言しました。この頃に一度売上の大幅な増加が見られます。
そして、国内初の感染者が確認された5月16日の翌週に売上がさらに跳ね上がっています。また、約3ヶ月後の8月の半ばに急激に売上が増加しているのは、8月15日に初の死者が出たことを受けての動きです。国内の影響のフェーズが進むと、急激な需要拡大が起きることがわかります。この後、翌年3/31に終息宣言が出されるまで、花粉症やインフルエンザ等の需要期にかけて売上が継続的に下がっています。特に平年需要が伸び始める1月以降には、平年の同じ時期の売上の半分以下と大幅に落ち込んでいる週も多く、家庭内在庫の消費が長く続いたと想定されます。
図表4
対策に有効とされるうがい・手洗い・消毒 関連商品の売上変化
ここからは、予防関連商品として、除菌関係の商品カテゴリの売上推移を確認してみましょう。
図表5はうがい薬、手指消毒剤、ぬれティッシュ(除菌・消毒用)、マスク用除菌・ウイルス除去スプレーの売上の平年値に対する伸びを追ったデータです。どの商品カテゴリも平年より大幅に売上が伸びています。特にマスク用のスプレーや手指消毒剤はもともと使う人が少なかったこともあり、平年の10倍を超える伸びが見られています。
※ぬれティッシュ、手指消毒剤は直近の市場成長により、影響を受ける前の段階で対平年1.3倍で推移しています。
図表5
実は手指消毒剤はマスク同様、日別の売上が1/30をピークに減少しており、品薄状態が想定されます。こちらも早く供給が安定化されることが期待されます。
2/6現在、国内での感染は複数の都道府県で確認されていますが、全国規模ではありません。関連する商品カテゴリの売上への影響は、エリアによって異なると考えられます。実際、エリアによってどの程度の違いが見られたのでしょうか。
図表6はこれまでに見てきた予防関連商材の最新週売上について、平年値に対する伸びをエリア間で比較したものです。
図表6
各関連商品とも全エリアで伸びが見られますが、特に伸びが目立つのは近畿エリアです。
中国人観光客の訪問率が一位(観光庁調べ 2017年)と人気で、インバウンド消費が活発な大阪があり、かつ、今回マスクの売上急増のきっかけとみられる、日本人初の感染者が確認されたエリアです。
新型肺炎は潜伏期間が長く、無症状の病原体保有がありうるといった特徴がわかってきています。知らない間に感染者と接触することへの不安が大きいこともあり、エリア内で感染が発覚したことで急激に自分ごと化され、自衛の必要性を感じるようになった結果と思われます。
実質半月ほどで、経済や生活者の行動に大きな変化をもたらした新型肺炎。まだまだ全容が見えず、不安な日々が続きます。知るGalleryでは、今起きている変化を引き続き追いかけます。
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