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肌悩みや美容意識によってどう違う? お手入れパターンから見る女性の化粧品利用実態

新型コロナウイルス感染症の流行は化粧品の購買行動に大きな影響を与えました。「コロナ禍における女性の化粧品購買行動の変化」でもお届けした通り、外出制限やマスク生活によって大きな影響を受けたメイクアップ化粧品のみならず、基礎化粧品も影響をうけました。とはいえ、若年層・高年齢層を中心に美容液や栄養クリーム・パックなどスペシャルケアなどの購入金額が伸長するなど、在宅時間が増えた影響でスキンケアに手をかける動きもみられていたのが、ちょうど2年ほど前の状況でした。

そこでこの記事では、前回の分析で見えたお手入れ強化の兆しを受けて、いま女性がどのような肌のお手入れをしているのか、基礎化粧品の利用のされ方に注目してみました。

基礎化粧品の市場動向

まずは直近4年間の化粧品の市場動向について確認します。
インテージの消費者パネルデータSLIを用いて推計した、直近4年間の化粧品市場規模を比較すると、コロナ禍に入った2020年に1兆2219億(前年比88%)と大きく落ち込み、2021、2022年も同水準と、依然コロナ禍の水準には戻っていない状況です(図表1)。

図表1

女性による化粧品市場規模の推移(カテゴリー別推計)

ここで基礎化粧品市場に着目し、カテゴリ別の購入金額や購入率を見ていくと、化粧水や乳液といったベーシックケアアイテムがコロナ禍前の金額に戻らない一方で、美容液や栄養クリームといったスペシャルケアアイテムはコロナ禍前とほぼ同様、もしくはコロナ禍前以上の金額となっています(図表2)。各カテゴリの年間の購入率はクレンジング以外コロナ禍前並みに戻っていることを考慮すると、コロナ禍前と比較して、よりスペシャルケアにお金をかける買い方にシフトしている傾向があると言えそうです。

図表2

基礎化粧品の購入金額規模・購入率の推移

お肌の悩みと基礎化粧品での対処

直近の基礎化粧品の買われ方が見えてきたところで、今度は基礎化粧品がどのように使われているかを2022年8月に実施した化粧品利用実態調査(基礎化粧品を4カテゴリ以上利用している20~59歳の女性、308人が回答)の結果から読み解いていきます。

まずは、基礎化粧品がどのように使われているか把握するために、カテゴリごとに
 どれだけの人に使われているか=利用率
 どの程度使い分けがされているのか=利用者あたり2アイテム以上利用者率
を見ていきます(図表3)。ここでいう『利用』とは「普段利用しているもの」として回答してもらったもの(化粧棚や化粧箱に並んでおり、利用している意識があるもの)とします。

図表3

基礎化粧品の利用率と2アイテム以上利用者率(年代別)

ベーシックケアアイテムの「クレンジング」「洗顔料」「化粧水」は利用率が90%以上、「乳液」は70%~80%台でした。「クレンジング」「洗顔料」「化粧水」の2アイテム以上利用者率は年齢が上がるにつれて高くなる傾向がみられます。またスペシャルケアアイテムの「クリーム」「美容液」は利用率50%程度、「先行美容液」「部分用美容液/部分用クリーム」は20%程度で、いずれも年齢が上がるにつれて利用率が高くなっています。特に「部分用美容液/部分用クリーム」は、2アイテム以上利用者率も、年齢が上がるにつれて高くなっていました。
年を重ねると肌のトラブルや悩みが増えるためか、ベーシックケアアイテムの使い分けを行ったり、スペシャルケアアイテムを複数導入したりと、肌のお手入れに力をいれるようになる様子がみられます。

では本当に「肌悩み」が多いほど、基礎化粧品の利用が高まるのでしょうか。今度は「肌悩み」の多さと基礎化粧品の使われ方の関係を見ていきます。

まず、26種類の肌の悩みから、あてはまるものを複数選択してもらい、選択数に応じて「肌の悩み度」を分類しました。この悩み度別に各カテゴリの利用率・2アイテム以上利用者率を見ると、スペシャルケアアイテムである「クリーム」「美容液」「部分用美容液/部分用クリーム」の3カテゴリにおいて、悩みの数が多いほど、利用率も2アイテム以上利用者率も増える傾向がはっきりと出ています(図表4)。

図表4

基礎化粧品の利用率と2アイテム以上利用者率(悩み度別)

一方で、「乳液」は悩みが多いほうが利用率も2アイテム以上利用者率も下がっており、悩みのケアに「クリーム」「美容液」「部分用美容液/部分用クリーム」が導入されることによって利用がスキップされがちなアイテムだと見ることができそうです。

悩みが増えるほど利用が増えるスペシャルケアアイテムですが、具体的にどのような悩みの人がよく利用しているのでしょうか。図表5は各カテゴリの利用率と2アイテム以上利用者率が高い肌悩みTOP5です。

図表5

スペシャルケアアイテムの利用率が高い肌悩み ※TOTALと比較して高いものTOP5

利用率は「ソバカス」「たるみ」「シミ」「小じわ・しわ」「ほうれい線」等、ピンポイントで具体的な悩みで高くなる傾向がありますが、2アイテム以上利用者率においては「化粧ノリが良くない」「化粧崩れしやすい」「赤くなりやすい」「ゆらぎ肌」など、肌全体の不調実感・悩みが上位に来ています。
悩みをピンポイントで解消するためにスペシャルケアアイテムを使う人が多い中、複数を使い分けしているような人は肌全体の調子を整えたいという肌ケア意識の高い人だと推察できます。

美容意識とお手入れパターン

ここまで基礎化粧品の利用率や利用アイテム数と肌悩みの関係を見てきましたが、基礎化粧品は日々朝・夜と利用されるものです。それぞれでの手のかけ方は、悩みや美容に対する意識によってどう異なっているのでしょうか。そこで、基礎化粧品の朝夜の詳細な利用パターンに着目し、悩みや美容意識の違いを見てみました。

化粧品利用実態調査では利用アイテム・悩み等に加えて、実際に10日間の朝・夜のお手入れに利用したアイテムを聴取しています(有効回答者231人)。その回答を読みこみ、朝夜のアイテムの使い方で大きく3つの利用パターン=お手入れパターンに分類しました。

美容意識とお手入れパターン

このお手入れパターン別に悩みの数を見てみると、お手入れがベーシック→フルと丁寧になるほど、悩みの数も増える傾向になっていました(図表6)。

図表6

お手入れパターン×悩み度

そこでお手入れパターン別の特徴的な悩みとして、TOTALとの差が大きいものをピックアップしたのが図表7です。

図表7

お手入れパターン別の特徴的な悩み

「朝夜フルケア」さんは、「化粧のりが良くない」「ツヤのなさ」「乾燥・かさつき」「ゆらぎ肌」等、肌全体の不調実感・悩みが特徴である一方で、「朝ベーシック・夜フルケア」さんは「小じわ」「ほうれい線」と、よりピンポイントで具体的な悩みが特徴でした。「朝夜ベーシックケア」さんは、「毛穴の黒ずみ・角栓の汚れ」「ベタつき・脂っぽさ」「テカり」等、皮脂に関連する悩みが特徴で、スペシャルケアを追加して解決するより利用アイテム数を絞ってケアをしている状況が読み取れます。
単に悩みの数だけではなく、悩みの感じ方や種類によってお手入れの仕方が異なり、特に「朝夜フルケア」さんは肌全体の調子を気にする肌ケア意識の高い人だと推察できます。

実際に、お手入れパターンによって美容意識が異なっているのかを分析してみると、違いがはっきりと表れました(図表8)。

図表8

お手入れパターン別 特徴的な美容意識・行動

「朝夜フルケア」さんは美を追求するという意識が高く、スキンケアに時間と手間をかけ、新しい美容関連の情報を積極的にとりいれる傾向が強く表れています。
一方で「朝ベーシック・夜フルケア」さんは、美容意識は「朝夜フルケア」さんほどではないとはいえ高いのですが、「体型維持のために、継続的に運動をしている」「スキンケアには時間をかけている」といった項目で「朝夜フルケア」さんに大きく劣っており、積極的に美を追求する行動レベルに差がある印象です。
「朝夜ベーシックケア」さんはお手入れに手間や時間を掛けたくないという意識が高い一方で、「美容についての悩みを解消していきたい」や「体の内側からきれいになることが大切だ」といった意識は他のパターンと大きく変わらず、基本的な美容意識は決して低くないこともわかりました。

美容の悩みを解決したい、美しくなりたいという意識は皆共通の中で、手間をかけることに対するハードルの違いがお手入れパターンに表れていると言えそうです。

お手入れパターンから見えてくるもの

最後に、各利用パターンについて、具体的な利用行動を覗いてみましょう。まずは朝ベーシック夜フルケアさんであるXさんです。

Xさんのお手入れ日記

Xさんは主にブランドBを利用しており、朝・夜共にブランドBの化粧水・乳液でケアしていました。夜はクリーム・美容液・部分用美容液/部分用クリームやマスクも加えてしっかりケアしています。日々のコメントからは、朝は仕事があり簡単なケアですませる一方、夜はその日の外出状況などでお手入れを少し変えている様子がうかがえました。

次に朝夜フルケアさんであるYさんです。

Yさんのお手入れ日記

Yさんはその日の予定に合わせて朝からしっかりケアをし、夜もその日のお肌の状態やお手入れ内容に合わせてアイテムを使い分けたりダブル使いをしたりしていました。また、利用するブランドは様々で、ケアしたい悩みに応じて、低価格帯~高価格帯のアイテムをうまく使い分けている様子がうかがえました。
このように、人に注目してスキンケア日記的に見てみることで、意外な使い分けがみえてきそうです。

最後に

今回は基礎化粧品の利用のされ方に着目しました。肌悩みが増えるにつれて、ベーシックケアアイテムの使い分けやスペシャルケアアイテムの利用が進む様子がみられました。また、手間をかけることに対するハードルの程度によってお手入れパターンに違いは見られましたが、シンプルケアですませている人も美容意識が低いというわけではなく、美容の悩みを解消したいという気持ちは多くの人が持っていました。

この5月に新型コロナウイルスの感染症分類上の扱いが変わり、季節性インフルエンザと同様になりました。外出機会や人とマスクなしで対面する機会が増えることでの肌悩みが顕在化すれば、基礎化粧品、特にスペシャルケア需要の伸長が期待できそうです。顕在化する悩みの種類や利用シーンをとらえることが購買・利用意欲の喚起のチャンスになるのではないでしょうか。
化粧品は購入後一定の期間利用され続ける商品です。商品が日々どのように利用されているか、どんな悩みの解決やどんなシーンで使われているかを知ることで、次回の商品購入や、商品への愛着・ロイヤルティ向上のヒントを得ることができるかもしれません。


【調査概要】
調査方法:Webを使った事前アンケートと日記調査
対象者条件:全国 20~59歳女性 基礎化粧品4カテゴリ以上利用者
標本サイズ(有効回答):n=308[事前アンケート]、231[日記調査]
調査実施期間:2022年8月22日~8月29日[事前アンケート]
       2022年9月5日~9月17日[日記調査]

著者プロフィール

松村友美子
SLI®のサービス企画運用リーダー。
ビジネスデータ解析やアドホックリサーチの企画分析・フィールド担当、モニター事業サービス企画統括等を経て2021年度より現職。SLIサービスの安定運用及び価値向上のために日々奮闘中。
休日は息子のサッカー試合観戦に飛び回る傍ら自身もママさんサッカーチームのプレイヤーとして練習に勤しむ日々のため、一番の肌悩みは日焼け・紫外線対策。

SLI®のサービス企画運用リーダー。
ビジネスデータ解析やアドホックリサーチの企画分析・フィールド担当、モニター事業サービス企画統括等を経て2021年度より現職。SLIサービスの安定運用及び価値向上のために日々奮闘中。
休日は息子のサッカー試合観戦に飛び回る傍ら自身もママさんサッカーチームのプレイヤーとして練習に勤しむ日々のため、一番の肌悩みは日焼け・紫外線対策。

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