
「おやつ」は、食べなくても生きていけるけれど、ちょっとした幸せを日々にもたらしてくれる存在です 。一方で、単なる嗜好品ではなく、生活者のライフスタイルや心理を映し出す鏡でもあり、購買行動の背景には、性年代、生活リズム、感情、そして“ちょっとした幸せ”への欲求が潜んでいます。
では、誰が、いつ、どんな目的で、どんなおやつを食べているのでしょうか。インテージの自主企画調査「Dining Diary」から間食 の頻度や目的、人気メニュー、満足度、飲み物との組み合わせなどを分析し、商品開発や販促に役立つヒントを探ります 。
まず、おやつに限らず間食全体についてのデータを見ていきます。本調査では、間食についてその目的を聴取しており、その中で「のどの渇きを癒す」以外のものを分析対象としています。
調査結果を見ると、1日に1回以上間食をする人は44%と、半数近くの人が1日のうち何かしら間食をしている実態がうかがえます。性年代別に見ると、男性より女性の方が、また年代が上がるごとに間食をする人の割合は増加する傾向があることが分かります 。(図表1)
図表1
また、間食の目的で最も当てはまるものの回答を見てみると、こちらも年代が上がるほど「おやつ・デザート 」の割合が高くなることがうかがえます。一方「軽食・小腹満たし」の割合は若年ほど高くなります。若年は3食だけではお腹がすいてしまうから食べる、高齢層は「おやつを食べる」ことが習慣化している、という違いがありそうです。それ以外にも、時間に余裕があるから、プラスαの食事である間食を楽しむ、仲間と集まったからお供におやつ、という背景もあるかもしれません。さらに、男性では「お酒のおつまみ」が高いことも特徴的です。同じ「間食」でも、性年代によって目的は異なることがわかります。(図表2)
図表2
ここからは、間食の中でも「おやつ・デザート」目的のものに絞って、具体的にどのようなものを食べているのかについて、出現率ランキングをもとに深堀していきたいと思います。
まず「アイスクリーム・氷菓」 は若年層 (15-29歳)で1位にランクインしました。4月という調査時期にも関係すると思われますが、年齢層が上がると「アイスクリーム・氷菓」の順位が下がっています。また若年層で「スナック類」が上位に出てくるのが特徴的です。中高年層(50-79歳)での上位は男女でやや異なり、女性では「洋焼き菓子」が1位に、男性では「せんべい・あられ」や「チョコレート」が上位にランクインしているのが見て取れます。
「果物」や「和菓子」は男女問わず70代の上位メニューとしてランクインしています。これらのメニューは年代が上がることにランキングも上がっていきます。
また「菓子パン・総菜パン」は男性のおやつとして、「固形ヨーグルト」は女性のおやつとして支持されていることもランキングの特徴の一つとなります。ここから男性と女性では、おやつに対して求めている、またはおやつとして認識しているボリューム感が異なるのではないかと推察されます。(図表3)
図表3
次に食場面別に見ていきましょう。午前中~夕食前までの場面では1位が洋焼き菓子、2位がチョコレートとなっており、日々の隙間にさくっとつまめるようなおやつが人気であることがうかがえます。
一方、夕食後~就寝前では、アイスクリーム・氷菓が1位となっていることや、果物が上位にランクインすることが特徴的です。これらは冷たいさっぱりとしたおやつであることから、お風呂上がり/夕食後のデザートとして選ばれているのではないかと考えられます。
また就寝前の飲食では、他の食場面に比べて、固形ヨーグルト(プレーン)が上位にランクインしています。寝る前のヨーグルトには、睡眠の質向上や疲労感の軽減など機能的な効果もうたわれていますが、寝る前に少し食べたいときに、罪悪感なく軽めに食べたい、といった需要に応えるおやつメニューとして選ばれているのかもしれません。同じ「おやつ・デザート」という目的のなかでも、食べるタイミングによって満たしたいニーズが異なることが分かります。(図表4)
図表4
ここまでは年代別/食場面別に、おやつの目的や食べられているメニューについて見てきました。ここからは「満足度」という観点から、おやつの世界を見ていくことで、いつ・何を食べるとより満足度の高いおやつになるのか、おやつで感じる幸福感の理由を探りたいと思います。
まず食場面別ですが 、7段階評価のうち上位2つ(非常に満足・満足)を合計した数値を比較すると、「夕食後の飲食」が他と比べて満足度が高い傾向があることが分かります。なおメインの食事である朝食・昼食・夕食の3食の満足度は、それぞれ58.3%、61.6%、71.1%となっており、夕食の満足度が他と比較して高くなっています。 ここから夕食・夕食後の飲食に対しては、一日の〆の食事として、より満足のいくものを食べようと準備をしている様子がうかがえます。(図表5)
図表5
次におやつのメニュー別に、満足度を比較していきます。7段階の満足度で点数化し、各メニューの満足度平均TOP10を出したものが図表6となります。
図表6
この表から、TOP3は順に「プリン」、「アイスクリーム・氷菓」、「洋生菓子」となっています。「プリン」については、洋菓子店や高級スーパーに並ぶデザートと比べて、比較的安価に購入できる点が特徴です。またコンビニエンスストアなど身近な場所でもプレミア感のある商品を手に入れることができます。ここから、さほど高いお金や労力をかけずに高級感のあるものが手に入る、「ちょうどよいプレミア感」が支持されて上位にきていると考えられます。あわせて「洋生菓子」や「アイス・氷菓」と比べて、会社のデスクなど人の目があるところでも食べやすいことや、カロリー面での罪悪感も薄いことから、プチ贅沢枠として幅広い年齢層に支持されているのではないでしょうか。
「アイスクリーム・氷菓」については、夕食後や就寝前に多く出現していることから、「一日が終わったご褒美」として食べられていることが推察され、それが高い満足度につながっているのではないでしょうか。さらに他のメニューに比べて、話題性のある新商品や期間限定フレーバーなど刺激が多い点も満足度の高さの要因と考えられます。
「洋生菓子」については、ケーキに代表されるように、誕生日や記念日など特別なオケージョンで食べられることの多いメニューが含まれます。満足度の高さの背景にそのような「シーン」の持つ力があるのではないかと考えます。また食事場所の観点からいうと、他のデザートよりも「飲食店」で食べる機会が多いメニューでもあり、それも満足度の高さにつながっていると推察されます。
これらのことから、満足度を決める要因として、食べるシーンや場所、値段に対するプレミアム感・お得感というものがあることが見えてきます。
ここからはおやつ内の同時出現ランキングを切り口に、おやつの食卓の様子を覗いてみましょう。
まずはおやつを軸にした飲み物の同時出現ランキングを見ていきます。全体の特徴として、「アイスクリーム・氷菓」や「固形ヨーグルト」などのおやつ自体が冷たいものは、他のおやつと比べて飲み物の同時出現率が低いことが分かります。これはいくつか要因が考えられますが、おやつ自体が水分を多く含んでいるため、食べている際にのどの渇きを感じにくいことや、冷たい飲み物と一緒だと体が冷えすぎてしまう、アイスクリーム・氷菓の場合は溶けてしまうため早く食べる必要があるなど、温度帯に起因するものがあるのではないかと考えられます。また他のお菓子と比べて飲み物とセットで楽しむ、という文化があまり根付いていないことも要因の一つかもしれません。
それ以外に特徴的なものとしては、スナック類になると炭酸飲料や果汁ジュースが出てくることや、和菓子やせんべい・あられではお茶の出現率が高くなることが挙げられます。これらのことから、おやつに合う飲み物をそれぞれ選んで楽しんでいる様子がうかがえます。(図表7)
図表7
少し目先を変えて、おやつの出現数TOP10のメニューについて、おやつ同士の同時出現ランキングを見ていきます。ここから見えてくる特徴の一つとして、「アイスクリーム・氷菓」や「洋生菓子」は同時出現率が低いことが挙げられます。一つで十分な存在感を持っているおやつだからこそ、ほかのおやつと同時に食卓に並ぶ機会は少ないのかもしれません。またもう一つの特徴として、チョコレートが他のおやつのとの同時出現率がまんべんなく高いことが挙げられます。他のおやつと比べて、サイズ感がお手頃なことから、他のおやつのプラスαとして並ぶ機会が多いのではないかと考えられます。(図表8)
図表8
この記事では様々な角度からおやつの世界を紐解いていきました。ひとことに「おやつ」といっても、性年代や食シーンによって、選ばれるものが異なることが分かりました。
生活にちょっとした幸福感を与えるおやつですが、たとえば高齢層の栄養補給や猛暑による食欲減退の補完など、一つの食卓機会としてとらえれば、商品開発や販促の切り口はさらに広がります。満足度の高いおやつには「食べるシーン」「価格に対するプレミア感」など、生活者の心理に根差した要因があり、こうしたインサイトを活かすことで、ターゲットに響く商品設計や効果的なコミュニケーションにつなげられるのではないでしょうか。
食文化も多様化する中、今後どのようなおやつが支持されていくのか。インテージの食卓データは、生活者のリアルな食行動をとらえ、次のヒット商品を生み出すヒントや、店頭販促のヒントがご提供できるかと思います。ご興味のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください 。
Dining Diaryとは:
男女15-79歳の個人に、飲食したものについて答えてもらう2週間の日記式調査
食べたものだけではなく、場所や満足度についても見ることが可能
食生活の実態を見ることで、新たな食の機会探索にご活用いただけます
実施概要:2025年4月9日(水)~4月23日(水)で全国男女15-79歳の男女3000名への調査
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