
SNSの普及やコロナ禍の影響を経て、「人と人との繋がり方」は大きく変化している。人との関わり方の変化に応じて、想いを伝える手段としての「贈り物(ギフト)」の贈り方・目的も変化してきた。
(以降、贈り物(ギフト)を“ギフト”と記載する)
従来のギフトは、お歳暮や記念日のお祝いなど定期的に「贈る」習慣があったが、もっと手軽に感謝の気持ちを伝える手段として、2000年前後から、友人への想いや感謝を贈り合う「友チョコ」が生まれた。さらに2002年にスターバックスコーヒー で始まった、様々なデザインや季節限定ものを楽しめる「ギフトカード」や、2007年から出始めたAmazonギフトカード等の、手軽に贈れて使える「デジタルギフトカード」など、 新しいギフトの形態が生まれた。
また、SNSの普及により、遠方の人や住所を知らない人との出会いが拡がり、感謝の気持ちを伝える手段として、さらに、「コロナ禍」において人 と直接会うことが制限される中、手軽に感謝の気持ちを伝える手段としてデジタルを活用したギフトの利用が拡大※した。
今回 は、デジタルを活用した新しいギフト形態である「ソーシャルギフト」の実態について探ってみた。
ソーシャルギフト: メールやSNSを通じて、URLを共有するだけで手軽に友人や家族、知人にギフトを贈ることができるサービスや仕組み (住所を知らずに送ることができ、配送等の手続きも必要がない。)
※ソーシャルギフト利用経験者はコロナ前後で+10.0%増加(オンラインギフト総研 調べ)
初めに(図表1)は直近1年間に贈ったギフト(全ての形態)の調査結果である。
シチュエーションによって以下の3つに分類しそれぞれを見ていく。
1)ライフイベントのギフト(誕生日や、記念日、入学・結婚などの各種お祝い)
2)日常のギフト(ちょっとしたお礼や、差し入れ、コミュニケーションの一環として・・・)
3)季節のイベントのギフト(父の日・母の日、バレンタイン・・・)
図表1
一番多いシチュエーションが「ライフイベントのギフト」に分類した「誕生日のプレゼント」50.0%である。次に「日常のギフト」に分類した「ちょっとしたお礼」が36.2%。次に「季節のイベントのギフト」に分類した「父の日・母の日のプレゼント」が31.8%である。
直近1年間でギフトを贈っていない人が24.2%であることから、生活者の3/4は、様々なシチュエーションで何らかのギフトを贈っていることになる。生活者が他者と関わる多くのシチュエーションでギフトを活用している。
新たなギフトの形態であるソーシャルギフトの認知はまだ低く、「内容まで知っている人」が9.6%、「言葉を聞いたことがある人」が26.2%であり、その合計であるソーシャルギフト用語認知者は35.8%に留まっている。男女で比較すると、男性は32.2%、女性は39.6%であり、女性の用語認知者が7.4ポイント高い。
図表2
続いて、ソーシャルギフトを過去に贈ったか、または受け取ったか、それぞれの割合を年代別にまとめたのが、(図表3)である。
図表3
TOTALでソーシャルギフトを「贈ったことがある」人が14.2%、「受け取ったことがある」人は15.8%となった。
年代別では、20~29歳の「贈ったことがある」27.9%、「受け取ったことがある」28.7%であり、贈った/受け取った共に20代がソーシャルギフトを一番多く活用していることが分かる。
若年層は、感謝の気持ちを「ソーシャルギフト」と合わせて手軽に伝えていることが推察される。
ギフト全体と、ソーシャルギフトを贈るシチュエーションの違いを表したのが(図表4)である。
図表4
ソーシャルギフトがギフト全体と比較して多く贈られているシチュエーションは、「ちょっとしたお礼」51.5%(ギフト全体との比較16.6ポイント差)や、「応援・励ましとして」8.8%(ギフト全体との比較3.2ポイント差)である。
ソーシャルギフトは、イベントや記念日などが決まっているシチュエーションでの送付ではなく、日常のちょっとしたタイミングで、気持ちを伝えたい時に多く使用されていることが分かる。
“過去に贈ったことがあるソーシャルギフト”の1位は「食品(ケーキ・お菓子など)」35.3%、2位「ギフトカード(フード)」29.9%であり、食品が上位であることが分かる。
“もらったら嬉しいソーシャルギフト”1位は、“過去に贈ったことがあるギフト”1位と同じく「食品(ケーキ・お菓子など)」42.8%。2位も同様に「ギフトカード(フード)」39.4%となった。3位は「その他ギフト券」34.9%であり、この中には、旅行券、体験ギフト、ライブ・イベントチケットが含まれている。「ギフトカード」、「ギフト券」、「カタログギフト」が、“もらったら嬉しいソーシャルギフト”として上位に挙がっている。いずれも受け取った側が好きなタイミングで、好きな商品に引き換えることができるギフトであり、受け取り手の自由度が高いギフトが、ソーシャルギフトでは好まれていることが分かる。
図表5
次に、ソーシャルギフトを贈ったことがある人に、1回当たりの金額について最大金額と最小金額を聴取したのが(図表6)である 。
ソーシャルギフトの1回当たりの最大金額は、3000円未満が48.5%を占めた。最小金額は「1000円未満」が33.5%であり、1000円未満の「ギフトカード(フード)」などを手軽に贈っていることが想定される。
図表6
ソーシャルギフトを贈る理由には、相手にどのようになってもらいたいか?「相手視点の理由」と、ギフトを贈る事により、自分がどのようになりたいか?「自分視点の理由」が存在する。どのような理由でソーシャルギフトは贈られているのか調査してみた。
「相手視点の理由」では、「(相手に)喜んでもらうため」37.9%、「(相手に)楽しんでもらう、わくわくしてもらうため」18.9%、「(相手に)ちょっとした贅沢を味わってもらうため」15.3%などが上位であり、相手がどのようになって欲しいか?が送付の理由となっている。「(相手と)親睦を深める/仲良くなるため」12.9%など 、相手との繋がり を深めることを理由としているケースもある。
「自分視点の理由」では、「(自分が)感謝の気持ちを伝えるため」25.2%、「(自分が)お祝いの気持ちを伝えるため」25.0%など、相手に自分の気持ちを伝える手段として使われている。
図表7
では、ソーシャルギフトを贈る時に、どのような点を重視して贈り手は商品を選んでいるのだろうか。
上位に挙がった重視点を「相手(受け手)への配慮」と「贈り手の利便性」に分けてみた 。(図表8)
図表8
「相手(受け手)への配慮」では、「相手の好みに合っていること」36.8%、「相手に気を遣わせないこと」35.5%、「相手のライフスタイルに合っていること」25.2%など、相手のことを気遣いソーシャルギフトの商品を選んでいることが分かる。
「贈り手の利便性」では、「購入に手間がかからないこと」31.0%、「渡すのに手間がかからないこと」29.5%、「商品を見つけやすこと」20.6%、「決済方法が充実していること」19.6%、「比較検討に手間がかからないこと」17.2%などが上位に挙がり、日常使いのギフトとして、手間をかけずに思いついた時にスピーディーに贈れる利便性が商品選択時の重視点となっている。
ソーシャルギフトで多用されているギフトカードは、相手が自由なタイミングで、好きなモノと交換できることが「相手(受け手)のニーズ」に合致している。またインターネットで購入ができ、メールやSNSを使って相手に渡すことができる点が「贈り手の利便性」に合致している。ギフトカードは、相手(受け手)と贈り手、双方のニーズに合致している商品であると言える。
拡がりを見せるソーシャルギフトは、 贈り手が“贈りやすい”(手間がかからない)、“気軽に使える”(単価が低い)、受け手は“使いやすい”(好きなタイミングで、好きな商品が選べる)、“贈り手の感謝の気持ちが伝わる”(過剰に気を遣わない)の特徴を持っている。
これら利便性の良さから、気軽に想いを伝える手段として、若者を中心に使用されている。デジタルネイティブであり、SNSを通じて常に「人と人との繋がり」を持つ若者だからこそ、ソーシャルギフトの価値を感じられているのではないだろうか 。また若者に限らず、「お礼」「応援」「お祝い」などの言葉に加えてソーシャルギフトを添えることで、遠く離れた相手であっても、その相手との繋がりを強く意識するようになっているのではないだろうか。
今後さらに、忙しいビジネスパーソンや、遠方に住む家族・友人とのコミュニケーション手段としても、幅広い世代でソーシャルギフトの利用は広がって行く可能性を秘めており、潜在的な需要は大きいと思われる。
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<調査概要>
調査地域:日本全国
対象者条件:15~59歳男女
標本抽出方法:マイティモニターより適格者を抽出
標本サイズ:スクリーニング調査n=5002s :性年代エリア人口構成準拠で回収
本調査(ソーシャルギフト使用経験者)n=535s :SCR結果より性年代別に割付
ウエイトバック集計:なし
調査実施時期: 2024年5月9日(木)~2024年5月14日(火)
<執筆担当者>
異なる業界を担当するリサーチャー同士が、“ソーシャルギフト”をテーマにコラボレーション。調査の企画・分析を共同で実施した。
リサーチャー:
植田 匠/寺牛 友美/野口 真綾/藤原 健太/松井 陸人/松下 莉子
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