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時間もお金も余裕あり「ソロ活市場」の可能性

2023年の国民生活基礎調査 (※1)では、日本の総世帯数5445万2千世帯に対して、単独世帯(1人で一戸を構えて暮らしている人)は、1849万5千世帯で、世帯全体の34.0%を占める。未婚・晩婚化、少子高齢化や核家族化が進み、単独世帯が2010年と比較し2023年では約1.5倍に増加している。

高齢者の単独世帯を取り上げるケースが多いが、今回の調査では現役世代である20~59歳未婚、離別、死別男女の単独世帯にスコープを当て、生活実態や、行動、ニーズ、お金や時間の使い方に関する調査を行った。
これら単独世帯は“時間”や“お金”の自由度がほかの世帯に比べて高いと思われる。これらの世帯 を「おひとり様」 と定義し、その実態を深く知ることにより「ソロ活市場」 ターゲットとした商品・サービス開発やマーケティングの参考として頂きたい。

おひとり様の定義:単独世帯(1人で一戸を構えて暮らしている人)居住者かつ、未婚、離別、死別いずれかの20~59歳男女
※1 令和5年国民生活基礎調査(厚生労働省)

1. おひとり様のボリュームと生活実態は?

令和2年国勢調査(総務省統計局) の結果(※2)から対象となるおひとり様は男性425万人、女性305万人の合計730万人であり、20~59歳男女の12.2%を占めることが分かる。

図表1は同調査を基に算出した 各年代の男女別総数に対してのおひとり様の割合である。30代前半からおひとり様の割合が低下するのは、結婚などの要因が考えられる。しかし同じく国勢調査の結果(※3)では30~34歳の未婚率は男性51.8%、女性38.5%であるため、親世帯と同居している人も多いと思われる。
※2 政府統計の総合窓口(e-Stat)
※3 年齢階級別未婚割合の推移(総務省統計局「国勢調査」)

おひとり様は各年代共に男性に多い傾向にある。また、おひとり様全体を100%とすると男性が58.2%、女性が41.8%であり、男性が16.4ポイント高い。

図表1

おひとり様の構成(各年代男女別人口に対するおひとり様の割合)

ここからは、インテージでの調査結果を基に、 生活実態を捉える上で<住まいの形式>、<間取り>、<ペットとの暮らし> の3点の実態を確認して行く。(図表2、3)

1)住まいの形式

賃貸住宅への居住が72.4%と大半を占める。2階建て以下の集合住宅が26.3% 、3階建て以上の集合住宅が43.3%である。居住面積を確認すると29㎡未満が48.1%を占めている。

2)間取り

1部屋(1部屋のみ、1K、1DK、1LDK )が中心であり69.0%を占める
年齢が上がると共に<間取り>は部屋数が増加し、<居住面積>も増加する傾向にある。

図表2

おひとり様の住まい(形式、間取り)

3)ペットとの暮らし

ペットと共に暮らしているおひとり様は全体の10.2%(お一人様男性全体の8.3%、お一人様女性全体の12.7%)であり、ペットと暮らしているおひとり様を100%とすると、猫が居る住まいは53.3%、小型犬が居る住まいは38.5%であった。参考に「子どものいる既婚者」 が、ペットと共に暮らしている割合は30.2%であり、おひとり様の方が少ないことが分かる。これは、留守時間が多い 1人暮らしであるがゆえにペットと暮らすことに難しさがあるのではないだろうか。

図表3

おひとり様が共に暮らすペット

2. おひとり様のお金と時間、心の実態は?

1)支出の実態

次におひとり様のお金事情に関して確認してみたい。おひとり様の1か月の支出に対する各費用の構成比を集計したのが(図表4)である。支出全体で「住居費」が占める割合が28.2%、「食費」(外食を含む)が22.3%であり、生活に欠かせないこの2つの費目で50.5%となっている。

続いて、 「趣味の費用」11.0%、「レジャー・娯楽の費用」5.8%、「衣類・ファッションの費用」5.1%、「理美容・化粧品等の費用」3.8%、これら合計で25.7%となる。
おひとり様の住居・食費を除いた嗜好性の高い個人的な費目が、収入の1/4を費やしていることが分かる。
個人的な嗜好性の高い支出が多い=購買力が高い点がおひとり様ビジネスの注目されるポイントである。

図表4

支出に対する各費用の構成比

2)貯蓄の実態

(図表4)において「貯蓄・投資」は8.7%となっており、おひとり様の将来を見据えた堅実性も見えて来る。では、おひとり様の貯蓄額はどのようになっているのだろうか。
(図表5)は、おひとり様の金融資産(預貯金、社債や国債などの債券・株、投資信託、生命保険のうち満期金のあるもの、貸出金などを含む)を示した図である。
金融資産「0円」が17.0%、「100万円未満」が24.7%、「100万円から500万円未満」が27.5%、「500万円以上」が30.8%の分布となった。
おひとり様の3人に1人は500万円以上の金融資産を保有し、将来の生活に関して備えていることが分かる。

図表5

金融資産額

3)おひとり様のお金・時間・心のゆとり

次におひとり様の生活のゆとりに関して、<お金のゆとり>、<時間のゆとり>、<心のゆとり>を、子どものいる既婚者と比較しまとめたのが(図表6)である。
<お金のゆとり>
既婚(子あり)と比較して2.2ポイント高いが、ほぼ同程度
<時間のゆとり>
既婚(子あり)より18.2ポイントと、顕著に高い
<心のゆとり>
既婚(子あり)より7.2ポイント高い

このようにおひとり様は、時間と、心に関して、既婚者(子持ち)より多くのゆとりを持った生活を送っていることが見えて来た。

図表6

お金・時間・心のゆとり

3. おひとり様の消費行動と特徴は?

ここまでの調査でおひとり様は自由に使えるお金が多い、自由に使える時間にゆとりがあることが分かった。
では、おひとり様はどのような暮らし方をしているのだろうか<趣味・レジャー><旅行><飲食>の順におひとり様の消費行動を探ってみた。

1)趣味・レジャー

過去1年間に行なった 趣味やレジャーに関して調べてみた。(図表7)
結果を確認すると既婚者との違いより男女間の差の方が大きくみられた。
男女差が大きなポイントは、女性では「コンサート・ライブ」が男性よりも14.1ポイント高く、「推し活(音楽)」も同じく8.6ポイント高い。女性は音楽系の活動が多いことが分かる。
男性は「ゲーム」が女性よりも16.0ポイント高く、「スポーツ観戦」も同じく16.0 ポイント、「アニメ」12.6ポイント、「漫画本」9.6ポイント高い結果となった。男性はゲーム/アニメ関連が多いことが分かる。
このように項目ごとで 男女差が出た要因 としては、おひとり様は既婚者と比較して時間のゆとりがあり(図表6)1人で好きな行動をとること が容易なため、男女共に好きなことに没頭する傾向があるのではないだろうか。

図表7

おひとり様の趣味・レジャー

2)旅行

次に、おひとり様の趣味・レジャーにて男女共に上位にランキングされた「旅行」に関して、1年間の国内旅行(宿泊を伴う)回数と、海外旅行の回数を調べてみた。(図表8)
左の図が国内旅行(宿泊を伴う)の回数を示しており、おひとり様の1年間での国内旅行経験者は全体で61.1%であり女性が男性より12.5ポイント多い。また年代別では、20~29歳が全体と比較して13.6ポイント多い結果となった(図表8)。

右の図は海外旅行の回数であり、国内旅行と比較して海外旅行者は少ない。おひとり様の1年間での海外旅行経験者は15.6%であり、こちらも女性が男性と比較して6.9ポイント高く、20~29歳が全体と比較し6.4ポイント高い結果となった。
また、国内、海外共に年代が上がるにつれて旅行へ出かける回数が減少していることが分かる。これは結婚等で、年齢が上がるにつれて共に旅行へ出かける仲間が減少している可能性がある。
しかし、最近では1人参加が可能なおひとり様向けのパッケージツアーが増加傾向にある。これはおひとり様の旅に出かけたいニーズをとらえた商品と言える。

図表8

1年間の国内旅行の回数/海外旅行の回数

3)みんなで行く飲食店/一人で行く飲食店

おひとり様で多いと思われる外出のシーンの1つとして「外食」が考えられる。 おひとり様がみんな(複数人)で行く飲食店と、1人で行く飲食店に関して店の違いを確認したのが(図表9)である。
1人で行った飲食店と、行ったことがある飲食店(1人+複数人)の差が大きい=1人で行きにくい/行きたくない飲食店は 、「居酒屋」34.2ポイント差、「焼き肉店」28.3ポイント差、「回転ずし」25.3ポイント差である。逆に差が小さい=1人で入り易い飲食店は「牛丼屋」9.4ポイント差となった。
最近では一人焼肉の業態も増えてきたが、おひとり様ニーズに応えて新しい来店客獲得を狙う動きが定着しているようだ。

図表9

行ったことがある飲食店/1人で行ったことがある飲食店

4. おひとり様が感じるメリット・デメリットとは?

次に、現在のおひとり様生活の満足度を7段階で確認してみた。「大変満足している」13.6%、「満足している」32.7%、「少し満足している」18.3%であり、TOP3 合計で64.6 %であった。多くのおひとり様が今の生活に満足している様子がうかが える。
では、どのようなポイントが“おひとり様で良かった”のか、また は“おひとり様で悪かった”のかを調べてみた。

1)おひとり様で良かったこと

良かったことは、「自分のペースで生活ができる」61.2%、「自由な時間の使い方ができる」58.8%。次いで「他人に気を遣わずに過ごせる」57.6%、「誰にも邪魔されずにリラックスできる」56.0%、「食事のメニューや食事時間を自由に決められる」47.2%との回答があった。(図表10)
おひとり様で良かったポイントとしては、<時間の自由><他者に気を遣わない ><1人だけの環境が作れる><家事やお金の裁量がある>を感じている。

図表10

おひとり様で良かったポイント

2)おひとり様で悪かったこと

逆に、おひとり様で悪かったことを確認したのが(図表11)である。
悪かったポイントは、「緊急時に助けを求めにくい」34.2%、「病気や体調不良の時に看病してもらえない」30.2%、「老後の生活が心配である」26.7%、「孤独感を感じやすい」22.0%、「1人の収入で生活しなければならない」21.5%との回答があった。
おひとり様で良くなかったポイントは<健康面の不安><老後の不安><精神面の不安><経済面の不安>である。

図表11

おひとり様で悪かったポイント

5. まとめ

今回の調査では、おひとり様の “お金の使い方” “時間の使い方”そして、おひとり様のメリット/デメリットを探ってきた。

おひとり様の特徴は、以下の通りと言えそうだ。
 ❶支出の25%を占める可処分所得を、自分の裁量で自由に使うことができる。
 ❷時間にゆとりがあり、他者に気を遣わず好きな趣味やレジャーを行うことができる。
 ❸ネガポイントとして、ひとり行動での孤独感、緊急時の健康課題、老後への不安を抱えている。

このようにおひとり様のゲインポイント❶❷と、ペインポイント❸が明らかなことにより、
さらにゲインポイントを増強するために個々の「自由度を尊重した商品・サービス」の提供や、ペインポイントを捉えた、例えば、「1人でも楽しめる旅行パッケージ」や、「1人で利用しやすい飲食店」の開発や「老後の不安を解消する保険」などが考えられる。

おひとり様を対象とした「ソロ活ビジネス」 を成功に導くには、彼らのライフスタイルやニーズを、男女差、年代別、あるいは年収・資産の状況の違い 等にも注目し、に深く理解することも大事である。
少子高齢化がさらに進む日本において、 今後もおひとり様市場は拡大が予想されるため、企業はこのトレンドを捉え、柔軟かつ創造的なアプローチでビジネスを展開することが求められる。


※子どものいる既婚者とおひとり様との比較データなど、 本記事でご紹介しきれていないデータ・チャートは、無料レポートをダウンロードしてご確認ください。


調査概要
調査地域:日本全国
対象者条件:20~59歳男女個人
標本抽出方法:マイティモニターより適格者を抽出
標本サイズ: おひとり様:n=876
       既婚(子持ち):n=294
ウエイトバック集計:あり
※性年代構成比を、2020年度実施国勢調査データをベースに、単独世帯構成比にあわせてウエイトバック
調査実施時期: 2025年1月31日(金)~2025年2月4日(火)

著者プロフィール

濱 賢太郎(はま けんたろう)プロフィール画像
濱 賢太郎(はま けんたろう)
株式会社インテージ マーケティングパートナー第2本部 営業推進部 
未来共創センター長
・大学卒業後家電メーカーへ就職、ワープロ、FAX、携帯電話、通信映像端末、
太陽光発電の商品企画を担当。
・2013年株式会社インテージに入社し、国内外の生活者リサーチ、
コンサルティングに従事。
・2017年「未来共創センター」を設立。
企業との共創による新価値の創出を軸に、共同研究(POC)、
生活者研究を多数実行中。
・現在はWell-being領域に興味関心を持ち
(社)データビリティコンソーシアムに参画
「Well-being部会」を立ち上げ、異業種との共創活動に取組み中。

株式会社インテージ マーケティングパートナー第2本部 営業推進部 
未来共創センター長
・大学卒業後家電メーカーへ就職、ワープロ、FAX、携帯電話、通信映像端末、
太陽光発電の商品企画を担当。
・2013年株式会社インテージに入社し、国内外の生活者リサーチ、
コンサルティングに従事。
・2017年「未来共創センター」を設立。
企業との共創による新価値の創出を軸に、共同研究(POC)、
生活者研究を多数実行中。
・現在はWell-being領域に興味関心を持ち
(社)データビリティコンソーシアムに参画
「Well-being部会」を立ち上げ、異業種との共創活動に取組み中。

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