【毎月更新】生活者のお金の使い方
この記事では、生活者のいまを映す最新データをお届けします。物価高や円安など、消費を取り巻く環境が変化する中、生活者のお金の使い方はどのように変化しているのでしょうか。物価動向、日常の買い物行動、消費マインドの最新データから読み解きます。
2024年9月のコメント:
今年に入ってから、1人あたりの買い物金額(前年比)は激しい変化を繰り返しています。
先月(9月)は大きく増加して、103.7%と前年を上回っていましたが、今月は101.4%と、前年比プラスながら、先月からは2.3ポイント下がりました。
チャネルごとにみると、特にドラッグストアが大きく前年プラスの状態が続いていますが、9月は103.7%と8月と比べると4.4ポイント下げていました。
買い物回数は先月(100.2%)から動きはなく、トータルでは100.0%と前年同水準となりました。チャネル別では、通販・ネット(102.6%)、ドラッグストア(102.1%)が前年比プラス。コンビニエンスストア(97.9%)が前年比マイナスと、傾向の違いが見られています。
消費財の市場動向に目を向けると、食品、飲料、雑貨などのマーケットサイズが8月から大きく減少しています。特に食品、飲料で目立ちます。とはいえ、昨年の同時期と比較すると、食品はプラス2.5%程度と伸びています。今年の8月は、猛暑による需要増に加え、南海トラフ地震臨時情報に伴う備蓄需要の増加などで大幅に市場が拡大しました。その分、9月が目立って落ちている印象を受けるのかもしれません。
好調カテゴリを見てみましょう。
今月も「その他リップ(前年比184.4%)」が好調です。2位にも大差をつけて前年比2倍近い売り上げとなっています。チャネルをプルダウンして確認すると、スーパー、ドラッグストア、ホームセンターで1位となっています。中でもホームセンターでは252.7%とすさまじい売れ行きのようです。
「その他リップ」には主に色付きリップが含まれます。コロナ禍で外出機会が大幅に減ったことで、一度大きく落ち込みましたが、この間にしっかりメイクをするというよりも、肌がきれいに見えたり肌に負担をかけない程度にメイクをするような考え方が一定数定着し、コロナが収まった今でも好調が続いていると考えられます。さらに、最近では「リッププランパー」という唇(リップ)をplump(ぷっくりさせる)ための成分が入っている商品の人気が高まり、手ごろな価格帯の商品が充実してきたことも、カテゴリの売り上げを押し上げる要因となっています。
化粧用紙製品(除クレンジング)やエチケット品などの人気は、猛暑による発汗を抑えたり、汗によるにおいを抑えたりといった作用を期待してのものの動きと言えそうです。これらの商品は最近では「夏」に限ったものではなく、一年中店頭に置かれるようになっています。
汗やにおい(体臭)に対する意識が男女ともに高まり、定着に向かっていることもその要因と言えそうです。
カテゴリの動きを見ながら、さまざまな生活者の暮らしのシーンやその変化を想像するのはなかなかおもしろいものです。みなさんはこのランキングにどのような風景を重ねてみましたか。
最後に消費マインドを見ていきましょう。「節約意識」については、9月は1.46ポイントとなり、わずかに上昇(+0.05ポイント)しました。
また現在の消費意欲はマイナス0.35ポイント(先月比マイナス0.22ポイント)と減少に転じました。そして、最も低いところを推移している今後の消費意向はマイナス0.59ポイントとなっており、こちらも先月からわずかに減少しています。
節約意識は強まり、消費意欲も現在、将来ともにわずかに減少に向かっている状況です。
季節は「秋」。本格的な秋の到来を受けて、食もファッションも大きく変わるタイミングです。各市場、各カテゴリがどのような動きになるのか注視したいところです。
今後もぜひ、いっしょにデータとともに生活者のお金にまつわる意識や行動の変化をウォッチしていきましょう。
コメント:生活者研究センター センター長 田中 宏昌(たなか ひろまさ)
※次回のデータ・コメントの更新は11/21を予定しています。
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データについて
【SRI一橋大学消費者物価指数】
一橋大学経済研究所経済社会リスク研究機構、全国スーパーマーケット協会と株式会社インテージとの共同プロジェクト「流通・消費・経済指標開発プロジェクト」の一環として作成している経済指標です。インテージのSRI+のデータを用いて消費財の物価の変動とその構造変化を可視化します。
物価の構造変化を「新旧商品入れ替え効果:新商品による影響」「価格変化効果:既存品の値上げ・値下げによる影響」「代替効果:既存品の中で消費者が購入商品をスイッチしたことによる影響」に分解することで、要因を捉えることができます。
こちらの記事でもご紹介していますので、合わせてご覧ください。昨今の値上げで物価はどう動いている?マクロ視点で構造をひも解く
【SCI®(全国消費者パネル調査)】
全国15歳~79歳の男女53,600人の消費者から継続的に収集している日々の買い物データです。食品、飲料、日用雑貨品、化粧品、医薬品、タバコなど、バーコードが付与された商品について、「誰が・いつ・どこで・何を・いくつ・いくらで、購入したのか」という消費者の購買状況を知ることができます。
SCI Shopper Indexデータは、このSCIで収集している消費財購入時のレシート情報を基に、日常の買い物金額や買い物頻度などを集計したものです。
※SCIでは、統計的な処理を行っており、調査モニター個人を特定できる情報は一切公開しておりません
【SRI+®(全国小売店パネル調査)】
国内小売店パネルNo1※1 のサンプル設計数とチェーンカバレッジを誇る、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ホームセンター・ディスカウントストア、ドラッグストア、専門店など全国約6,000店舗より継続的に、日々の販売情報を収集している小売店販売データです。
※SRI+では、統計的な処理を行っており、調査モニター店舗を特定できる情報は一切公開しておりません
※1 2021年6月現在
【月次調査】
調査地域:全国
対象者条件:15-79 歳の男女
標本抽出方法:弊社「マイティモニター」より抽出しアンケート配信
標本サイズ:n=3,000(1回あたり)
調査実施時期: 2022 年7月~ 各月第1週
※消費意欲、節約意識は1年前の同時期と比べた度合いを-5~+5の11段階で聴取
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(*パネルデータ:「SRI+」「SCI」「SLI」「キッチンダイアリー」「Car-kit」「MAT-kit」「Media Gauge」「i-SSP」など)
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