【毎月更新】生活者のお金の使い方
この記事では、生活者のいまを映す最新データをお届けします。物価高や円安など、消費を取り巻く環境が変化する中、生活者のお金の使い方はどのように変化しているのでしょうか。物価動向、日常の買い物行動、消費マインドの最新データから読み解きます。
2024年11月のコメント:
物価指数については、9月ごろまでは下降傾向にありましたが、10月以降でまた上昇していることがわかります。10月には他の月に比べて多くの品目での値上げがあったことが要因と推察されます。物価変動の構造からは価格変化効果(継続商品)の影響が大きい、つまり既存品の値上げの影響が大きいことが示されています。
次にトータルの買い物金額についてです。値上げの影響もあり、今月は前年比104.2%と増加傾向が見られました。チャネル別にみてみると、スーパーは104.9%、ドラッグストアは105.9%、通販・ネットは105.5%と多くのチャネルでプラスの傾向が見られます。コンビニは99.0%とやや低い傾向にありますが、2024年8月以前と比較すると回復傾向が見られます。値上げに伴って、比較的単価の高いコンビニの利用を控える傾向があったことが考えられますが、直近数ヶ月の回復基調には、消費者の節約疲れなどの要因があるかもしれません。
消費財の市場動向に目を向けると、雑貨では例年10月が少し伸びて、11月は微減する傾向が見られるのですが、今年はその傾向がゆるやかです。これは例年より暑かった時期が長かったことで、衣替えの時期が10月→11月にピークがずれこんだ影響が考えられます。この傾向はのちに触れる好調カテゴリで、防虫剤や除湿剤などの衣替え関連グッズが上位に挙がってきていることからもうかがえます。それ以外にも、雑貨のなかで比較的市場規模の大きい洗濯用洗剤や柔軟剤といった、洗濯時に利用するもので値上げが続いており、全体の市場規模拡大に一定寄与していることが考えられます。そのほかの市場では、例年と大きな差はなく推移していそうです。
次に好調カテゴリを見てみると、業態トータルでは米が1位となっており、流通の混乱などは収まったものの依然として値上がり状態の続く影響が見て取れます。2位には麦芽飲料がランクインしました。麦芽飲料は季節の変わり目に伸びる傾向があり、例年では10月に一つのピークがありますが、今年は季節の変わり目が後ろ倒しになったことで、ピークが11月にずれ込んでいる様子が見受けられます。また主力商品がSNS上で話題になっていたことなども好調に寄与していそうです。
化粧用紙製品は毎月上位にランクインしていますが、好調の要因は変化していそうです。夏は汗を拭くための商品などが好調でしたが、今月は洗顔後に使う使い捨てのタオルが好調に寄与していました。ほかにはペット耐久用品も上位にランクインしています。これは、ねこ用のこたつなど暖房器具が好調だったことが要因の1つとなっています。
スーパーでのランキングを見てみると、冷凍農産がランクインしています。内訳を見てみると、ブロッコリーや冷凍フルーツなどが伸長しており、これらは生鮮価格が上昇していたことから、比較的値段の安定している冷凍ものへのスイッチがあったと考えられます。実際店頭では、生鮮売場で「生野菜は高いから、冷凍はいかが?」といった販促が打たれている様子も見られました。 このようなデータを見ていると、同じ商品カテゴリ内での値上げだけでなく、他の売場に置かれている商品の状況が買い物行動に影響してくる様子もうかがえます。
最後に消費意欲、お金をかけたいモノ・コトを見てみましょう。
現在の消費意欲・今後の消費意欲についてはマイナス傾向のなかでほぼ横ばいで推移しています。一方で現在の節約意識については、依然としてプラスの状態のなか、ほぼ横ばいで推移していますが、先月に比べるとやや低くなっています。11月下旬ごろから年末に向けた各種セールは始まっているものの、消費意欲が高まらないというこの状況は、物価高のご時世で過度な消費はしないように意識している人が多いかもしれません。
お金をかけたいモノ・コトについては、前月から比較して食品の伸長が目立ちます。食品は例年12月に伸びる傾向がありますが、今年は例年と比べても特に大きな伸長が見られます。年代別に見ると伸長の要因は40-70代であることが分かります。
20代については特に食品の伸びは見られませんが、他の年代と比較してライブ、映画鑑賞が高く、12月については外食の伸長も目立つなど、外でのアクティビティに対してお金を使う傾向が見られます。つい浮足立ちがちな12月ではありますが、過ごし方は年代によってかなり違いがありそうです。
今年は数多くの商品の値上げや、夏の長期化など、様々な変化が私たち消費者を取り巻いていましたが、肌感覚だけではなく実際のデータにもその影響が多く表れていました。物価高や温暖化などの傾向は引き続き続いていくと思われますが、それに伴う別の商機が生まれる可能性もありそうです。引き続き、データとともに生活者のお金にまつわる意識や行動の変化をウォッチしていきましょう。
コメント:浜田 優花
※次回のデータ・コメントの更新は1/23を予定しています。
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データについて
【SRI一橋大学消費者物価指数】
一橋大学経済研究所経済社会リスク研究機構、全国スーパーマーケット協会と株式会社インテージとの共同プロジェクト「流通・消費・経済指標開発プロジェクト」の一環として作成している経済指標です。インテージのSRI+のデータを用いて消費財の物価の変動とその構造変化を可視化します。
物価の構造変化を「新旧商品入れ替え効果:新商品による影響」「価格変化効果:既存品の値上げ・値下げによる影響」「代替効果:既存品の中で消費者が購入商品をスイッチしたことによる影響」に分解することで、要因を捉えることができます。
こちらの記事でもご紹介していますので、合わせてご覧ください。昨今の値上げで物価はどう動いている?マクロ視点で構造をひも解く
【SCI®(全国消費者パネル調査)】
全国15歳~79歳の男女53,600人の消費者から継続的に収集している日々の買い物データです。食品、飲料、日用雑貨品、化粧品、医薬品、タバコなど、バーコードが付与された商品について、「誰が・いつ・どこで・何を・いくつ・いくらで、購入したのか」という消費者の購買状況を知ることができます。
SCI Shopper Indexデータは、このSCIで収集している消費財購入時のレシート情報を基に、日常の買い物金額や買い物頻度などを集計したものです。
※SCIでは、統計的な処理を行っており、調査モニター個人を特定できる情報は一切公開しておりません
【SRI+®(全国小売店パネル調査)】
国内小売店パネルNo1※1 のサンプル設計数とチェーンカバレッジを誇る、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ホームセンター・ディスカウントストア、ドラッグストア、専門店など全国約6,000店舗より継続的に、日々の販売情報を収集している小売店販売データです。
※SRI+では、統計的な処理を行っており、調査モニター店舗を特定できる情報は一切公開しておりません
※1 2021年6月現在
【月次調査】
調査地域:全国
対象者条件:15-79 歳の男女
標本抽出方法:弊社「マイティモニター」より抽出しアンケート配信
標本サイズ:n=3,000(1回あたり)
調査実施時期: 2022 年7月~ 各月第1週
※消費意欲、節約意識は1年前の同時期と比べた度合いを-5~+5の11段階で聴取
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(*パネルデータ:「SRI+」「SCI」「SLI」「キッチンダイアリー」「Car-kit」「MAT-kit」「Media Gauge」「i-SSP」など)
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