【毎月更新】生活者のお金の使い方

この記事では、生活者のいまを映す最新データをお届けします。物価高や円安など、消費を取り巻く環境が変化する中、生活者のお金の使い方はどのように変化しているのでしょうか。物価動向、日常の買い物行動、消費マインドの最新データから読み解きます。
本来なら梅雨のじめじめとした空気感に包まれる6月ですが、今年は雨も少なく、例年より暑い日が続いていました。気候の変化は購買行動にも表れていそうです。今月もそんな6月の消費動向をデータから振り返っていきましょう。
《物価の動き》
物価指数は全体では横ばい傾向ですが、チャネル別に見てみるとコンビニエンスストア(CVS)が上昇傾向であることが分かります。6月も多くの商品で値上げが実施されました。定価販売が基本のCVSでは、他のチャネルに比べて値上げの状況が直接反映されやすく、このような傾向がより明確に表れていると考えられます。
《買い物金額・買い物回数》
6月の買い物金額の前年比は102.4%、買い物回数の前年比は99.7%となっています。全体で見ると堅調な動きをしていますが、中身を見てみると、ここでも特徴的なのがCVSです。金額は104.2%、回数は102.0%とどちらも前月から大きく伸長しています。金額の前年比には値上げの影響も一定あるかと思いますが、6月は大手CVSチェーン各社で、価格は維持したまま内容量を増量するキャンペーンの実施をしていたり、1個買ったら1個もらえるキャンペーンを強化していたり、生活者にとってお得な施策が多く行われていたことも要因の1つかもしれません。これらの施策が来店頻度を高め、買い物回数の増加にもつながっていると推察されます。物価高が続く中、少しでもお得に買い物をしたい消費者の心理が見えてきます。また暑さが続く中で、ちょっと遠いスーパーより近くのCVSへ、という行動変容が起きている可能性も示唆されます。
《市場動向・好調カテゴリ》
消費財市場動向は全体として大きな動きはあまりありませんが、チャネル別ではドラッグストアが6月に大きく伸長しています。要因について好調カテゴリで深堀すべく、ドラッグストアの主要商品である雑貨に絞ってランキングを見ていきます。すると上位にはその他男性化粧品やその他雑貨、制汗剤などがランクインしています。その他男性化粧品やその他雑貨の好調の要因は、冷却タオルなどの暑さ対策グッズとなっており、気温が高くなったことで、暑さ対策グッズが売れていることがわかります。
大分類を化粧品に絞った際にも、上位に化粧用紙製品や日焼け・日焼け止めがランクインしています。化粧用紙製品では汗を拭く冷感シートはもちろん、油取り紙とフェイスパウダーが一体化した商品などが好調で、生活者は暑さ対策にお金をかけていることが見て取れます。おしろいもランクインしていますが、これは日焼け止め効果のついた商品や、ブルーライトや花粉など外部の刺激から守ってくれる商品の寄与が大きくなっています。どちらも本来の機能にプラスαの価値をのせたものとなっており、1つで複数の役割を果たしてくれる商品の人気の高まりがうかがえます。
続いて食品についてみていくと、米が引き続き1位になっています。依然として価格の高い状況は続くものの、備蓄米やブレンド米など安価に手に取れる米も一定流通してきたことで、数か月前に比べると落ち着きを見せ始めています。米飯類についてもプラスとなっていますが、これは値上げによる影響で、個数ベースで見ると大きくマイナスとなっています。米が値上がりする中、割高感のあるパックごはんは控える傾向があるかもしれません。
今月特徴的なのは砂糖と食塩の伸長です。毎年6月は梅の収穫時期となっており、梅酒や梅干しを作るための需要が高まる2品目となっています。昨年は歴史的な梅の不作に見舞われたため、前年反動でプラス幅が大きくなっています。またキャンディが上位にランクインしていますが、6月は好調が続くグミの他に、塩分補給ができる商品の好調も品目のプラスに寄与しています。暑さ対策は雑貨だけではなく、食品にも広がっているようです。
《消費意欲、お金をかけたいモノ・コト》
現在の消費意欲・今後の消費意欲については、どちらも前月から+0.1ポイントほど上昇しています。ボーナス支給月の会社も多かったことから、消費意欲が高まったのではないかと考えられます。
お金をかけたいモノ・コトを見ると、旅行、ドライブが先月に比べて大きく伸長していることが分かります。ボーナス後であることに加えて、夏休み前の時期であることから、伸長していると考えられます。ただし年代別に見ていくと、伸長しているのは40代以降であり、20代・30代は旅行、ドライブの伸長は見られません。20代・30代はエンタメにお金をかけたい人が多く、これらは推し活などが含まれています。ここから世代間でのお金のかけ方の考え方には差が見受けられます。
6月は暑さの影響での消費行動の変化が多く見受けられる月でした。消費意欲も上がっているので、ファン付き作業着や良い日傘など、より高価な暑さ対策グッズへの投資も今後増えてくるかもしれません。今後も引き続き、データと外部環境の変化の関係についてウォッチしていきたいと思います。
※次回のデータ・コメントの更新は8月を予定しています。
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データについて
【SRI一橋大学消費者物価指数】
一橋大学経済研究所経済社会リスク研究機構、全国スーパーマーケット協会と株式会社インテージとの共同プロジェクト「流通・消費・経済指標開発プロジェクト」の一環として作成している経済指標です。インテージのSRI+のデータを用いて消費財の物価の変動とその構造変化を可視化します。
物価の構造変化を「新旧商品入れ替え効果:新商品による影響」「価格変化効果:既存品の値上げ・値下げによる影響」「代替効果:既存品の中で消費者が購入商品をスイッチしたことによる影響」に分解することで、要因を捉えることができます。
こちらの記事でもご紹介していますので、合わせてご覧ください。昨今の値上げで物価はどう動いている?マクロ視点で構造をひも解く
【SCI®(全国消費者パネル調査)】
全国15歳~79歳の男女70,000人の消費者から継続的に収集している日々の買い物データです。食品、飲料、日用雑貨品、化粧品、医薬品、タバコなど、バーコードが付与された商品について、「誰が・いつ・どこで・何を・いくつ・いくらで、購入したのか」という消費者の購買状況を知ることができます。
※サービスリニューアルに伴い、2025年5月掲載分より新データに切り替えています。
※SCIでは、統計的な処理を行っており、調査モニター個人を特定できる情報は一切公開しておりません
消費者の購買行動を俯瞰して捉えることのできる『SCIパノラマレポート』を販売中です。ご希望の方はこちらの資料ダウンロードのページよりお申し込みください。
【SRI+®(全国小売店パネル調査)】
国内小売店パネルNo1※1 のサンプル設計数とチェーンカバレッジを誇る、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ホームセンター・ディスカウントストア、ドラッグストア、専門店など全国約6,000店舗より継続的に、日々の販売情報を収集している小売店販売データです。
※SRI+では、統計的な処理を行っており、調査モニター店舗を特定できる情報は一切公開しておりません
※1 2021年6月現在
【月次調査】
調査地域:全国
対象者条件:15-79 歳の男女
標本抽出方法:弊社「マイティモニター」より抽出しアンケート配信
標本サイズ:n=3,000(1回あたり)
調査実施時期: 2022 年7月~ 各月第1週
※消費意欲、節約意識は1年前の同時期と比べた度合いを-5~+5の11段階で聴取
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(*パネルデータ:「SRI+」「SCI」「SLI」「キッチンダイアリー」「Car-kit」「MAT-kit」「Media Gauge」「i-SSP」など)
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