【毎月更新】生活者のお金の使い方

この記事では、生活者のいまを映す最新データをお届けします。物価高や円安など、消費を取り巻く環境が変化する中、生活者のお金の使い方はどのように変化しているのでしょうか。物価動向、日常の買い物行動、消費マインドの最新データから読み解きます。
最近話題の「二季」という言葉が象徴するように、今年の10月は上旬~中旬の夏のような暑さから一転し、下旬は冬のような寒さが押し寄せ、急激な気温の変化に驚いた方も多いのではないでしょうか。また10月も多くの品目で値上げラッシュが続き、特に、”ペットボトル飲料200円台突入”は大きな話題になりました。そうした中で生活者のお金の使い方にはどのような変化があったか、今月もデータから深堀りしていきましょう。
《物価の動き》
10月の容量単価指数も4%前後で横ばいの推移が続いています。チャネル別で見ると、スーパーは変動を繰り返しています。一方でコンビニエンスストア(CVS)は上昇傾向となっており、他のチャネルとの差が開いています。
物価変動の構造を見ると月の後半にかけて代替効果が弱まっており、特にCVSで顕著にその傾向が見られます。
《買い物金額・買い物回数》
10月の買い物金額は前年比100.5%、買い物回数は前年比97.5 %となりました。値上げによる買い物金額のプラス傾向と、値上げに伴う買い控えによる買い物回数のマイナス傾向はともに今月も続いていますが、特に顕著なのはCVSです。CVSの買い物金額は前年比99.8%と前年並みの水準になっていますが、買い物回数は前年比94.4%と大きくマイナスになっています。一方ドラッグストアでは買い物金額が前年比102.5%でプラスとなっている中、買い物回数の前年比も99.8%と前年並みの水準をキープしています。定価販売中心のCVSでの買い物が減り、比較的安価なドラッグストアでの買い物が増える傾向 が、値上げラッシュにより今月は特に強く表れました。
《市場動向・好調カテゴリ》
市場動向を見ると、すべてのカテゴリでマーケットサイズが前年より拡大しています。カテゴリ別に見ると食品では前年比103.9%と、ここ1年の値上げラッシュがマーケットサイズ拡大に反映されていると読み取れる一方、飲料は前年比100.7%と前年からの伸びは小さくなっています。ほかのカテゴリについても前年からの伸びは小さく、値上げによるマーケットサイズ拡大の程度はカテゴリによって異なることが読み取れます。必需品である食品については値上げを受け入れ、代わりにそれ以外の買い物では支出を抑えるメリハリ消費の傾向が強まっていることがうかがえます。
好調カテゴリでは、10月後半の気温低下の影響が多くのカテゴリで見られました。まず食品では5位に「春雨・くず切り」、7位に「鍋つゆ・煮物料理のもと」がランクインしています。昨年の10月は1か月を通して暖かかったことも踏まえると、今年は下旬の寒さにより鍋料理の需要拡大が10月に前倒しとなり、それがデータにも表れていると考えられます。飲料では「ココア」、「トマトジュース」、「豆乳」、「美容・健康ドリンク」などが好調でした。特にココアは飲むことで体が温まるだけでなく、免疫力向上に効果があるとも言われています。今年はインフルエンザの流行開始が早まったこともあり、急激な季節の移り変わりで体調を崩さぬよう、これらの健康をサポートする飲料の人気が高まっていると考えられます。さらに雑貨では「使い捨てカイロ」が前年比128.0%と大きく伸びており、特にCVSでは前年比147.9%と顕著でした。まだ暖かいはずと思い外出したものの、実際は思いのほか寒く、使い捨てカイロを求めCVSへ駆け込んだ、という人も多かったのかもしれません。化粧品では、「ハンド&スキンケア」が前年比123.2%と好調でした。こちらも寒さに伴う肌の乾燥対策で購入されたことが推察されます。
10月の好調カテゴリに表れているように、急な寒暖差から、“季節変化に対応する商品”が大きく伸びるケースがあります。近年、気温の変化が読みにくいことが少なくありませんが、そうした不確実性に対して柔軟に販促タイミングを調整できる体制が、生活者の期待に迅速に応えるための強みとなるでしょう。
《消費意欲、お金をかけたいモノ・コト》
消費意欲を見ると8月から10月にかけて、「現在の節約意識」は緩やかに上昇、「現在の消費意欲」「今後の消費意欲」は緩やかに低下と、物価上昇の影響がここでも見られます。特に10月は「今後の消費意欲」が前月から0.1ポイントの低下となっていますが、消費の増える年末に向け、物価高が続く中で生活者の消費マインドがどのように変化していくか、今後も注目です。
お金をかけたいモノ・コトでは、食品の回答比率が7月から継続的に上昇しています。市場動向でも確認できたように、必需品である食品には一定お金をかけたい意識が見られます。あるいは10月はハロウィンや秋の味覚など、食を意識する機会が多かったことも考えられます。他のジャンルでは、ファッションも前月から回答比率が0.5ポイント増加しています。今年は気温の高い時期が長かった分、気温が変化した10月はより秋服・冬服を購入したい機運が高まっていたのかもしれません。また行楽シーズンということもあり、旅行、ドライブ、ライブ、映画鑑賞なども回答比率が前月から上昇しています。
急な寒さと物価高に戸惑う10月でしたが、工夫しながら季節を楽しむ生活者の姿もデータから確認することができました。また、今後は物価高対策への期待から生活者の消費マインドが高まる可能性もあります。年末に向け、消費行動や心理はどのように変化していくか、引き続き注視していきます。
※次回のデータ・コメントの更新は12月を予定しています。
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データについて
【SRI一橋大学消費者物価指数】
一橋大学経済研究所経済社会リスク研究機構、全国スーパーマーケット協会と株式会社インテージとの共同プロジェクト「流通・消費・経済指標開発プロジェクト」の一環として作成している経済指標です。インテージのSRI+のデータを用いて消費財の物価の変動とその構造変化を可視化します。
物価の構造変化を「新旧商品入れ替え効果:新商品による影響」「価格変化効果:既存品の値上げ・値下げによる影響」「代替効果:既存品の中で消費者が購入商品をスイッチしたことによる影響」に分解することで、要因を捉えることができます。
こちらの記事でもご紹介していますので、合わせてご覧ください。昨今の値上げで物価はどう動いている?マクロ視点で構造をひも解く
【SCI®(全国消費者パネル調査)】
全国15歳~79歳の男女70,000人の消費者から継続的に収集している日々の買い物データです。食品、飲料、日用雑貨品、化粧品、医薬品、タバコなど、バーコードが付与された商品について、「誰が・いつ・どこで・何を・いくつ・いくらで、購入したのか」という消費者の購買状況を知ることができます。
※サービスリニューアルに伴い、2025年5月掲載分より新データに切り替えています。
※SCIでは、統計的な処理を行っており、調査モニター個人を特定できる情報は一切公開しておりません
消費者の購買行動を俯瞰して捉えることのできる『SCIパノラマレポート』を販売中です。ご希望の方はこちらの資料ダウンロードのページよりお申し込みください。
【SRI+®(全国小売店パネル調査)】
国内小売店パネルNo1※1 のサンプル設計数とチェーンカバレッジを誇る、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ホームセンター・ディスカウントストア、ドラッグストア、専門店など全国約6,000店舗より継続的に、日々の販売情報を収集している小売店販売データです。
※SRI+では、統計的な処理を行っており、調査モニター店舗を特定できる情報は一切公開しておりません
※1 2021年6月現在
【月次調査】
調査地域:全国
対象者条件:15-79 歳の男女
標本抽出方法:弊社「マイティモニター」より抽出しアンケート配信
標本サイズ:n=3,000(1回あたり)
調査実施時期: 2022 年7月~ 各月第1週
※消費意欲、節約意識は1年前の同時期と比べた度合いを-5~+5の11段階で聴取
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(*パネルデータ:「SRI+」「SCI」「SLI」「キッチンダイアリー」「Car-kit」「MAT-kit」「Media Gauge」「i-SSP」など)
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