野菜高騰が家計を直撃!救世主となった野菜とは?
※この記事は2016年12月のリリース記事を再構成したものです
日々の買い物で実感する野菜の高騰。そのあおりで三重県鈴鹿市が2日間給食を中止したほか、各地で給食の食材や献立の変更を余儀なくされました。長引く野菜の価格高騰に、生活者はどのような対策や工夫をしているのでしょうか?
インテージでは「SRI生鮮惣菜データ」を活用して、夏以降の野菜価格の動きと家計への影響について調べてみました。さらに生活者がどのような野菜高騰対策をしているのかを「みんレポ」の7万人による消費・生活エビソードから探ってみました。
野菜が高くなったのはいつから?
まずは、「みんレポ」の投稿から問題です。
投稿コメントにある、ほうれんそうの代わりに使った「●●」とは何でしょうか? 実はこの「●●」、販売数を3倍に伸ばしているんです。答えは……これから出てくる、とある野菜です。
図表1は、野菜の分類(*1)ごとに、平均単価(*2)の前年比を追ったものです。価格高騰の動きが8月最終週から始まっているのがわかります。
このときに価格が上がったのは根菜類と豆科野菜類。にんじんやえだまめなどです。この時期、これらの主産地は北海道。8月以降に北海道に3つの台風が上陸しましたが、この影響で農作物が甚大な被害を受けたことが価格高騰の原因というわけです。
さらに、9月は長雨続きの天候不順。気温が低く、記録的な日照不足が続きました。その影響から、10月に入ってからは、それまで安価だったキャベツ、青菜などの葉茎菜類と、きゅうり、トマト、ピーマン、なすなどの果菜類も上がり始めました。根菜類でも、にんじんに加えて大根の値も上がって価格上昇の勢いはとまらず。
図表1 野菜種類別の単価上昇率
データ:SRI 集計期間:2016年8月1日~11月27日
10月から急上昇した葉茎菜類と果菜類は野菜の販売数全体の半分近くを占める、よく食卓にのぼる野菜たち。(図表2)この頃から野菜の高騰が実感されてきたようです。
8月下旬から始まったこの野菜の高騰は11/21週に入ってようやく落ちつきが見られだしました。
図表2 野菜種類別の販売個数構成比
データ:SRI 集計期間:2015年8月3日~11月29日(昨年同時期のデータ)
Key Point 1
野菜高騰の始まりは8月末。10月からはよく食べる野菜にまで拡大。
家計に影響必至!野菜だけで支出が1.3倍に
野菜の販売個数の対前年比を見てみると、価格高騰の前後で傾向は変わらない一方、販売金額は10月に入って上昇を続け、11/14週には前年比132%と上昇がピークを迎えました(図表3)。
言い換えると、野菜への支出が約1.3倍に増えたということ! 食卓に欠かせない野菜の値上がり、家計への影響の大きさがうかがえます。
図表3 野菜販売の対前年値
データ:SRI 集計期間:2016年8月1日~11月27日
Key Point 2
野菜への支出は10月から増え、ピークの11/14週には前年の1.3倍に。
高騰対策で人気急上昇したのは、あの「●●」
家計への影響を減らす工夫は、買われる野菜の種類の変化を見ても分かります。10月以降、高騰している葉茎菜類や果菜類の販売が大きく減り、比較的価格が安定しているきのこ類や発芽野菜類(豆苗、かいわれ)の販売が増えています(図表4)。
特に豆苗は、規模が小さいながらも、前年の約3倍にまで販売数が増加しています(図表5)。
図表4 野菜種類別販売個数構成比の変化
データ:SRI 集計期間:2016年8月1日~11月27日
図表5 発芽野菜類の伸び
データ:SRI 集計期間:2016年8月1日~11月27日
ここで冒頭の問題の答えです。ほうれんそうの代わりに使われたのは「豆苗」でした。
豆苗は、もやしやかいわれなどのほかの発芽野菜に比べて緑が濃くボリューム感があるため、青物の代わりに使われているようです。
そして、こんな節約ポイントがあることも、豆苗の人気の秘密かもしれません。
毎日の献立にお弁当に、カット野菜と冷凍野菜が大活躍
豆苗以外にも、意外なものが販売好調です。それは、価格がほぼ変わらないカット野菜と冷凍野菜。「みんレポ」にも、これらを活用した野菜高騰対策が数多く寄せられています。
これらの投稿から、高騰対策としてのカット野菜や冷凍野菜の人気がうかがえます。事実、カット野菜は最大で対前年比148%、冷凍野菜は対前年比129%の伸びを見せていました(図表6)。
そんななか、野菜の価格上昇に落ち着きが見られ出した11/21週に新たな動きが。カット野菜や冷凍野菜の販売の伸びがいきなり減速したのです。生活者が野菜の価格が落ち着きだしたことに敏感に反応し、野菜の買い方を変えたようです。
図表6 代替商品の伸び
データ:SRI 集計期間:2016年8月1日~11月27日
Key Point 3
高騰対策で伸びたのは豆苗、カット野菜、冷凍野菜。
家計支出に大きく影響する食品価格。特に、野菜のような生鮮食品は天気に左右されて高くなったり安くなったりと、価格が大きく動きがちです。しかも今年は複数の天候要因により、価格高騰が長期にわたって多数の野菜に広がる、という事態になりました。
そんな中で生活者は、普段使う野菜が高いときには安定価格のきのこ類や発芽野菜類、カット野菜、冷凍野菜などを利用して、価格が落ちてきたら戻す、というように価格の動きに敏感に反応して買うものを変え、家計への影響を抑える工夫をしていたようです。
今回の分析には、「SRI生鮮惣菜データ」と「みんレポ」を利用しました。
「SRI生鮮惣菜データ」とは、市場推計POSデータとして利用されているSRI(全国小売店パネル調査)をベースに、生鮮・惣菜分野の販売動向を定点観測しているデータベースです。週次で収集した全国582店舗のスーパーマーケットでの生鮮(農産・畜産・水産)・惣菜・たまご・ベーカリー・生花の販売POSデータを用いて生鮮・惣菜市場の動きをタイムリーに捉えることができます。
また、「みんレポ」とは、アプリをインストールした会員約7万人(2016年7月現在)から「買った」「食べた」「行った」などの生活情報全般を写真付きでレポートしてもらうことで、さまざまな視点から情報を分析できるサービスです。なお、企業はASPサービスを通して、レポートを閲覧することができます。
*1:ここでは以下の分類を使用しています(総務省の家計調査の分類を基にインテージで作成)。
葉茎菜類:キャベツ、白菜、ねぎ、ほうれんそうなど
果菜類:きゅうり、トマト、なす、ピーマンなど
土物類:たまねぎ、じゃがいも、さつまいもなど
きのこ類:しめじ、えのき、まいたけなど
根菜類:にんじん、だいこん、れんこん、ごぼうなど
つまもの類:しょうが、しそ、みょうがなど
発芽野菜類:もやし、かいわれ、スプラウトなど
豆科野菜類:えだまめ、いんげん、さやえんどうなど
*2:平均単価
野菜の分類別(根菜類など)の販売金額を販売個数で割って算出しています。このため、より売れている種類(にんじん、大根など)の価格が反映されています。
参考:2016年9月の天気は?(2016/9/30)|ウェザーニュース
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