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Z世代・アルファ世代のリアル-テックネイティブな未来の消費者を紐解く①~消費価値観から得る、未来の消費者理解のヒント

時代と共に生まれる新しい技術や社会状況の変化の影響で、消費者の価値観・行動特性は変化し続けています。特にコロナ禍や情報化などの急速な社会変化によって、若い世代の意識や行動は複雑化しています。
この結果、既存のマーケティング手法だけでは顧客をつかむことが困難になっており、SNSや動画の活用といった新しいマーケティング施策をより効果的に活用する必要が生まれてきています。この活用を検討するためにも若い世代の特性について理解することは重要です。

そこでインテージでは、Z世代リサーチ研究分科会(1)を中心に複数の部署やグループ会社で連携し、アルファ世代・Z世代といった“テックネイティブ”の情報接触・価値観・消費行動を明らかにするための研究を始めました。ブランドマネジメント・マーケティング戦略を専門とし、若者研究の知見を有している産業能率大学の小々馬敦先生(2)との共同研究です。
知るギャラリーでは、この共同研究の結果を6回にわたって、お伝えしていきます。第1回は、インテージ 先端技術部の尾城がお送りします。

テックネイティブとは

テックネイティブとは、生まれた時からインターネットが存在していて、テレビ・パソコン・携帯電話のようなデジタル機器と関わりがあった人のことを指します[1]。デジタルネイティブという言葉で呼ばれることも多いです。

なかでも1990年代後半から2000年代生まれの人たちはZ世代と呼ばれています。スマートフォン普及率が高く、SNSなどを活用して多様な情報を日常的に収集している影響で、行動特性が他の世代と異なる傾向にあります。株式会社野村総合研究所の生活者一万人アンケート調査によると、Z世代の人はオンラインでの人間関係の構築をオフラインと区別することなく、躊躇なく行えることが特徴であることが示されました[2]。また、Z世代の消費行動に関しては、最小限に行い、衝動買いはしないと言われています。

Z世代の次の世代についてもすでに議論されています。Instagramがリリースされ、iPadが発売された2010年以降に生まれた人たちは、「生まれたときからタブレット端末、SNSが発展している新しい世代」としてアルファ世代(2010年から2025年生まれ)と呼ばれています[3]。アルファ世代の研究や調査はまだ少ないですが、親であるミレニアル世代も幼少期からインターネットに触れてきたデジタルに強い世代であることや現在の社会状況を鑑みると、インターネットサービスやデジタル機器・ウェアラブルデバイスなどの扱いに優れていて、情報・モノがあふれる生活をしていると推察できます。

またコロナ禍の影響をダイレクトに受けた世代としても注目を集めています。小学校では1人1台のタブレットが配布され、多くの授業がオンラインで行われることや、2020年以降に生まれるアルファ世代はコロナ禍以前の生活を知らない世代であることからも、Z世代以前の世代とは異なる価値観を持ち、行動特性にも変化が生じる可能性が高いです[4]。

Z世代は2030年には世界の総収入の1/4をカバーし、2031年にはミレニアル世代の経済力を上回るといわれるなど、消費の中心となりつつあります[5]。アルファ世代は消費の中心的な世代ではないですが、早い段階での価値観・消費行動の把握は、今後のマーケティング・生活者理解の重要なキーになると考えられます。

インテージグループと産業能率大学の小々馬先生の共同研究では、テックネイティブである未来の消費者を多角的に理解することを目的に、定量・定性の両面から大規模な調査を2022年1月から2月にかけて行いました。この記事では、その中でも定量調査で検証したアルファ世代・Z世代・ミレニアル世代の3世代間の価値観の違いと消費への影響について「消費価値観」と「SDGsへの意識・価値観」の二つの観点から考察します。

世代ごとの消費価値観の違い

アルファ世代の消費価値観の特徴
―アルファ世代はゲームが中心に価値観が形成される?―

世代別の消費価値観を聴取するために「指定金額(アルファ世代10,000円、Z世代以降30,000円)をもらった場合、何に使用するか」を自由に回答してもらいました。金額を指定した理由は、同じ価格帯の欲しいものを聴取することで世代の違いを把握しやすいためと、Z世代・アルファ世代に対してはお小遣いよりも高い金額を設定することで、普段は買えないが本当は欲しかった潜在的なニーズが測れると推察できるためです。オープンアンサーで聴取した結果を世代ごとにワードクラウド(出現頻度が大きいと文字が大きく表示される図)で示して、考察を行いました。

図表1はアルファ世代が10,000円をもらった時の使い道です。

図表1

アルファ世代は、ゲームに関連するもの(ゲーム・ゲームソフト・課金・Switch)が欲しいと思っていることが読み取れます。同調査では、「自分で使用することができるデバイス」として、他の世代よりもタブレット(アルファ世代:47%、Z世代中学生:41%、Z世代高校生以上:20%)とゲーム機器(アルファ世代:41%、Z世代中学生:35%、Z世代高校生以上:13%)が多く挙がりました。

新型コロナウイルスの影響により、卒業式などのイベントが中止される中、カリフォルニア大学バークレー校は、マインクラフト(オンラインゲーム)上で疑似的な卒業式を行っています。日本でも、企画者・参加者ともにオンライン上で知り合った小中学生によって、マインクラフト上で卒業式が行われています[6]。このことから“ゲーム”はアルファ世代を紐解くキーとなることが推察できます。

Z世代もオンラインとリアルで区別なくコミュニケーションができますが、アルファ世代はゲームやイベントなどオンライン上で一緒に体験を行うことが普通になってきています。将来的にはゲームなどのエンタメの域を超えて、教育などへの適用も考えられています。このことより、メタバース(コンピューターネットワークの中に構築された「仮想空間」や、その空間を通して提供されるサービス(3))のような、より広いデジタル空間での消費や行動にも難なく移行できる可能性が高い世代と言えそうです。

Z世代・ミレニアル世代の消費価値観の特徴
―趣味・自分らしさを大事にするZ世代と報酬を得ようとするミレニアル世代―

図表2、3はZ世代、ミレニアル世代がそれぞれ30,000円をもらった時の使い道です。

図表2

図表3

Z世代・ミレニアル世代は、“服”に使う人や“貯金”にまわす人が多いようです。Z世代は、消費が最小限であることが特徴と言われている中、30,000円をもらった場合に“服”が一番欲しいものとして挙がるのは意外な結果ではないでしょうか。これは、「まだ着られるから買わない」「欲しいものをインスタ等で保存して寝かせておく」など、消費を我慢している状態であるため、お金がもらえれば買いたいと思いつくのだと推察できます。現実的で高額なものを買わない、共感・コスパを重視する、と言われている世代ですが、潜在的ニーズは異なるのかもしません。
また“旅行”、“食事”、“外食”など、モノではなくコト消費が増えることも特徴の一つです。新型コロナウイルスで、コト消費のようなサービス業界は影響を受けていますが、消費者のニーズは変わらないことがわかります[7]。

Z世代の特徴は“グッズ”、“アイドル”、“推し”のような趣味に関連するワードが多く、好きなモノ・コトに消費をすることです。日経クロストレンドの調査[8]によると、Z世代の6割が「推し活」に興味を持っていることが示されていましたが、今回の調査でも推し関連に消費することがわかりました。Z世代は幼少期からインターネットで膨大な情報を検索することが可能であったため、さまざまな価値観に触れて育っており、多様性を受け入れて、自分らしさを非常に大事にしていると言われています[9]。この価値観が消費行動にもつながっていることが考察できます。

ミレニアル世代の特徴としては、“生活必需品”、“日用品”、“食品”など生活に関わるワードが多いことと、“投資”のように今あるお金を増やすことに使うことが挙げられます。『2018 デロイト ミレニアル年次調査[10]』では、帰属意識に関して、ミレニアル世代は2年以内に離職を考えている人が43%で、5年以上勤続を見込んでいる人の28%を上回る結果となっていました。終身雇用を考えていないこと、副業を行う人が増えたことからも、ミレニアル世代は一つの帰属先から受動的に報酬を得るのではなく、自らの力で報酬を得ようとしていることが読み取れます。

世代ごとのSDGsへの意識・価値観の違い

SNSのような”自ら探索する情報接触”の有無で価値観は変わる?

SDGs・共感性・コト志向などの価値観をアルファ世代・Z世代・ミレニアル世代の3世代で区切って分析した結果、どの項目にもあまり差がありませんでした。

ただ、5歳刻み(※アルファ世代の11歳・12歳、Z世代中学生の13歳から15歳は分割)で分析してみると、中学生以下(アルファ世代と中学生)と高校生以上で異なる行動・価値観を持っていることがわかりました。高校生以上のZ世代(16歳から24歳)の特徴として、商品を購入する前に情報探索をしっかり行うこと、SDGsへの意識があること、コト志向であること、他者への共感性が高いことが挙げられます。
図表4は、SDGsに関する調査項目で特に高校生以上のZ世代に特徴があった「地球に優しいものを選ぶようにしている」の回答結果です。赤枠で囲った高校生以上のZ世代は、他の世代と比較して地球に優しいものを選ぶようにしていることがわかります。

図表4

中学生以下・高校生以上で傾向が異なるのはなぜでしょうか。同調査では「スマートフォンを使用できる人」の割合は、小学生は53%、中学生は72%、高校生・大学生(16歳から20歳)は95%でした。また、SNSアカウント保有率も高校生になると急増すること(Twitterアカウント保有率が中学生13%、高校生以上69%)が、図表5よりわかります。このことより、中学生と高校生で傾向が異なる理由は、情報に触れる機会の違いであることが推察できます。

図表5

自らのSNSのアカウントを持ち、「社会」に向けた扉を手にすることで、これまで家族や学校などが中心だった情報接点は急激に増加することになります。高校生以上のZ世代はTwitter・Instagramアカウントを複数所持している人が多い傾向にあります(図表6,7)。人によっては複数のアカウントを保有して、多面・多層的な自我を使い分ける人もでてきています。より広く豊かになる情報接点が個人の価値観の形成に大きな影響を与えるとともに、消費行動にも変化を生じさせると考えられます。

図表6

図表7

この記事では、未来の消費者であるテックネイティブ(アルファ世代・Z世代)の価値観の特徴や消費への影響を、定量調査の結果をもとに考察しました。次回は、テックネイティブを想定した“新しい消費者行動モデル”について紹介します。


(1)【Z世代リサーチ研究分科会】
インテージグループR&Dセンターの分科会の一つ。マーケティング活動に資するZ世代の特性を理解し、グループの事業発展に繋がるZ世代の調査法・調査結果の活用法の確立を目指しています。これまでさまざまな形でZ世代にまつわるプロジェクトに関わったメンバーが集まり、社内外の知見の収集や自主調査の実施など精力的に活動を始めています。
(2)【小々馬敦先生】
産業能率大学経営学部マーケティング学科教授。ゼミの取り組みでは「Z世代の生活価値観」からマーケティングのニューノーマルを探究することを行っています。2015年から若者の価値観変容を追跡調査し、日本マーケティング協会と学生と社会人の対話「ミライ・マーケティング研究会」を開催するなど、精力的に若者のリアルについて研究されています。
小々馬 ゼミURL:https://www.kogoma-brand.com/
(3)メタバースの定義:https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00081/011300310/


【参考文献】
1 Marc Prensky,2001, Digital Natives, Digital Immigrants
2 日戸浩之,2019,世代別分析から見た消費行動の展望,知的資産創造
3 McCrindle Research Pty Ltd,2020 ,UNDERSTANDING GENERATION ALPHA
4 見崎浩一,2019, 端末1人1台、変わる授業・教育現場, 朝日新聞デジタル
5 Ben Winck,2020,Gen Z’s surging economic power will permanently change the investing landscape over the next decade, Bank of America says, MARKETES INSIDER
6 沓澤真二,2020, マインクラフトでバーチャル卒業式 オンラインで集まった小中学生の企画が思いやりでいっぱい,ねとらぼ
7 日経ビジネス編集部,2019,コト消費とは?体験や経験を売る企業の事例と新型コロナの影響
8 日経クロストレンド,2022,「推し活」Z世代の6割が興味、うち53%が「1万円以上使いたい」
https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00570/00006/
9 講談社SDGs,2021, Z世代とは? その価値観や消費行動と、SDGsへの影響力-SDGsにまつわる重要キーワード解説
10 2018年 デロイト ミレニアル年次調査,2018


【調査概要】
期間:2022年1月28日から2022年2月7日
対象者:11歳から50歳までの5850人(内訳:アルファ世代643人、Z世代1942人、ミレニアル世代1981人、x世代1284人)
調査方法:インテージのネットリサーチによる自主調査
11歳~15歳は、承諾した保護者の聞き取りによる代理回答を加えた

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