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定性調査の進め方 ~対象者の集め方

市場調査業界では調査参加者のことを「対象者」と呼びます。定性調査では数値で表現される量的なデータではなく、数値では測ることができない嗜好や行動など、質的なデータをインタビューなどによって集めます。定性調査で質の高い結果を得るためには、明確な調査対象者像を設定し、意見を聴取することが必要不可欠です。

対象者を集める、すなわち募集することを「リクルート」と呼びます。この記事では、定性調査の対象者のリクルート方法や品質担保の工夫について、定性調査を専門とするインテージクオリスでの対応内容を通じて解説します。
*定性調査全体の企画については、「定性調査の進め方 ~「調査企画」のポイント」をご覧ください。

リクルート方法には「Webリクルート」「機縁リクルート」がある

調査全体の企画設計や対象者条件を設定したら、具体的にリクルートの作業を進めることになります。まず、調査目的に適った方を募集するために、設定した対象者の条件に合致しているかどうかを判断するためのアンケートを作成します。これをスクリーナー、スクリーニングシートなどと呼びます。

定性調査の対象者リクルートには大きく「Webリクルート」と「機縁リクルート」という二つの方法があります。それぞれメリットや特徴がありますので、以下にご紹介します。

Webリクルート

Webリクルートは、調査会社が抱える大規模なインターネット調査モニターの中から、調査対象者をリクルートする方法です。調査会社に「モニター」として登録している方に大まかな条件についてのアンケートをメールで配信し、回答していただいた方の中から条件に合致する候補者を選定して、詳細な条件を電話やメールなどで確認していく方法です。

Webリクルートのメリットは、
・複雑な条件でなければ、多くの候補を集められる
・候補者の中から、より調査の目的に適った方を選定できる
という点が挙げられます。

調査会社が保有するモニター数は、後述の機縁リクルートを行う会社(機縁リクルート会社)に登録されているモニター数に比べ、人数が膨大なことが一つの特徴です。

例えば、
「商品Aを使っているが、商品Bは使っていない関東在住の40代女性」
「商品Aも商品Bも使っていない関東在住の40代女性」
「商品Aも商品Bも使っている関東在住の40代女性」
といった簡単な分岐の条件であれば、一度に多くの候補者を探し出すことができます。

より多くの声を反映させたい、幅広い年代など様々な方から広く意見を聞きたいといった際に、Webリクルートは適しているといえます。

また、多くのモニターに回答してもらうことにより、ある商品に対しての使用頻度がより高い人を調査対象者として依頼することができるなど、候補者の中からよりテーマや調査の目的に適った人に優先的にお声がけしてリクルートを行えることも大きなメリットです。

インテージは、379万人(2022年2月現在)の「マイティモニター」を保有しています。
これはマーケティングリサーチ業界で最大規模のインターネット調査モニターです。マイティモニターの大きな特徴として、モニター自身の性別や年齢といった基本的な情報に加えて、継続的に様々なテーマのアンケートを実施し、「最近3カ月に転職した人」「今後3カ月間で携帯電話会社を変更したいと思っている人」というように、テーマごとに人を分類した「サブパネル」を利用できることが挙げられます。サブパネルを利用することによって、調査の条件に応じてどのくらいの対象者が出現するかをあらかじめ把握することができ、条件を絞ってリクルートを開始することができる点がメリットとなります。

機縁リクルート

機縁とは、「ある物事が起こるきっかけや縁・つながり」のことです。あるきっかけを通じてつながりができている方を調査対象者として探していく方法が機縁リクルートです。機縁リクルートでは、機縁リクルート会社に情報を登録したモニターから、または個人の人脈を駆使し、対象者をリクルートします。

機縁リクルート会社に登録しているモニターの情報を見てアンケートメールを配信し、回答していただいたモニターの中から大枠が合致した方にお電話などで直接条件を詳細に確認する方法や、機縁リクルート会社に登録しているモニター情報を参照し、順次、電話で詳細の条件を確認する方法などがあります。

機縁リクルートのメリットは、
・機縁リクルート会社のリクルーターが候補者に直接スクリーナーの内容を確認するため、対象者条件のニュアンスを取り違えずに確認できる点
・当日キャンセルを予防することができる点
などが挙げられます。

機縁リクルートで選ばれた対象者は、人脈をベースにモニター登録していることもあり、機縁リクルート会社のリクルーターとのつながりを大事にしたい、いう心情から当日突然の欠席を防ぐことができるといえます。また、アンケートの回答だけでは把握しきれない「ニュアンス」も含め、調査の目的に適った対象者をリクルートできることも機縁リクルートの強みです。

少し具体例をもとに違いを説明します。「ある法改正により、メインで選択する商品の種類が変わった人」にインタビューをしたいとします。

Webリクルートでも、「法改正のタイミングで、メインで選択する商品の種類が変わったか」「メインの商品の種類が変わったのは法改正の影響か」を聴取することはできますが、その背後にあるニュアンスまで把握することは難しく、実際にインタビューをしてみたら、「法改正の影響もないわけではないけれど、実は別の要因の影響が大きかった」となってしまう可能性を否定しきれません。

一方、機縁リクルートでは、熟練したリクルーターがモニターご自身と電話でお話しして詳細の条件を確認していくため、なぜ「法改正がきっかけ」であることが重要なのかをリクルーターに伝えておくことで、より確実に、調査の目的に適った方をお呼びすることが可能になります。

Webリクルート機縁リクルート
リクルート
の特徴
・調査会社が全国各地に大規模なモニター
を保有し、メールでアンケート(スクリー
ナー)を配信
・機縁リクルート会社に登録された
モニター、またはリクルーターの個人の
人脈を駆使したリクルート
メリット・複雑な条件でなければ、多くの候補者を
全国各地から集められる
・候補者の中からより目的に合った方を
選定できる
・機縁リクルーターとのコミュニケーショ
ンにより、「ニュアンス」を含めてリク
ルートできる
・当日キャンセルを予防することができる

以上、「Webリクルート」と「機縁リクルート」について紹介しました。それぞれのメリットや特徴を生かし、どちらの方法がより適切かを見極めるのも調査設計時の重要なポイントです。

よりよい定性調査にするために

当日トラブルなくインタビューを行えるようにするには、様々な品質担保の取り組みが必要です。その中から実際に行っている取り組みをいくつかご紹介します。

履歴確認

調査対象者には、インタビューに初めて参加する方、2回目の方、何度もインタビューを受けたことのある方など、さまざまな方がいます。インテージクオリスでは、これまでにインタビューにご参加いただいた方の情報を、リクルート時に許諾を取ってデータベースに保管しており、候補者が過去にどんなインタビューに参加していたのかを確認することができます。

例えば、チョコレート商品Aについての調査を行う際に、過去1年間で同じAという商品に関する調査に参加していた方はご参加いただけないことがあります。これは、意見の偏りがあってはいけないことに加えて、以前の調査の経験から、まだ世の中に出ていない商品・広告の情報や、メーカーの「知りたいこと」を既に知っているなど、チョコレートAの「一般的なユーザー」とは言いにくいためです。また、調査の種類は異なったとしても、多くのインタビューに参加している方も慣れが生じていることから参加いただけないことがあります。

履歴の確認を行い、できるだけフレッシュな対象者の意見を聞けるように地道な努力をすることを通じて、よりよい調査を目指しています。

接続確認

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、2020年からオンラインツールを利用した非対面のインタビューも増えてきました。対象者の中には、普段からオンラインツールを利用している方もいれば、オンラインツールに触れる機会が少ない方、パソコンが苦手な方などさまざまで、インタビュー当日に接続がうまくいかない、音声がつながらない、画面が映らないといったトラブルが発生することがあります。

そういったトラブルを未然に防ぐために、対象者に対して、事前にオンラインツールを使って接続ができるか、音声や画面が問題ないか、ご自宅のWi-fiの回線状況は良好かといった接続の確認を行っています。限られたインタビュー時間の中で、参加者が不自由なくオンラインツールを用いて参加し、インタビューの時間を十分に確保できるように努めています。

当日確認

実は、対象者が会場に来たらすぐにインタビュー開始、ではありません。 アンケートの中で、調査の目的に適った対象者であることを確認する重要な事項を特定しておき、来場いただいた際に再度お伺いし、改めて対象者条件と相違がないかを確認したうえでインタビューに参加いただいています。リクルートのアンケートでは条件に合致していたとしても、当日確認した際の回答内容が異なる場合はインタビューにご参加いただけないことがあります。

確実に、調査の目的に適った方にご参加いただけるよう、事前の確認を念入りに行うことでインタビュー自体の品質担保を行っています。

この記事では定性調査を行う上でのリクルートについてご紹介しました。定性調査では、参加者の声自体が調査を形作っていくため、適切な調査対象者に参加いただくことは必要不可欠です。

今回の内容は、インテージとインテージクオリスが、学びセミナーi-collegeにて定期的に実施している“定性調査講座 入門編”の一部を抜粋・再構成したものとなっています。 セミナーでは、定性調査の一通りのフローと、デジタル化が進む定性調査の最前線について解説していますので、ぜひご参加ください。

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