緊急事態宣言下のゴールデンウィークの商品需要と今後の予想~気象コンサルが解説!市場ホットトピック④
この【気象コンサルが解説!市場ホットトピック】は、一般財団法人 日本気象協会 松本 健人氏が、気象データとインテージのデータを分析して、気象と消費の関係や、気温予測に基づいた商品需要などについて解説するコラムです。
第4回では、ゴールデンウィークの商品需要を振り返るとともに、今後1ヶ月の需要を予測します。
※この記事は、日本気象協会の「eco×ロジ」プロジェクトサイトの記事<https://ecologi-jwa.jp/news/trend-forecast/20210531/>を一部編集して掲載したものです。
2年連続緊急事態宣言によるGWの行動の変化を気象データ×統計から読み解く
今年の春は、3月以降記録的な高温傾向が続いていましたが、季節先取りの暖かさは徐々に一服。ゴールデンウィーク(4月26日週~5月3日週)は全国的に気温が前年よりも低くなりました。一方、新型コロナウイルスの感染再拡大に伴って、4月25日には東京都、京都府、大阪府、兵庫県に3度目の緊急事態宣言が発出されました。対象地域では2年連続の緊急事態宣言下でのゴールデンウィークとなりましたが、消費者の行動は前年と比べてどのように変化したのでしょうか。売上に対する気象の影響度が高い商材は、売上データだけでは行動の変化の影響が定量的に把握できません。日本気象協会では、気象データを使って売上を統計モデルでシミュレーションし、気象による変動要因の大きさを推定することで、真の社会的要因の大きさを推定する取り組みを行っています。
気象データを使って過去の売上をシミュレーション
例えば2021年4月25日週から5月3日週の売上において、前年より売上が伸びた商材を見てみます。
前年は「ステイホーム」が呼びかけられた緊急事態宣言によって、外出に伴って必要とされる商品の需要が軒並み落ち込みました。今年は同じ緊急事態宣言下(1都2府1県)であっても、前年と異なり全国一律での発出とならなかった点や新しい生活様式の定着などから、外出量がやや回復しました。商品の売上傾向にも前年からの変化が見られますが、全てが「コロナ慣れ」によるものではありません。
この期間、前年は記録的な暖かさで汗ばむような陽気となりましたが、今年は概ね平年並、すなわちこの時期らしい過ごしやすい天候となりました。全国の平均気温は前年が17.8℃に対し、今年は16.1℃と1.7℃低くなりました。いわゆる夏商材については気象要因がマイナス要因になっています。
たとえば、外出時に利用する日焼け&日焼け止めは、前年比141%の伸びとなっていますが、これでも気象の影響により伸び悩んでいると言える商材です。内訳のうち、気温要因が-27pt、社会的要因は残りの+67ptと分析されます。「前年並みの暖かさだったらもっと売れていた」と言い換えられるでしょう。
同じく外出時に購入・使用される、制汗剤やペットボトル系の飲料についても似たような傾向が見られます。これらの商材についてこの先のピークにあたる2021年夏や、2022年のGWの売上を考える上では、このような分析結果がないと傾向を見誤ってしまうのではないでしょうか。
前年よりも売上げが落ちた商材も見てみましょう。
ステイホーム中に家で食べるような煎餅&あられ、ビスケット&クラッカー、紅茶(ティーパック)、袋インスタント麺などはいずれも前年よりも売上が減少していますが、全てが社会要因ではありません。元々気温が低いと売上が伸びる商材ですので、「落ち込みが軽減している」と言えそうです。
アイスクリームや乾麺(素麺を含む)も前年比90%割れと、巣ごもり需要の継続を見越して強気の売上計画を立てていた商材担当者の方は頭を抱えているかもしれません。ただし、気象データ×統計で読み解けば、売上減少幅のうち多くは気象によるもの(いずれも減少幅のうち約7割程度)です。頭を切り替えて、夏本番を見据えた計画立案を行いましょう。
今後ワクチン接種の普及などで徐々に元の暮らしに戻ることが期待されます。ただし、在宅勤務の定着や屋外イベントの普及など、Beforeコロナに戻らない部分もあるでしょう。これらに伴う需要の変動を定量的に把握するためには、過去の売上実績から気温要因を切り分けて分析することが重要です。更に未来の販売計画を科学的・客観的に立案するには、これらの分析踏まえて気象予測と組み合わせることが効果的です。
向こう一ヶ月の気温要因による売上予測
この先、気象要因による需要はどのように推移するでしょうか。
今年は西日本を中心に記録的に早い梅雨入りとなるなど、5月も前年と異なる天候の経過をたどっています。この先、6月にかけても前年ほど顕著な暑さにはならない予測です。前年と比較すると、暑さによって売上が伸びる商品は、気温がマイナス要因となり、涼しさによって売上が伸びる商品は気温がプラス要因になるでしょう。たとえば、涼しいほど伸びるココアは気温要因で3pt増加、紅茶、シチューベース、はんぺん、煮豆などは2ptの増加となる予想です。一方、暑いほど伸びる日焼け&日焼け止めは3ptの減少、麦茶や果汁飲料、スポーツドリンクなども2ptの減少が予想されています。ぜひ参考にしてください。(実際は、新型コロナウイルスの流行による行動変容の影響等が加わる点にご注意ください。)
日本気象協会では、株式会社インテージの保有する全国小売店販売データ(SRI+®)を用いた製造業向け簡易版商品需要予測サービス「お天気マーケット予報」を提供しています。気象と社会的要因による需要の変化をリアルタイムに監視しながら、気象予測に基づき約260カテゴリにおける15週先までの需要予測を行っています。
お天気マーケット予報
https://www.intage.co.jp/service/services/database/sriplus/
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