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早い梅雨明け発表と4度目の緊急事態宣言、その影響は?~気象予報士が解説!市場ホットトピック⑤

この【気象予報士が解説!市場ホットトピック】は、一般財団法人 日本気象協会 小越 久美氏が、気象データとインテージのデータを分析して、気象と消費の関係や、気温予測に基づいた商品需要などについて解説するコラムです。
第5回では、2021年の梅雨明け前後の夏商品需要を振り返るとともに、この夏の需要を予測します。
※この記事は、日本気象協会の「eco×ロジ」プロジェクトサイトの記事を一部編集して掲載したものです。

梅雨明け前後の行動変化と緊急事態宣言による行動の変化を気象データ×統計から読み解く

前年の7月は梅雨前線の停滞が長引き、全国的に梅雨明けが遅れましたが、今年は全国的に梅雨明けが早く、7月第3週にあたる13日から16日にかけては、九州北部から東北北部の各地で梅雨明けが発表されました。前年の梅雨明けは8月にずれ込んだ地域もありましたので、前年と比較すると約半月早く、夏が到来したことになります。

一方、新型コロナウイルスの感染再拡大に伴って、今年7月12日には東京都で4度目の緊急事態宣言が出されました。アウトドア需要が高い夏商材にとって、前年より早い梅雨明けと緊急事態宣言はどう影響したのでしょうか。売上に対する気象の影響度が高い商材は、売上データだけでは消費者の行動変化の影響が定量的に把握できません。日本気象協会では、気象データを使って売上を統計モデルでシミュレーションし、気象による変動要因の大きさを推定することで、真の社会的要因の大きさを推定する取り組みを行っています。

梅雨明けと社会状況の前年比較

前年の7月は梅雨前線の停滞が長引いたことで、東日本と西日本は統計史上1位の多雨、日照不足となり、各地の梅雨明けは7月末から8月初旬にずれ込みました。一方、今年は梅雨前線の北上が早まり、7月11日に九州南部で、7月第3週にあたる13日から16日にかけては、九州北部から東北北部の各地で、平年より早い梅雨明けが発表されました(四国はほかの地域よりやや遅く7月19日に梅雨明け発表)。前年の梅雨明けと比較すると、約半月早く、夏が到来したことになります。

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この梅雨明け前後の期間、社会状況は前年と比較してどのように変化しているのでしょうか。前年は5月に全国で一回目の緊急事態宣言が解除され、6月には都道府県をまたぐ移動の自粛が全国で緩和されました。今年は、7月12日に東京都で4度目の緊急事態宣言が出され、新規感染者数も前年同時期より増加しています。一方で、今年は新生活様式がある程度定着してきた中で迎えた夏ともいえるでしょう。

気象データを使って過去の売上をシミュレーション

沖縄で梅雨明けとなった6月28日週から、梅雨のない北海道をのぞく全国各地で梅雨明けとなった7月19日週までの4週間の売上を夏商材に絞って見てみましょう。

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アウトドア需要が多い夏商材は、前年よりも売上が伸びた商材が多くなっていますが、これだけでは、暑さの影響で需要が伸びたのか、外出需要が回復した影響なのか分かりません。

この期間の全国の平均気温は25.4℃で、前年同時期の平均気温23.9℃より1.5℃高くなりました。この実際の気温を使って過去の売上をシミュレーションし、気温要因による需要の変動を定量的に見積もることで、真の社会要因がみえてきます。ここで社会要因とは、気温では説明できない何らかの売上変化要因を指し、C(社会要因) = A(売上前年比) – B(気温要因)で推定しています。

例えば、日焼け・日焼け止めクリームの売上は前年比181%の伸びとなりましたが、このうち+42ptは気温要因が占めていて、社会要因は残りの+39ptと試算されます。インバウンド需要の激減により新型コロナウイルス感染拡大前の需要水準に戻っていない日焼け・日焼け止めクリーム市場ですが、国内の外出需要は前年同時期と比較して+39pt分だけ回復したといえるでしょう。

スポーツドリンクは前年比141%の伸びのうち、気温要因は+19pt、社会要因は+22pt、炭酸飲料は前年比130%の伸びのうち気温要因は+10pt、社会要因は+20ptと見積もられ、暑さによる需要の増加だけでなく、部活動やイベントの再開などにより、アウトドア需要が回復しているものと推測されます。
また、家庭内での消費がメインと思われる乾麺やシロップ類などは、ほぼ気温要因で需要が伸びており、社会要因はほとんど変化していないことも分かります。

今後ワクチン接種の普及などで徐々に元の暮らしに戻ることが期待されます。ただし、テレワークの定着や屋外イベントの普及など、Beforeコロナに戻らない部分もあるでしょう。これらに伴う需要の変動を定量的に把握するためには、過去の売上実績から気温要因を切り分けて分析することが重要です。更に未来の販売計画を科学的・客観的に立案するには、これらの分析踏まえて気象予測と組み合わせることが効果的です。

向こう一ヶ月の気温要因による売上予測

この先、気温要因による需要はどのように推移するのでしょうか。
前年の8月は全国的に記録的な暑さになりました。今年は前年ほどの猛暑にはならない見通しですが、それでも厳しい残暑が続くでしょう。例年お盆を過ぎると立ち上がってくる冬商材ですが、気温要因による前年からの変化は、シチューやハンド・スキンケアで+3ptなどとわずかにとどまり、今年も立ち上がりは遅めとなりそうです。一方、紅茶ドリンクやコーラ、制汗剤など夏商材の需要は前年より-3ptから-4ptと、わずかに減る程度となるでしょう。
ぜひ参考にしてください。(実際には、新型コロナウイルスの流行による行動変容の影響等が加わる点にご注意ください。)

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日本気象協会では、株式会社インテージの保有する全国小売店販売データ(SRI+®)を用いた製造業向け簡易版商品需要予測サービス「お天気マーケット予報」を提供しています。気象と社会的要因による需要の変化をリアルタイムに監視しながら、気象予測に基づき約260カテゴリにおける15週先までの需要予測を行っています。


お天気マーケット予報
https://www.intage.co.jp/service/services/database/sriplus/


著者プロフィール

小越 久美(おこし くみ) 一般財団法人 日本気象協会 防災ソリューション事業部 シニアデータアナリストプロフィール画像
小越 久美(おこし くみ) 一般財団法人 日本気象協会 防災ソリューション事業部 シニアデータアナリスト
気象予報士・データ解析士・健康気象アドバイザー・防災士
筑波大学第一学群自然学類地球科学(気候学・気象学)専攻卒業。
2004年から2013年まで、日本テレビ「日テレNEWS24」にて気象キャスターを務める。
現在は日本気象協会の商品需要予測事業にて、食品、日用品、アパレル業界などのマーケティング向け解析や商品の需要予測を行い、さまざまな企業の課題を解決するコンサルティングを行っている。
著書に「かき氷前線予報します~お天気お姉さんのマーケティング~」「天気が悪いとカラダもココロも絶不調 低気圧女子の処方せん」がある。

気象予報士・データ解析士・健康気象アドバイザー・防災士
筑波大学第一学群自然学類地球科学(気候学・気象学)専攻卒業。
2004年から2013年まで、日本テレビ「日テレNEWS24」にて気象キャスターを務める。
現在は日本気象協会の商品需要予測事業にて、食品、日用品、アパレル業界などのマーケティング向け解析や商品の需要予測を行い、さまざまな企業の課題を解決するコンサルティングを行っている。
著書に「かき氷前線予報します~お天気お姉さんのマーケティング~」「天気が悪いとカラダもココロも絶不調 低気圧女子の処方せん」がある。

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