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コロナ後の“旅行”を問い直す 第3回~旅行における「食」と「宿」とは何か?生活者の連想構造から読み解く

「“旅行”を問い直す」をテーマとした連載記事、第3回は、旅行について特に重要な要素である、「食」と「宿」をキーワードに掘り下げていきます。

以前実施した調査では、旅行もコロナ禍を経て様々な変化が生じており、旅行の目的としてコロナ前よりも「食」をより重視するようになったり、女性の若年層が「宿」にお金をかけたりしていることが分かりました。そこで、これらに注目して生活者の心の地図である「マインドディスカバリーマップ」を読み解いたところ、若者とシニアでは「食」や「宿」の考えが異なることが浮かび上がってきました。

1.コロナ禍を経た旅のスタイルの変化

図表1はコロナ前の2018年の夏と5類化後の2023年の夏とで、旅行の目的を比較した結果です。「飲食を楽しむ」がコロナ前と比べて増加していることがわかります。コロナ禍によって外出や外食の制限が続いたことで、日々の食事に飽きが出てきた人も多いかと思います。その中で久しぶりに旅行ができるということで、特に現在は「旅行先の地域ならではの食を楽しみたい」という気持ちが高まっていることが考えられます。

図表1

18年/23年 夏旅行の目的

また旅行にかける金額は、コロナ前と比べて全体的に少なくなっていることが分かります(図表2)。
一方で、女性は年代によって傾向が分かれていました。もともと旅行に多くのお金を使っていた50代以上が利用金額を特に減らしていた一方で、40代以下は利用金額を増やしていました。

図表2

18年/23年 夏旅行の金額

50代以上の女性は交通費やその他の費用(現地で使う食事・お土産以外の費用)を減らしており、手軽な旅行を増やしている様子がうかがえました。40代以下の女性は宿泊費を特に増やしており、宿泊費が上がる中でも宿には妥協していない様子がうかがえます(図表3)。

図表3

18年/23年 夏旅行でのお金の使いみち

このようにコロナ禍を経て、旅行の目的としてコロナ前より「食」をより重視したり、女性の若年層では「宿」にお金をかけたりしていることが分かりました。そこで、旅行における「食」と「宿」はどのような意味を持っているのか、また第2回の旅行における「非日常・現実逃避」の様に、若者とシニアの間でその意味は変わってくるのか、を明らかにすべく、生活者の心の地図である「マインドディスカバリーマップ」を読み解いてみました。

2.生活者の心の地図、「マインドディスカバリーマップ」

「マインドディスカバリーマップ」は設定したテーマに関する数百人の自由連想とその関係性を構造化したデータです。インテージのソリューション「デ・サインリサーチ」では、このマップを、ワークショップを通して多様なメンバーで読み解くことで、生活者が自分でも意識していない深い心の動き(インサイト)を発掘します。

第2回で「旅における非日常、現実逃避」をテーマにご紹介した結果と同じく、『生活者にとって旅行することとは』を問いに、若者(18-39歳の子どもなし男女)とシニア(50-69歳の高校生以下の子どもなし男女)500人ずつから回答を聴取してマップを作成しました。マップの作成にはインテージの解析ツールPAC-iを使用しています。

図表4

作成したマインドディスカバリーマップ

マインドディスカバリーマップの読み方の基本は、「近くにあるワード同士は意味が近い」「遠くにあるワード同士は意味が遠い」です。詳細な読み解き方もいくつかありますが、本記事ではその1つ「ギャップ ポジション」を活用し、「食」と「宿」が若者とシニアそれぞれのマップでどのようなポジションにあるかに注目して、意味合いの違いを分析しました。

図表5

マインドディスカバリーマップの読み解き方~「ギャップ ポジション」

3.若者にとっての「食」と「宿」

まず、若者の旅行において、「宿」と「食」はそれぞれどのような意味を持つのかを見てみました。

図表6

若者にとっての「食」と「宿」読み解き

若者では「食」や「宿」に関連するワードが、近しい位置に固まっており、「食」と「宿」が近いものとして捉えられていることが推察できます。宿泊先での食事を“旅行の食体験”と捉えており、外でご飯を食べるような行動は少なく、宿内の食を楽しむ旅行スタイルではないでしょうか。つまり若者は非日常的な宿泊という旅行体験を、宿泊先の中での食の楽しみをセットとして考えているため、コロナ禍を経て「食」を重視した旅が好まれている現在では、そこに紐づく「宿」にも妥協はせずに、お金をかけているのではと考えられます。
また、「ホテル」と「旅館」については、近い場所に位置しており、宿泊施設として同義にとらえていると思われます。

4.シニアにとっての「食」と「宿」

つづいて、シニアの旅行において、「宿」と「食」はそれぞれどのような意味を持つのかを同じように見てみました。

図表7

シニアにとっての「食」と「宿」読み解き

シニアでは、マップの中央に「食事」があるため、「食」が旅行の中心・象徴であることが推察されます。シニアにとって毎日の食事は「日常」の象徴であり、逆に旅行では、ご当地の美味しいものを食べるという行動が非日常感をより実感するのではないでしょうか。そのため、シニアの旅行では「食」体験をまずは重視しつつ、そこに付随して他の観光体験があることがうかがえます。

次に「宿」に着目してみます。若者では「ホテル」と「旅館」は近い場所に位置していましたが、シニアでは、「ホテル」と「旅館」は遠い場所に位置しており、明確に違うものとして捉えられているようです。
シニアにとって「旅館」は、“癒し”“ストレス発散”などが近い場所に位置しており、自分自身が楽しむための旅行の「宿」として活用されていると考えられます。一方で、「ホテル」では“家族との団らん”“記念日”“お金をかけたくない”“面倒”など、自分以外の人を楽しませる目的の旅行の「宿」として活用されていると考えられます。

5.まとめ

マインドディスカバリーマップの読み解きからは、若者とシニアそれぞれが選ぶ旅の基準が見えてきました。

若者は「食」が充実した「宿」。そこに「ホテル」「旅館」の形態は関係なく、旅行の目的に合った宿泊施設を選ぶ。
シニアは「食」が旅行の根幹。「ホテル」では配偶者や子供・孫など同行者が楽しめる要素が、「旅館」では本人たちが楽しめる要素が重要。
ということではないでしょうか。

「食」と「宿」は両方とも非日常を体験できる旅行にとっての大事な要素ではありますが、若者とシニアではその意味合いが異なることが分かりました。特に「宿」については、若者とシニアという大枠な区分けでも大きく意味合いが異なっているため、よりターゲットとなる顧客像を明確にし、訴求内容を精査していくことが重要になりそうです。

3回にわたってお届けした“旅行”を問い直すシリーズ。読み解き結果を受けて、いくつか旅行活性化に向けたアイディアを考えてみました。
新型コロナウイルスの流行、歴史的な円安、物価高等、ここ数年で旅行をとりまく外部環境は劇的に変化してきました。インテージでは、旅行業界に携わる皆さまを支援できるように、今後も「旅行」の変化・実態について様々な角度から調査を続けていきます。

また、今回ご紹介した自主企画調査のように、ターゲットをより深く理解するような定性調査や特定領域の実態把握、コンセプト策定のためのワークショップなど、最適な手法を組み立て、新しいビジネスを実現する支援も可能です。ぜひお気軽に担当営業までお問合せください。


今回の分析は、下記の設計で実施したインテージの自主企画調査結果をもとに行いました。
調査地域:日本全国
対象者条件:18~39歳の子どもなし男女、50~69歳の高校生以下の子どもなし男女
標本抽出方法:弊社モニターより抽出しアンケート配信
標本サイズ:対象者条件ごとn=500 ずつ
調査実施時期: 2023年12月18日(月)~2023年12月22日(金)

著者プロフィール

矢口 翔太(やぐち しょうた)プロフィール画像
矢口 翔太(やぐち しょうた)
株式会社インテージ CBD本部 企画・分析4部
前職において、位置情報を活用した地方創成、観光および街開発に関連する企画・調査に約5年間従事。
多くの地方自治体の観光や街開発における調査を手掛けてきた。
インテージ社でも観光領域を中心とした、企画・調査を主に約4年間担当。

株式会社インテージ CBD本部 企画・分析4部
前職において、位置情報を活用した地方創成、観光および街開発に関連する企画・調査に約5年間従事。
多くの地方自治体の観光や街開発における調査を手掛けてきた。
インテージ社でも観光領域を中心とした、企画・調査を主に約4年間担当。

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