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SNSで変わるテレビ視聴 浸透どこまで?「ながら視聴」の実態を読み解く 後編

はじめまして、インテージ次世代消費者パネル事業開発部の脇田です。スマホ・テレビなどのメディア接触行動と購買行動のシングルソースパネルi-SSP®の運用やデータ分析を担当しています。業務でメディア接触に関するデータを扱っているので、プライベートでもテレビ番組やアプリケーションのトレンドを追うようにしているのですが、20代後半にもなると集中力が衰えているためか、長時間の視聴が出来なくなってきました。
子どものころは食い入るように観ていたバラエティー番組も、最近は横になってスマホを触りながらでしか観ていません。いわゆる「ながら視聴」です。
みなさんは普段どういう風にテレビ番組をご覧になっているでしょうか?
私と同じように「ながら視聴」で観ている人も多いのかもしれません。

前回の記事では、テレビ番組と関連したSNSの使い方について調査結果を紹介しました。では、そもそも、テレビ番組に絡めた利用に関わらず、(私のように)テレビを観ながらスマホでSNSを利用している人はどれくらいいるのでしょうか。そしてその人たちがSNSを利用するのはどのようなテレビジャンルを観ているときなのでしょうか。その実態をインテージが保有している「メディア行動ログデータ」を使って、明らかにしていこうと思います。

そもそもテレビジャンルやスマホのSNSアプリ利用は近年どう変化している?

同時利用(視聴)している実態を見ていく前に、まずはテレビジャンルの視聴実態とスマホのSNSアプリの利用実態をそれぞれ見ていきましょう。
まずはテレビ番組の各ジャンル接触率推移です(図表1)。各ジャンルについて、1か月あたりの視聴者の割合を算出し、その年間平均をプロットしたものです。

図表1

ワイドショー、バラエティー、ニュースなど、もともと接触率が高いジャンルはあまり変化がなく推移していることがわかります。一方で、接触率が80%台後半で推移していたスポーツは、2020年に減少しています。コロナの影響でスポーツイベントが中止となり、放映機会自体が減ったり、コロナへの不安からスポーツよりニュースなどの視聴が増えたのかもしれません。
また、ドキュメンタリーや映画、演劇/公演といったジャンルは減少傾向にあります。 テレビ番組として視聴するよりも、いつでも好きなものが視聴できるSVODアプリから視聴するスタイルが増えているためと思われます。

次にSNSアプリの利用率推移を見てみましょう。
この記事ではFacebook、Instagram、LINE、TikTok、Twitterのいずれかを利用している人の割合を集計しています。

図表2

SNSアプリの利用率は年々に増え、2021年の段階では、男女問わずほとんどの年代で、スマホ利用者の9割を超えていることがわかります。以前、SNSのアプリ別利用率推移を取り上げた記事にもありましたが、TwitterとInstagramの利用率増加の影響と考えられます。

結論:テレビ視聴者のうち約6割がSNSとの同時利用(ながら視聴)をしている

では今回の本題です。テレビ視聴者の中でスマホのSNSアプリを同時利用(ながら視聴)している人の割合をi-SSPデータを使って見てみましょう。
※対象SNSアプリは、Facebook、Instagram、LINE、TikTok、Twitter

図表3は、2022年1月、2月それぞれにおいて「テレビを視聴しながらSNSを利用した」ログがあった人の割合です。

図表3

2022年は約6割の人がテレビを観ながらSNSを利用する「ながら視聴」をしているという結果になりました。このデータでは、SNSのどのような内容をみているかまでは捕捉できないため、その視聴しているテレビの内容に絡めた使い方をしているのかは分からないものの、高めの値なのではないでしょうか。

図表にはコロナウイルス流行前(2019年)の結果も記載しています。すでに3年前から全体の約半数がSNSとの同時利用をしていたこととなりますが、それでもこの3年で5pt~10pt上昇していました。おうち時間の増加と、それに伴うテレビ視聴時間の増加で、SNSアプリとテレビのながら視聴する人の増加を後押ししたと考えられます。

私もコロナ禍をきっかけに、これまで友人たちとの繋がりがメインだったSNSが情報収集をするツールの1つとして活用しはじめた部分があるような気がします。テレビを観ながら、気になる出演者や音楽について、SNSを使って口コミを見ながらインプットするのが当たり前となりつつあります。

また前回の記事でも少し触れましたが、テレビ番組側からSNSの利用を促しているケースもここ最近増えてきました。ドラマに出演している俳優さんたちのオフショットをあげるInstagramアカウントを公式が開設したり、生放送中にSNSでつぶやくワードを告知したり。懸賞企画を行っている番組もあります。こういった番組制作サイドから「ユーザーの拡散」を期待した発信が増えていることも、SNSアプリとのながら視聴が浸透している要因かもしれません。

前節で挙げた通り、SNSの普及自体も加速をしているため、複合的な理由となるものの、ログデータで見る実態として、ながら視聴が増えていることは明らかになりました。 ではどういった番組がSNSアプリと「ながら視聴」されているのでしょうか。番組ジャンル別に同時利用のスコアを確認してみましょう。

特に最近同時利用が進んでいるのはどのテレビ番組ジャンル?

先ほどのSNSアプリとテレビの同時利用に関する数表を、テレビジャンルごとに集計した結果が図表4です。

図表4

2022年1月・2月の同時利用者ログデータを見ると、特に「ニュース/報道」「バラエティー」「情報/ワイドショー」が7割を超えてSNSアプリと「ながら視聴」されているジャンルとわかります。また一部期間ではスポーツのジャンルも高い傾向にあります。

前述の通り、同時利用は全体的に増加しているので、どのジャンルも軒並み同時利用が増加傾向にあるようです。ただ全体と比較して、土日祝日・平日共に特に増加傾向にあるのは、「アニメ」「スポーツ」「ニュース/報道」の3つのジャンル(図4赤枠部分)。期間によってはコロナウイルス流行前後で10pt以上も増加しています。

「アニメ」については、鬼滅の刃の盛り上がりも重なって、実況スタイルでの視聴や感想ツイートの拡散によって、「番組を見ながらSNSを使う」人が増えたのかもしれません。「スポーツ」は年始のスポーツイベントと冬季オリンピックの影響が考えられます。公衆の場での声を出しての応援が難しかったため、SNSで感想をシェアし合いながらの視聴をしていた方も多いのではないでしょうか。
また「ニュース/報道」は、番組の内容そのものに集中するというより、「流し観」されやすいジャンルではあるので、番組と関係ないSNS利用行動をしている可能性も高いのですが、ジャンルそのものの視聴が増えているわけではないのに、同時利用が増えているという点は興味深いです。

番組放映のスタイルが生放送であることが、ながら視聴と親和性が高い番組であることが要因として考えられます。確かに、テレビで野球中継を見ると、テレビ内で指定されたハッシュタグが付いた投稿がリアルタイムでテレビに表示されるため、ハッシュタグを追うことで他の人の感想を見ることができ、それも含めてテレビ視聴を楽しめます。
前節でも触れましたが、ニュース番組などでTwitterハッシュタグを用いて視聴者からの声を拾い上げているコーナーもあります。物議を醸すような話題のときは、トレンドランキングに入ることもあり、それによって番組が放映されていたことを知ることも珍しくありません。

性年代別に見るSNSアプリとテレビの「ながら視聴」の実態

先ほどジャンル別で見たデータをさらに深掘りして、性年代別で見た結果、共通して言えることは、以下の2点でした。
・女性のながら視聴は以前から高い傾向にある
・ここ2~3年で男性のながら視聴が加速している

図表5はこの動きが明確に表れている、バラエティ番組とSNSの同時利用の割合です。

図表5

SNSは感想を共有したい女性との親和性が高いため、SNSアプリとテレビの同時利用に関しても高い傾向にでています。確かにTwitterトレンドでは男性アイドルの名前がよくランクインしているのを見かけますし、Instagramも女性の利用率のほうが高いため、スコアにも納得感があります。

一方、男性でもSNSアプリとのながら視聴が加速しており、特にスポーツジャンルでは、20~30pt程度増加が見られた年代もありました。
それぞれのジャンルにおいて、コアとなる層で増加傾向が出ていることからも全体においてSNS×テレビの同時利用が進んできていることが伺えます。

終わりに

今回取り上げた、SNSを利用しながらテレビを楽しむ「ながら視聴」は、生活者の生活スタイルの変化や番組制作サイドの狙いとも一致して、今後もより増えていくように思われます。生活者の暮らしにはテレビとSNSだけでなく、さまざまな「ながら」が浸透しています。そうした「ながら」も踏まえたコミュニケーション・プランニングは今後益々重要になってくるはずです。また、そうした「ながら」の実態を正しく把握し、「ながら」による拡散や視聴を狙った番組作りやキャンペーンに関する効果検証を行うことも大切になってきます。

今後もこうした新しいコミュニケーション・プランニングや効果検証に役立つデータの収集と分析を発信していきたいと思います。

著者プロフィール

事業開発本部 次世代消費者パネル事業開発部 脇田 光(わきたひかる)プロフィール画像
事業開発本部 次世代消費者パネル事業開発部 脇田 光(わきたひかる)
2016年大学卒業後出版社の営業を経験、その後ネットリサーチを主力とした調査会社で集計業務に従事し、2022年2月にインテージに入社。
パネル調査「i-SSP(インテージシングルソースパネル)」のテレビ視聴調査リニューアルプロジェクトに参画しながら、社内外への情報発信・運用効率化など、パネルデータの利活用を促す業務を担当。

2016年大学卒業後出版社の営業を経験、その後ネットリサーチを主力とした調査会社で集計業務に従事し、2022年2月にインテージに入社。
パネル調査「i-SSP(インテージシングルソースパネル)」のテレビ視聴調査リニューアルプロジェクトに参画しながら、社内外への情報発信・運用効率化など、パネルデータの利活用を促す業務を担当。

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