【UAE・サウジアラビア】バーチャルツアーで解説!~新たな市場機会~
日本から見た中東は、地理的に離れ、宗教的にも異なるが故に、中東の生活者の暮らしを正しく把握・理解している方は少ないように思われます。そこで、インテージはUAEおよびサウジアラビアの生活者を対象にアンケート調査を実施しました。また、インテージが保有している生活者データベース「Consumer Life Panorama」も用いて、UAEおよびサウジアラビアの女性の生活ぶりを定量および定性データから解説するセミナーを実施しました。この記事は2022年12月8日にインテージが開催したセミナー内容の一部をお届けします。
UAEの基礎情報
UAE(United Arab Emirates、アラブ首長国連邦)は、中東の主要な地域金融センターの1つとされるドバイ、首都アブダビなどを有する国です。
人口は約1,008万人(2021年時点)で、男女の割合は、男性が69%であるのに対して女性は31%です。UAEの特徴として、人口のうち約88%をインドやパキスタン、バングラデシュといった国からの移民が占めています。残り約12%のローカル市民(Emirati)にはさまざまな優遇措置が設けられています。
例えば個人所得税はなく、大学を含む教育費や医療費は政府の負担、さらに住宅は無償または無利子による提供です。
サウジアラビアの基礎情報
一方、サウジアラビア(KSA 、Kingdom of Saudi Arabia)の人口は、移民を含め約3,584万人(2021年時点)です。移民は約37%、ローカル市民は約63%で、UAEほどではないもののサウジアラビアも多くの移民が暮らしています。男女の割合は男性58%に対して女性が42%です。
サウジアラビアもUAEと同じくローカル国民への優遇措置があり、個人所得税非課税、大学含む教育費や医療費が国および国庫の負担、国から住宅の無償または無利子提供などです。
中東女性の実像と近年の変化
UAEとサウジアラビアでは近年、女性の地位向上の動きがあります。それぞれ見ていきましょう。
UAEでは女性の地位向上と活躍のためにさまざまな国策が進められており、女性の大学進学率および労働参加率は上昇を続けています。なおUAEはSDGsへの取り組みも公表しており、女性の活躍は国にとって重要な課題の1つといえるでしょう。
一方でサウジアラビアでもUAEと同じく、女性の大学進学率および労働参加率が年々伸びています。
2018年6月に、サウジアラビアで長年禁止されていた女性の運転が再び許可された、というニュースを覚えている方も多いのではないでしょうか。国内では女性の権利を見直し、さまざまな分野で男女平等の実現に向けた動きが行われています。
ただし、サウジアラビアは特にイスラム教のルールに厳格な国です。各方面で女性の地位が向上している一方、宗教上の理由による男女分離は依然として続いています。
さて、中東では主婦が中心となって家事を行いますが、メイドを雇用している家庭も多くみられます。
UAEではほとんどの家庭が、またサウジアラビアでは世帯月収AおよびBクラスの家庭がメイドを雇っています。それらの家庭の場合、コロナ禍であっても、メイドの雇用を継続または新たに雇用した家庭がほとんどでした。
メイドと主婦の役割は分担されており、メイドは掃除や洗濯、食器洗いを行い、主婦は使用する製品のブランドの決定権(decision maker)を持っていることから、買い出しや家族の世話である粉ミルクの準備といった家事を行います。調理においては、下ごしらえをメイドが、味付けを主婦が担当することが多いようです。
中東UAEの住環境
それでは、「Consumer Life Panorama」によるホームツアーで、ローカル市民の家庭と生活を覗いてみましょう。中東の家庭にはゲストが立ち入ることができないスペースも多いため、実際には目にできない貴重な光景です。
【モデル1:AさんUAE在住24歳女性】
1人目のモデルはUAE在住のAさん。8人家族で2人の子どもがいる24歳の主婦です。持ち家ではなく、レンタルハウスのヴィラに住んでいます。UAEでは所有する家に住むケースがほとんどですが、国からの土地の提供を待つ期間などに借家に住む場合もあります。
家の広さは456㎡、部屋数は12です。「Consumer Life Panorama」では、このように家の外観や実際に使用している製品、部屋の随所などリアルな画像を確認できます。
ここからは、家の中を探索してみましょう。
まず、敷地に入ると、くつろげるスペースのある庭が広がります。
庭を抜けて家に入ると広いゲストルームがあり、エアコンが2台稼働しているのがわかります。 暑いときには気温50度以上になるため、涼しく快適に過ごすための設備は欠かせません。紫を基調とした装飾で、木のドアはキッチンの入り口と同じ素材でできており、内装やインテリアにこだわっていることがわかります。
次にキッチンです。
収納が多くやや雑多な印象ではあるものの、この家にはメイドが2人いるようで、きちんと整理されています。
棚には食器が納められていますが、どれも10セット、20セットといった数で買うのが当たり前です。イスラム教徒はお酒を飲みませんが、自宅に親戚や友人を家族単位で招くため、コーヒーや紅茶でもてなす際の食器は重視されているのです。
2階に上がると家族のリビングルームがあります。
リビングルームの外側にはサンルームがあり、洗濯物を干す際に利用されているようです。
こちらは2階にある、家族で使うための小さなキッチンです。
それに対し、1階のメインキッチンはたっぷりとスペースをとられています。
「Consumer Life Panorama」では、各部屋の広さや壁の高さの目安を知ることもできます。どうやらメインキッチンは24㎡以上あるようなので、Aさんのお宅がいかに広いかがわかりますね。
こちらは2階にある、女性のためのベッドルームです。私服がかかっていますが、以前と比べてデザインの鮮やかさや丈の長さなどに変化があるようです。中東における女性の地位向上ともかかわりがありそうですね。
続いて、Aさんが所有している主な海外ブランドについて見てみましょう。 Aさんは日本車4台をはじめ、エアコンや冷蔵庫など日本ブランド製品を多数所有しています。家電製品は複数国の製品を使用していますが、自動車に関しては日本ブランドのみを選択しています。
UAEでは自動車・冷蔵庫・エアコンを複数台持つのが一般的であり、「Consumer Life Panorama」で登録された15世帯で集計したところ、エアコンは1世帯あたり平均6.4台を保有しています。自動車と掃除機は日本ブランドの保有者が多く見られます。
中東サウジアラビアの住環境
【モデル2:Bさんサウジアラビア在住34歳女性】
次に、サウジアラビア在住のBさんのお宅をご紹介します。主婦のBさんは、234㎡のアパートメントに2カ月の子どもを含めた7人家族で住んでいます。
部屋数は10あり、室内を上から見ると間取りはこのようになっています。Bさんの世帯月収はBクラスのため、平均的な家庭でもこの程度の家に住んでいることがわかります。 左下にエントランスがありますが、エントランスからは画面左または上に進むことができます。それぞれ異なるリビングルームに通じており、ゲストの性別によって使い分けています。
例えば男性がこの家に招かれた場合はエントランスから左に入ったリビングルーム1、女性の場合は廊下を通ってリビングルーム2に入ります。中東の家庭ではごく一般的なことですが、招待された場合に部屋や導線を間違えるのは決して許されません。
これは、女性は保護されるべきものである、というQuran (クルアーン)の教えと関係しています。普段はヒジャブという黒い布で目以外を覆い隠している女性たちも、家の中では顔を見せています。男女の導線や部屋を分けることで、ゲストの前で妻や娘たちの顔を隠す必要がなくなるのです。
こちらはリビングルーム1です。ゲストをもてなすための大切な部屋で、中東の女性はコーディネーターとともにインテリアを決定します。統一感のある家具のほか、スタイリッシュなシャンデリアやダウンライトなどを多用しているのも特徴です。最近ではLEDを取り入れる家庭も増えたそうです。 奥のリビングルーム2を仕切る壁に施されたアーチが中東らしい印象です。
洗濯機・乾燥機はユーティリティルーム(物置、納戸)に置かれ、掃除機や洗剤など雑多な日用品もこの部屋に納められています。小窓の上に換気扇が見えますが、この作りはバスルームと共通しています。
こちらは家族のリビングルームです。家族用のリビングルームにゲストが入ることはありません。人に見せる部屋ではないため、ゲスト用リビングルームよりやや豪華さのランクは下がりますが、全体の統一感は損なわれていません。
壁のコンセントが日本の一般的な家よりも高い位置に備え付けられていることがわかります。これは小さな子どもが危なくないように、という配慮のためです。
続いてキッチンです。 サウジアラビアではキッチンも1つの部屋として使用されています。小窓と換気扇を備えており、冷蔵庫の横にフリーザー、さらに水道水を飲めないためウォーターサーバーを設置しています。収納が多く、人の目につかないところも整理して綺麗に保つのがサウジアラビアのキッチンの特徴です。
こちらは主寝室です。シャンデリアも凝っており、脇のドレッサーにはスキンケア用品や化粧品、多数の香水が並んでいました。
「Consumer Life Panorama」で登録された15世帯で集計したところ、サウジアラビアにおいて 日本ブランド製品はUAEと同様に自動車と掃除機が人気でした。UAEほどの保有点数はないものの、日本製品に一定の信頼が寄せられていることがわかります。
中東のトレンドと日本へのイメージ
続いてはアンケート調査結果の一部をご紹介します。
まずは回答者の属性ですが、全員が世帯月収A~Cクラスの20-49歳のローカル既婚女性です。
内訳は以下の表でまとめています。
中東家庭で最近取り入れた最新のテクノロジーについてアンケートしたところ、以下のチャートにあるように特にUAEでは音声コントロールデバイス、ZEH(Zero Energy House=エネルギーの収支をゼロにする家)などが上位にあがってきます。近年UAEおよびサウジアラビアでは、車やカーレースに関する有料チャンネルのサブスク利用が増加し、音声デバイス家電に関心が寄せられるなど、便利で快適なサービス・テクノロジーの人気が高まっています。またZEHの購入・改築、電化製品や食材の無駄を省くなど、環境に配慮する意識も向上しています。
一方で、中東の女性が持つ日本のイメージについて聞いたところ、「Trusted」「Scientifically advanced」「Expert」などのワードで日本は他の国よりスコアが高い。Traditionalのみ他の国よりスコアが低いのは、日本が先進国として認識されている表れといえます。「最新テクノロジー」「環境への配慮」といった中東の需要を意識した展開を行うことで、大きなビジネスチャンスを掴めると考えられます。
UAEとサウジアラビアでは、自動車や家電製品の保有率に代表されるように日本ブランドのイメージは高く、またその他の分野においてもポジティブな印象を持たれています。経済的なゆとりがあり消費意欲が旺盛で、かつ日本への関心も高い両国の市場に機会を見出し、足掛かりにしていただけますと幸いです。
Consumer Life Panoramaとは・・・
インテージが提供する、海外消費者の居住空間、デジタルライフ、モビリティライフを始めとする消費者のリアルな生活実態の理解を深めるためのウェブサイト型データベースです。
住環境、一日の生活の流れ、デジタルライフなどが閲覧でき、海外消費者の実際のリアルな行動を読み取ることで、様々なターゲットに合ったマーケティングや商品開発にいかしていただけます。
紹介動画:https://www.consumer-life-panorama.com/demo/guide?l=jp
デモサイト >> http://consumer-life-panorama.com/demo/
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