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【アメリカ】バーチャルホームツアー~アメリカ生活者の住まいから見える価値観とは~ 

アメリカは世界1位のGDPを持ち、人口ではインド・中国に次ぐ世界3位の国です。また、若年層および働き盛りの人口が多く、魅力的な市場となっています。
この記事では、このアメリカの生活者の価値観やその背景を、インテージが提供する生活者データベース「Consumer Life Panorama」を活用して、住まいやライフスタイルという切り口から読み解きます。

※本記事は2023年6月20日に実施されたセミナーを再構成してお届けします。

住宅保有に関する価値観

アメリカの生活者は、住む家はライフステージに合わせて変えていくものという価値観を持っています。そのため引っ越しが多く、統計局*によると生涯で平均11.7回も転居します。

大学卒業から6〜7回引っ越しをするのが一般的で、就職、結婚、子どもの成長・巣立ちなどが転居の典型的なタイミングです。収入だけでなく、通勤距離や子どもの遊び場、税金対策など、ライフステージごとの優先事項に基づいて住む家を変えています。典型的な引っ越し例として、新卒は都市部の1R、新婚夫婦は都市部に近い2,3LDK、子供が大きくなったら郊外の庭付き家に引っ越すという流れになります。

社会人になってからの典型的な転居例

引っ越しが多いと賃貸に住むほうが身軽に感じられますが、アメリカの生活者の場合は自分用住居および投資用住居を保有したいという意向が日本よりも強く見られます。また家は資産であるという考えのため、若いうちから可能なかぎり購入したいと考える人が多いようです。
図表1はライフイベントと資産に関する意識を各国に調査した結果です。アメリカの生活者は「大学卒業」「結婚」「子供出産」といったライフイベントにおいて、家を保有したい意向が日本人よりも高いことがわかります。また、他の国と比べて投資用物件の保有意向が高い点も特徴的です。

ライフイベントにおける家の保有意向 各国比較

実際、ライフステージによってどのように住まいを変えていくのか、ここからは、インテージの「Consumer Life Panorama」のバーチャルホームビジット機能を使って、新婚家庭と子供が大きくなった家庭の実際の家を見てみましょう。

新婚夫婦の家

マンハッタンの向かいに夫・1歳の息子と暮らしている、29歳女性の自宅です。世帯収入は約25万ドルで、富裕層ではないもののパワーカップルと呼ばれる層に該当します。2022年に98万ドルで購入した、中古のタウンハウスに住んでいます。

居住面積は124㎡で、ニューヨーク州平均の144㎡よりもやや狭い住居です。

アメリカの住宅事情(居住面積と居室数)

玄関から室内へ入るとキッチンがあります。広さや作りは一般的で、家を購入した際にゼロからリフォームして棚などを作りました。省スペースで生活感を出さないため、新品の冷蔵庫・食洗器などはビルトイン(埋め込み式)にしています。

ベランダにはバーベキュー器具があり、ときどきホームパーティーをするようです。
地下室には洗濯機・乾燥機のほか、買い置きの洗剤や夫の趣味のワインを置くなど、物置のように雑多な使い方をしています。乾燥機を使用できないベビー服を部屋干しすることもあります。

ガレージには使用頻度の低い食材を入れる冷蔵庫・冷凍庫やベビーカー、日用品などを置いています。車はガレージの扉から出た外の車庫に停めており、このガレージに車を置くことはないそうです。

2階に上がると子ども部屋と住み込みのナニー(メイド、ベビーシッター)用の部屋、シャワーエリア付きのバスルームがあります。
3階は夫婦の部屋で、フロア全体が主寝室となっています。ウォークインクローゼットを備えており、下の画像の左手が夫婦専用バスルーム、右奥が妻のリモートワークや趣味のエリアです。

この家は子どもがのびのびと遊ぶスペースがなく、また2人目の子どもが生まれたばかりのため、住宅ローン金利が落ち着いたら郊外の広い家に引っ越しを考えています。

子供が大きくなった家

次に、マンハッタンから北のロックランドカウンティに住む39歳の専業主婦の家です。世帯収入は15万ドルで、夫・4人の子どもの家族6人で生活しています。2015年に47万ドルで購入した居住面積195㎡の家は、12の部屋と庭・プール・別棟のガレージを備えています。

州平均の144㎡と比べると、この家は3割以上も広いことがわかります。

この家の特徴として、大きくなった子どもを敷地内で安全に遊ばせるため、家の周りに遊具やプールがあります。アメリカでは保安の面から子どもだけで公園に行くことを避けるため、自宅で十分に遊べる設備を充実させる傾向にあります。

玄関を入ると左手に来客向けのリビングがあります。右手には家族全員で食事できる大きなダイニングエリアがあり、全員でコミュニケーションするためにあえてテレビを置かない考えです。ただし忙しい平日には、下の画像・右奥のキッチンにある小さなテーブルで各々朝食をとることも多いようです。

フルリフォームしており、この家も家電は新調した上で多くをビルトインにしています。アメリカの家では空間をすっきりと見せるビルトインタイプが多く見られます。

階段を上がると、夫婦の主寝室とウォークインクローゼット、娘3人の部屋、末の男の子の部屋、ゲストルームがあります。バスルームは浴槽がないタイプです。

<主寝室>
<末の男の子の部屋>
<娘3人の部屋>

ガレージは物置や子どもの遊び場として使用しています。雨が降る日にはガレージ内でラクロスの練習を、天気がいい日には外でバスケットボールをすることができます。公園に行かなくても自宅敷地内のバックヤードで遊びが完結する空間となっています。

空間作りに関する価値観

続いて、住まいの空間作りに注目してみましょう。耐震基準が厳しく新築が好まれる日本とは異なり、アメリカでは中古物件を購入するのが一般的です。公的統計*によれば、日本で流通している中古物件は14%程度に留まるのに対し、アメリカの住宅市場では取引される家の8割程度が中古物件です。

中古物件のため最初から理想の住まいではないものの、アメリカの生活者はリフォームやDIYによって好みの家を自分たちで作り上げ、資産価値を上げて将来高く売ることを目指しています。そのためDIYが得意な父親・夫は頼もしく感じられるようです。

一般的なDIYは壁紙の張替え、部屋のペイント、フローリング張替えなどです。本格的なものだと、立派なウッドデッキや音響設備を備えたシアタールームをDIYで作る家もあります。

では、実際に空間を覗いてみましょう。

【個を重視した空間作り】子ども(乳幼児)部屋

アメリカの子どもは生後1か月ごろから自分の部屋を与えられます。生まれる前に夫婦の共同作業として子ども部屋を準備する家もあります。 子どもが夜中に泣いた場合でも、親はベビーベッドに備え付けたベビーモニターを通じて様子を確認し、異常がなければ駆け付けるようなことはしません。子ども部屋と夫婦の主寝室が離れている家も多く、小さなうちから一人で夜通し眠るトレーニングを行うことで、子どもの自立を促す考えです。

【個を重視した空間作り】パパのスペース(Man‘s cave)

子ども専用の子ども部屋、ママ好みのキッチンに加え、 パパも「Man cave」と呼ばれる自分のための空間を持っています。アメリカの男性の半分ほどは、このMan caveを持っているそうです。スポーツ観戦やゲームなど、趣味を楽しむスペースとして設けられ、時には男友達を招いて男性だけの時間を楽しむこともあります。

下記の家庭の場合、壁掛け式テレビモニターの前に複数のベンチを設置しており、冷蔵庫もあります。アメフトのシーズンになると、近所の男性が集まってビールを飲みながら試合観戦をするのが定番の過ごし方です。

【ガレージの活用】

バーチャルホームビジットでご紹介した2軒のように、ガレージは本来の用途である車庫以外にさまざまな使われ方をしています。特に天候がいいカリフォルニア州の場合は、敷地内の私道や路上駐車など、屋根がない青天井駐車が一般的です。

ガレージは家庭のニーズに合わせて、物置、子どもの遊び場所、ジムなどに活用されます。

ガレージの使い方

ライフスタイルに関する価値観

最後に、アメリカの生活者の一日のタイムスケジュールから、ライフスタイルに関する価値観を読み解いてみます。

アメリカの生活者は自分自身や家族・友人知人との時間を大切にするため、家族が増えるとナニーを活用して積極的に家事を外注する傾向にあります。大手ベビーシッターマッチングサイトの調査によると、アメリカの74%の家庭は月に1回以上ベビーシッターを依頼していました。子どもの世話以外に掃除や料理などの家事を依頼したり、プロではなく近所の知り合いの高校生に頼んだりするケースもあります。その根底には、子どもが生まれた後も夫婦関係や友人とのつながりを大事にするという考えがあるようです。

バーチャルホームビジットでご紹介したニューヨーク州 の新婚家庭の女性は、住み込みのナニーを雇っています。タイムスケジュールからは平日の家事や子供の世話を任せている様子が読み取れます。

ナニーがいる家庭の一日の生活

仕事をしながら子どもと遊ぶ時間を確保し、さらに週末は夫婦でデートするために、自分ではなくてもできる家事や簡単な子どもの世話は外注する、というスタイルが一般的になっています。

また車社会のアメリカですが、統計局によると92%以上の家庭が1台以上の車を保有しており、中でも電気自動車(EV)・プラグインハイブリッド車(PHEV)とそれらに対応する充電スポットは年々増加傾向です。特にカリフォルニア州では州政府がZEV販売を義務付けてインフラの整備に注力していることもあり、登録割合がニューヨーク州の約4倍です。

カリフォルニア州に夫婦で暮らす女性の場合、子どもの小学校への送迎や通勤にEVを使用しています。

EVを保有する家庭の一日の生活

運転するのは市街地のみで、充電は自宅前の私道に設置したスポットを利用して週に1回行います。アメリカの生活者が苦手とするバック駐車は必要なものの、混みあうガソリンスタンドを利用するよりストレスなく充電できるのがメリットと考えています。
ただし遠方への移動や積載量が多い子どもの野球の練習への送迎など、休日には夫のガソリン車を利用しEVと使い分けています。

車は一台ですべてをまかなうというよりも、今回のケースにあったように、市街地の場合はストップ・アンド・ゴーと取り回しが得意なEVコンパクトカー、荷物が多かったり目的地までの距離が長かったりする場合はガソリンSUVと、シーンに合わせて複数台使分けることが特徴的です。

映画やドラマなどでアメリカの生活者の家の中を見る機会はあっても、居住面積や間取りがなぜそのようになっているのか、またどのように住宅を選んでいるのか、日本に住んでいるとわからないことも多いのではないでしょうか。


インテージではアメリカの生活者の価値観やライフスタイルを理解するためのさまざまなサポートを行っています。記事で紹介したバーチャルホームビジット機能をお試しになりたい場合は、以下よりトライアルをお申し込みください。
https://form.k3r.jp/intage/clpcontact

記事内で紹介したアメリカ生活者を含む「ライフイベントと資産に関する9か国調査(2022年3月実施)」の詳細レポートはこちらからダウンロードいただけます。
https://www.global-market-surfer.com/report/detail/152/


Consumer Life Panoramaとは・・・

インテージが提供する、海外消費者の居住空間、デジタルライフ、モビリティライフを始めとする消費者のリアルな生活実態の理解を深めるためのウェブサイト型データベースです。

住環境、一日の生活の流れ、デジタルライフなどが閲覧でき、海外消費者の実際のリアルな行動を読み取ることで、様々なターゲットに合ったマーケティングや商品開発にいかしていただけます。
紹介動画:https://www.consumer-life-panorama.com/demo/guide?l=jp
デモサイト >> http://consumer-life-panorama.com/demo/


*United States Census Bureau:https://www.census.gov/topics/population/migration/guidance/calculating-migration-expectancy.html
*公的統計:United States Census Bureau、日本-総務省、国土交通省

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