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【2020年生活者が楽しみにしているコト~5 key stories③】50代男性編

生活者の声なき声から生まれたデ・サインストーリー。前回までは20代男女の期待構造を描いた調査結果から、生活者を主人公に、ショートストーリーでご紹介して参りましたが、第3回目となる今回は、50代生活者を同様に、男性編からご紹介してまいります。

プロローグ

さて、そもそも50代とは、どのような世代と言えばいいのでしょうか。人生100年時代、50代はちょうど真ん中といえます。マーケティングリサーチでは、プレシニア、シニア予備軍ともグル―ピングされる時もあるなど、世代的にはサラリーマンの場合は定年も近づき、現役世代からクロージングモードに入りはじめる年代といえるかもしれません。今の50代が20代の頃といえば、欧米文化やハイブランドブームが社会トレンドにも大きな影響をもたらし、日本のサブカルチャーも多様化した時代でもありました。就職するタイミングでは日本の好景気の恩恵を受けたことから、バブル組と言われています。

“人間、50にして天明を知る”といった諺もあるように、自分の人生を築いてきた成果や結実、これまでの道のりの大きなゴールが迫り、否が応でも振り返り、ネクストターンを考えるタイミングにあるといえます。“ハイパーミドル”と称される方が、纏ってきたカルチャーやその背景とも似合うであろう50代。今回は50代男性層が“2020年に日々、楽しみにしているコト”をテーマに、約500人の調査結果から『2020楽しみにしているコトの世界MAP』を生成。彼らの自由連想ワードが織りなすこのマップを基に、声なき声に耳を傾け、キーワードを紡ぐことで現れた5つのストーリーをご紹介します。

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※本デ・サインストーリーは、弊社自主企画『2020年、生活者が楽しみにしているコト』をテーマに実施したデ・サインリサーチの調査を実施。PAC分析の応用解析ツールPAC-iを活用し、期待構造を描き出した『マインドディスカバリーマップ』を生成、読み込み自主WSの分析結果より編集しております。

デ・サインストーリー1)「この世界の片隅に-金メダルー」

~2020年、いよいよオリンピックだぞ。これを機に、健康のためでもあるが、スポーツも本格的に再開するか。やってみれば、まだまだやれるってわかったよ。何でもやるからには、自分の中では“金メダル”を目指したいね。~

いよいよ東京オリンピックがちょうど1年後に迫ってまいりました。20代でも50代でも、2020年に楽しみにしているコトの連想ワードとしてオリンピックが上位に挙がっていますが、50代の男性達はどのようにオリンピックの意味を捉え、楽しみにしているのでしょうか。とても興味深い心理が浮かび上がりました。彼らのデ・サイン(声なき声)は、まるで“オリンピックに出ようとしている”かのような、“選手モード”の気持ちがあることが読み取れました。オリンピックを楽しみにしている気持ちの置き方が、まさかの選手としての参加意識であり、濃すぎるほどの自分ゴト化は、20代男女では見られなかった驚きの結果です。

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50代男性のマインドディスカバリーマップの中央付近には、健康があります。その先にゴルフ、ウォーキング、スポーツ、ダイエットがあり、さらに先にオリンピック、ジムが表出、その延長に金メダルオリンピックが、自身が実践するスポーツとほぼ同質の文脈として表出しているだけではなく、その先には金メダルまでが現れています。金メダルがマインドディスカバリーマップに登場するのは50代男性だけの特徴です。

20代層男女がオリンピックを映画やテレビで視聴する“コンテンツ”として捉えていたのと対照的に、50代男性のマップ上では、映画、映画鑑賞が、オリンピックと真逆のポジションにあることからも、視聴者としての意識は薄いことがうかがえます。恐らく、2020年、東京オリンピックを機にジムに通うなど、スポーツを始める50代男性が増えるのではないかと考えられます。

さすがに東京オリンピックの日本代表選手に今からなることは非現実的な話でしょうから、もしも自分が選手であれば、金メダルを獲れるというほどまでシーンに想いを馳せて楽しみ、自分ゴトに転換するといったギラギラした意気込みまで読み取れるマップ構造です。自分なりの試合や戦場に立ち、視聴者や応援者ではなく、自分が”選手として”フィールドで活躍する、そして、できれば“自分史上の金メダルまで取りたい”と期待し投影することが、50代男性にとってのオリンピックの楽しみ方でしょう。

デ・サインストーリー2)「ニュー・ホーム・シネマ・パラダイス」

~子供が結婚したら、マイホームをリフォームしようと思うのだが、これが次の“大仕事”だ。リフォームのメインは“映画鑑賞”が楽しめるマイシアタールームだ。趣味で続けているギターの演奏も遠慮なくできる。せがれには、孫たちを連れてきたらどうだ?と言ってやろう。~

デ・サインストーリ1でご紹介したように、映画、映画鑑賞は、オリンピックの真逆にあります。このエリアには仕事、日曜大工、オーディオ、リフォーム、マイホーム、ビデオ鑑賞、ギターがあります。つまり、大きく捉えると”趣味のエリア“であり、マイホームといった”パーソナル空間の再構築“を、現役フィールドでの活躍意欲の象徴であったオリンピックの真逆の意味で、楽しみにしているようです。

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その具体化として、”オーディオシアタールーム“を作ること。仕事が近くにあることから、そのために働いている、もしくは、それこそが、これからの楽しみな仕事であるといった熱意を感じます。さらに、息子の結婚が同じエリアにあることから、結婚した息子が孫を連れてきてくれたら、もっと楽しめるといった願望も読み取ることができます。

デ・サインストーリー3)「プリティ・ドーター」

~定年退職したら、さて、何をするか。趣味に旅行に、ボランティア活動もできるならやってみようか。まだまだ外(表舞台)には出ていかないとな。それに、うちの娘もそろそろ結婚するかもしれない。娘の父親としては、バージンロードをエスコートしなければならないから、老いぼれている訳にはいかない。それなりに注目されるだろうし、いやいや、まいったな笑。(今から娘には内緒で鍛えておこう。新郎には負けないぞ。)~

マップの中には子どもの結婚にまつわるワードが散見されますが、同じ「子ども」でも、長女の結婚、子供の結婚、息子の結婚は、それぞれ違うポジションに浮上しており、意味が異なることがわかります。

長女の結婚の近くには、ボランティア、政治、友人との食事や飲み会、カラオケといった、自分が参画しようと考えている社会性の高いイベントがあります。このようなワードと同エリアにある長女の結婚とは、社会参加型のイベントのひとつ、更には、社会へと送り出すという意識も伴っていることが浮かび上がりました。確かに“娘の結婚”の場合、結婚式では父親には、花嫁と並びバージンロードを共に歩くといった人前にも立つ役割があります。また、このエリアの隣は、自身の“スペックアップ”のエリアが形成されています。つまり、長女の結婚は、自分をまだまだ高めていこうとすることに関連づけられていることが、背後のストーリーとしてはつながっていそうです。

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息子の結婚は、家での映画鑑賞に近く、“家の中の世界”のエリアにあり、長女の結婚とは意味が異なる意識で捉えられています。子ども達の結婚であっても、意識上、そのワードから連想が拡がる生活シーンの違いまで現れていることが、このマインドディスカバリーマップの機能が発揮される面白いところです。

デ・サインストーリー4)「そして、爺ぃになる」

~人間、いくつになっても成長はできると思うんだよね。もちろん、頭脳も肉体的にも。それに、孫と遊ぶにも体力いるだろうし、一緒にいろいろスポーツができる爺さんでいたいじゃないか。身体能力は、特に衰えないようにしておかねばならないな。~

孫と遊ぶという言葉が健康管理の近くにありますが、この文脈には英会話、筋トレ、成長といった自身のスペックアップに関するワードが多数表出しています。また、サッカー、卓球といったスポーツも存在し、それらの先に東京オリンピックが表れています。

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孫と遊ぶ
ためにも、体力的にスペックアップし、健康でいて、かっこいい爺さんでいたいと思っていることが窺えます。ちなみに、50代男性のマインドディスカバリーマップには、これらのように“孫”と関連するワードもいくつか登場しています。孫と遊ぼうという期待や、息子には孫と一緒にリフォームしたシアタールームに来てもらいたいという気持ちは読み取れましたが、“孫を育てる”“孫の面倒をみる”といったワードは、見受けられませんでした。孫を“育てる”ということのへの意識づけは薄いといえるでしょう。この点は、50代女性マップとの比較では、違いが現れていそうです(次回の50代女性篇コラムで掲載予定)。

デ・サインストーリー5)「君と飲む物語」

~2020年、少し先に楽しみにしていることと言えば、定年が迫っているということか。子供も成長しているし、趣味も楽しめるだろう。そして、ゆっくり妻とワインを飲んだり、妻と旅行をしたり、二人の時間が持てることが楽しみだ。旅先でも、うまいラーメン屋なら、俺が案内するよ。~

さて、50代男性が2020年楽しみにしているコトの中枢、ハブ連想はいったい何だったのでしょうか。マインドディスカバリーマップの読み解き方として、調査テーマの一つの解ともいえるマップの中央は、分析上、最も重要でもあるのですが、今回はラストにご紹介します。

中央には定年定年退職もあり、定年退職することをハブ連想の一つとして楽しみにしていそうですが、ハブに浮上しているワードで注目したいのは、ワイン健康維持寺社巡り、神社と言う言葉も近隣にあり、妻とゆっくりワインを飲んで、寺社めぐりをしたいなという気持ちが、彼らの期待構造のど真ん中にあるようです。

また、海外旅行、国内旅行、温泉などが集まったレジャーエリアも形成されていますが、妻と旅行というワードは、 “旅行”と書きながら、「ザ・レジャー」の文脈とは離れ、ハブ連想近くにあります。このことから、50代男性にとって妻と旅行は、他のレジャーとは異なる意味で、“妻”と過ごすことを軸として捉えられており、50代男性にとって妻と過ごす時間は、楽しみにしているコトとして、期待値は高そうです。

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また、夫婦の旅行という類似したワードもありますが、妻と旅行よりも自分の関与意識が感じられます。そして、その先にラーメンが表出しています。20代の男性のマップでも、レジャーに関連するエリアにラーメンがありましたが、50代男性マップにも同じく登場するとは、男性はどれだけラーメンが好きなのでしょうか(笑)

ラーメンの近くに神社仏閣めぐり日本一周旅行があり、レジャーでのラーメンは外せないようです。ラーメンは、男性にとって、日々の暮らしの中で、楽しみを担う“食”の代表格として根付いていそうなことが、証明されたといえるでしょう。同行する妻である女性層のマップでは、ラーメンが男性と同義で楽しみとして現れているかどうか、検証ポイントの一つとしてピックアップしておきたいと思います。

エピローグ

50代男性が2020年に期待するデ・サインストーリー5つをまとめてみますと、~定年が迫っていることから、その先の自分の時間としてワインを飲むゆったりとした時間や、神社仏閣をめぐる旅行に期待を寄せる。オリンピックに対しては、密かに自分史上の金メダルをとろうと、“現役選手感”を意識として投影し、健康にもちょうどよしと、スポーツ再開の契機として捉えている。自己成長と、いずれ孫ができた時に遊ぶため、知力や体力ともに自身のスペックアップを怠らない。リフォームをしてシアタールームを構築し、社会参画の一つとしても、娘の結婚ではエスコート役として人前に立つことまでをイメージしている。そして、若い頃から変わらずに、日々の楽しみの食は「ラーメン」。~ 以上、人生後半戦(リタイア後)の現実を横目に見ながら、表舞台やフィールドに立てる自分でいようと決意を新たに描いている気持ちが浮かび上がりました。そして、妻との時間を楽しみの中枢に置いています。

果たして妻たちはどのように思っているのでしょうか。

次回は、50代女性の声なき声から紡がれたデ・サインストーリーをお届けします。お楽しみに!

著者プロフィール

鮎澤留美子
鮎澤 留美子(あゆさわ るみこ)
飲料メーカー、航空会社、広告代理店グループ調査会社を経て、インテージ入社。生活者リサーチ全般、ワークショップデザイン、ビジネスエスノグラフィの知見を活かし、ファクトベースでアイデア発掘、新価値創造、コンセプトメイキングまでをリサーチデータと行き来しながら導出する『デ・サインリサーチ』を開発、推進を担当。自称、歴女(戦国時代の研究から進展しない笑) 。
※分析手法、解釈の仕方はこちらの動画でご覧ください。
今回の分析は、下記の設計で実施したインテージの自主企画調査結果をもとに行いました。
調査地域:日本全国
対象者条件:50~59歳男性
標本抽出方法:弊社「マイティモニター」より抽出しアンケート配信
標本サイズ:n=545
調査実施時期: 2017年8月21日(月)~2017年8月24日(木)

分析手法:PAC-i

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