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輸出販売に失敗しないために必要なレギュレーション調査とは【後編】~定製品の薬事規制調査~イノベーションの論点④

この【イノベーションの論点】は、ビジョン・オリエンティッド・コンサルティング(VOC)を標榜し、企業や業界のビジョン創発を支援しているインテージのコンサルタントメンバーが、企業の課題解決に向けた独自の視点やアプローチについて解説するコラムです。今回はシニアコンサルタントの尹錦花が海外向けに自社製品を輸出販売する際に必要なレギュレーション調査について薬事関連を例に解説します。

前編では、各国の薬事規制の全体像を事前に把握するためのOverview調査の内容を紹介しました。この後編では、実際に特定の製品を輸出販売することが決まった後に行うべきレギュレーション調査と、これらを行う際におすすめの手法について解説します。

特定製品の薬事規制調査

“特定製品の薬事規制調査”は個別の製品に対して、該当カテゴリー分類と販売可否、および登録申請フローについて確認するものである。
一般的には、輸出する製品候補が決まっている場合に行われるもので、レギュレーション視点から輸出販売可否と関連手続きを確認することが狙いだ。
もちろん、対象国の基本的な薬事規制について把握していない場合は、前編で紹介したOverview調査に準ずる内容について、一通り確認する必要がある。

調査内容としては主に下記のような3つがある。

① その製品が現地で販売可能かどうか、販売不可の場合はその理由
② 輸入販売可能な場合は、現地でどのカテゴリーとして販売可能か
③ 該当カテゴリーにまつわる手続き・規制関連

結果は以下の様にまとめられる。

特定製品の薬事規制調査事例(イメージ)

調査課題:
ある健康食品を輸出販売したい。この製品が対象国で、一般食品として販売可能かどうか、それとも機能性食品として販売する必要があるか、を調べたい。
一般食品の場合、健康食品に比べて規制が比較的に厳しくなく、手続きが簡単になることが多いため、まずは、一般食品として販売可能かどうかを確認したい。

調査結果:
対象国では、一般食品としては食品添加物規制に引っかかる成分/配合量があり、一般食品としては販売不可という結果となった。
この場合の対処方法としては二つある。
その1、成分の配合量を基準に合わせて調整する。
その2、機能性食品として製品登録をする。

ここからは、具体的な進め方やレポート内容について、インテージの実施事例を基に解説する。

事前準備として必要な情報

特定製品のレギュレーション調査については、製品の仕様や成分が規制に引っかからないかをチェックすることがメインの内容となるため、下記のような製品情報を用意する必要がある。

用意する製品情報:

製品名、剤型(ドリンク、タブレット、パウダー、錠剤、など)、提案する/望ましい分類(医薬品、漢方薬、化粧品、健康サプリ、一般食品、雑貨、など)、製造国、使用部位/投与経路、すべての有効成分と添加成分、各成分の含有量(例えば1カプセル中5mgなど)、1日当たりの摂取量、製品ラベルなど、可能な範囲で提供可能な情報。言語は日本語のほかに英語も必須。
また、現物もしくは製品写真(ラベルがわかるようなもの)も必要。

必要に応じて、追加情報開示を求められる場合もある。

“特定製品の薬事規制調査”で網羅すべき内容

調査報告書は、主に対象製品に纏わる法規制や関連手続きに関する内容と、成分チェック結果による対象製品の販売可否に関する内容を含む。

下記は特定製品の薬事規制調査のレポート目次例である。

1. 対象製品の輸入販売可否、カテゴリー分類
2. 必要な行政手続、薬事申請プロセス
3. 成分規制
  ① 配合成分もしくはその配合量が薬事規制に引っかかるものはないか
  ② 引っかかる場合の対処方法、配合基準、登録方法
4. ラベル表記規制
  ① ラベル表記の規制
  ② ラベル貼付内容
5. その他関連法規制や注意点等

成分チェック結果は以下イメージのような情報が必要となる。

また、対象製品の市場環境調査も併せて実施して、市場性判断や販売チャネル・販売価格帯等の上市スキームの仮説導出を同時に行うといったケースもある。

レギュレーション調査の実施手法

自社でデスクリサーチを実施したり、コンサルティング会社に依頼したり、いろいろなやり方があるが、インテージでは、Overview調査と特定製品の調査のいずれとも、デスクリサーチと現地レギュレーションに詳しい関係者インタビューを組み込んだ形で実施することを重視している。
デスクリサーチでは、関連法令の確認や、業界専門誌やインターネットサイトなどから過去事例やイシュー事例などの情報を取得する。
関係者インタビューでは、公開文書だけではクリアにならない内容を確認する。

Overview調査に関しては、一般的な条項は関連文書が公表されているので、デスクリサーチでも見つかることが多い。ただ、行間の意味が不明もしくは曖昧な内容も含まれていることが多く、詳しい関係者に確認することが望ましい。また、関係者にヒアリングすることで、その国での特殊事情や販売許認可の過去例なども知ることができる。
一方、特定製品調査の場合は、カテゴリー分類や販売可否について、公開文書だけで判断することは難しく、関係者に確認することが確実である。万が一、製品規制に引っかかる内容があったとしても過去ケースや経験から事前に対処方法を検討することができる。

ここでいう、関係者とは現地審査機関、現地審査機関にコネクションを持つ関係者で、一般的には、承認申請専門やそのコンサルティング会社の専門家、審査機関の役人などになる。
これら関係者からのヒアリングにより、情報の網羅性を担保し、定性情報(制度の運用状況等)による評価視点も追加できるのである。

まとめ

今回は海外進出時に法規制視点から失敗しないためのレギュレーション調査について過去の実例をもとに解説した。大きくOverview調査と特定製品調査の二種類がある。Overview調査は一般的な教科書のような基本情報を確認するもので、輸出する製品を決める以前に参入機会を探りたい場合や今後の輸出販売のためにスピーディな意思決定に役立つ社内資料として用意しておきたい場合に実施することが多い。一方、特定製品調査は輸出したい製品が決まっている場合、対象国での販売可否やカテゴリー分類、関連手続きについて、具体的に確認するものである。 デスクリサーチだけでの調査は曖昧な内容が残る、情報の網羅性が弱かったり、制度の運用状況がわからないなど、不十分である。国によってはコネクションが重要な場合も多く、こういった明文化されていない内容を把握するためには、事情に詳しい関係者に確認するやり方がお薦めである。

著者プロフィール

尹 錦花 (イン キンカ)プロフィール画像
尹 錦花 (イン キンカ)
北京大学卒業後来日。早稲田大学大学院国際関係学専攻。
調査会社2社を経て、2005年インテージに入社。
中国語・韓国語・英語・日本語のマルチリンガルを活かし、業種・業態特化せず、海外調査・海外進出支援に関するコンサルティングを多数行う。アジア全般、欧州、南北アメリカ、アフリカ、オセアニア等エリア問わずPJを推進。

北京大学卒業後来日。早稲田大学大学院国際関係学専攻。
調査会社2社を経て、2005年インテージに入社。
中国語・韓国語・英語・日本語のマルチリンガルを活かし、業種・業態特化せず、海外調査・海外進出支援に関するコンサルティングを多数行う。アジア全般、欧州、南北アメリカ、アフリカ、オセアニア等エリア問わずPJを推進。

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