行動自粛要請下のサービス利用 新規感染者の抑制で利用意向は上がった?
新型コロナウイルスの感染拡大対策として、政府が緊急事態宣言を発令してから約2ヶ月。いったんは全国一律で5月31日までの延長が発表されましたが、一部の都道府県を除いては新規感染者数の発生が抑えられていたことから、5月14日に39県で、5月21日に関西の2府1県で緊急事態宣言が解除されました。
また、5月25日に首都圏の一都三県と北海道でも解除されたことで、全国的に解除が完了したことになります。
先行して緊急事態宣言が解除された地域では、一部の業種を除いて営業が再開され始めています。一方で、休業要請の解除はその地域の感染状況と業種の特性に応じて段階的に行われることから、企業においても地域ごとの対策が、より一層求められています。
「外出自粛要請下でのサービス利用 生活者が企業に求めることは?」 という記事では、緊急事態宣言が全国に拡大され、全国的に緊張が高まっていた4月下旬に店舗・施設、サービスの利用実態や企業に対して求めることを調査した結果を紹介しました。
この記事では、その後緊急事態宣言が徐々に解除されるなか、引き続き自粛を求められていた地域での店舗・施設・サービスの利用行動や、サービス利用に対する考え方が、4月下旬の第1回目の調査からどのように変化していたのか、比較した結果をみていきます。
第2回目の調査は緊急事態宣言延長からおよそ1週間後のタイミングに行いました。(実査期間5月13日~5月15日)
目次
自粛要請下のサービス利用 生活者が制限を“緩め”たサービスは?
まず、感染拡大の規模が最も大きく、引き続き緊急事態宣言が継続されていた首都圏の一都三県について、生活者のサービスの利用や行動がどの程度変化したのかを、店舗や施設、サービスごとに時系列で比較をしてみました。(図表1)
図表1
「路線/コミュニティバス」「タクシー」「ショッピングモール/ホームセンター」「百貨店」「映画館」「テーマパーク/遊園地」
「カラオケボックス」「ゲームセンター/麻雀など」において、「利用が減った・躊躇している」という回答が1回目の調査から2回目の調査で5ポイント以上少なくなっています。
ゴールデンウイーク明け直後から緊急事態宣言解除の前倒しなど経済再開の報道が目立ち、行動の“緩み”といった言葉が聞かれだしました。また、一部では、休業要請対象の業種でも、感染防止対策を取ったうえで営業再開という動きも見られはじめていました。
感染拡大に対する不安感も徐々に収まってきていたことから、“近所”から”近隣の街へのお出かけ”程度までは自粛を緩めて行動範囲を広げる、といった動きが一部であったようです。
一方で「山/海/川」の利用が減った・躊躇しているという人は1回目の調査から2回目の調査で5ポイント以上多くなっています。緊急事態宣言発令直後の時期に、人が集まっている場所としてビーチや河川敷がニュースで取り上げられていたことで、生活者に警戒すべき場所、モラルとして自制すべき場所、と認識されたと考えられます。
次に、同じく調査時に緊急事態宣言下にあった大阪・兵庫についてもみてみました。(図表2)
大阪では、5月5日に休業解除の独自指針となる大阪モデルが発表され、5月14日の夜にその達成が発表されました。実際に自粛解除が適用されたのは5月16日以降ですが、今回の調査(5月13日~15日)はまさに、感染拡大の抑制効果を実感し、休業解除へのカウントダウンが始まっていた時期となります。また、同じ経済圏にある兵庫も、同様に新規感染者数が抑えられてきていました。
図表2
「外食(飲食店)」「百貨店」「国内旅行(都市部)」「国内旅行(自然が多い田舎)」「ホテル/旅館」において、利用が減った・躊躇しているという回答が1回目の調査から2回目の調査で10ポイント以上少なくなっています。最も利用減が大きかった「外食(飲食店)」で20ポイント近く少なくなっており、人が集まる場所であっても警戒心は下がっているようです。また、首都圏一都三県とは違い、生活者の”国内旅行を控えよう”という意識が弱まっている心理がうかがえます。
巣ごもりから1か月以上 利用が増えたサービスに変化はあったか?
続いて、外出自粛要請で利用が増えたサービスや行動に4月からの変化はあったのでしょうか。首都圏の一都三県について見ていきます。
図表3
仕事・学習での「WEB会議」が増えたという回答が1回目の調査から2回目の調査で5ポイント以上多くなっています。在宅勤務が広がり、オンライン環境での業務の必要に迫られている生活者が増えていることが想像されます。
また、利用が増えたという回答が、「スマホゲーム」「有料動画配信サービスへの加入」「電子書籍の購入」
「フィットネス器具の購入」「身の回り品/嗜好品の購入」が1回目の調査から2回目の調査で僅かながらですが、伸びているようです。エンタメ系のサービスや快適に暮らすための商品の購入など、巣ごもり生活を少しでも充実させるために、実際にお金を使う人が増えている様子がうかがえます。
サービスの利用再開タイミング 不安の緩和で障壁は下がった?
次に、実際に利用が減ったサービスについて、「どのような状況になれば以前と同じように利用しようと思うか」を調査した結果を4月下旬と比較してみました。
以前と同じように利用するようになるのは「行動自粛・休業要請が緩和・解除される頃」と回答された結果を比較したのが図表4です。感染状況が落ち着きつつあり、不安が緩和されてきたことで、サービス利用に対する心理的な障壁は4月よりも下がっているのでしょうか?
図表4
「路線/コミュニティバス」「スーパー」「ショッピングモール/ホームセンター」「山/海/川」「スポーツやダンス教室」「理容店/美容院・ヘアサロン」で、『自粛要請が緩和・解除される頃』と回答した人が1回目の調査から2回目の調査で5ポイント以上増えました。
一方で、「航空機(国内線)」「海外旅行」「劇場/ライブハウスなど」「テーマパーク/遊園地」については3ポイント以上減りました。
日常的に利用するサービスについては、緊張状態が緩和され、自粛が解除されれば以前のように利用を戻してもいいだろうと感じる人が増えているようです。一方で、密閉空間での長時間の移動や滞在、大規模な人数が密集する場所などについては、自粛要請が解除されても、警戒心は容易に下がらない心理がうかがえます。
自粛要請解除後も続きそうな巣ごもり おうちでの困りごとは?
前述の通り、行動自粛・休業自粛が解除されても、生活者の行動は全く元にもどるわけではなく、家で過ごす時間はコロナ以前と比べると一定増えたままであることが想定されます。
巣ごもり生活の中で、生活者はどのようなことに困っているのかを調査しました。仕事や勉強以外の時間について聞いた結果が図表5です。
図表5
子供を含め、困っているのは圧倒的に「運動不足」という回答でした。次いで「生活リズムの乱れ」「友人・知人との会話・コミュニケーション不足」と続きます。また、子供については、「学力の低下」「ゲームのしすぎ」といった点も挙げられました。
運動不足を解消するためのサービス、子供の学力維持を手助けするサービスなどが引き続き求められていきそうです。
日々刻々と変わる状況の中、生活者のサービス利用に対する考え方や意識は今後どのように変化していくのでしょうか。知るGalleryでは、今起きている変化を引き続き追いかけます。
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今回の分析は、自主企画調査を用いて行いました。
【自主企画調査(ネットリサーチ)】
調査地域:日本全国
対象者条件:15~79 歳の男女
標本抽出方法:弊社キューモニターより抽出しアンケート配信
ウェイトバック:2015年度実施国勢調査から推定されたエリア×性年代の人口構成比に合うようにウェイトバック集計
標本サイズ:第1回 n=823 /第2回 n=835
調査実施時期:第1回 2020年4月24日(金)~27日(月)/第2回 2020年5月13日(水)~5月15日(金)
調査項目:自粛要請中のサービス利用状況、流行以前の状態に戻るサービスとそのきっかけ、働き方・テレワーク実態、 自宅での過ごし方(ゲーム・動画など)、外出時の移動手段 など
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