ビッグデータ活用事例【前編】「データアクティベーション」でビッグデータの価値を高める方法
世界は今、データの時代を迎え、データ解析の専門家「データサイエンティスト」や、データに裏付けられた「データドリブン」な経営への注目度が高まっています。そこで求められているのはビッグデータの活用。ただ、ビッグデータはそのままでは使えないことが多く、ビジネスに役立つデータへと昇華させることが求められています。そのための手段が「データアクティベーション」です。
データをめぐる環境変化
これまでビジネスの世界で重要なのは、「ヒト・モノ・カネ」の流れと言われてきました。近年はそこに「情報・データの流れ」が加わっています。むしろ、情報が円滑に流れてこそ、モノの流れを生み、お金の流れを生むという認識が広がりつつあります。
たとえば現在マーケティングの世界で最も熱いAI(人工知能)の開発競争。GoogleもFacebookもMicrosoftも、膨大な投資をして開発したAIを無料で公開しています。利用のハードルを下げ、多くの人が利用することで集まってくる「情報」こそが勝敗の鍵を握ると考えているからです。
「情報・データの流れ」が重視される中、ビッグデータ活用は多くの企業のビジネス課題になっています。
ビッグデータについて少し例を挙げましょう。例えば、
・インターネットのアクセスデータ
・ショップでの買い物等から得られるPOS情報
・スマートフォンから発信されるGPS位置情報
・IoT機器から送られてくる操作情報
・セキュリティカメラの映像情報
・コールセンターで録音される音声データ
多くの場合、上の例のようにリアルタイムで増加していく様々な形式のデータを指します。ICT(情報通信技術)の進化、特にスマートフォンに搭載された数々のセンサーによってログが取れるようになってきました。自動的に取得されるために活用目的がはっきり決まっていないというデータも多いのですが、マーケティング活動に活かせるのでは、と期待が高まっています。
ビッグデータ活用を妨げる二つの課題
データの種類や量は膨大になり、湯水のように湧き出ています。
しかし現在のところ、ビッグデータ活用はそれほど進んでいません。それには、大きく2つの理由があります。
1)全体をカバーするデータがない
個別の企業や団体が獲得している自社の顧客データや、自社サイトへのアクセスデータでは、データの量こそ多いものの、全体が見えません。顧客である生活者は自社だけではなく他社のサービスも利用している場合がほとんどです。
たとえば、ある清涼飲料のコンビニでの購買データを見ても、あくまでそのコンビニでの全数データであって、コンビニ業界全体や飲料マーケット全体を表すデータではありません。
結局そのデータを活用しても、自社の顧客という限られた生活者へのアプローチに留まってしまいます。
2)顧客起点のデータがない
マーケティングは人に対して行うものなので、「この情報はどのような人のものなのか」がわからないと何をしていいのかがわかりません。一方ビッグデータはログデータが多く、人の情報が欠落しています。このため、有効な戦略が立てにくくなっています。
図1 ビッグデータの課題
ビッグデータは量が多く一見使いやすそうに見えますが、この2つの壁があることで、活用しにくい現状があります。
ビッグデータ活用に有効な “データアクティベーション” とは
そのままではマーケティングの領域には使えないことが多いビッグデータに、マーケティングリサーチのノウハウやリサーチデータを組み合わせることでデータの活用価値を拡張し、マーケティングに使えるデータにしていくことを、インテージでは「データアクティベーション」と呼んでいます。
まずは、各社が持つビッグデータに“どういう人か”を示す情報を付け加えることでマーケティング領域で活用できるデータへと生まれ変わらせ、マーケティングの効果向上・効率向上につなげます。さらに、それぞれが一部しかカバーしていない様々なビッグデータをデータホルダーから集めたうえで足りない部分を推計し、全体を示す、マーケティング情報として広く使えるものにしていきます。
データアクティベーションの実現方法
無機質なビッグデータから、データの背後にいる生活者はどんな人で何を考えているのかを翻訳する「データアクティベーション」。どのように実現するのでしょうか。
もととなるビッグデータは、企業の所有する「人ごと」「店ごと」「商品ごと」の行動の全数を捉えた実数データです。
一方で市場代表性を持つように標本抽出し、人の情報を収集したマーケティングリサーチのデータも準備します。
この両者をつなぎ合わせて、市場全体や人が見渡せるデータを創り上げていきます。
つなぎ合わせる工程ではマーケティングリサーチのノウハウが活用されます。市場全体を見渡しつつ、集まった多様なビッグデータを精査し、マーケティングリサーチのデータを使って足りない部分を推定していきます。
ここで肝となるのは「位置データ」「購買データ」「メディアのログデータ」「画像データ」といった様々なデータをなるべくひとりの人のイメージで集約しつつ、精度を維持することです。そうすることで生活者の全体像を描き出すことが可能になります。
データアクティベーションのメリット
データ活用が進んでいる分野として、CRM(顧客管理システム)やDMP(データ管理システム)がありますが、先ほどビッグデータ活用の課題として挙げた、自社の顧客にデータが限定されているという問題点があります。
マーケティングに活かす場合、自社顧客の中で売り上げ上位の顧客やクロスセルが成功した顧客のデータを参考に、顧客を育成、刈り取りをしていく形が多いでしょう。「自社の顧客の購買を最大化する」発想と言えます。顧客育成は非常に重要なテーマではありますが、限られた顧客層のなかで限られた情報に頼った施策を行っていると、目先の数字を追う形でデフレーションに陥りがちで、企業の成長は見込めません。
現在の成熟したマーケットで必要なのは、いかに競合から乗り換えてもらうか、今使っていない潜在顧客に使ってもらうかという「獲得、創造」です。
それは、社内のデータだけでは実現できません。外部データ・公共データ・メディアデータなど、多様なデータを組み合わせ、生活者の様々な側面を解析し、チャンスを見つけて新たな施策を行う、能動的なデータ活用が求められています。
データアクティベーションは、そんな能動的なデータ活用を実現するための手段です。
【後編】では、データアクティベーションでマーケティングが変わる具体的な事例をご紹介します。
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