コロナ禍で変わった? 家の中のニオイ対策と香りへのこだわり
新型コロナウィルスの感染拡大に伴って家で過ごす時間が増えたことで、家での生活をいかに快適に過ごせるようにするかが注目されています。例えば家のニオイ対策。これまでより家の中のニオイが気になる、という人もいるのではないでしょうか。また、家で過ごす時間を香りで彩りたいという人もいるのではないでしょうか。
インテージでは、コロナ禍における「家の中のニオイ対策・香り市場」に注目し、インターネット調査*¹とインテージのSRI+®(全国小売店パネル調査データ)*²からその傾向を調べました。
コロナ禍で、ニオイ・香りを気にするようになったのか
図表1は「新型コロナウィルス流行後に、香りを気にするようになった日用雑貨品カテゴリー」を聞いた結果です。
図表1
家の中のニオイ対策に用いる室内用の消臭剤やトイレ用の芳香剤・消臭剤、玄関の芳香剤・消臭剤といったカテゴリーが上位に入っています。家で過ごす時間が増え、使用頻度が少なかった場所を使う機会が増えたことで、生活空間の香りに対する関心が高まったと言えそうです。
また、2位に入った柔軟剤。香りに関するこだわりを聞いたところ、「好きな香りがすると洗濯物を干すときに気分が上がる」「柔軟剤をニオイがきつくないものに変えた」といった自由回答も見受けられました。在宅時間の増加は柔軟剤の香り選びにも影響を与えていそうです。
これらの「家の中のニオイ対策・香り」市場は実際伸びているのでしょうか?パネルデータでみていきたいと思います。
「身に着ける」よりも「空間を整える」目的の香り市場が拡大
ここからは、インテージの小売店パネルSRI+でニオイ対策・香り市場の推移を確認します。まずはニオイ対策と香りに関するカテゴリーを図表2のようにグルーピングしました。
図表2
上記分類を用いてニオイ対策・香り市場の2020年1月~12月の市場規模 (金額)を確認したところ、「身に着けるもの」は前年比102%とほぼ横ばいである一方、「空間を整えるもの」は前年比123%と大きく拡大していることがわかります。(図表3)
図表3
さらに中分類別で見ると「空間を整えるもの」でも芳香剤や入浴剤といった「リフレッシュ・気分転換」目的以上に「消臭」目的の市場の伸びが大きいことがわかります。(図表4)
図表4
なお、カテゴリー単位でみると、それぞれの市場規模の増減は図表5の結果となりました。
図表5
「身につけるもの」や「空間に置くもの」の「香りを選ぶときのこだわり」についてアンケートで聞いたところ、「香りが強すぎず、スッキリした香りのもの」「消臭と共に消毒機能があり、あまりきつくない香り」「家族みんなが好む香り」「家族の邪魔にならないような香りが薄いもの」といった回答が見受けられました。在宅時間が長くなることで、自分だけでなく家族へも配慮しながら、リフレッシュ・気分転換のためのしっかりした香りよりも、スッキリ・弱めの香りとともに消臭ができるカテゴリーが伸びているものと考えられます。
伸びているのは、刺激の少ない香りや、爽やかでリラックスできそうな香り
前述の香りを選ぶ時のこだわりを聞いたアンケートでは、
「室内や 寝室用で今までは、色々なアロマを混ぜて使っていたが、コロナになってからミント系ばかりになった。」
「洗剤はローズのような甘い香りを選んでいたが、最近は森林の香りのような爽やかな香り」
「極力匂いの強くないものを選ぶようにしている、コロナになったら嗅覚が弱くなると聞いたので些細な変化も見逃したくない」
といった、『直近で求める香りの種類が変わっている』といった意見も多く見られました。
そこで、インテージの商品マスターに登録されている「芳香剤・消臭剤」、「入浴剤」「柔軟剤」「洗濯用洗剤」「中性洗剤」の全2,440商品に対し、商品名称から「香りの種類」情報を付与して、いま日用雑貨品市場においてどのような香りが伸長しているのかを確認しました。(図表6)
図表6
特に香りの要素が強いと思われる「芳香剤・消臭剤」「入浴剤」「柔軟剤」について、以下の傾向が見られました。
- 「芳香剤・消臭剤」市場では、無香が大きく拡大。フレッシュ系、ハーブ系、石鹸系が順に拡大している。
- 「入浴剤」市場では、石鹸系やハーブ系が大きく拡大している。
- 「柔軟剤」市場では、フレッシュ系、ハーブ系といった香りが拡大している。
柑橘系のように香りが強いものよりも、無香、石鹸といったより刺激の少ない香りや、ハーブ系、フレッシュ系といった爽やかでリラックスできそうな香りが好まれる傾向となっているようです。
実際、アンケート調査でも「身につけるものは爽やかなミント系を選び、部屋の中はリラックスしたいと思って選びます。」といった、外出時と在宅時には香りを使い分けしているという意見もありました。
複数のカテゴリーで拡大していたフレッシュ系、ハーブ系、石鹸系を支持しているのはどの年代か、インテージの消費者パネルSCI®*³で年代の金額構成比を確認してみたところ、それぞれ異なる特徴がみられました。(図表8)
図表8
ハーブ系は70代の構成比が他の香りよりも高く、フレッシュ系、石鹸系は30代の構成比が高くなっていました。年代によって香りの好みやイメージが異なるようです。
新型コロナウィルスの感染拡大は、香り・ニオイに関する市場の拡大や、求める香りにも影響しているようです。今後もライフスタイルやワークスタイルの変化で、様々な香りの楽しみ方やニーズが出てくるかもしれません。
分析担当 カスタマー・ビジネス・ドライブ本部 企画・分析3部 福田・荒澤
関連サービス紹介
生活者360°Viewer:多面的で精緻なターゲット像を描き出すことにより、生活者理解に基づいた商品・サービス開発やコミュニケーション・プランニングを支援する分析サービスです。例えば、生活者のニオイ対策や求める香りを購買データから捉え、香りの好み別の人物像を詳細に捉えることで上記支援を可能にします。
今回の分析は、下記の設計で実施したインテージの自主企画調査結果をもとに行いました。
*¹【インテージのネットリサーチによる自主調査データ】
調査地域:日本全国
対象者条件:15~79 歳の男女
標本抽出方法:「マイティモニター」より母集団構成比にあわせて抽出しアンケート配信
標本サイズ:n=2660
調査実施時期: 2021年4月2日(金)~4月5日(月)
*²【SRI+(全国小売店パネル調査)】国内小売店パネルNo1※ のサンプル設計数とチェーンカバレッジを誇る、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ホームセンター・ディスカウントストア、ドラッグストア、専門店など全国約6,000店舗より継続的に、日々の販売情報を収集している小売店販売データです。
※SRI+では、統計的な処理を行っており、調査モニター店舗を特定できる情報は一切公開しておりません
2021年4月現在
*³【SCI(購買パネル)】全国15歳~79歳の男女52,500人の消費者から、継続的に収集している日々の買い物データです。消費者の顔を詳細に捉え、消費者を起点としたブランドマーケティングや店頭マーケティングにご活用いただけます。
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