ふるさと納税1万人調査!利用者の本音と最新トレンド ~ふるさと納税実態調査③~
今年もあと2か月となり、2024年度のふるさと納税の申し込みを急いでいる方も多いのではないでしょうか 。
わたしたちは昨年に引き続き 、2024年9月に生活者を対象に、2023年度の ふるさと納税実態調査を行いました。利用率、人気のポータルサイト、寄附先選びの決め手やふるさと納税後の寄附先自治体への意識の変化をご紹介します。さらに、「変わって欲しいポイント」の声も集めました。
利用者の本音と最新トレンドを知ることで、新たにふるさと納税をやってみようと思うきっかけや、今後のポータルサイトや自治体選択の参考になればと思います!
目次
1. ふるさと納税の利用率は?
総務省によると2023年度 のふるさと納税寄附額は約1兆1,175億円、納税寄附件数は約5,894万件と過去最高を更新しました(注1)。これは、2008年の開始時と比較すると、納税寄附額は約137倍、納税寄附件数は約1,091倍にもなります。ふるさと納税利用者数(注2)も初の1,000万人超えとなりました。一方で、納税義務者数(注3)に占めるふるさと納税利用率は約16.7%と低く、まだ多くの方が活用していないことがわかります。
ふるさと納税は税制優遇制度のひとつですが、他の制度と比べてどの程度利用が進んでいるのでしょうか。図1は年収300万円以上の生活者約5万3千人を対象に実施した「ふるさと納税実態調査」の結果で、各種税制優遇制度の利用率の推移を表しています。
図表1
2023年のふるさと納税利用率は33.8%で、他の制度と比較して突出しています。調査時期が2024年9月初旬だったので、2023年までの実績値で2024年の利用率を予測すると、39.2%となる見込みです。調査の設計上(注4)、総務省の発表から計算した利用率よりも高いですが、それでも3割程度であり、新規利用者が増える余地がまだまだあります。
注目は、2024年1月から始まった新NISAです。旧NISAは2014年から始まり、10年目となる2023年で18.7%の利用率でしたが、新NISAは開始からわずか9か月目で33.0%の利用率と、ふるさと納税の利用率に追いつく勢いです。コロナ禍、物価高、円安と複数の要因により、生活防衛や将来の備えのための投資意欲が高まっているといえます。
2. 2023年版ふるさと納税のポータルサイト勢力図~認知度、利用率、満足度
ふるさと納税を行うには、まずいずれかのポータルサイトに会員登録し、そこから返礼品を選び、手続きするのが主流です。そこで、2023年のふるさと納税で、どのポータルサイトが「知られ、選ばれ、満足された」のかを調べてみました。図2の横軸の認知度は回答者数(n=10,860)に占める、各サイトを知っている人数(認知人数)の比率です。縦軸の利用率は、各サイト認知人数に占める利用者数で、利用率の順位を上位6位まで表示しました。また、バブル(円)の大きさは、「1番満足したサイト」として選んだ人数で、満足度を表しています。
図表2
認知度が最も高かったのは「さとふる」(75.5%)ですが、利用率は35.6%で3位でした。一方、「楽天ふるさと納税」の認知度は53.0%で「ふるさとチョイス」とともに3位ですが、利用率は72.8%で昨年に引き続き1位となり、群を抜いて高くなっています。満足度では、「楽天ふるさと納税」が利用率とともに1位となりました。また、利用率の上位に今年から新たにランクインをしたのは、5位の「dショッピングふるさと納税百選」です。認知度(14.0%)、利用率(27.1%)でともに5位でした。
2023年10月には、各自治体の寄附募集に要する費用が付随費用も含めて寄附金額の5割以下(注5)となりましたが、2022年版 と今年とで、ポータルサイト勢力図に大きな変化はありませんでした。
しかし、2025年春にはAmazonの参入、10月からはポイント等を付与するポータルサイトを通じた寄附募集の禁止(注6)が予定されています。
今まで以上にポータルサイト間の競争が激化し、自治体からも利用者からも選ばれるために、ますます工夫や差別化が必要になるでしょう。
3. 寄附先選びの決め手は何?~2023年の寄附先自治体の選択理由
図3は2023年のふるさと納税で、寄附先自治体を選ぶ際に一番重視した理由の結果です。
図表3
青色の項目は返礼品の魅力、コスパ、ポイント付与やキャンペーンといったお得感に関する内容で、全体の75.2%を占めました。
緑色の項目は利便性に関する内容で、「自分が普段から使う商品が返礼品にあった」、「自分が普段使っているWebサイト・アプリ等で寄附できた」などが、全体の10.0%を占めています。
赤色の項目はふるさと納税の本来の趣旨に関する内容で、合計で11.2%と低い水準になっています。ふるさと納税の理念(注7)の第一の理念と関わる「寄附先の政策や寄附金の活用先が良かった」は0.5%、「寄附先の自治体と関わりがある」は1.7%、「寄附先の自治体を応援したい」は3.5%でした。第二の理念と関わる「返礼品が寄附先の自治体の産品だった」は5.5%でふるさと納税の本来の趣旨に関する内容の中では最も高い結果となりました。
前年に引き続き2023年も4人のうち3人が寄附先自治体を選ぶ際に、返礼品の魅力やコスパやお得感を最も重視していました。つまり現状では多くの人が、まずは返礼品を決め、その返礼品を扱っている自治体リストの中から寄付金額や量の好みに合う自治体を選んでいる人が多いことがわかります。
4. どう変わる?ふるさと納税後の寄附先自治体への意識の変化
ふるさと納税制度での寄附をした後、寄附先の自治体に対する意識はどのように変化するのでしょうか。図4は、2023年のふるさと納税で寄附した全ての自治体に対する意識変化をたずねた結果です。
図表4
赤色の「今後、もう一度寄附したい」が46.2%で最も高く、寄附する自治体の選択に継続性があることがわかりました。
次いで、「親近感や愛着が湧いた」が22.1%で、 ふるさと納税を通じて寄附先自治体との心の距離が近くなっています。
緑色は、寄附後の訪問に関する項目です。「実際に訪問した」が11.1%、「まだ訪問していないが、訪問予定である」が5.1%でした。また、少数ながらもふるさと納税をきっかけに「二拠点目にしたり、移住した」生活者が0.8%います。
黄色は、寄附先への関心の高まりに関する項目です。 「寄附先の産品を普段の買い物で意識的に選ぶようになった」が8.9%、「寄附先の祭りや文化、著名人等のファンになった」が2.2%でした。
以上より、きっかけは返礼品の魅力やお得感であったとしても、ふるさと納税を通じた寄附後には、行動や意識が寄附先の自治体に向く生活者がいることがわかりました。
一方で、青色の「親近感も愛着も湧かなかった」が27.2%であり、寄附先自治体に対して意識が向かない人が多いのもふるさと納税の現状です。翌年にはどこの自治体を選んだか覚えていないケースも起きえます。ふるさと納税の理念に沿った寄附をする人が増えるためには、生活者の特徴、自治体の取組み、生活者×自治体の組合せ、どのような場合に記憶に残らない寄附となってしまうのかなど、生活者の寄附行動にヒントがありそうです。
5. ふるさと納税制度の満足度~改善してほしいのはココ!
さらに踏み込んで、2023年にふるさと納税をした生活者に対して、不満や改善点の有無を聞いてみました(図5)。ふるさと納税に「特に不満や改善点はない」と回答した生活者は10,860人中24.1%で、残りの75.9%の生活者が何かしらの不満や改善して欲しいポイントがあることがわかりました。
図表5
続いて、図6で「不満や改善点がある」と回答した生活者の不満の中身を見てみましょう。
図表6
制度や手続きについての不満や改善点
赤色の項目は、制度や手続きについての不満や改善点です。最も割合が高かったのは、「自分の寄付金の上限額がわかりにくい」で46.3%と約半数の方が不満と感じています。 「寄附金の上限額については、総務省や自治体のホームページ、ポータルサイトで簡単にシミュレーションができるものの、完璧な上限額を知ろうとすると詳細な情報が必要となる点に不満を持つ人が多いのでしょう。
一方で、「寄附後の控除の手続きがわかりにくい」は13.4%と、「自分の寄付金の上限額がわかりにくい」の3分の1以下となっています。 今回の調査では、寄附先自治体数が5以下の人が85.5%と、大半の方が、手続きが簡便なワンストップ特例制度を利用していることから、控除の手続きについては不満が低いと考えられます。
「制度の変更によるお得感の減少」は37.9%で2位でした。2023年10月からの各自治体の寄附募集に要する費用を寄附金額の5割以下とする制度変更は、返礼品の重量減少、寄附額上昇で、実質の値上げとなり、お得感が減少したと感じた人が多くなっています。また、今年は制度変更がなかったものの、2025年10月からの「寄附に伴いポイント等を付与するサイトを通じた寄附募集の禁止(注6)」が既にアナウンスされており、3位の「制度が頻繁に改正される」(28.8%)に繋がっていると考えられます。
ポータルサイト利用時の不満や改善点
青色は、生活者が実際にポータルサイトを使って寄附先を選ぶときに関する項目で、「ポータルサイトの種類が多すぎる」(22.7%)、「どの自治体を選べばいいかわからない」(13.8%)、「返礼品の種類が多すぎる」(13.5%)と選択肢の多さに不満を持つ生活者がいました。選択肢の多さはプラスの要素に思えますが、煩雑さや選ぶことの負荷の高さにも繋がり、これが人気の返礼品や上位の自治体への集中を助長させている可能性もあります。
返礼品に関する不満や改善点
緑色は、返礼品に関する項目で、「欲しい時期に返礼品が届かない」(12.7%)が最も高く、次いで「魅力的な返礼品がない」(7.2%)、「返礼品の写真と実物が異なる」(6.4%)でした。ふるさと納税の返礼品は地域の農産物や水産物が多いので、到着のタイミングが気になる人が多いようです。わずかですが、「返礼品は不要だと感じる」(1.4%)人もいました。
寄附の理念や目的に関する不満や改善点
黄色は、ふるさと納税の寄附の理念や目的に関する項目で、「ふるさと納税の理念が薄れていると感じる」が5位で16.1%でした。また、2023年にふるさと納税をしているものの、「自分が住んでいる地域に納税したい(他の地域に寄附したくない)」(5.6%)、「ずっと同じ自治体に住んでいるから参加しづらい」(1.3%)と自治体選びに苦心している生活者や、寄附先はあるが「寄附金の使い道に賛同できない」(2.3%)と思っている生活者がいることがわかります。いずれもふるさと納税の理念に沿った寄附をしようとして、不満を感じているといえます。
前年(2022年度の振り返り)の調査に続き、今回(2023年度の振り返り)の調査でも、返礼品が寄附する自治体の決め手になっている状況が多いことが浮かび上がりました。さらに、寄附後も自治体に親近感も愛着も持たない生活者が相応に多くいることがわかりました。
一方で、きっかけは返礼品であっても、寄附後には地域に親しみを持ったり、もう一度寄附先に選んだり、観光や消費で関わりを持つ生活者もいて、ふるさと納税が新しい「つながり」を生み出していることもわかりました。
ふるさと納税を通じて、自治体への関心 や関わり方が変わる人・変わらない人、ふるさと納税に不満がある人・ない人といった分析を深めることで、ふるさと納税の寄附先の地域はもちろん、ふるさと納税を利用する生活者も含め、社会を元気にする制度としてのふるさと納税がより良い制度になるように、引き続き 生活者の声を聴きたいと思っています。
注1: 総務省 ふるさと納税に関する現況調査結果(令和6年度実施)
注2: 総務省 令和6年度課税における住民税控除額の実績等の「ふるさと納税に係る寄附金税額控除」の人数
https://www.soumu.go.jp/main_content/000960675.xlsx
注3: 総務省 令和5年度 市町村税課税状況等の調
第11表 課税標準額段階別令和5年度分所得割額等に関する調(合計)の納税義務者数計を使用
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/xls/J51-23-11.xlsx
注4: 本調査では、年収300万円以上を対象としている。調査対象の詳細については【調査概要】(スクリーニング)を参照。
注5: 総務省 ふるさと納税の次期指定に向けた見直し(報道資料)
注6: 総務省 ふるさと納税の指定基準の見直し等(報道資料)
注7: 総務省 ふるさと納税の理念
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【調査概要】
(スクリーニング)
調査方法:Web調査
調査地域:日本全国
対象者条件:20~64歳男女/有職者/年収300万円以上(※)
標本サイズ:n= 52,984(令和2年「国勢調査」と令和元年「賃金構造基本統計調査」から算出した人口構成比(性年代×エリア×有職者×個人年収300万以上)に準拠して回収)
調査実施時期:2024年9月3日(火)~2024年9月10日(火)
※年収が300万円未満の場合、家族構成によってはふるさと納税のメリットを得られない可能性があり、総務省が公開しているふるさと納税額の早見表でも年収300万円以上を対象としているため、対象者条件を上記のように設定した
(本調査)
調査方法:Web調査
調査地域:日本全国
対象者条件:スクリーニング回答者のうち、2023年1月~12月にふるさと納税制度で寄附を行ったと回答した方
標本サイズ:n=10,860
調査実施時期:2024年9月11日(水)~2024年9月17日(火)
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