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もっと知りたい!ふるさと納税 いつにする?どこにする?なににする? ~ふるさと納税実態調査④~

今年も残すところあとわずかとなり、2024年のふるさと納税の締切りが迫っています。わたしたちは昨年に引き続き 、約10,000人の生活者を対象に、2023年度のふるさと納税実態調査を行いました。
本コラムでは、この調査の結果から2023年度の寄附のタイミング、人気の自治体と返礼品ランキングを発表します!
さらに、ふるさと納税の代名詞ともいえる 返礼品を深堀りし、自治体・事業者・生活者に役立つヒントを探ります。

1. いつする?ふるさと納税~みんなのタイミング

図1は、2023年1月~12月にふるさと納税を利用した10,860人を対象に、2023年1月から2024年8月までの どの月にふるさと納税をしたのかを聞いた結果です。

図表1

ふるさと納税をした時期(2023年1月~2024年8月)

2023年にふるさと納税をした人の割合が最も高かったのは12月で、41.1%でした。ふるさと納税で税金の控除を受けるには、その年の12月31日までに寄附の 申込みと支払いを完了しなければなりません。そして、12月は、その年の給与収入額が確定するので、ふるさと納税を通じた控除上限額が正確にわかるタイミングです。平たく言うと12月は、うっかり忘れや先延ばしで慌てて利用する人たちと、正確な上限額を知ってから利用したい、または最終調整して控除枠を使い切りたい人たちが重なり、利用増となっています。

12月31日という厳密な締切り前にすると、いわゆる駆け込み利用になり、寄附先と返礼品を吟味する時間は取りにくくなります。必然的に、ポータルサイトなどの返礼品ランキングや寄附先自治体ランキングの上位の返礼品や自治体が選ばれやすくなります。その結果、特定の返礼品や自治体への集中を助長することになりそうです。

次に高い割合だったのが2023年9月で、28.5%でした。同年10月から、各自治体の寄附募集に要する費用が付随費用も含めて寄附金額の5割以下となる制度変更があり(注1)ました。これにより、実質的な値上がりが懸念されたため、制度変更前の駆け込み利用に繋がりました。

もう一つ注目したいのが、1月です。2024年と2023年とで前年同月を比較できる1月~8月を比較すると、最も差が大きいのは1月で4.0ポイント となっています。2024年1月1日に発生した令和6年能登半島地震の被災地支援の寄附が、ふるさと納税を通じて行われたことが大きく話題になりましたが、この影響もありそうです。

2. 2023年版ふるさと納税の寄附先自治体トップ20

続いて、寄付先自治体のランキングを見てみましょう。

図表2

ふるさと納税寄付先自治体人気ランキング

図2の左側の地図と中央の表は総務省が発表している「令和5年度におけるふるさと納税受入額の多い20団体(注2)」です。1位は宮崎県都城市、2位は北海道紋別市、3位は大阪府泉佐野市、続いて北海道白糠町、別海町でした。昨年度の受入額の多い20団体のうち17自治体は変わらず上位に入っており、今年度新たにランクインした自治体は、12位の宮城県気仙沼市、13位の岩手県花巻市、18位の北海道弟子屈町でした。

次に、「ふるさと納税実態調査」の結果より、生活者サイドから人気の自治体ランキングを見てみましょう。図2の右の表は2023年1月~12月にふるさと納税を利用した10,860人に「最も多くの金額を寄附した自治体」を聞いた結果です。調査全体で1,150自治体が挙がった中、上位20の自治体に一番多く寄附した人数が25.3%もいました。4人に1人の「一番人気の寄附先」がわずか2%程度の少数の自治体に集中していることがわかります。

図2の右の表で赤色に網掛けしているのは、総務省の納税受入額ランキングにも入った自治体です。今回調査した上位20自治体のうち、12自治体が総務省の納税受入額ランキングの自治体と一致しました。1位の宮崎県都城市から4位の北海道白糠町については、順位も一致しました。昨年の「ふるさと納税実態調査」の結果と比較しても、1位~5位は顔ぶれも順位も一致しています。ランキング上位の人気自治体が固定化しているといえます。

地図に載っている自治体の名前や地理的位置を眺めてみると、特産品が浮かんできます。「令和4年市町村別農業産出額(推計)」(注3)によると、1位の宮崎県都城市は農業産出額が全国1位で、そのうち約8割 を畜産部門が占めています。肉用牛と豚は全国1位、ブロイラーが全国2位でした。また、北海道と言えば海産物が有名ですが、右側の「最も多くの金額を寄附した自治体」のランキングでは9自治体がランクインしています。肉や海産物といった、高額な特産品を返礼品としている自治体が、上位であることがわかります。

3. ふるさと納税といえば、これ!~2023年の返礼品ランキング~

次に、ふるさと納税で人気の返礼品のジャンルを調査結果から見てみましょう。図3は、2023年1月~12月にふるさと納税を利用した 10,860人に、「ふるさと納税で選んだ返礼品のジャンル」を全て回答してもらった結果です。

図表3

2023年版ふるさと納税の返礼品ジャンルランキング

返礼品と寄附先自治体の関係について見てみましょう。前述の総務省ランキング1位の宮崎県都城市の特産品と返礼品ランキング1位の「肉」、総務省ランキング2位の北海道紋別市や4位の白糠町、5位の根室市の特産品と返礼品ランキング2位の「魚介・海産物」、といったように上位の寄附先自治体の特産品と返礼品が結びきます。寄附先自治体と返礼品ジャンルの上位の顔ぶれから、「肉」や「魚介・海産物」のような魅力的な特産物がある自治体が人気を集めている様子が見えてきました。

一方、返礼品ランキングで3位の「米」は、「令和4年市町村別農業産出額(推計)」(注3)によると、産出額1位が新潟県新潟市で、新潟県長岡市、新潟県上越市、秋田県大仙市、山形県鶴岡市、と続きます。この5市町村は、図2の寄附先ランキングの上位に入っていないことから、「米」は「肉」や「魚介・海産物」の様に寄附先自治体の集中はなく、色々な自治体が選ばれていることが考えられます。

昨年の結果と 比較すると(図表4)、1位から「肉」、「魚介・海産物」、「米」、「果物」、「加工食品」と続き、昨年と同様に5位までを食品が占める結果となりました。

図表4

2022年版、2023年版ふるさと納税の返礼品ジャンルランキングの比較

食品以外では「日用品」が1つ順位を上げ6位になりました。上位1位から10位は昨年と同じ顔ぶれで、順位が異なったのは、「日用品」と「スイーツ・お菓子」だけでした。寄附先だけでなく返礼品ジャンルの人気度の固定化も進んでいます。また、純粋に自治体を応援したいという気持ちによる「返礼品なしでの寄附」は全体から見るとわずかですが、昨年の0.3%から1.7%に上昇しています。近年自然災害が増えており、ふるさと納税を通じた被災地域への支援が影響しているかもしれません。引き続き注目したいと思います。

4. 返礼品選びの本音~選ぶ理由、選ばない理由

ここまでで、 ふるさと納税は、利用月、寄附先自治体、返礼品のジャンルに集中があり、固定的になっていることがわかりました。最後に、利用者が返礼品を選ぶ理由、選ばない理由を分析し、ステークホルダーである自治体・事業者・生活者に役立つヒントを探ります。

2023年1月~12月にふるさと納税を利用した10,860人に「返礼品を選んだ理由」を聞いてみました。また、「返礼品を選ぶときに断念した返礼品のジャンルはあるか」という質問に対し、「ある」と答えた46.7%の利用者(5,075人) に、断念した(選ばなかった)理由を聞いてみました。図5で、それぞれの選択肢を3つのグループに分けてみました。早速みていきましょう。

図表5

返礼品を選んだ理由、断念した(選ばなかった)理由

制度やマイルール重視の<選ぶ理由・選ばない理由>

赤色は、返礼品を選ぶ基準や目的がはっきりしている理由です。固定的な選択と考えることができ、選択のタイプや好み とマッチすれば継続が期待できます。選んだ理由全体の2位から4位を占めています。2位の「寄附先の特産品だから」(27.3%)、4位の「寄附先の自治体を応援したいから」(18.1%)、10位の「寄附先の産業を応援したいから」(8.3%)は、ふるさと納税の理念に沿った寄附です。3位の「ふるさと納税でリピートしているから」(18.6%)、7位の「普段からよく購入するものだから」(15.4%)もルーティンとして定着していることがわかります。

断念した(選ばなかった)理由では、理由全体の1位の「自分の寄附額の限度内で選べるものがなかったから」(38.5%)、3位の「売り切れや受付期間が終了していたから」(20.4%)は、制度の寄附額の上限や、売り切れや受付終了という制限によって選択を断念しています。「リピートしたかったが同じ返礼品を見つけることができなかったから」は6.2%で、過去の選択に従っています。ポータルサイトでの見つけやすさや、返礼品を継続させることが選択率を上げるヒントになります。

お得感重視の<選ぶ理由・選ばない理由>

青色はとにかくお得かどうかが重視されている理由です。選んだ理由の1位の「返礼品のコスパ(価格と内容量のバランス)が良かったから」は44.3%と多くの人が選択しています。「大容量でお得感があったから」は16.9%、「価格帯や量のバリエーションが豊富で選びやすかったから」は7.6%でした。

断念した(選ばなかった)理由も、「コスパが悪いから」は31.2%で理由全体の2位で、「量が少ないから」は11.8%と、お得感重視の人には 「量は多く、価格は安く」が求められていることがわかります。

状況や気分に合わせた<選ぶ理由・選ばない理由>

黄色は、赤色と対照的に選ぶ基準や条件が流動的な理由です。「食べたことがない・滅多に食べれないものを試してみたいから」(16.1%)は、新たな食へのチャレンジに、「使ったことがない・滅多に体験できないものを試してみたいから」(3.2%)は、日用品や体験へのチャレンジに繋がります。

「季節ごとの旬のものを食べたいから」(13.5%)は、一年を通じて気分に合った食を楽しもうとしています。「冷凍保存ができて好きな時に食べられるから」(9.7%)も、自分の生活スタイルや利便性に合った食品を選ぶ人たちです。

断念した(選ばなかった)理由の「生もので傷んでしまうから」(15.6%)、「いつ来るかわからず受取に不安があるから」(13.4%)、「量が多いから」(11.6%)、「長期保存している間に存在を忘れてしまうから(無駄にした経験がある)」(3.5%)は、返礼品を受け取った後の消費や保存の状況で選んでいるので、状況が変われば異なった回答になるでしょう。

利用者の個々の好みに合わせるのは難しそうですが、新規性がある、他の自治体にない独自性がある、配送方法や保存方法の工夫など、選ばれる返礼品や自治体になるための改良点が見えてきます。

5. 返礼品選びを深堀り!ふるさと納税利用促進のヒント

最後に、自治体、返礼品提供事業者 、生活者がこの分析から得るヒントについてまとめます。

自治体は、返礼品選定の理由や断念された理由のフィードバックにより、マーケティング戦略や返礼品改善に役立てることができます。それぞれの寄附者の層に合った、より喜ばれる返礼品の提供が可能となり、寄附者の満足度を高め、新規利用者や再寄附を促進できます。

返礼品提供事業者は、製品やサービスの品質向上、マーケティング戦略の強化、利用者満足度の向上に活かすことができます。ふるさと納税の返礼品として人気が高まることは、通常のビジネスに加えて、新たな販路となり、ブランド認知度や売上の向上が期待できます。

生活者ですでに利用している人は、自分のタイプを知ることで、自分に合った返礼品を選びやすくなり、失敗を避けることができます。また、納得のいく寄附を行うことで満足度を高め、ふるさと納税を活用しやすくなります。まだ利用していない人は、他の人の選択した理由で賢い活用法を知り、断念した理由から無駄な失敗や後悔を減らすことができます。

今回の分析より、ふるさと納税を利用している生活者の意識・意向が、利用者だけでなく自治体や事業者にとっても、制度の活性化、寄附者満足度の向上、継続的な寄附を促進するための有益な情報となることがわかりました。生活者の意識と行動が、より良い制度やルールの変更に活用されることを目指して、これからも調査分析を続けていきたいと思います。


注1:総務省 ふるさと納税の次期指定に向けた見直し(報道資料)
注2:総務省 ふるさと納税に関する現況調査結果(令和6年度実施)
       (参考)令和5年度におけるふるさと納税受入額の多い20団体(P. 11)
注3:農林水産省 令和4年市町村別農業産出額(推計)


【調査概要】
(スクリーニング)
調査方法:Web調査
調査地域:日本全国
対象者条件:20~64歳男女/有職者/個人年収300万円以上(※)
標本サイズ:n=52,984(令和2年「国勢調査」と令和元年「賃金構造基本統計調査」から算出した人口構成比(性年代×エリア×有職者×個人年収300万円以上)に準拠して回収)
調査実施時期:2024年9月3日(火)~2024年9月10日(火)
(※)総務省の「全額(2,000円を除く)控除されるふるさと納税額(年間上限)の目安」に従い個人年収300万円以上を対象者条件と設定した。

(本調査)
調査方法:Web調査
調査地域:日本全国
対象者条件:スクリーニング回答者のうち、2023年1月~12月にふるさと納税制度で寄附を行ったと回答した方
標本サイズ:n=10,860
調査実施時期:2024年9月11日(水)~2024年9月17日(火)

著者プロフィール

小西 葉子(こにし ようこ)プロフィール画像
小西 葉子(こにし ようこ)
独立行政法人経済産業研究所(RIETI)上席研究員
中小企業応援士 
一般社団法人日本統計学会 理事
統計委員会臨時委員

名古屋大学大学院にて博士号(経済学)を取得し、2014年より現職。2016年から経済産業省の「ビッグデータを活用した新指標開発プロジェクト」に携わり、コロナ禍にはインテージ社をはじめとする民間企業と協業し、消費動向把握とその発信を積極的に行った。計量経済学の知見を活かし、消費、観光、医療、物流、省エネ政策等、幅広い分野の研究を行う。
https://www.rieti.go.jp/users/konishi-yoko/

独立行政法人経済産業研究所(RIETI)上席研究員
中小企業応援士 
一般社団法人日本統計学会 理事
統計委員会臨時委員

名古屋大学大学院にて博士号(経済学)を取得し、2014年より現職。2016年から経済産業省の「ビッグデータを活用した新指標開発プロジェクト」に携わり、コロナ禍にはインテージ社をはじめとする民間企業と協業し、消費動向把握とその発信を積極的に行った。計量経済学の知見を活かし、消費、観光、医療、物流、省エネ政策等、幅広い分野の研究を行う。
https://www.rieti.go.jp/users/konishi-yoko/

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